経験則に頼った人事からの脱却を図る
~人財データの可視化が後押しするゆうちょ銀行の人的資本経営~

課題:人材の見える化、人材育成、生成AI

株式会社ゆうちょ銀行
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    業種 金融業

    従業員数 10,952名(2025年3月31日現在)

「お客様の声を明日への羅針盤とする最も身近で信頼される銀行を目指す」という経営理念のもと、全国津々浦々の郵便局ネットワークを通じて金融サービスを提供するゆうちょ銀行。2024年に決定した中期経営計画の見直しでは、リテールビジネス・マーケットビジネス・Σ(シグマ)ビジネス(投資を通じて社会と地域の未来を創る法人ビジネス)の3つのビジネスエンジンを柱に、サスティナブルなビジネスモデルへの転換が明示されました。この基盤を下支えする仕組みとして導入されたのがタレントパレットです。点在している人財情報を一元化し戦略的に活用することで経験などに頼る人事から「データに基づく人財マネジメント」への改革を推進し、人財価値の最大化を実現させようとしています。

目次:

人的資本経営を支える人事戦略の「3本の柱」

― 現在の事業と人事部門のミッションについてお聞かせください。

ゆうちょ銀行は、全国に233店舗の直営店と約2万4千局の郵便局ネットワークを通じて、個人・法人のお客様に幅広い金融サービスを提供しています。2025年5月には郵便貯金事業の創業から150周年となる節目を迎え、これからもお客さまに寄り添う地域社会に根差した金融機関としての存在価値を高めていく所存です。

当行では、2021年の中期計画策定を起点に、2023年度を「人的資本経営元年」と位置づけ、人財の価値を最大限に引き出すことで企業価値の向上を目指しています。私たち人事部門は、経営戦略と連動した人事戦略を通じて、組織の持続的成長に貢献することをミッションとしています。

人事戦略では「3本の柱」を打ち出しています。第一に「成長を促す」。これは、社員一人ひとりが挑戦する意欲を発揮できるよう、キャリアチャレンジ制度や学習環境の整備、専門人財の採用・育成を進める施策です。第二に「能力を引き出す」。適所適材の人財配置やエンゲージメント向上施策を通じて、社員がやりがいを持って活躍できる環境を整備しています。第三に「多様性を活かす」。女性活躍推進、シニア人財や障がいを持つ人など、多様な人財が能力を発揮できる環境を整えています。

タレントパレットは、こうした経営戦略と一体化した人事施策を支える基盤として導入しました。

人的資本経営を支える人事戦略の「3本の柱」

導入前の課題──経験則などに頼る人事からの脱却を目指す

― 導入前に抱えていた主な課題は何でしたか。

最大の課題は、人財情報が分散しており、一元化できていなかったことです。人事評価シートやスキルシートはExcel、アンケート調査は別システムで管理されるなど、人財情報が複数のツールに分散していました。こうした状況では、データを収集・集計するだけでも大きな労力を要し、人事業務の効率性を損なっていました。

また、これまで人事の意思決定は、担当者の「経験則」などに基づく場面があり、客観的な根拠に基づく人財配置や育成の判断が難しいという課題も顕在化していました。たとえば、新しい組織を立ち上げる際に「誰を配置するか」「どの人財を育成対象とするか」といった判断も、データに基づく仕組みが整っていなかったため、経験則を中心に行われてきました。そのため、経験の浅い社員は、かなりの労力を取られていました。

しかし、人財の価値を最大限に引き出すためには、こうした従来型の意思決定から脱却し、人財データを可視化し、戦略的に活用できる体制へと進化させることが不可欠です。そのための仕組みこそが、当行に強く求められていたものでした。

膨大な社員データを扱う上で重視した安全かつ安定的な稼働

― どのような観点で製品を比較・選定しましたか。

当行は全国に拠点を持ち、社員数も1万人を超え、多岐に渡る膨大なデータを扱います。こうした大規模な社員データを扱う以上、金融機関として極めて高水準のセキュリティと安定的な稼働はシステム選定の絶対条件でした。そのうえで、既存システムで実現できていた機能を確実に継続運用できることも選定のポイントでした。

従来のシステムでは入力項目が固定され、蓄積されたデータを全て入力できないという制約がありましたが、タレントパレットは自由度の高い項目設定が可能であり、人財データを網羅的に取り込める柔軟性を備えています。これは、データドリブンな人財マネジメントを行う上で、多岐にわたるスキルデータやキャリアを正確に把握するのに非常に有効に活用できています。

さらに、データ分析を強化したいというニーズに応える機能として、自由記述のアンケートや社員コメントから、膨大な量の文章すべてに目を通すことなく瞬時に全体の傾向を把握し有用な情報を引き出せるテキストマイニングをはじめとする先進的な分析機能も魅力でした。当時、同様の機能を持つ製品は他に見当たらず、選定の大きな決め手になりました。加えて、直感的に操作できるUIも評価され、デジタルに不慣れな社員でもストレスなく利用できる設計もタレントパレットを選んだ大きな理由でした。

膨大な社員データを扱う上で重視した安全かつ安定的な稼働

金融機関特有の運用環境に寄り添う、きめ細やかな支援

― 導入をスムーズに進めるうえで印象に残ったサポートはありましたか。

タレントパレットの導入を円滑に進められた背景には、御社のコンサルタントによるきめ細やかな支援がありました。現場の状況を丁寧にヒアリングし、利用者のレベルに合わせた提案をしていただいたことで、デジタル環境に不慣れな社員にも利用を促す環境づくりにつながりました。現場の声を踏まえた柔軟な提案やサポートがあり、導入プロセス全体が滞りなく進んだと感じています。

鈴木 真由 様

加えて、当行には依然として「紙文化」が根強く残っており、システム上に入力した後も、定められた様式で帳票として出力したいというニーズが多く存在しています。支店など一部の部署では、社員一人に一台ずつPCとスマートフォンが貸与されておらず、端末を共用するといった運用もあることから、むしろ紙に出力して手書きで補完した方が効率的な場面もあります。

こうした背景を理解し、帳票を整った形式できれいに見やすく印刷できるよう調整いただいた点も非常にありがたく、金融機関特有の運用環境に配慮した支援が、現場での定着を大きく後押ししました。

金融機関特有の運用環境に寄り添う、きめ細やかな支援

― 導入後のサポート体制はいかがでしたか?

チャットサポートの迅速さは、非常に大きな安心材料となりました。問い合わせから直ぐに対応いただけるので、疑問点を即時に解消できたため、業務の停滞を防ぐことができました。問い合わせ、チャットの両方で、スピーディーかつ柔軟な対応が一貫して行われていたと感じています。

さらに、新たな施策を導入する際には、コンサルタントによる伴走支援が力を発揮しました。特に、社員のスキルを調査し、どのように保持・活用するかといったスキルサーベイの設計においては、当行のニーズを的確に捉えた提案をいただき、四か月ほどでの実装が実現しました。当行のニーズを最大限に汲み取り、「こうすればタレントパレットで実現可能」といった具体的な案を提示いただけたことは非常に心強く、スキルサーベイ導入の成功要因となりました。

加賀美 勇也 様

人事業務の進化を支えるデータ基盤の構築と活用

― 現在、主に使用している機能を教えてください。

現在、非正規社員を含め、約1万4千名の人財情報がタレントパレット上に登録されており、人事評価、資格・スキル、社員申告、各種アンケートなどの人財データが一元化されています。タレントパレット導入前は、社内のポータルやGoogleフォームなどの複数ツールで分散していた情報がタレントパレットに集約されたことで、データ収集から集計・分析までのプロセスが大幅に効率化されました。今後は資格の申請業務もタレントパレットを使って効率化する予定です。

特に大きな効果として挙げられるのが、人事評価フィードバックのデジタル化です。
従来はExcelで作成・印刷・配布を行っていたため、作成ミスや紛失リスク、過去記録の参照の難しさといった課題がありましたが、現在はすべてシステム上で管理されているため、社員自身が過去の評価を容易に振り返ることができます。配布や保管の手間も削減され、正確性と効率性が大幅に高まりました。

人事業務の進化を支えるデータ基盤の構築と活用

また、パルスサーベイも一部組織を除き隔週で実施しており、個人ダッシュボードや上長ダッシュボードで時系列の変化を可視化できるようになりました。更にスキルサーベイや360度評価と組み合わせたモニタリングが可能となり、社員の状態を多面的に把握する基盤が整いつつあります。

評価や申告、アンケート調査といった定期的なタッチポイントを通じて、社員の利用機会は着実に増加していると感じています。紙の運用と並行しつつも、データ蓄積のメリットを実感できる場面が増えており、段階的にタレントパレットの定着が進んでいます。

さらに人事部内では、タレントパレットの活用について議論が活発化しているのを肌で感じています。部内勉強会などを通じて40件を超える改善や要望が寄せられ、その中から工数やスケジュールに応じて実現可能な施策が選定されるなど、現場主導の活用サイクルも回り始めています。

小川 友和 様

人財データの可視化から戦略的活用とAIによる人事の高度化へ──人的資本経営を支えるデータ活用のこれから

― 今後、どのような活用を検討していますか。

タレントパレット導入によって、人財データの一元化と業務効率化において、すでに大きな成果を上げています。今後はその先にある「戦略的な活用」へと進化させていくことが、我々ゆうちょ銀行の目指す方向性です。

具体的には、人財要件を複合的に組合せ、特定ポストの人財を発掘分析する施策や、一人ひとりのスキル、経験、特性などをAIにより抽出し、可視化することで人事異動等の際に意思決定支援を図る施策を検討しています。これまで人事担当者の経験則に頼っていた判断を、データに基づいた根拠ある意思決定へと進化させることが重要です。

人財データの可視化から戦略的活用とAIによる人事の高度化へ──人的資本経営を支えるデータ活用のこれから

また、全国規模で展開する金融機関として、異動や配置を検討する際に通勤距離や地域特性といった条件をデータに組み込み、より精緻なシミュレーションを行うことも視野に入れています。

さらに、360度評価におけるフィードバックのサポートやアドバイスなど、人の判断を支援するツールとしてAIの更なる利活用にも期待を寄せています。

人財の価値を最大限に引き出し組織を進化させる「タレントパレット」

― タレントパレットはどんな存在ですか?

タレントパレットは、これまで経験則などに頼る場面も多かった人事判断に、データという客観的な根拠を与える存在です。人的資本経営を推進するにあたり、従業員一人ひとりの特性やスキルを可視化し、戦略的に活用していくうえで欠かせない基盤になるものだと考えています。

人事部門にとっては、日常業務に欠かせない「仕事道具」として定着しつつあります。評価や申告、スキルサーベイなど日常的に触れるシーンが増え、システムが身近な存在になったことで、人事業務そのものの精度やスピード感も大きく向上しました。

タレントパレットは、単なる業務効率化のツールではなく、従業員一人ひとりがキャリアを考え、自律的に成長するきっかけを与える役割を担っているものだと思います。タレントパレットの活用を通じて、従業員の主体的な学びや成長が組織全体の進化へとつながる。そのきっかけとなるのがタレントパレットだと思っています。

人財の価値を最大限に引き出し組織を進化させる「タレントパレット」