科学的人事フォーラム

科学的人事でDXを実現する持続的な企業成長のための人材戦略 科学的人事でDXを実現する持続的な企業成長のための人材戦略

先行企業が語る「科学的人事実践の要諦」 先行企業が語る「科学的人事実践の要諦」

先行企業が語る「科学的人事実践の要諦」

山崎 万里子

株式会社ユナイテッドアローズ
執行役員
人事部長

澤 和宏

カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社
HR Service Center部長

高城 幸司

株式会社セレブレイン
代表取締役社長

 ユナイテッドアローズで執行役員人事部担当を務める山崎万里子氏と、カルチュア・コンビニエンス・クラブ HR Service Center部長 澤和宏氏によるパネルディスカッションが行われた。テーマは「科学的人事の実践!先駆企業に聞く これからの企業成長を支えるタレントマネジメント戦略」。ファシリテーターはセレブレイン代表取締役社長の高城幸司氏が務めた。

※本記事は、2021年5月13日『ダイヤモンド・オンライン』にPRとして掲載されたダイヤモンド社 デジタルビジネス局主催「科学的人事フォーラム」のイベントレポートです。

 山崎氏は、マーケティング部門と経営企画で長く経験を積んできた人物で、人事業務に携わるのはまだ4年目だという。冒頭の自己紹介で、「人事の課題を解決する上で、マーケティングのスキルが役立った、その経験について話ができれば」と語った。

澤氏は、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)でHR Service Centerの責任者を務めている。このHR Service Centerは、CCCおよびCCCグループ全体を横断する人事業務を担当しており、事業を横断する人事データベースの構築も担当しているという。

そして山崎氏も澤氏も、それぞれ所属する企業で「科学的人事」「経営戦略と密接に連携した人事戦略」に「まさに取り組んでいるところ」だと語る。

技術の進化でようやく統合人事データベース
構築が可能になった

 高城氏はまず、両社が科学的人事に取り組むようになった経緯から尋ねた。それに答えた澤氏は、「次の10年を見据えて、人事業務の質的向上に資する新たな業務基盤を構築するという大きな目標があった」と前置きした上で説明を続けた。

 CCC では、大きな目標とともに実現したいこととして「統合人事データベースを構築し、人事メンバーの誰もが当然に人事データを日常業務に活用できる基盤を整える」「人事メンバーに限らず、事業部門の管理職層にも人事データの活用を可能にする」「人事データの集計や分析に優れたサービスを導入し、人事業務の作業負荷を軽減し、より人に向き合う業務へのシフトを実現する」「人事データを気軽に扱えるようにすることで、各種企画、施策のPDS(Plan、Do、See)サイクルのスピードと精度を向上させ、事業の変化や人の多様性を踏まえた企画、施策の立案を実現する」「人事業務のサービスレベルを先進企業の劣らない水準に引き上げる」の5点があるという。

 先述した大きな目標に向かって動き出すきっかけとなったのは、2018年度から同社が始めた人事業務の効率化プロジェクトだ。人事関係のデータがあちこちに散らばっており、なかなか活用できていなかったという点が問題となり、統合人事データベースの導入に至ったという。さらに澤氏は、人事担当者の経験や勘といった、人間の頭の中にあるデータも統合していきたいと付け加えた。

CCCでは、タレントパレットを使って統合人事データベースを構築
▲ CCCでは、タレントパレットを使って統合人事データベースを構築。バラバラだった社員情報を一元化し、
人事部門だけでなく、事業部門の管理職層も人事データの活用が可能になるような体制づくりを進めている。

 実は、CCCでは10年ほど前から人事データベースを構築しようという動きがあり、Microsoft AccessやMicrosoft Excelを使って何度か挑戦してはみたが、そのたびに途中で立ち消えになっていたという。澤氏は「ここ数年でHRTechのサービスがいくつも登場して、ようやく統合人事データベースの構築が現実的な話になった」と、技術の進歩によって科学的人事が可能になってきたことを指摘した。

印象や、声の大きな人の思いつきで
動かないように

 続いて山崎氏は、執行役員人事部担当に就任する際に、ユナイテッドアローズの経営陣に出された課題として「退職率低下」「優秀人材獲得」「組織風土の改革」「エンゲージメント向上」の4つがあったという話から始めた。しかし就任当初に人事部門を見渡すと、採用、配置、教育など業務ごとに担当がバラバラで、それぞれが保有するデータをほかの業務で活用できる状態ではなかった。つまり、業務の連携も取れず、データの集約もできていない状態だったという。

 「マーケティングでは、離脱したお客さまがなぜ離脱したのかを探るために、データを深掘りしていく。ところが人事では、例えばある社員が退職したときに、社員満足度調査の回答などを調べてデータを深掘りしていくことが非常に面倒な状態だった」と山崎氏は語る。お互いにあまり連携できていない、非連続的な人事業務を連続的にして、分散している人事データを集積した統合データベースを導入することが必要だと考えたという。そして「それが出来なければ、就任時に経営陣から課された課題を全うすることもできない」と当時の思いを明かした。

 さらに、「人事がデータを活用しないと、人間の印象や声の大きな人(社歴の長い人など)の思いつきで人事施策を進めてしまう」と話す。その例として、ユナイテッドアローズで退職者の多さが問題になったときのケースを挙げた。経営層から仮説の1つとして、退職者が多いのは「理念の浸透力が弱いからではないか」という声が挙がり、理念を浸透させるためのプロジェクトが始まった。しかしエンゲージメント調査の結果を分析したところ、問題は理念ではなく報酬だったと明らかになったという。さらに深く調べると、最も大きな問題は若手社員の月給であることが分かり、賞与と給与の比率を変えて、月給額を高めたところ、退職率が大きく下がったという。

ユナイテッドアローズの人事データ活用例
▲ ユナイテッドアローズの人事データ活用例。エンゲージメント調査の結果を分析したところ、
問題は理念の浸透ではなく報酬だったことが明らかになったという。

 もう1つの例として挙げたのが採用だ。新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を受けて業績不振となったユナイテッドアローズでは、現在採用を止めているが、どうしても増員しなければならない部門に限って採用している。そして、その部門を特定するためにデータを活用しているという。具体的には、意識調査で集めた疲弊度合いを示すデータや、ストレスチェックの結果、残業時間などのデータを掛け合わせて分析し、増員しなければならない部門を決めているそうだ。

 また、山崎氏と澤氏は共に、人材評価と育成にもデータの掛け合わせを活用しているという。山崎氏は、人事考課、360度評価、上司評価、部下評価などのデータを掛け合わせて分析していくと、まれにどの評価でも極めて高いスコアを得ている人材が現れると話す。その人材の能力や特性を分析し、目指すべき人材像をはっきりさせて、教育に活かしているという。

 澤氏も、優秀な人材の能力や特性を分析し、従業員にどのような教育をすれば良いのか、あるいはどのように配属を変えれば良いのかといったことを決める際に、さまざまなデータを掛け合わせて分析していると語った。

結果を出して、経営陣に関心を持ってもらう

 科学的人事に本格的に取り組むには、経営層を巻き込む必要があるが、経営層を説得することはなかなか難しい。山崎氏は「いきなり『科学的人事』をやらせてください」と経営層を説得するようなことはしないと語る。そして「結果を出していって、経営陣に関心を持ってもらう」ことに力を入れているという。

 具体的には、マーケティングに近い手法を活用することと、社会の動き、働き方の変化、労働市場の変化などマクロを分析すること。この2点を踏まえて人事戦略を立てているという。山崎氏にとっては、人事課題を解決するにはマーケティングの手法とマクロ分析が必要だという考えは自然なものだと語る。そして、この手法で人事を進めていくと、人事のための人事から、企業価値や経営へのインパクトがある人事につながっていると実感しているという。

 一方、澤氏は「現場で役立つ」ことが大切だと話す。経営層も「人事のための投資」よりも「現場で役に立つ」ことを重視している。そのために、人事データベースを構築する際には現場にデータを公開して現場で活用してもらうことを強く意識しているという。さらに、複数のデータを掛け合わせた分析が現場でもできるよう、人事部門が支援しているとも語る。

 そして両氏とも、“数値データだけでなく、テキストデータの分析もすぐにできることが、経営陣の説得に役立っている”と指摘する。アンケート調査をしても分析に何カ月もかかるようでは、その結果を経営陣に示してもあまり反応を得られない。スピードが大事、ということだ。

 両氏とも、ここで役立つのがタレントパレットのテキストマイニングの機能だという。澤氏は、社内アンケートなどの自由記述の部分を分析してすぐに全体の傾向を出してくれるので、経営陣にすぐ報告できる点が大きいと述べた。報告時にテキストマイニングの傾向から明らかになった課題を見て、人事としてすぐに取り組んでいきたい部分を付け加えると、経営陣にも上申しやすいという。

  • CCCのHR Service Centerで、テキストマイニングの機能を使って社内アンケートの自由記述欄を分析 クリックして拡大

    ▲ CCCのHR Service Centerで、テキストマイニングの機能を使って社内アンケートの自由記述欄を分析したところ。頻出するキーワードと、そのキーワードがどのキーワードと関係性があるのかを図で示してくれる

  • ユナイテッドアローズでも、タレントパレットのテキストマイニング機能を活用 クリックして拡大

    ▲ ユナイテッドアローズでも、タレントパレットのテキストマイニング機能を活用している。組織、店舗、キャリアプラン、人事制度、働き方などについて、社員がどのようなことを考えているかがつかみやすくなる。

 山崎氏は、テキストマイニングを使うようになる前から自由記述の部分の分析をしていたが、およそ4000人分のコメントを人間の手で分析し、上位コメントなどを集計していたという。しかし、テキストマイニングの機能を使って分析し、頻出するコメントをほかのコメントとの関係性が分かるような形で出力させると、自由記述コメントの分析結果に、より強いインパクトを持たせて経営陣に伝えることができると語った。

科学的人事は、人材の配置・育成や、
離職者の防止にも役立つ

 両社とも、まだ科学的人事に取り組み始めたばかりで、データを蓄積しながら少しずつ社内に浸透させている段階だ。では、今後科学的人事を本格的に実行できるようになったとき、どのようなことに活用したいのだろうか。

 山崎氏は配置と育成を挙げた。個人のスキル、意向、能力、経歴、過去の評価情報などを蓄積し、分析した結果を基にした人事ローテーションをやりたいという。また、上司が気づいていないことを教える、といったことにも活用したいと語る。

 「今の部署から出たい」という希望は、上司には言いにくいものだ。従って、上司は部下の本当の希望をつかめないことが多くなる。例えば、新しい子会社を立ち上げたときに、経営を任せる人材として人事部門がある従業員に白羽の矢を立て、その従業員の上司に打診したとする。しかしその上司は、その従業員について「彼/彼女は、経理のスペシャリストとして活躍していきたいという意向がある」と回答する。普通ならそこで終わるが、人事部がデータベースから自己申告のデータを引き出して、本人は実は経営に興味があると分かれば、その後の話もスムーズに進む。

 澤氏は今後活用したいこととして、「従業員ひとりひとりに合わせて個別の研修メニューを組むこと」を挙げた。データベースに蓄積した情報を分析して、従業員ひとりひとりの伸ばすべき部分を突き止め、その結果に応じた研修メニューを自動的に組む、ということだ。

 また澤氏は、科学的人事は離職者の防止にも役立つと期待している。まずは人材の適材適所と、退職の予兆をスコア化する。こうしたデータの裏付けがあれば、「退職に踏み切る前にフォローすることで離職を防止するといったことを実現したい」と語った。

 最後に、今後の課題として両氏は「蓄積したデータを整え続けること」を挙げた。組織の名称が変わったり、新組織ができたりする度に、過去のデータを最新の組織の形に合わせるように整え直す。「この作業を続けられない限り、科学的人事は実行できない」と両氏の意見が一致した。

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