離職率の改善のためにできることは?離職の原因や改善する方法を解説


離職率の改善のためにできることは?離職の原因や改善する方法を解説

企業の離職率が高いと、社員のモチベーションの低下や生産性が落ちるなどさまざまな損失が発生します。この記事では、離職率の概要や離職率を改善しないことで発生するリスクを解説します。また、離職率を改善する方法や成功した事例も紹介しているのでぜひ参考にしてください。

離職率とは?概要と算出方法を解説

企業における人材の定着状況を把握する上で、離職率は重要な指標の1つです。社員が企業を離れる割合を示す離職率は、組織の労働環境やマネジメントの健全性を測る手がかりとなります。採用や人材育成、さらには労働条件の見直しなど人事施策の効果を高めるためにも、離職率の基本的な考え方や算出方法を理解しておきましょう。


離職率とは

離職率とは企業の社員数に対して、一定期間でどのくらいの人数が離職したかという割合のことです。離職率を計算する際の期間は決められていませんが、1年間とするのが一般的です。離職率は企業の働きやすさの指標とも見なされるため、企業は離職率低下のために努力することが望ましいといえます。


離職率の算出方法

離職率は一定期間における離職者数の割合が分かるので、企業の「働きやすさ」の指標として用いられています。離職率の定義には明確な期限が設けられていないので、企業独自の算出方法を用いて計算する場合が多いです。厚生労働省が雇用動向調査で用いる計算式は、以下のとおりです。


【離職率=総離職者数÷1月1日時点の常用労働者数×100】


一般的な企業では、以下の計算式が用いられています。


【離職率=企業が設定した期間の離職者数÷起算日の従業員数×100】


また離職率を計算する際は、新卒入社1年後と3年後の割合を算出するケースが多いです。新卒採用では、3年後の離職率が重要な指標として扱われています。


離職率の改善が必要な理由

高い離職率は採用や育成にかかるコストの増加だけでなく、顧客対応の品質低下や業務の属人化などさまざまな悪影響を引き起こす可能性があります。そのため離職率の改善は単なる人事部門の問題にとどまらず、企業全体の経営戦略においても重要な課題と言えるでしょう。この章では、離職率の改善が必要な理由について解説します。


従業員エンゲージメントの向上

離職率を改善することは、単に辞めさせないようにするということではありません。「この会社で働きたい」「自分の仕事にやりがいがある」と思える社員を増やすことが大切です。従業員エンゲージメントが高まれば社員は自ら学び、周囲と協力して組織の目標にも主体的に取り組むことができます。


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採用・教育コストの削減

退職者が増えると採用広告費や面接対応、さらに新人教育にかかる時間や負担は大きくなります。そのため離職率の改善は、企業経営におけるコスト最適化の観点からも重要な取り組みです。定着率が上がれば採用や教育にかかるコストを抑えることができ、人的リソースをより価値ある業務に集中できます。離職率を改善して社員が長く働き続けられる環境を整えることで、採用活動や教育投資の効率を高めることにつながります。


持続的な競争力

離職率の改善は、企業が安定して成長し続けるための基盤となります。優秀な人材が定着して長く活躍できる環境があれば知識や経験が積み重なり、組織としての競争力が持続的に高まります。離職率の改善は目先の問題解決だけでなく、将来のビジネスを強くする戦略的な取り組みです。


離職率を改善しないと発生するリスク

離職率の高さは、企業運営においてあらゆる面に悪影響を及ぼす可能性が高いです。この章では離職率を改善しないことでどのようなリスクが発生するのかを、具体的な観点から解説します。企業の持続的な成長を目指す上で、離職の放置が危険な理由を理解しておきましょう。


社員の負担増加

離職率の高い状態が続くと、残った社員への負担が増します。常に人手不足の状態であるため一人ひとりの業務量が膨らみ、残業や休日出勤が増える場合が多いです。社員のモチベーションや仕事への満足度は下がり、最終的には心身の不調やさらなる離職につながってしまいます。


特にスキルや経験のある優秀な人材は他の企業からの需要が高いため、より良い環境を求めて離職する可能性が高いです。高い離職率を放置することは単に人が減るという問題にとどまらず、残った社員への負担増加と貴重な人材の流出という二重のリスクが発生します。


企業イメージの低下

「社員の定着率が低い」「すぐに人が辞める」という情報は、企業イメージに大きな影響を与えます。「人が定着しない会社」は取引先や顧客に対してマイナスなイメージを与え、信頼やブランド価値を損なう要因になります。また、求職者への印象も悪くなりやすいです。応募減少や内定辞退の増加など、採用活動にも悪影響を及ぼす恐れがあります。


社員のモチベーションにも影響するため、さらなる離職者を発生させる可能性が高いです。離職率の高さは、社内だけでなく社外からの評価にも影響を与える重要な要素です。若手や優秀な人材ほど職場環境に敏感であるため、企業イメージの悪化は人材の確保と定着にとって致命的な問題になりかねません。企業イメージを守るためにも、離職率の改善は欠かせない取り組みです。


採用コストの増加

離職者が多い企業は、常に採用活動を行わなければなりません。採用活動は、新卒と中途採用の2つのパターンで行われます。中途採用の場合は求人広告への掲載など人材紹介料金がかかるため、新卒採用に比べて1人あたりのコストが高くなる傾向にあります。


また、新しく採用した人材には一定期間の育成や研修が必要です。新たな人材を採用する際は、金銭的なコストに加えて採用担当者の労力も消費されます。離職率が高い企業では、本来必要ないコストが余分にかかることになります。


離職率が上がる主な5つの原因

離職率が高まる背景には給与や労働時間など条件面の問題だけでなく、人間関係や働きがいの欠如などあらゆる要因が複雑に絡み合っていることが多いです。この章では、離職率が上がる主な原因について解説します。離職率における課題の本質を知り、的確な改善策を検討しましょう。


労働条件への不満

離職率が上がる主な原因の1つは、労働条件への不満です。労働条件に下記のような不満があると、社員は退職を検討しやすくなります。


  • 長時間労働や休日出勤が多く、休暇が取りにくい
  • 給与や賞与といった待遇面に納得していない
  • テレワークやフレックスタイム制が導入されておらず、柔軟な働き方ができない


長時間労働や休日出勤が多いと、社員の身体的・心理的負担が大きくなります。また給与面が仕事量に見合わないと感じれば、社員はより不満やストレスを感じやすくなるでしょう。労働条件に不満を感じると、待遇のいい職場を求めて転職を検討する人が増える可能性が高まります。


人間関係の問題

人間関係におけるストレスは、退職の大きな要因です。「パワハラ」「セクハラ」などハラスメントが生じていると、社員は働き続けられずに離職を選ぶでしょう。近年では「マタハラ」や「パタハラ」など、あらゆるハラスメントが問題視されています。ハラスメントには、以下のようなものがあります。


  • パワーハラスメント:地位や人間関係における優位性を利用して身体的・心理的苦痛を与えること
  • セクシャルハラスメント:性的な言動により不快感を与えること
  • マタニティハラスメント:妊娠・出産などで制度を利用するにあたり、就業環境を害する言動で苦痛を与えること
  • パタニティハラスメント:配偶者の妊娠・出産などに関わる男性に向けて苦痛を強いる言動を行うこと
  • ケアハラスメント:家族などの介護を行うために制度を利用する従業員が不利益な扱いを行うこと


職場の人間関係の問題は、離職率に大きく影響するため早急な対策が必要です。


やりがいが感じられない

社員の能力を加味せず人員配置をしてしまうと、実力を発揮できずやりがいを感じられません。社員教育が充実していない職場では、知識やスキルの向上が感じられないため社員のモチベーションも低下します。仕事にやりがいがなく、意欲を感じられないと社員は退職しやすくなります。


企業の将来性への不安

企業の業績が安定していないと社員は将来性への不安を感じ、離職を検討することがあります。特に新卒の社員は企業の将来性に不安がある場合、早めに転職した方が得だと感じることもあるでしょう。社員が感じる不安の原因は企業を取り巻く外部環境の変化の速さや、新しい価値創造における企業の力不足などがあげられます。将来性に不安を感じる理由は1つではないため、社会の変化への対応や課題に対する取り組みなど「変わろうとする努力」をする企業であると社員に理解してもらうことが大切です。


教育やフォロー体制の不足

入職後は会社のルールや業務内容を知ってもらうためにも、新入社員に対して十分な教育・研修を行うことが望ましいです。教育や研修を通して新入社員が持つ知識・スキルを把握することで、適材適所に配置し個々の能力を発揮できる環境を作ることにもつながります。フォロー体制が整っていれば、ミスや間違いにも周りが気付けるので安心して働けるでしょう。


しかし教育やフォロー体制が不足していると、従業員の持つ能力を発揮できず仕事に対する自信を持てなくなってしまいます。自信を持てない社員は「自分には合わない」と感じてしまい、離職につながってしまう可能性が高いです。


離職率を改善する方法7選

この章では、離職率を改善するための具体的な方法について紹介します。「辞めにくい会社」ではなく「ここで働き続けたい」と思える環境を作るために、企業ができることを見つけていきましょう。


離職理由の聞き取り

離職の理由を知ることで、企業は今後の行動計画に反映できます。離職理由の聞き取りを行う際は、辞めたい理由のほかにも会社が改善すべき点やこれまでのサポート体制への要望などの質問を行いましょう。そうすることで、より具体的に「離職の原因」と「改善すべき点」が見えてきます。


ワークライフバランスの改善

離職率を下げるためには、ワークライフバランスの改善が大切です。まずは労働時間や業務量を見直し、社員の負担が大きすぎないか確認しましょう。過重労働は離職率が上がるだけでなく、生産性を低下させる要因ともなります。近年の労働者は仕事だけでなく、プライベートも大切にする傾向があるため、自分の時間が持てない職場では離職しやすくなります。また長時間労働は労働基準法にも抵触するため、時間外労働や休日出勤などの管理の徹底が必要です。


柔軟な働き方へ対応

離職率の改善には、柔軟な働き方の導入が有効です。社員の事情やライフスタイルに合わせた働き方を取り入れることで、業務効率の向上が期待できます。社員によっては育児や介護によって退職を余儀なくされる場合もありますが、柔軟な働き方ができれば勤務し続けられます。具体的な働き方は、以下のとおりです。


  • リモートワーク
  • フレックスタイム
  • 時短勤務


リモートワークが可能になれば、引越しや出産など従業員を取り巻く環境の変化にとらわれずに働き続けられます。また居住地に関係なく採用できるので、通勤時間などを理由に退職せざるを得なかったケースの離職を防げます。


コミュニケーションの活性化

社内のコミュニケーションを増やすことで人間関係の問題の解決につなげ、離職率を低下させられます。たとえば社内イベントや交流会の開催、社内SNSやチャットツールなどの導入がおすすめです。また1on1の面談やチームディスカッションなどの機会を設けることで、社員の交流の機会を増やせるでしょう。同僚間や上司と部下など、コミュニケーションを十分に取ることで互いの理解を深められます。コミュニケーションを活性化し、同僚はもちろん上司や先輩にもいつでも相談できる環境を作ることが大切です。


待遇の改善

離職率低下のためには、待遇の改善も効果的です。まずは給与や賞与、福利厚生などを見直してみましょう。賃金が労働量や成果に見合っていないと、社員の仕事へのモチベーションが低下してしまいます。ニーズに合った福利厚生を提供できれば、社員の満足度を上げられ、離職率の改善につなげられます。企業と社員の双方が、互いに納得できる条件にすることが大切です。


人事評価の見直し

社内の人事評価の見直しも、離職率の改善に有効です。努力が報われないと社員が感じてしまうと、業務へのモチベーションやエンゲージメントが低下してしまいます。たとえば上司などが公正に評価していなければ、社員は頑張る意義が見出せず生産性も落ちてしまうでしょう。


評価基準を明確にし、根拠を可視化することが重要です。人事評価は、以下の3つから成り立っています。


  • 能力評価
  • 業務評価
  • 情意評価


3つの要素に沿って、定期的に人事評価を行いましょう。また、人事評価制度は経営戦略の変更や企業規模に合わせて適宜見直すことが大切です。


社員教育・フォロー体制の充実

離職率の改善のためには、充実した社員教育が必要です。まずは現状の教育体制が十分であるか、事前に聞き取りを行い不足している部分を充実させましょう。また入職後の研修だけでなく、スキルアップの機会を積極的に設けることも大切です。スキルアップの教育・研修には、以下のようなものがあります。


  • 外部研修
  • 社内研修
  • オンライン講座


仕事での成果が上がればモチベーションが向上すると同時に企業への愛着も生まれ、人材の定着につながります。新人教育は特に力を入れ、手順などはマニュアル化して統一することが望ましいです。採用直後の研修だけでなく、その後のフォロー体制を充実させることも重要なポイントです。


離職率を改善できた事例7選

企業としてはせっかく採用し、時間をかけて育てた人材を失うのは避けたいのではないでしょうか。この章では、実際に離職率を改善できた事例について解説します。


人事制度の見直しで離職率減少

某ソフトウェア開発会社では離職率が約30%と高い状態だったため、人事制度を見直すことにしました。具体的な施策は在宅勤務制度、ウルトラワーク制度、副業の自由化など、ライフスタイルに合わせた柔軟な働き方を認める「選択型人事制度」の導入です。社員のそれぞれが適した働き方を選択できるようになったことで離職率は改善され、約4%と7分の1以下にまで下がりました。


社内改革で業界平均を下回る離職率に

某大手不動産会社では離職率が業界水準よりも高い状態だったため、定着率を上げるために社内改革に着手しました。具体的な施策は、意識改革による長時間労働の是正と、ヒアリングや部門・立場別の社員研修などの実施です。より快適な労働環境が整備されたこと、社員の意見が反映されたこと、研修が充実したことによって、業界水準と比べても低い離職率の実現に成功しました。


採用の見極めで高い定着率を実現

某飲食チェーンでは選考会議の導入によって中途採用の基準を見直し、精度の高い見極めをすることで業界内で離職率の低い状態を保っています。部門を超えた連携によって早期離職者減少に取り組むとともに、無断残業・休日出勤も禁止にしました。採用でのミスマッチを減らすとともに、働きやすい環境づくりに力を入れることで社員の離職を抑えています。


マニュアル整備により入社後のギャップを減少

某有名旅館では接客マニュアルを充実させ、採用面接時の説明に使用することで入社後のギャップを減少させ離職率軽減に成功しています。アルバイトやパートが多くOJTが困難な状況でも、接客マニュアルが充実していることで効率のいい人材育成が可能です。採用時にどのような仕事内容かを具体的に伝えることで、入社後にギャップを感じることが少なくなり定着率が向上につながっています。


教育体制強化による定着率向上

食品を取り扱う某ディスカウントストアチェーン店では、教育体制を強化することで従業員の定着率向上を実現しています。これまでの教育体制を見直し、マニュアルを使用して研修を行いました。マニュアルを使用したことで、教育内容の充実と研修期間の短縮につながっています。さらにマニュアルは通常業務での問題解決にも使用できるため、社員の困りごとや不安を日常的に解決できる仕組み作りにも貢献しています。


社内コミュニケーション活性化により離職率を軽減

某人材派遣会社では、社内コミュニケーションを活性化させることで離職率の軽減に成功しています。組織のビジョンを浸透させるための「バリューズアワード」を設定し、社員同士のコミュニケーションを活性化する仕組みを作りました。バリューズアワードには具体的な行動目標が定められており、実践している従業員に投票することで自身を振り返るきっかけとなっています。


また社長が全員分の日報に目を通す「全社日報」を取り入れ、社員と上司が良好な関係性を保てる環境を作り出しています。日報は直属の上司と社長だけが閲覧できるようになっているので、社員が悩みや不安を相談しやすい仕組みである点が特徴です。安心して業務に取り組める環境を作ることにつながり、大幅な離職率軽減につながっています。


福利厚生制度の見直しによる従業員満足度向上

某Web広告サービス会社では、社員が発案した福利厚生を採用する取り組みを行っています。社員の意見を取り入れることで安心感と満足感を得られ、離職率低下につながっています。具体的な内容は、以下のとおりです。


  • 軽食の無料配布
  • サッカー休暇(サッカー観戦のための休暇)
  • エンドレスサマー休暇(6~8月の間で連休を取得できる)


社員の満足度向上に貢献し、高い定着率を実現しています。


まとめ

離職率とは、ある一定期間内にどれだけの人が職場を辞めたかを割合で表した指標です。離職率が高ければ、無駄なコストの発生や既存社員の負担増加などさまざまなリスクが生じます。社員の離職の主な理由としては、労働条件への不満や人間関係のトラブルなどがあげられます。離職率が高い場合は、離職理由の聞き取りや待遇の改善など早急に適切な対応を講じることが重要です。


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