科学的人事フォーラム

科学的人事でDXを実現する持続的な企業成長のための人材戦略 科学的人事でDXを実現する持続的な企業成長のための人材戦略

労働人口が減少する日本こそ、データに基づく人材戦略が必要だ 労働人口が減少する日本こそ、データに基づく人材戦略が必要だ

労働人口が減少する日本こそ、
データに基づく人材戦略が必要だ

玉塚 元一

株式会社デジタルハーツホールディングス
代表取締役社長 CEO

鈴村 賢治

株式会社プラスアルファ・コンサルティング
タレントパレット事業部部長

 イベントの最後を飾ったのは、ファーストリテイリングやローソンなどの社長を歴任し、現在はデジタルハーツホールディングスで代表取締役社長CEOを務める玉塚元一氏と、タレントマネジメントシステム「タレントパレット」の開発者であり、プラスアルファ・コンサルティング取締役副社長の鈴村賢治氏による特別対談「データを経営の味方にする 強い組織を作るための人材戦略」。ファシリテーターとして、ダイヤモンド社デジタルビジネス局コンテンツ企画開発部部長の吉岡綾乃も参加した。

※本記事は、2021年5月13日『ダイヤモンド・オンライン』にPRとして掲載されたダイヤモンド社 デジタルビジネス局主催「科学的人事フォーラム」のイベントレポートです。

新しい事業に取り組むには、
新しい人材が必要になる

 新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって、世界中でビジネス環境が大きく変わっている。このような状況で企業は何をすべきだろうか? この問いに対し、玉塚氏は「既存事業で収益が上がっているうちに、新しい事業を立ち上げ、収益が上がるところまで成長させることが必要だ」と答えた。それは簡単なことではないが、挑戦しなければ企業が生き残れなくなる可能性もある。

 そして玉塚氏は、既存事業を続けながら新しい事業を立ち上げるとき、企業がすでに持っている人材だけではできないことが多々あると指摘した。そのようなときは、外部の新しいチームと組む、多様な人材を集めてみる必要があると付け加えた。

 玉塚氏が社長を務めるデジタルハーツホールディングスでも、既存事業であるデバッグ(ゲームソフトの不具合を検出する)で収益が上がっている今のうちに、ゲームには限らず、ソフトウェア全般の不具合検出を行うシステムテスト事業や、ネットワークセキュリティ関連の事業に進出している。

 デバッグ事業を続けながら、新しい領域に進出する際には、外部から人材を採用したほか、社内の人材を見渡して、新事業に適した素養を持つ人材や、挑戦したい意欲を持つ人材を新事業に振り向けたと玉塚氏は語る。ところが、新事業開始当初は先行投資がかさんでなかなか利益が得られず、株価が半額近くまで下落したこともあったという。

 だが、ゲームソフトのデバッグだけでは成長に限界がある。業績を大きく伸ばしていくには新領域への挑戦は必然だ。新領域が成長すれば、事業の柱をそちらに移すこともできる。そのためには既存の人材の一部を配置転換しなければならない。そして、新領域に挑戦する意義を理解してもらえるよう従業員を説得しなければならない。

新規事業に取り組む人材を、
どうやって社内から選び出す?

 新事業で少しずつ収益が上がり始めると、挑戦してみようと考える従業員が少しずつ増え始める。しかし、新事業を軌道に乗せるまでやり切ることは難しい。そのためには、経営陣の強いリーダーシップや、投資家などのさまざまなステークホルダーに説明を続けることなどが必要になるが、容易なことではない。

 新事業に適した素養を持つ人材や、挑戦する意欲がある人材を見つけ出すことに苦労したと語る。ゲームソフトのデバッグに携わる人材として、アルバイトや契約社員も含めて8000人ほどいたが、どこにどういう人材がいるのかが玉塚氏以下経営陣には分からない。各拠点にいる責任者や管理職なら、担当地域の人材について把握しているが、それを統一したものがなかった。

 そこで玉塚氏は、自社開発で自社の人材を管理するデータベースを開発し、そこに8000人ほどの人材すべてについて、これまで関わってきたプロジェクト、それぞれのプロジェクトで挙げた成果、プログラミングやネットワークセキュリティの勉強をしたいという意欲があるかどうかなどのデータを集積したという。

 そして、このデータベースから勉強する意思がある人たちをピックアップして研修を受けてもらうなどの施策を行ったそうだ。その結果、元々ゲームのテスターだった人たちから約50人がテストエンジニアへ、130人ほどがネットワークセキュリティのエンジニアに転身を果たしたという。

“マーケティングでは当たり前のこと”を
人事に持ち込む

ここで話題は、タレントパレット誕生の経緯に移った。鈴村氏は、会社が成長して従業員が100人を超えたあたりから、自社にどんな人材がいるのか完全に把握できていないと感じるようになったという。

 プラスアルファ・コンサルティングは元々、マーケティングなどのビッグデータを分析して新しい施策を提案する事業を手掛けていた。鈴村氏は、マーケティングでは膨大なデータを分析して1人の顧客を理解しようとするが、人事は経験や勘、担当者が知っている情報だけで動いていることに気づき、「人事業務にマーケティングの手法を持ち込めば、従業員一人ひとりをより深く理解できるのではないか」と考え、タレントパレットの開発が始まったと語った。

人材・組織の見える化と分析を実現するために開発されたタレントマネジメントシステム「タレントパレット」
▲ 人材・組織の見える化と分析を実現するために
開発されたタレントマネジメントシステム「タレントパレット」

 またタレントパレット開発当時は、「社員の離職の予兆をつかめないか」と考えていたという。マーケティングでは、解約理由や解約の予兆をデータから分析する。鈴村氏は人事でも同じように、データの裏付けによって離職の予兆をつかみ、本人が言い出す前に会社から本人に接触して、退職を思いとどまらせる施策を打ち出すことができればと思っていたという。さらに離職防止以外、例えば玉塚氏が語った新事業への挑戦のような場合でも、従業員ひとりひとりの詳細なデータを集積した統合データベースがあれば、人材の再配置もスムーズに進むはずだと付け加えた。

好みや相性といった定性的なものも
データにし、比較できるようにする

 組織力を強化し、経営戦略と人材戦略を結びつけるためには、デジタル技術をどう使うべきか。玉塚氏はこの問いに対し、今後はひとりひとりの人材が持っているスキルセット、今後の働き方についての意向、好み、相性などの定性的なデータを抽象的に扱わず、データにすること。データにして見える化し、扱いやすくしていくことが第一歩だと述べ、同時にそのデータを一元管理することが重要だと語った。

 データの一元化が実施できたら、人事部門ではなく、経営層やリーダーが人事異動について仮説を立て、実行し、その結果を検証して、次の仮説に生かす。そのループを繰り返し、どれだけデータに基づいた判断ができるかが、今後の企業の人材戦略の成否を分けるのではないかと予測した。

 今や企業のあらゆる部門の業務にデジタル技術が入り込んで、業務効率を高めている。それなのに人事領域だけは、人間の経験と勘がものをいう、例外とも言える部分だったと指摘し、これは多くの企業にとってチャンスでもあると玉塚氏は指摘した。人事領域の業務にデジタル技術を持ち込み、経営層がデータを見て、データを基にした施策を打てる企業は大きく成長し、それができない企業は縮小していくということだ。

 対談の最後、玉塚氏はこう語った。「従来の人事業務は定性的で、関係者の感情で動いている部分が大きかった。しかし現在は定性的なものをデータ化し、傾向を見ることもできるようになった。これからは、データに基づいた人事戦略に移行すると意識改革すべきだ。そしてそれが、人事戦略改革の第一歩になるだろう」。

  • fb
  • t
  • g
  • b
トップへ戻る
背景装飾画像
背景装飾画像
背景装飾画像
背景装飾画像
背景装飾画像
背景装飾画像
背景装飾画像
背景装飾画像