人事評価の業務負荷を約7割削減。 ペーパーレス化と「人財の見える化」で挑む、老舗防災メーカーの人的資本経営

課題:人事評価、人材の見える化、スキルの可視化、最適配置

能美防災株式会社
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    業種 防災設備メーカー

    従業員数 2,875名(2025年3月31日現在・連結)

創立100年を超える日本を代表する総合防災メーカー、能美防災株式会社。同社はタレントパレットを導入し、従業員の保有資格・スキルの一元管理や人事評価、採用関連業務などに活用してきました。 同社の中長期ビジョンでは重点施策として、人的資本の充実による既存事業の収益拡大と利益率の向上を掲げています。その実現に向け、紙ベースだった業務をペーパーレス化し、業務負荷の大幅削減とオフィスのフリーアドレス化を推進。現在は蓄積されたデータを活用し、戦略的な人財配置や自律的なキャリア形成の支援へとフェーズを進めています。

目次:

人的資本経営の推進に向けて「人財ポートフォリオ」を整備

― 「中長期ビジョン2028」で人的資本経営への注力を明言されていますが、人財戦略を強化されている背景を教えていただけますか?

労働人口の減少や雇用環境の流動化が進む中で、事業の成長を加速するには人財が最大限に能力を発揮できる環境が必要だと考えています。その環境を構築するために、どのような資格・スキル・実績を持つ人財が社内に存在するかを可視化する「人財ポートフォリオ」の整備を進めています。適正な配置を行うことは、社内的なニーズだけでなく社会的にも求められている要素であり、人的資本経営への注力は経営の重要課題であると認識しています。

人事部では紙・ハンコ・郵送の業務に忙殺され、ピーク時の負荷が限界に

― タレントパレットを導入されたのはどのような経緯でしたか?

直接的なきっかけは、コロナ禍で出勤が制限され、これまで紙で運用していた人事評価や各種届出をペーパーレス化する必要が生じたことです。Web上で各種の書類や届出を完結できるシステムを検討しているときに出会ったのがタレントパレットでした。

― 紙ベースで書類を運用していた際は、どのような課題がありましたか?

以前は人事部で扱う書類のほとんどが紙でした。特に大変だったのは、人事評価を実施する年度末の時期です。全国の拠点に正社員約2,000名分の書類を発送し、部下との面談結果を記して押印してもらった書類を回収し、それを人事がOCRでスキャンをしてデータ化していました。毎年3月末から新入社員を迎える4月上旬にかけて、人事部の業務負荷はピークに達しており、この人的・時間的コストの削減は待ったなしの状況でした。

矢代氏

幅広い機能を評価し全社導入へ

― 数あるシステムの中で、タレントパレットを選定された決め手は何でしたか。

実は最初に製品を選定したのは人事部ではなく、人材開発部門でした。「ライセンス管理」のシステム化を検討する過程でタレントパレットが選定されたのです。実際に見てみると、ライセンス管理だけでなく人事評価や分析など幅広く使えることが分かり、人事主導で全社導入することになりました。
選定の決め手は、システム構築の自由度が高く、当社の運用に合わせて柔軟にカスタマイズできる点です。導入後もコンサルタントの方とミーティングをしながら、利用範囲を拡大させながら使いやすいシステムへと育てていきました。

「あの人はどこ?」検索時間が数秒に。勘と経験に頼らない人事業務へ

― 現在の利用状況と導入による変化を教えてください。

現在は全従業員約2,400名分のアカウントを発行し、人事評価(MBO)、各種届出、組織図の集約、労務管理(36協定対応)などで幅広く活用しています。

実務面で大きなメリットを感じているのが、情報の「検索性」の向上です。 例えば、異動調整の際に「こういう経歴を持った人はいないか」といった問い合わせがあった際、以前はベテラン社員の記憶と勘に頼って探していましたが、今はシステム検索で数秒で回答できます。 また、過去5年分などの履歴も蓄積されているため、その人が過去にどういう希望を出していたか、どういう経歴かという情報も瞬時に遡って確認できるようになり、属人化していた情報管理から脱却できました。

属人下していた人財情報検索の進化

業務負荷を約7割削減し、オフィスのフリーアドレス化も実現

― 導入による定量的な効果について教えていただけますか。

一番大きい効果はペーパーレス化が進んだことです。特に人事評価の時期は、書類の発送・回収・チェック・データ化という一連の作業において、瞬発的に対応しなければならないピーク時の業務負荷を、体感で約7割削減できたと感じています。
また、大量の紙書類を保管するスペースが不要になったことで、オフィスをフリーアドレス化することができました。タレントパレットの導入は、単なる業務効率化だけでなく、働き方改革やオフィスの省スペース化にも間違いなく寄与しています。

ピーク時の業務負荷約7割削減

メンタル不調の予兆検知やFAQ活用など、多角的に機能を活用

― パルスサーベイやその他の機能はどのように活用されていますか?

パルスサーベイは全従業員を対象に月1回、5〜10問程度の簡単なアンケートを実施しており、回答率は約8割と定着しています。メンタル不調や意欲低下の兆候を確認し、離職防止やケアに役立てています。 運用当初は「低い点をつけると面談に呼ばれる」という噂が広まり、本音が書きにくい時期もありましたが、面談は強制ではないと伝えるなど運用を工夫し、現在は若手を中心に「会社が自分を気にしてくれている」というエンゲージメント向上にもつながっています。

また、年末調整などの問い合わせ削減のために「人事FAQ」も導入しました。これにより、電話対応の時間を大幅に削減できています。

― 入社手続きのデジタル化についてはいかがでしょうか?

採用管理機能を入社手続きに活用したことで、劇的な効率化が実現しました。 具体的には、内定者にタレントパレットのアカウントを入社前に発行し、ご自身で必要な情報を直接入力してもらう運用に変更しました。 以前の紙ベースの運用では、雇用契約書や誓約書などに書き損じがあると、書類自体を再送・書き直ししたりする必要があり、新入社員と人事担当双方にとって大きな負担となっていました。 導入後は、Web上で入力するため書き損じによる手戻りがなくなり、書類の作成・管理が非常に楽になりました。また、雇用契約書の電子化により、膨大な紙書類の保管スペース削減という経営的なメリットも生まれています。

入社手続きのデジタル化による効率化フロー

「なくてはならない存在」として定着。人的資本経営の実現を支える重要基盤

― 今後の展望や、AI活用などの構想についてお聞かせください。

今後は蓄積されたデータを活用して、戦略的な人財配置に役立てていきたいと考えています。 実務経験やキャリアのデータは入力されていますが、まだ十分には活用しきれていません。「特定の経験を持つ人財がどの部門にどれくらいいるか」などを分析し、適正な異動や配置につなげていきたいです。
また、これまでは「会社(人事・役員)のためのシステム」という側面が強かったですが、今後は従業員自身が自分のキャリアやスキルを見える化し、自律的なキャリア形成に役立てられるような環境を整えたいと考えています。 その一環として、AI機能の活用も検討しています。自分と似た特性を持つ社員のキャリアステップを可視化したり、AIが客観的なアドバイスを行ったりすることで、従業員が自身のキャリアを考えるきっかけを提供できればと考えています。

― 貴社にとってタレントパレットはどのような存在ですか?

私自身、一日に何度もログインしており、もはや業務になくてはならない「インフラ」のような存在です。 経営視点で見ても、当社が掲げる「人的資本経営」を実現するためには、人財データの可視化と戦略的な活用が不可欠です。タレントパレットはそのための重要な基盤であり、今後もこのシステムと共に、会社と従業員の双方にとって価値ある人事戦略を推進していきたいと考えています。

矢代氏