健康経営のメリット・デメリット10選!効果的に推進するポイントも解説


健康経営のメリット・デメリット10選!効果的に推進するポイントも解説

健康経営に取り組むことで、さまざまなメリットが得られます。社員の健康を経営的な視点でとらえて戦略的に投資することで、生産性の向上や離職率の低下といった成果が期待できます。一方で導入にはコストや運用面での課題もあるため、デメリットも十分に理解した上で取り組むことが重要です。この記事では健康経営のメリットとデメリットを解説し、実際に取り組む際の参考にしてください。

健康経営とは?注目されている背景も解説

社員の健康を経営資源と捉え、企業価値の向上につなげる「健康経営」は多くの企業が注目する戦略の1つとなっています。少子高齢化や人材確保の難しさなどを背景に、企業の持続的成長を支える取り組みとして重要性が高まっています。この章では、健康経営の基本的な概念と注目されている背景を解説するので参考にしてください。


健康経営とは

健康経営は経済産業省においても定義されており、社員の健康管理を経営的視点で考えて戦略的に実践することで企業の業績向上が期待できるとしています。企業の目的や目標を達成するために、社員の健康管理をするといったものです。健康経営を推進することで、さまざまなメリットを得られるとして注目が高まっています。


健康経営とは、ロバート・ローゼン氏(アメリカの臨床心理学者)が提唱した「ヘルシーカンパニー」の概念に基づいたものです。ヘルシーカンパニーは社員の健康管理を企業が積極的に行うことで、生産性の向上につながり業績アップにつながるという考えです。


健康経営が注目されている背景

少子高齢化に伴う労働人口の減少により、社会全体において医療費は増大傾向にあります。そのため、国や会社の医療に関する経費を圧迫しています。このまま国民の医療費が増加し続けると、健康保険組合などの財政悪化を招きかねません。結果として健康保険料が上がり、企業負担が増加します。また労働力を確保するために、定年後の再雇用など従業員に長く働いてもらう動きがあります。


しかし年齢的にも健康状態に不安を抱える社員が多くなるため、生産性の低下や若い世代への負担増加など悪循環になる可能性が高いです。そこで社員の心身の健康に配慮する「健康経営」を導入することで、病気による欠勤やパフォーマンス低下を防ぐことを目指しています。企業だけの問題ではなく日本全体の課題として捉えられており、健康経営の取り組みは官民が一体となって推進すべきと考えられています。


健康経営のメリット7選

健康経営に取り組むことで、どのようなメリットが得られるのでしょうか。この章では、健康経営のメリットを解説します。


生産性や業績の向上

健康経営は社員の健康を適切に管理することで、労働生産性を向上させ業績アップを達成することが目的です。体調に不安を抱えたまま仕事を行うと、本来のパフォーマンスを発揮できず生産性の低下を招く場合があります。社員の健康を管理し、健康的に過ごせるようにすることで業務の効率化が可能です。また社員が健康的に働くことで社内が活気に溢れ、社内全体の雰囲気も良くなるでしょう。健康経営を推進することは社員の心身の健康維持・増進を図るだけでなく、職場全体の環境改善にも貢献します。


医療費の適正化

健康経営により社員の健康管理を早期から行うことで、医療費の適正化を図ることも可能です。健康管理をしていない場合、気がついたときには病気などが深刻化しているケースもあります。病気が進行すれば、医療費は多くかかってしまうでしょう。病気やケガで病院を受診する人が増えれば、国全体の医療費が増大するため社会保険料が上がる可能性があります。健康経営への取り組みは、将来的な医療費削減にもつながります。


ブランドイメージの向上

健康経営を実践することで、企業のイメージ向上が見込めます。「健康経営に取り組んでいる会社=ワークライフバランスに配慮している会社」というイメージを与えやすくなります。健康経営に取り組んでいることでホワイト企業のイメージもつきやすくブランド価値が向上するため、顧客獲得や採用面などで有利に働く場合もあるでしょう。特に健康経営銘柄や健康経営優良法人として発信することで、効果が期待できます。社員を大切にする企業として認知されれば、求職者に「魅力的な会社」として映るので採用活動の際に有利に働きます。


SDGsへの貢献

SDGsとは持続可能な開発目標を指し、世界的に取り組みが広がっています。SDGsには17の目標(ゴール)が設定されていますが、健康経営に取り組むことで以下の3つの達成につながります。それぞれの目標は以下のとおりです。


  • 目標3:すべての人に健康と福祉を
  • 目標5:ジェンダー平等の実現
  • 目標8:働きがいも経済成長も


SDGsの目標3の考えは、健康経営の目的と共通する部分があります。SDGsは世界的にも注目されている取り組みであり、対応していない企業は「イメージダウン」や「新市場への進出遅延」などさまざまなリスクを負う可能性があるでしょう。そのためSDGsに貢献できる健康経営は、今後の企業成長が期待できます。


株価に好影響を与える

健康経営調査の評価は、株価パフォーマンスに比例するという調査結果が出ています。つまり健康経営調査の結果が高ければ高いほど、低リスク高リターンを実現しているということです。健康経営により株価パフォーマンスが向上するということは、企業価値が向上しているということにつながるため経営にも良い影響を与えます。健康経営での取り組みが評価されると、投資家に「魅力的な企業」として認知してもらえます。


離職率の低下

健康状態の悪化によって、退職や休職を余儀なくされる社員もいるでしょう。健康問題での離職は突発的なことも多いため、急な人手不足を招く恐れがあります。健康経営の推進は、体調やメンタルヘルスなどのケアが適切に行えます。社員の健康管理を徹底し、身体や心の不調の早期発見が可能です。健康問題の発生を軽減と悪化を防ぐことで、離職率の低下にもつながるでしょう。


人材採用で有利になる

健康経営に取り組む企業は「社員を大切にしている」と求職者に認知してもらえます。健康経営への取り組みを積極的に行っている企業は就職希望者が増加しやすく、優秀な人材を採用できる可能性が高くなります。またSNSなどで健康経営の取り組みを発信することで、大学生である新卒や第二新卒などの若い求職者からも評価されることが期待できるでしょう。


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健康経営のデメリット

健康経営は社員の健康を企業の貴重な資産と捉え、積極的な投資を行う取り組みとして多くの企業に注目されています。生産性の向上や企業イメージの向上など多くのメリットが得られる一方で、見落とされやすいリスクや課題も存在します。この章では、健康経営のデメリットを解説するので導入する際の参考にしてみてください。


効果が見えにくい

健康経営の取り組みは数値化しにくいため、施策の効果や成果が見えにくいです。1つの指標として欠勤率や離職率の増減で評価することも可能ですが、結果がすべて健康経営の取り組みによるものとは考えにくいからです。特に短期間の結果では、単に時期的な問題や従業員個人の都合などが影響している可能性があります。そのため、取り組みに対する成果は年単位の長期的な視点で評価を行わなければならないことを理解しておきましょう。


データ収集に時間と労力がかかる

健康経営を行う際は、社員の健康チェックが欠かせません。すべての社員の健康状態を把握する必要があるため、データ収集にかかる時間と労力が膨大になります。社員の健康状態を把握するために実施される取り組みは、以下のようなものがあります。


  • 健康診断
  • 産業医との個別面談
  • ストレスチェック


すべての社員に実施し、その結果を収集・管理しなければならないため担当者の負担は大きいです。さらに就業時間内に実施する場合は、人員配置や業務の調整なども必要です。


従業員の負担となる場合がある

健康経営を推進するためには、社員の理解と協力が欠かせません。施策の内容によっては、社員に対して生活習慣の改善を求めることになります。健康管理を行ううえで生活習慣の見直しは重要なポイントですが、社員によっては取り組み自体を負担に感じる場合があります。まずは社員の理解を得られるよう、社内に健康経営に関するポスターを掲示するなど企業として目指す方向性を示すところからスタートすることが大切です。


健康経営における2つの認定制度

健康経営には「健康経営優良法人」と「健康経営銘柄」という2つの認定制度があります。この章では、それぞれの制度の詳細を解説します。


健康経営優良法人

健康経営優良法人とは「特に優良な健康経営を行っている企業」に対して与えられる称号です。健康経営に積極的に取り組む法人を「見える化」し、社員や金融機関などから「社員の健康管理を経営的視点で捉え、戦略的な取り組みを行う企業」として社会的な評価を受けられます。本制度においては、以下2つに分類して経営優良法人を認定しています。


  • 大規模法人部門
  • 中小規模法人部門


大規模企業と中小企業からそれぞれ上位500法人を認定し「大規模企業の場合はホワイト500」「中小企業はブライト500」として、ロゴマークの使用が可能です。


健康経営銘柄

健康経営銘柄とは、東京証券取引所における上場企業の中から「特に優れた健康経営の取り組みを行っている企業」として選定する制度です。東京証券取引所が経済産業省と共同で選定を行うことで、投資家に長期的な価値向上が見込める企業であると紹介されるため資本が集まりやすくなります。健康経営銘柄に選ばれる企業は「1業種1社」と決められており、社会的評価を得られるだけでなく健康経営のアンバサダー的役割も求められています。


健康経営優良法人に認定されるメリット3選

健康経営優良法人として認定されることで、数々のメリットが得られます。ここでは、健康経営優良法人のメリットを紹介します。


金利が優遇される

健康経営優良法人に認定されることで、金利優遇が受けられます。金利が優遇されるため、運転資金や資金調達などの選択肢が増える、より資金調達がしやすくなる点はメリットです。都道府県や金融機関などによって受けられる金利優遇は異なりますが、主に以下のとおりです。


  •  運転資金の貸付利率引き下げ
  • 特別利率、保証料率による融資
  • 銀行所定金利より引き下げての融資


金融機関においては健康経営の取り組みを審査し、評価に応じて融資条件を設定する融資メニューがあります。各銀行で健康経営をサポートする動きが顕著になっており、社員の健康に配慮する企業に対して「低金利・長期的」な融資を実施する傾向があります。


公共調達で加点を受けられる

健康経営優良法人に認定されると、公共調達の際に加点が受けられます。公共調達とは、政府がサービスや物品などを民間企業から仕入れることです。公共調達の際には入札参加資格がありますが、加点要素がある企業の方が有利だとされています。公共調達では国民から集められた税金が使われるため、社会的に認められた企業が望ましいと考えられています。将来性のある魅力ある企業として認められることにつながるため、公共調達の場でも有利に働く可能性が高いです。


保険料の割引を受けられる

保険会社の中には健康経営優良法人を対象として、各種保険料の割引を行っているケースがあります。保険料の割引の具体例は、以下のとおりです。


  • 社員に対する業務上の災害を補償する保険商品の保険料を5%割引
  • 3大疾病を保障する団体保険の保険料を2%割引
  • 団体保険契約を対象に主契約となる保険料を5%割引


健康経営優良法人に認定された企業に対し、保険料割引などの優遇制度を設ける保険会社が増えています。健康増進は個人だけの問題ではなく、社会的な課題でもあるため健康に配慮する企業を後押しする傾向は今後も加速すると考えられています。保険会社によって割引率や割引される保険商品は異なるため、確認してみるとよいでしょう。


健康経営を効果的に推進する3つのポイント

健康経営を効果的に推進するには、ポイントを押さえることが重要です。この章では、3つの推進ポイントを解説します。


経営陣が積極的に取り組む

健康経営を推進する際には、経営陣による積極的な取り組みが重要です。健康経営は、社長など経営のトップがすべての社員に対して「健康で長く働いてほしい」という思いを伝えることから始まります。そのためには経営陣が健康経営の知識を深め、健康的に働くことの重要性を正しく理解する必要があります。経営理念や経営方針として、社内外に発信することも意識しましょう。


また健康経営を進めるために、設備投資が必要な場合があります。その際、経営陣がコスト増加の妥当性を適切に判断できなければ健康経営が進みにくくなる可能性が高まります。経営陣によって積極的にメッセージを発信することで、健康管理に対する社員の関心も向上し「浸透しにくい」「定着しにくい」というデメリットの解消につながるでしょう。


健康経営の体制を作る

健康経営を効果的に実践するための体制作りを行いましょう。健康経営の取り組みをリードする、CEOやCHRO(最高人事責任者)、CHO(最高健康責任者)などを任命し、専門部門を設置すると効果的です。責任者と専門部門の設置により、健康経営実践の責任の所在が明確化します。


また、産業医や外部コンサルティング、システムを導入することもよい方法です。システム導入で健康状況データの一元化や見える化できるため、業務効率化や経費削減につながる可能性もあります。組織として取り組むことで、担当者の負担が増加するというデメリットの解消につながります。


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助成金を利用する

健康経営では、助成金が利用できるケースもあります。設備投資などにコストがかかる場合もあるため、助成金を利用できればコストがかかるというデメリットを解消できます。健康経営で利用できる助成金は以下のとおりです。


  • ストレスチェック助成金
  • 働き方改革推進支援助成金
  • 業務改善助成金
  • 職場定着支援助成金
  • 職場環境改善計画助成金
  • 心の健康づくり計画助成金
  • 治療と仕事の両立支援助成金
  • 受動喫煙防止対策助成金
  • 小規模事業場産業医活動助成金
  • 人材確保等支援助成金
  • 自治体ごとの助成金


設備投資や制度を利用する社員のための助成金となるので、健康経営での取り組み内容を具体化しておく必要があります。それぞれ助成対象や助成金の金額は異なるため、自社で利用可能かどうか確認してみるとよいでしょう。


健康経営のメリットを最大限に発揮するための目標設定

健康経営の取り組みを実際に企業価値や業績向上につなげていくためには、明確な目標設定が欠かせません。この章では、健康経営のメリットを最大限に引き出すために必要な目標設定の考え方を解説します。


ゴールの明確化

健康経営のゴールとは、成果のことです。自社が抱えている経営課題を解決した状態が、ゴールといえるでしょう。ゴールを明確にしなければ、どのような取り組みが適しているかわかりません。ゴールを明確にし、全社を挙げて取り組みましょう。ゴール設定の際には、以下のポイントを押さえて設定します。


  • 経営課題の解決につながる
  • 改善可能である
  • 数値評価が可能
  • 評価が簡単にできる


健康経営のゴール設定では、実現可能な目標を掲げることが大切です。また人事部門や経営企画部門だけで設定するのではなく、経営陣と意思疎通し認識を共有する必要があります。自社の課題を洗い出して達成したい目標を明確にし、全社的な取り組みとして認知されるよう心がけましょう。


定量的な目標設定

短期的な目標だけでなく、3年や5年など中長期的な定量的目標値も設定しておきましょう。定量的とは、数値や数量などで表せる目標値のことです。最終的な目標を達成するためには中長期的な数値目標を立て、ステップごとに目標値を設定すると効果的です。


目標を設定する際は健康診断やストレスチェックの結果を収集・分析し、数値化した目標を設定することが大切です。専門家や専門職の意見、見解なども考慮しながら目標値を設定しましょう。また健康経営は短期間では成果が見えにくいので、長期的に取り組む必要があります。


まとめ

健康経営とは企業の経営目標や目的を達成するために、社員の健康管理を徹底する取り組みです。健康経営により、生産性や業績向上などさまざまなメリットが得られます。効果的に推進するには経営陣が健康経営に関する知識を深め、社員の健康を守ることの重要性を理解することが大切です。また、健康経営推進のためのシステム導入やコンサルティングを受けることもおすすめです。


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