プロティアンキャリアとは?意味・メリット・診断方法などをわかりやすく解説


プロティアンキャリアとは?意味・メリット・診断方法などをわかりやすく解説

この記事では、近年ビジネスシーンにおいて注目を集めている「プロティアンキャリアの形成」について、わかりやすく解説します。従来型キャリアとプロティアンキャリアの違いや、プロティアンキャリアに必要な能力、得られるメリットなどをご紹介しますので、プロティアンキャリア形成を促進したいと考えている方は必見です。


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プロティアンキャリアとは?

まずは、プロティアンキャリアの語源や概要、目指すものなど基礎的な知識について解説します。


プロティアンの意味

そもそもプロティアンとは「変化し続ける」「さまざまな形に変化する」「変幻自在な」という意味を持つ言葉です。語源となったのは、ギリシャ神話のプロテウスといわれています。


ギリシャ神話に登場するプロテウスは海の神であり、火や水、ライオン、イノシシなどさまざまなものへ姿を変えることができました。そうしたさまざまな形に変化可能なプロテウスの特徴から、プロティアンという言葉が成り立ったといわれています。


自分を変化させながら成長するキャリア形成

こうした語源から成るプロティアンキャリアとは、社会や環境の変化に応じて、自分の意志で自身を変化させていく柔軟なキャリア形成を指します。つまり、自分を変化させながら成長して、個人でキャリアを形成していくことです。


これまでは組織主導でキャリア形成を促すケースが多い傾向にありましたが、プロティアンキャリアは個人として自分の意志で、環境に合わせて変化・成長していくことを指しています。


プロティアンキャリアが目指すもの

プロティアンキャリアでは、高い給与や昇進などの結果ではなく、心理的成功を目指しています。


心理的成功とは、自ら掲げた目標や目的を達成したことで得る成功です。これまでのキャリア形成では給与や昇進など、外から見た基準が重視される傾向にありました。しかし、プロティアンキャリアではこうした基準は重視されません。


たとえば、給与の増額や昇進といった結果を出せなくても、自分で仕事にやりがいを感じて満足感を味わえれば、心理的に成功している状態といえます。


プロティアンキャリアが注目されるようになった背景

プロティアンキャリアは1976年に提唱されましたが、近年になって特に注目を集めるようになりました。


1976年にダグラス・ホールが提唱

プロティアンキャリアは、アメリカの心理学者で組織行動の研究者であるダグラス・ホールにより1976年に提唱されました。


1970年代は貿易自由化などの影響で企業の事業縮小が増え、アメリカで長期雇用の崩壊と雇用の流動化が進んでいた時代です。そのような変化の激しい時代に対して、ダグラス・ホールは「環境に応じて柔軟に変化していかなければならない」と考え、新しい働き方やキャリア形成の方法としてプロティアンキャリアが提唱されたといわれています。


近年注目されるようになった理由

人生100年時代ともいわれるようになり、近年は働き続ける期間が昔より長くなりました。仕事上で求められる役割も多様化し、時代によってIT技術の発達や価値観のアップデートなどによりビジネス環境も都度変化しています。


このような変化の激しい時代において、必要なものは柔軟な対応力です。組織に依存せず自分に合った働き方ができるように、柔軟に対応できるプロティアンキャリアの考え方が注目されるようになりました。


従来型キャリア形成との違い

ここでは、プロティアンキャリアにおけるキャリアの定義と、従来行われてきたキャリア形成との違いを項目ごとに解説します。


プロティアンキャリアにおけるキャリアの定義

提唱者であるダグラス・ホールは、プロティアンキャリアにおけるキャリアの定義は仕事におけるプロセスであると示しています。


また、キャリアは昇進・昇格スピードにより成功・失敗を判断するものではなく、本人が評価するものです。たとえば、周囲より早く昇進・昇格していても、本人が成功と思えないケースもあります。


ただし、キャリアを正確に捉えるには、多角的な意見が必要です。主観的な意見だけでなく、周囲からの客観的な意見も考慮しなければなりません。


目的

従来のキャリア形成では、組織内での昇進や権力が目的でした。一方で、プロティアンキャリアの目的は、個人の自由や成長とされています。


これまでは、キャリアを組織が所有・主導して昇進や昇格を促していましたが、キャリア形成の主体者が個人となることで、価値観が変化し、目的も変わりました。


所有者

先述したように、従来におけるキャリア形成の主体者はこれまで企業や組織でした。キャリアは組織に預けるものであり、組織内での昇進・昇格=キャリア形成であるという考えが一般的だったといえます。


しかし、プロティアンキャリアにおけるキャリアの所有者は個人です。キャリアは組織内で形成するものではなく、個人の手で形成されるものであり、環境の変化に応じて自分の意志で変えられるものとされています。


成果

キャリア形成によって求められる成果も、それぞれ異なります。従来のキャリア形成で重視されていたのは、組織内での地位向上や給料といった成果です。組織内での評価や報酬額など、対外的な要素が重視されていました。


一方、プロティアンキャリアの成果として目指しているのは心理的成功です。客観的かつ定量的な評価よりも、仕事のやりがいや達成感など、個人の自己実現および幸福度が重視されるようになりました。


プロティアンキャリア形成の上で重要な要素

プロティアンキャリアの形成には、アイデンティティとアダプタビリティーという要素が必要です。アイデンティティとアダプタビリティーは、どちらも行動特性能力ですが、それぞれ概念やキャリアとの関係性が異なります。


プロティアンキャリアの形成においては、この2つの要素が相互作用させることが大切です。どちらか1つではなく、2つを掛け合わせることでプロティアンキャリアの形成が実現するといわれています。


アイデンティティ

アイデンティティとは、自分は何者であるのかという考えに基づく自己認識です。


従来型のキャリア形成におけるアイデンティティは、組織軸で「自分は何をすべきか」という認識でした。しかし、プロティアンキャリアは従来型のキャリア形成とは所有者や目的が異なります。


キャリアの所有者は個人であり、個人の自由や成功が目的とされているプロティアンキャリアのアイデンティティでは、個人が軸となっていることが大きな特徴です。たとえば、「自分自身を尊敬できるか」「自分は、本当は何がしたいのか」といった考え方が軸となります。


アダプタビリティー

アダプタビリティーとは、時代や環境の変化に対する適応力を指します。変化の激しい現代において、アダプタビリティーは社会に適応するため必要な要素です。社会・経済環境が目まぐるしく変化している現代においては、新たな知識を学んだり、スキルを身に付けたりといった、変化に応じた積極的な姿勢が欠かせません。


アダプタビリティーは、これまでのキャリア形成においては組織内での柔軟性とされていました。しかし、個人の自由や成長を目的としているプロティアンキャリアでは、仕事に対する適応力が求められています。


プロティアンキャリア形成によるメリット

プロティアンキャリアの形成を実現することで得られる主なメリットを3つご紹介します。


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柔軟な働き方ができる

プロティアンキャリアが形成されていれば、時代の変化にも柔軟に対応することが可能です。現在確立しているビジネスモデルも、時代の変化によって通用しなくなる可能性があります。また、現代は一昔前のように企業側が社員を定年まで抱えられるかどうかわかりません。


しかし、プロティアンキャリアを形成しておけば、時代に沿って柔軟に変化して働き続けることができます。変化に合わせて柔軟に対応できるため、会社にとって有用な人材となれるでしょう。


キャリアを自分で決められる

プロティアンキャリアを形成すれば、自分で目標を立ててキャリアを構築できるようにもなります。キャリアプランを組織に任せっきりにするのではなく、自己決定できるようになるため、企業としてもプラスにつながるでしょう。


また、先述したように現代は企業側が定年まで社員を抱えていられるかどうかわかりません。そのため、プロティアンキャリアを形成しておくことで、変化に合わせて自分に合ったキャリアパスを見つけられます。


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満足感・充実感が向上する

プロティアンキャリアを形成すれば、自分で目標を立てて仕事に取り組むことができます。自分で立てた目標に向かって仕事をしていくことで、仕事に対する満足感・充実感が向上し、ゆくゆくは市場価値の高い人材になれるでしょう。


また、プロティアンキャリアが目的としているのは心理的成功です。個人の自己実現および幸福度を重視して自分の仕事に対するやりがいを感じながら働けるため、モチベーションの向上にもつながります。


プロティアンキャリア度の診断方法

自身や自社社員のプロティアンキャリアの度合いを診断する際は、以下の方法でチェックしてみましょう。


田中研之輔氏が開発したチェックリスト

プロティアンキャリアの度合いを診断するには、田中研之輔教授が開発したツールが便利です。


大学にてキャリアデザイン学の研究をしている田中研之輔教授は、プロティアンの日本版を提唱し、15個の質問に回答することで対象者がプロティアンキャリアを形成しているかどうかわかる診断ツールを開発しました。


同氏が開発したチェックリストを使用すれば、プロティアンキャリアを形成できているか判断できるとされています。


プロティアンキャリア診断におけるチェックリスト

プロティアンキャリア診断では、以下の項目にチェックをつけて合計数を算出します。


1:毎日、新聞を読む

2:月に2冊以上、本を読む

3:英語の学習を続けている

4:テクノロジーの変化に関心がある

5:国内の社会変化に関心がある

6:海外の社会変化に関心がある

7:仕事に限らず、新しいことに挑戦をしている

8:現状の問題から目を背けない

9:問題に直面すると、解決するために行動する

10: 決めたことを計画的に実行する

11:何事も途中で投げ出さず、やり抜く

12:日頃、複数のプロジェクトに関わっている

13:定期的に参加する(社外)コミュニティが複数ある

14: 健康意識が高く、定期的に運動している

15:生活の質を高め、心の幸福を感じる友人がいる


チェック数により行動状態がわかる

上記でチェックした数によって、ビジネスパーソンの3類型に分類されるといわれています。


たとえば、チェック数が12個以上の場合はプロティアン人財で、自分のキャリアを変幻自在に形成して変化にも柔軟に対応が可能です。


チェック数が4~11個の場合はセミプロティアン人財で、キャリア形成はできているものの、変化への対応力が弱いとされています。チェック数が3個以下はノンプロティアン人財で、現状のキャリア維持に留まっており、変化にも対応できない状態といえるでしょう。


プロティアンキャリア形成に向けた準備

プロティアンキャリアの形成を実現するためには、事前準備が欠かせません。まずはキャリアの定義づけや整理を行った上で、プロティアンキャリア形成を始めましょう。


事前準備では、従来の考えに捉われず、キャリアとは個人が管理・設定するものと定義するところからスタートし、現状の外的・内的キャリアを整理した上で、自ら目標を設定しなければなりません。


そうして目標設定が済んだら、目標を達成するまでの具体的な時期を決めて、業務に取り組んでいきます。その際は、目標を達成した自分の姿をイメージしながら、行動することが大切です。


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プロティアンキャリアの形成には資産・資本の蓄積が重要

プロティアンキャリアの形成には資産・資本の蓄積が重要です。まず、プロティアンキャリアを形成するには、キャリアを資本として捉えることが必要不可欠です。


プロティアンキャリアの形成において重要なことは、ビジネスマナーや資格、交友関係といった資本をただ蓄積することではありません。将来に向けてキャリアの市場価値を分析しながら資本を蓄積し、ゆくゆくは資産を生み出していくことが重要となります。


資産とは

プロティアンキャリアの形成によって生み出される資産は、有形資産と無形資産の2種類に分類されます。


有形資産とは、簡単にいうと目に見える資産です。預貯金や不動産、株式などが該当します。対して、無形資産は形を持たない資産です。具体例を挙げると、ノウハウや特許、知的財産権などが該当します。プロティアンキャリアの形成においては、次で解説する資本を蓄積して、有形資産もしくは無形資産を生み出していくことが重要とされています。


資本とは

プロティアンキャリアを形成する際に蓄積されるのは「ビジネス資本」「社会関係資本」「経済資本」の3種類です。


ビジネス資本は仕事上で培われるスキル(ビジネスマナーや資格、変化への適応力など)で、社会関係資本は職場や友人関係などにおける人と人の関係性を、経済資本は金銭や不動産、株式などを指します。


プロティアンキャリアの形成においては、これらの資本を活用して資産を築くことが重要視されています。


まとめ

ご紹介したように、変化が激しい近年ではプロティアンキャリアの形成が注目されています。プロティアンキャリアが形成されていれば、時代の変化に合わせて柔軟に対応でき、会社にとっても有用な人材となれるでしょう。


人材育成についてお悩みの場合は、ぜひプロティアンキャリアの形成に力を入れてみてはいかがでしょうか。


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