CoEとは?経営で注目される理由や役割、設置のメリット・デメリットを解説


CoEとは?経営で注目される理由や役割、設置のメリット・デメリットを解説

CoEとは、もともと大学改革の研究のために設置された拠点です。近年はビジネスの分野でもCoEが注目されており、特に企業経営を行ううえで重視されています。本記事では、CoEの意味や役割、企業がCoEを設置するメリットとデメリットなどを解説するため、自社の生産性を向上させたい人はぜひ参考にしてください。


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CoEとは?

CoEとは組織をまたぐ情報共有に役立つ拠点のことです。詳しい意味や誕生した経緯などを解説します。


CoE(センターオブエクセレンス)の意味

CoEはセンターオブエクセレンスの頭文字の略称で、中核的研究拠点という意味を持つ言葉です。具体的には、企業が組織を横断する大規模な取り組みを成功させるために、優秀な人材や優れたノウハウを駆使して組織化を図ることを指しています。また、研究拠点の意味として用いられるケースも少なくありません。


CoEは大学改革の研究拠点として生まれた

CoEは1950年代に米国のスタンフォード大学で生まれたとされています。当時、大学側は卒業生の多くが東海岸に流出していたことを危惧していました。そこで東海岸流出を防ぐ施策として、学内の敷地に研究拠点を設けたことがCoEの始まりです。CoEでは全米トップクラスの研究者を招き入れる他、テクノロジー系の企業や研究所の誘致に成功しました。


3ピラーモデルの構成要素として重視される

CoEは、ビジネス分野で重要視されている3ピラーモデルの構成要素のひとつです。3ピラーモデルは以下の3つの要素によって構成されています。


  • HRBP
  • SSC
  • CoE


HRBPとは、事業目標の達成のために戦略的な人材マネジメントを行うことです。SSCは、定型的な人事業務の集約と効率化を図るサービスやBPOの管理を指します。


分野別のCoE

CoEは分野ごとに意味や役割が異なる場合があります。


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文部科学省におけるCoE

CoEは、文部科学省において研究拠点形成費等補助金事業を指します。文部科学省では、2002年度から21世紀COEプログラムを開始しました。21世紀COEプログラムは、世界的な研究教育拠点を目指す国内の大学を支援する、補助金事業を意味します。日本学術振興会が設置した21世紀COEプログラムが審査を行い、補助金を交付する仕組みです。


現在は21世紀COEプログラムの基本的な考え方を継承した、グローバルCOEプログラムが実施されています。


※参考:21世紀COEプログラム|文部科学省

※参考:グローバルCOEプログラム|文部科学省


医療分野におけるCoE

医療分野におけるCoEの意味は、特定分野に特化した診察や治療、研究施設、研究部門です。CoEに該当する主な施設を以下にまとめました。


  • がんセンター
  • リンパ浮腫センター
  • 産科麻酔施設


CoEの役割は、症例数の分散化に対応することが挙げられます。より専門的なCoEを設置すれば、病院ごとに医療サービスの質がばらつくことを防ぐことが可能です。


IT分野におけるCoE

IT分野では、効率的なシステムの導入や運用を行う組織・部門のことをCoEと呼びます。CoEの主な役割は、進行中の複数のITプロジェクトをスムーズに進めることです。たとえば、横断的なプロジェクトでは、円滑なコミュニケーションや情報共有が難しいケースも少なくありません。CoEが関与した場合、このような課題解決を横断的に進められます。


人事におけるCoE

人事部門におけるCoEの意味は、人材採用や給与体系の構築、人材開発など、人事の専門家を集めて結成された組織です。CoEによって、経営的な視点で人事業務の効率化や、正しく機能しているかの見直しを行います。また、課題を共有したりアドバイスしたりすることで、サービスの品質向上や安定的な運用を図る効果も期待できるでしょう。


企業経営でCoEが注目される理由

CoEは企業経営においても注目されています。CoEが注目される理由も把握しておきましょう。


DX時代の企業経営にはCoEが重要

ビジネス環境は変化が激しく、より高度化・複雑化しているのが現状です。デジタル化の推進によってDXの重要性は高まっています。企業がDXに対応するには、蓄積した経営データの活用が不可欠です。しかし、部門や業務領域ごとに情報を管理することで、データ収集が難しいという問題が起きていました。その点、CoEであれば経営データを横断的に集約できる体制を整備できるため、部門ごとの情報の分散を防ぐことが可能です。


戦略人事におけるCoE

CoEは戦略人事でも優れた機能を発揮します。たとえば、人材戦略を策定し、組織力の強化を図ることも可能です。また、公正な評価制度やフィードバックシステムを導入することで、社員のパフォーマンスを向上させられます。労働法をはじめとする法律や企業ポリシーを遵守したうえで、リスク管理を行うのに効果的です。


DCoE・CCoE

CoEには、目的を特化させた概念としてDCoEとCCoEが存在します。DCoEとはデジタルセンターオブエクセレンスの略称で、DX化を目的にしたCoEのことです。一方のCCoEはクラウドセンターオブエクセレンスの略称で、クラウドの導入に特化したCoEを指します。


DX化やクラウドの導入には、企業全体を牽引する強いリーダーシップが必要です。DCoEとCCoEを設置することで、DX化やクラウド導入の推進力を高める狙いがあります。


CoEに求められる役割

CoEの主な役割は、社内データ・ナレッジの収集や企画・戦略の立案・推進などです。それぞれの役割を具体的に解説します。


社内データ・ナレッジの収集

CoEの役割は、社内データやナレッジを収集することです。収集したデータやナレッジは整理・分析が行われ、社内の課題を解決するために活用されます。たとえば、好事例をはじめとするベストプラクティスを全社から収集して整理すれば、社員がいつでも閲覧できるアーカイブとして用いることも可能です。


企画・戦略の立案・推進

CoEの役割のひとつは、企画・戦略の立案・推進です。企画や戦略の立案では経営発展につながるテーマを扱います。主なテーマは以下のとおりです。


  • 組織変革
  • 統廃合
  • 分社化
  • 子会社化
  • 販売網の強化
  • 関連企業との関係強化 など


課題解決の緊急性が高いものや効果が期待できるものなど、優先順位の高いものから取り組んでいきます。


業務プロセスの構築・改善

CoEは、各部門の業務プロセス改善の目的で設置するケースが少なくありません。各部門の業務を横断的に見直せる立場にあるため、業務の可視化や不要な業務の整理、マニュアルの整備などが可能です。業務プロセスの改善を図るなかで、必要に応じて業務プロセスを新たに構築する役割が求められることもあります。


モニタリング・アップデート

CoEの主な役割は、モニタリングやアップデートです。各部門をモニタリングすることで、成果を出している部門とそうでない部門の差を可視化できるうえに、成果を上げている部門の好事例を吸い上げて全社員に共有できます。また、CoEならではの組織全体を俯瞰的な視点で分析し、アップデートを重ねることも役割のひとつです。


教育・トレーニングのサポート

CoEは教育やトレーニングをサポートする役割が求められています。社内で新しい取り組みをスムーズに進めるためには、社員の教育やトレーニングが不可欠です。CoEが主導してサポートをすることで、滞りなく取り組みを進められます。具体的には研修や勉強会を開いたり、マニュアルを策定したりするなどの準備が必要です。


効果測定・フィードバック

CoEは導入した施策の効果を測定し、各部門に対してフィードバックを行う役割も担っています。施策ごとの好事例を蓄積するだけでは、組織全体に情報共有がなされません。CoEに全社から情報を集約できれば、各部門へフィードバックとして情報共有を行えます。また、アドバイスを通して業務の効率化や改善を図ることも可能となるでしょう。


ガバナンス・プロセスの整備

CoEの役割は自社のガバナンスやプロセスの整備です。具体的には業務が戦略や方針、ルールに基づいて運用できているかを確認します。間違った運用方法が行われていることが分かった場合に是正するのも、CoEの役割のひとつです。社員のリテラシー向上に努めることで、組織全体の効率性を高められます。


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社内イノベーションの促進

多くの企業は縦割り構造が一般的です。縦割り構造は特定の業務を部門ごとに分けて行うため、それぞれが専門性を高められるメリットがあるものの、視野が狭くなりやすい傾向があります。CoEの設置で組織を横断的に見られれば部門間の連携が取りやすくなり、イノベーションが促進しやすい環境を整備できるでしょう。


手引書の作成

CoEの主な役割は手引書を作成することです。手引書は、各部門が参考にできる内容を分かりやすく作成する必要があります。たとえば、社内で標準化されたプロセスや、好事例などを手引書にまとめることが重要です。各部門が活用できる手引書を共有することで、企業全体で一貫した施策を進めやすくなります。


CoEを設置するメリット

企業がCoEを設置すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。具体的には、情報共有の促進や社内の連携強化などが挙げられます。


情報共有が促進される

CoEを設置するメリットのひとつは、社内の情報共有を促進させられることです。CoEは収集した情報をそのまま各部門に共有するのではなく、取捨選択をしたうえで必要な情報をフィードバックできるため、スムーズな情報共有を進められるようになります。また、情報の連携方法の見直しを図ることで、円滑な情報連携も可能となるでしょう。


複雑な課題を解決できる

CoEを設置する主なメリットは、複雑な課題を迅速に解決できることです。従来は各部門がそれぞれの課題を自力で解決する必要があったため、複数の部門が関連する課題の解決に時間がかかっていました。CoEの設置によって横断的に情報を収集できれば、複数の部門にまたがる複雑な課題であっても早期解決を目指せます。


社内の連携が強化される

CoEの設置は業務連携を整理したうえで、社内の連携を強められる点もメリットといえるでしょう。CoEの介入は部門間の無駄な連携を省き、部門を横断したコミュニケーションを活性化させることで、必要な連携の強化に効果的です。また、ナレッジの共有や、各部門で共通するコストの一元化を進めるきっかけにもなります。


CoEを設置するデメリット

企業がCoEを設置した場合にデメリットが発生する恐れがあるため、注意が必要です。


特定の社員に負担が偏りやすい

CoEを設置するデメリットとして、特定の社員に負担や責任が偏ることが挙げられます。CoEの設置には、専門性の高い知識やスキルを持つ社員の存在が不可欠です。企業からの期待や責任は大きく、選出メンバーに対して過度な負担を与える恐れがあります。


また、専門知識やスキルを持つ特定の社員に依存しすぎると、欠勤や離職によってプロジェクトや企業全体に大きな影響を及ぼしかねません。


機能不全が悪影響を及ぼす

CoEが機能不全を起こした場合、企業全体に大きな影響が出るでしょう。CoEの機能不全によって企業全体の取り組みが滞れば、他部門との連携もスムーズに行えなくなる恐れがあります。業務が遅延したり品質が低下したりすることで、顧客や消費者の信頼を失いかねません。CoEの機能不全は迅速かつ柔軟な対応の妨げとなります。


CoE設置のポイント

CoEの設置をスムーズに進めるための主なポイントは、スキルマップ・キャリアマップの策定や教育方針の立案などです。以下で詳しく解説します。


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理想の人材を定義する

CoEを社内に設置する際のポイントは、組織に必要とされる理想の人物像を明確にすることです。CoEに求められる人材は各部門が求める人物像と大きく異なります。CoEを設置する際は現状と理想のギャップがどのくらいなのかを整理し、理想の人材を定義してから必要な人材を選出するようにしましょう。


スキルマップ・キャリアマップを策定する

スキルマップやキャリアマップを策定しておくことも、CoEを設置するポイントのひとつです。CoEの設置前に、不可欠なスキルと今後必要とされるスキルなどを整理しておくと、スムーズに進行できます。ただしCoEと各部門で必要なスキルは異なるため、作成したスキルマップやキャリアマップを定期的に振り返ることが重要です。


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教育方針を立案する

理想の人材を定義し、スキルマップ・キャリアマップを作成した後は、社内の教育方針を立案することをおすすめします。具体的には、理想の人材と現状のギャップを埋められる教育方針を考えることが必要です。習得すべきスキルの優先順位や、習得するまでの目標や期限も決めておくとよいでしょう。


CoEの主な組織構成モデル

CoEの組織構成モデルは大きく分けて、CoE集中型とハイブリッド型の2つがあります。CoE集中型とは、CoEを各部門から独立させた中央集中系の組織のことです。事業部門と別にCoEを設置するため、各部門への負担を軽減できます。一方のハイブリッド型とは、中央・事業部門のそれぞれにCoEを分散させて配置することです。


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まとめ

CoEの設置は、組織を横断した情報の共有や連携の強化に効果的といえるでしょう。企業におけるDX化やクラウドの導入など、企業経営にも有効であることから、CoEは多くの企業から注目されています。自社にCoEの設置を検討している場合は、タレントマネジメントシステムの導入がおすすめです。


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