新たな社内施策とも連動 人材発掘の武器にタレントパレットが貢献
課題:人材の見える化、最適配置
課題:人材の見える化、最適配置
| 業種 | 人材サービス |
|---|---|
| 従業員数 | 約15,000 名(連結)/約8,470名(単体)(2024年12月時点) |
1973年(昭和48年)に設立され、53年目に突入した株式会社マイナビ。人材総合サービスを展開する同社では、人材の見える化と最適な配置にタレントパレットを活用しています。長く人材の活性化に努めてきたマイナビが取り組むタレントマネジメントとは一体どのようなものなのか。導入の経緯や効果、今後の展望などについて3名の人事担当者にお話を伺いました。
求人・広告・メディア関連、人材紹介関連、情報関連の3つがビジネスモデルの柱です。全体に共通するのは人々の未来や生活を豊かにする価値を提供すること。事業数は50近くあり、6つのセグメントに分けて展開しています。2025年4月には約500人の新入社員が入社し、正社員数は8,000人を突破。平均年齢が約30歳と非常に若いのが特徴です。
ロゴはMとNを組み合わせ、「人生山あり谷あり」の軌跡を表したものです。右肩上がりに上昇していく地点にあるドット(.)がマイナビを示しており、「ユーザーの人生に寄り添い、人生の成功や成長のきっかけになりたい」との思いを込めています。
当社では3年前、「一人ひとりの可能性と向き合い、未来が見える世界をつくる。」を掲げてパーパスを一新しました。一人ひとりが持つポテンシャルを信じ、不透明な未来に対して足元を明るく照らす存在になることを目指しています。パーパスの実現に向けて「先見性と想像力」「挑戦心と実践力」「つなげる力と巻き込む力」「感謝と敬意」「ウェルビーイング」という5つのバリューズを定め、これらの価値観を大事にして働いています。
MとNを組み合わせて「人生山あり谷あり」の軌跡を表現し、右肩上がりに上昇する地点にあるドットはマイナビを象徴。
粟井様:私は人事全体の責任者です。着任してまだ1年半ですが、社会のダイナミックな動きに伴って人事の仕事が日々アップデートしていることを実感しています。管理に重きを置いた“守りの人事”だけではなく、どのように人材を活かし、人的資本を最大化していくかという“攻めの人事”が求められているからです。
上澤田様:この3人の中で最も人事歴が長く、2016年に着任して人事戦略部門を立ち上げました。以降、社内の人事改革に携わっています。
竹井様:タレントマネジメント領域を中心に、人事施策の企画や立案、実行までを担当しています。タレントパレットに関しては最前線で活用する立場です。
先ほど人事戦略部門の立ち上げについて触れましたが、当時、マイナビでは事業の急拡大に伴い大量採用が進んでいました。しかし、体系化して戦略的に異動させるには従来の管理・労務中心の人事機能では限界があり、そこからタレントマネジメントシステムの導入を検討し始めました。
導入前は社員の自己申告をExcelで管理し、集計した数千人分の結果を一つ一つ読んでいました。詳細情報が必要な場合は、所管部署を訪ねて履歴書を調べるなど、非常に工数がかかっていました。
ただ、自己申告を読み進める中で、たくさんの課題が明らかになってきました。当時はタレントマネジメントの本質が理解されておらず、社員の自律性よりも短期的な業績の最大化が優先されていたのです。そのため“社員の志”にフォーカスする制度の必要性を感じ、2018年に社内公募制度をスタートさせました。
社内公募によって自律性を重んじたことで、現在私たちが目指している姿と、当時目指していた姿がリンクしてきたように思います。優秀な人材は働きがいを持って新たな仕事に臨めますし、後任人材に成長を与える機会にもなります。組織内に多彩なキャリアを持つ人材が増えたことは、会社にとってもプラスになりました。
はい。検討した時点では国産のタレントマネジメントシステムが成熟しておらず、外資系の統合型サービスを導入しました。しかしあまりにも重厚長大で堅牢すぎたため、フットワークの軽い活用が困難でした。また日本の会社特有の施策には、外資系のジョブ型の思想では合わない点もネックとなりました。そこで機動力を高めていくことを目的に、タレントマネジメントに特化したシステムへのリプレースを検討しました。
5社ほどのツールを星取り表で確認しながら比較検討を行なった結果、社員一覧の使いやすさや見やすさ、機能開発の速さなどを考慮して選びました。
他社はシンプルなビジュアルに終始している印象があり、機能的にはタレントパレットが一番優秀でした。特に検索機能が優れており、縦軸と横軸に等級や役職などの要素を整理して表示できるため、人材がどのポジションにいるかを一目で把握できる点が素晴らしいです。
以前のシステムで人材データの集約がかなり進んでいたこともあり、データを有効活用できるシステムとしても理想でした。タレントパレットは意思決定者や人事企画担当者がフル活用することを前提に設計されているため、単に見やすいだけでなく、考えるための機能がしっかりと備わっています。全社員が利用できますが、人事や経営の対話のために見たい情報が中心で、項目やタグによって見える情報が制限できるところが長所です。
「いかに人材を詳しく可視化するか」が最も重要ですから、パーソナリティや経験、業績、キャリアの志向性、アセスメントなどの複数データをタレントパレットに集約しています。それに加えて等級別や適性テストのタイプ別、パフォーマンス別に区切った流動的な人材プールを作成しています。
これらは通常の人事異動以上に、特別なアサインがほしいときに効果を発揮します。例えば「新規事業の部署を立ち上げるからこういう人材がほしい」「自治体との連携でこういう人材をピックアップしたい」といったケースです。事業部のリクエストに応じて候補者リストを提示し、事業部長の意思決定を支援しています。これまでに期限付きのプロジェクトメンバーの抽出などで活用しました。
年2回のエンゲージメントサーベイで得たデータをタレントパレットに集約して、組織の状況を確認しています。
マイナビではタレントマネジメントシステムを導入する前からエンゲージメントサーベイを実施してきました。エンゲージメントの結果と自己申告を照らし合わせながら個別課題を掘り起こし、組織や人材の見える化を図ってきた歴史があります。
現在はISO 30414の項目をベースに人的資本に関する指標を整備しています。粒度の大きい情報を共通言語として示す重要性は理解しつつも、単に項目を集計するだけでは“事業成功のための人と組織づくり”に直結しにくいと感じています。
なぜそう感じるかといえば、私は事業部で営業を担当していたキャリアが人事よりも圧倒的に長いからです。だからこそ仕事の現場での手触り感は大事にしたい。データやルールはもちろん重要ですが、材料やフレームのヒントに過ぎません。最終的には社員や経営層の意思で判断することが大切です。そしてそこには、規定の項目からは表現できない会社の“らしさ”が滲み出てくるのです。
はい。人事の役割や影響度がどんどん大きくなっていることを実感しています。経営戦略のアジェンダにも組み込まれていますし、我々も経営側のメッセージを汲み取って、調査すべきことや提言すべきことを常に考えています。
経営視点における人事の大きな役割の1つは、最適な動的人材ポートフォリオの構築です。もう1つは、“マイナビの求心力”の下地を作ること。魅力があればマイナビで働き続けてくれるわけですから、その基盤を固めることは人事にとって大切なミッションです。
現在の20代は、将来を生き抜く力が身に付けられる会社を選ぶ傾向があります。そして20代の貴重な時間を投資する価値がある会社を見極めることが、企業選定において外せない要素になっています。そうしたトレンドの中で、“マイナビで働く意義が感じられるかどうか”を示すことが極めて重要になってきます。
それを踏まえると、管理に偏った人材ポートフォリオだけでは社員はついてきてくれません。経営戦略と同調したポートフォリオを作ること、そして一人ひとりの可能性に向き合ってキャリア自律を本気で考えること。この2軸を両輪で回すことによって、会社のパーパスと自分のパーパスが共鳴すると思っています。
エンゲージメントスコアも右肩上がりで、とても良い状態になってきています。会社が表明したことが浸透している部分もあると思いますし、社員が会社に対してポジティブな感情を持っているのは確かです。
2025年4月からは社員向けのキャリア自律支援プログラム「My WILL」を開始しました。タレントパレットに設けた「My WILLシート(キャリアレジュメ)」を活用し、これまで年2回に提出が限られていた「キャリア希望申告」を常時更新できるようにしたのが特徴で、組織や社会の変革スピードに合わせるため、人材を適時配置することが目的です。
マイナビには若い社員が多数在籍しています。一般的には半年に一度の異動機会でも十分とされるかもしれませんが、若い社員にとっては、その機会を逃すことで、キャリア形成が1年から1年半遅れてしまう可能性があります。そこで「My WILL」では、社員の意思を動的に把握し、人事部門が半年ごとにモニタリングを実施しています。これにより、事業部から配置の要望があった際にも、社内で迅速にチャレンジできる体制を整えています。
My WILLシートには「どこにいつ異動したのか」「役職がどう変わったのか」という経歴リストをまとめています。下段には今後のキャリアについて申告するスペースがあるため、これまでのキャリアを踏まえて「自分はどういう強みを持っているのか」「どういうキャリアを描きたいのか」「それはマイナビの中でどう実現できるのか」などを具体的に記入できます。
今のところ、施策は大成功です。常時更新を解禁したら記入率が10%ほど上がり、開始からわずか1カ月で92%に達しました。社員の自律性を重視してきたマイナビの文化が反映されたと自負しています。
マイナビでは、キャリア自律を
「自分の可能性を探求し、ありたい未来に向けて、歩み続けること」と定義。
その実現に向け、キャリア自律支援プログラム「My WILL」を開始。
My WILLでは、My WILLシートに加えて「キャリアエージェント」を新設しました。社内のキャリアエージェントが社員と面談する取り組みで、対象となる人材が考えていることを具現化したり、見えなかった選択肢を広げたりすることができる伴走役を務めます。このセットによって人材の掘り起こしを強化していく予定です。
社内公募は自らのモチベーションが起点でしたが、「My WILL」はその人が自覚していない可能性を見つけ出すことに焦点を当てています。人事がきちんと評価してくれる心理的安全性を与えることで、優秀な人材の流出防止にもつながると期待しています。
コーポレートと事業部間での合意形成や意思決定を進めるうえで、データによる可視化の重要性を改めて実感しています。データに基づく対話がなければ、人事は管理やルールに偏り、硬直化してしまいがちです。しかし、対話ができると、「事業部のニーズに応えるために人事として何ができるか」という前向きな発想へと転換されていきます。こうした流れは、ここ1〜2年で徐々に芽生え始めており、理想として描いていた人事の在り方に向けた土台がようやく整いつつあります。今後も、“見える化の物差し”としてタレントパレットを積極的に活用していきたいと考えています。
人事の「今」と経営の「未来」を変える、
タレントマネジメントシステムです。