全国のプリンスホテルスタッフを「財」へ
グローバル戦略とタレントマネジメントの進化
課題:従業員エンゲージメント、人事評価、社員定着、研修管理
課題:従業員エンゲージメント、人事評価、社員定着、研修管理
業種 サービス・店舗
従業員数 6,921名(2024年3月31日時点)
国内最大級のホテルチェーンとして知られるプリンスホテルを運営する株式会社 西武・プリンスホテルズワールドワイド。
同社は2022年にホテル運営に特化するビジネスモデルに大きく形を変え、その際に社名も「西武・プリンスホテルズワールドワイド」と改称しました。今後、2035年までに「プリンスホテル」ブランドのホテルを国内外あわせて250規模まで拡大することを目指しています。
ビジネスモデルの大きな方向転換と、グローバル展開を進める同社に、人財活用・タレントマネジメントの取り組みと、その基盤となるタレントパレットの活用についてお話を伺いました。(2025年2月取材)
ホテル業界は非常に外部環境の影響を受けやすい業種です。
西武グループは100年以上にわたりホテル・レジャー事業を展開してきましたが、その間にも社会情勢の変化からさまざまな影響を受けてきました。近年も、東日本大震災やコロナ禍に大きな影響を受けたのはご存知だと思います。
コロナ禍は当社やグループの強固な事業・財務基盤もあり乗り越えることができたものの、同じようなクライシスが生じた際にも、持続的に事業を発展させるためには、ビジネスモデルの転換が必要でした。
そこで、それまでホテルやリゾート施設などの土地と建物を所有しながら運営を行う形態から、2022年に所有する施設をグループ内外に売却し、「プリンスホテル」ブランドのホテル・施設の運営に特化するマネジメントコントラクト(MC方式)を中心とした事業に移行し、社名も「西武・プリンスホテルズワールドワイド」と改め、新たなスタートを切りました。
現在は国内外に86のホテルを展開していますが(2025年2月時点)、2035年までに250規模に拡大することを目指しています。
そうですね。まず、私達の組織名を「人事部」から、「ヒューマンキャピタル部」と変更しました。これは国内外問わず、分かりやすくするという意図だけではなく、一般的には「ヒューマンリソース」と呼ばれている人材を「財」すなわち資本として捉える考え方も表しています。
国内外250のホテルを目指すためには、人財育成が重要です。特に、「世界に通用する人財をどう育てるか」、「調理を始めとする専門職種の専門性の強化」という2つが重要な柱となっています。これを踏まえ「自立を求め、自ら考えて行動できる」「変化を恐れずにみずからの意志で歩みだす」人財を育てることを重視しています。
ホテルを増やしていくためには、このようなホテル・施設のオーナーから選ばれる「質(専門性)」と、人財の「量(要員数)」をいかに確保するかが重要です。
「質」と「量」の両面を確保するためには、それぞれ異なるアプローチが必要だと考えています。「質」については、専門性の強化が重要で、資格取得への投資や、経歴の見える化、キャリアパスの整備が重要です。「量」については賃金のベースアップや従業員の満足度を高める取り組みが必要です。
これらの取り組みは並行して進めていく必要があると考えています。
2025年2月時点
※人事業務(採用・教育・処遇・人財戦略等)全体を統括
これまで、従業員に関する情報がさまざまなシステムや紙の書類で管理されていたため、各従業員がどのような想いで自分のキャリアを選んでいるのか、把握することが難しい状況でした。
しかし、「質」と「量」の両方を確保するためには、これまで以上に人事情報を収集し、それを効果的に活用していく必要があります。そのため、タレントマネジメントの重要性を強く感じていました。
また、人事部内での管理に留まっていた人事情報を、マネジメント層にも活かしてもらいたいという意図もあり、タレントマネジメントシステムを導入することにしました。
西武グループとしてもタレントマネジメントの必要性を感じており、持株会社である西武ホールディングス主導でタレントパレットの導入が進んでいました。
その過程で当社も複数のシステムについて調査・検討していました。
その中で、プラスアルファ・コンサルティングの「人事をマーケティングとして捉え、どう活用していくか」という発想が興味深く、それを実現しようとする営業担当者の熱意も強く感じました。
システムの機能面も大事ですが、パートナーとしてお付き合いしたい基準は人。信頼関係が非常に重要だと考えていたので、熱量のあるプラスアルファ・コンサルティングのタレントパレットを選びました。
※人財戦略の立案とともに、タレントパレットの活用方法の開発を担当
定年再雇用の嘱託や契約従業員を含む約7,000名の従業員がタレントパレットを利用できる状態です。そのほとんどが現場で働いている人たちです。
現在、タレントパレットで、紙ベースだった評価シートのデジタル化、360度評価、パルスサーベイを実施しています。
全国の施設で勤務する約6,000名の社員が対象となっており、これまではExcelや印刷したA3の紙で評価を行っていました。
これらの評価シートは最終的に本社に集約していましたが、これだけの人数に対して半期ごとに評価を行うので、評価シートの枚数が多く、段ボール箱に詰めて、外部の倉庫を借りて保管をしていました。
※タレントパレットを活用した評価業務、システム構築や運用を担当
そうですね。管理・保存も大変だったのですが、何より後で見返すことが大変でした。でデータ化して保存することも試みたのですが、上手く既存の人事基幹システムに取り込むことが出来ておりませんでした。
タレントパレットの導入により、評価シートがデジタル化されたことで、集計や管理・保存の業務負担が軽減されただけでなく、過去の評価シートにも簡単にアクセスできるようになりました。これまでは事業所の人事担当者や経営層から「評価シートを見たい」というリクエストが年に何度かありましたが、探すのに時間を要するため、対応に非常に苦労していました。現在では、タレントパレットによりこれらの作業が簡単にできるようになりました。
評価シートには本人の仕事に対する想いや考え、例えば現在の業務を続けたい、あるいは異動したいといったキャリアに関する記載も含まれていました。回収時には私たちもその思いを把握していましたが、紙で保管すると、後にすべてを拾いきれなくなることがありました。この点もキャリアビジョンシート(後述)として従業員の志向や思いを記載するシートを導入することで改善され、人財配置や育成に活かせる環境が整ったと思います。
従業員が常に自分の評価シートが確認できるようになったのも大きな改善点だと思います。従業員本人も過去の評価を忘れてしまうことが多いですが、振り返りも簡単になったので、今後、キャリア開発や自己啓発の促進にもつながっていくと考えています。
2024年1月から展開を開始しました。従業員がどのような気持ちで働いているのか、業務に対してどのような気持ちを持っているのかを把握する手段がなかったことや、離職防止に役立てたいという考えからスタートしました。
現在は毎月25日に、当月の仕事を振り返るかたちで実施しています。
パルスサーベイの導入により、直属の上司や本社が、従業員の仕事に対する気持ちを把握できるようになり、非常に貴重な情報が集まってきていると感じています。
従来はコンプライアンス遵守の観点から「職場風土アンケート」を実施していましたが、働きやすさだけでなく働きがいも測定すべく、2023年からエンゲージメントサーベイに統合して実施する運びとなりました。(エンゲージメントサーベイは他サービスで実施)
パルスサーベイで従業員個人のモチベーションを把握し、エンゲージメントサーベイで会社と従業員の結びつき(相互理解度合い)を確認しています。2つの結果を参照して分析することで、「人」と「組織」両方の側面から働きやすさ・働きがいにアプローチできるようになりました。エンゲージメントサーベイは、職場ごとにスコア結果が出ますが、スコアが低い事業所には個別の集中改善プログラムを行なっています。先日も担当者が、スコアが低い事業所を訪問し、どのようにスコアを向上させるかを一緒に考えるアクションをとりました。
また、パルスサーベイでモチベーションの低下がみられる従業員には事業所の人事と面談を設定し、課題や悩みの早期発見と改善アクションに役立てています。パルスサーベイの活用方法はまだ試行錯誤中ですが、エンゲージメントサーベイのスコアと組み合わせて、スコアが低い理由をパルスサーベイの結果から深堀りすることで、離職防止のアプローチがしやすくなると期待しています。
もちろんスコアの数値がすべてではありませんが、結果がわかりやすく表示されるようになったため、課題に対して優先的に取り組むべき項目が明確になりました。さらに結果が蓄積されることで、前年の施策の効果を比較して可視化することも可能になってきました。
※パルスサーベイを担当
現在、試験的に活用を始めています。当社では階層別の研修や、昇格時に昇格者向けの研修を実施しています。また、選抜型の研修として、海外での実務経験を積む研修や、全国から将来の総支配人候補を集めた研修も行っています。2025年度からは順次これらの研修の受講登録を研修管理機能で実施したいと考えています。
人事のトレンドや会社のグローバル展開という方向性を考えると、将来的には、個人や組織に求められるスキル、役職に求められるスキルを明らかにする取り組みが必要になってくると思います。従業員に求められるスキルと、個人が持っているスキルを考慮して、どのような研修や講習を受けさせるべきかを、研修管理機能で導き出せるようになれば理想的だと考えています。
キャリアビジョンシートに関しても2025年度から導入する予定です。従業員のキャリアビジョンを、3つの観点から明確にしようと考えています。
まずは自分の現在地です。これは従業員自身に仕事に対する価値観や強み・弱みを答えてもらうというものです。
次に自分の描く将来像です。どのような役職を目指したいか、どのような専門性を持ちたいかを書いてもらいます。
最後に、現在地と描く将来像のギャップを理解し、それをどのように埋めていくかを書いてもらいます。
これらの3つの観点を基に上司と面談し、アドバイスを受けるという方向性を見出しています。
近々開始予定のチームボード機能の活用です。当社は北海道から沖縄まで事業所があり、規模が大きいため、名前は知っていても、その人がどんな人かわからないことが多々ありました。
特に、季節的な応援や他の事業所と連携して仕事をする際に、顔を知っておくことで、仕事がしやすくなるという意見も多く寄せられました。そこで、現在は同じ事業所のメンバーしか閲覧できない顔写真やメールアドレスなどの業務に必要な情報を他の事業所の従業員からも閲覧できるように準備を進めています。
※主にマインド機能を使った360度評価や1on1機能を使った面談、アンケート機能を担当
まずはパルスサーベイの回答率の向上です。現在は約50%ですが、これを70~80%に引き上げたいと考えています。
また、パルスサーベイの離職対策に活用することにも取り組みたいと考えています。
パルスサーベイで、モチベーションが下がっていると回答した人は、その後、パルスサーベイにすら回答しなくなる傾向があります。これは会社に対する期待が失われている可能性があると推察しています。このような人に対して、先手を打って、会社からどのようなアプローチができるかを考えていきたいと思います。
社内公募機能の活用も進めています。これまでは社内ポータルに公募内容を掲載し、外部のアンケートシステムで受け付け、Excelで集計・管理していました。
しかし、応募条件を自分が満たしているかがわかりにくく、応募を見送る人も多い印象がありました。そこでタレントパレットを活用して従業員に適した公募を表示し、マッチングを高めるようにすることで、今後応募の活性化を期待しています。
また、社内公募以外にもタレントパレットで可能なことは積極的に移行し、さまざまな業務の効率化や社内コミュニケーションの活性化に役立てたいと考えています。
人事の「今」と経営の「未来」を変える、
タレントマネジメントシステムです。