評価制度とは?作成する理由や人事考課との違いも解説
評価制度とは
評価制度とは、企業が社員のパフォーマンスや働き、社内への貢献度などを評価して待遇や人員配置に反映させる制度です。半年や1年など一定期間ごとに目標や基準と照らし合わせ、社員それぞれの仕事ぶりを総合的に評価します。
成果や結果を出している社員、成長がみられる社員に対して適切な処遇を与えることを目的としており、社員を平等に評価できるようになります。評価の結果は、社員の働く環境だけではなく企業の成長にも影響を与える可能性があるので、定期的に制度を見直し改善していくことが大切です。
評価制度を作成する理由
近年は、社員自身の今後の成長につなげてもらうため、評価制度を作成している企業が増えています。
これまで日本では企業の多くが終身雇用制度を採用していましたが、近年は不景気によって終身雇用制度の成立が難しくなり、個々の能力を重視する企業が増えてきました。そこで評価制度を活用することで、各社員のスキル・能力が客観的に把握できるようになります。また、努力した部分に対して適切な処遇を与えることで社員のモチベーション向上につながったり、今後のばすべき部分もわかるので、社員自身のキャリア形成に役立つでしょう。評価制度の活用によって結果的に、さらなる人材育成や企業成長が期待できます。
人事考課との違い
人事考課とは、社内で規定された基準に基づいて社員の実績や仕事のプロセスなどの評価を行うことを指し、給与や昇進などの判断に用いられます。人事評価は給与や昇進の面だけではなく、社員の育成やスキル・能力の開発などを目的としており、より広い範囲で評価を行います。
評価制度を作る際の3つの軸
能力評価
能力評価とは、業務を行ううえで必要なスキル・知識などの能力で評価する方法です。どのくらい能力を業務上で発揮できているかを評価するため、スキルや能力を持っているだけでは評価されないので注意が必要です。
具体的には、リーダーシップ性や業務遂行能力、問題解決能力などの能力で評価され、例えばサービス業の場合は商品に関する知識や接客スキルなどが該当します。評価基準は各企業や職種によっても異なり、定量化されているものではありません。そのため、基準が曖昧だと適切な評価が難しくなります。また、公正な評価を行うため、社員の等級にあわせて基準を設定しましょう。
業績(成果)評価
業績(成果)評価とは社員の貢献度や能力を評価する方法で、質的評価と量的評価によって評価を行います。質的評価では業務の質を評価し、量的評価では業務遂行速度を評価します。
具体的には業績(売上や契約数など)や目標達成率などが挙げられますが、数値化ができるため評価がしやすく、また評価される方から見ても正当な評価がされているか判断しやすいです。評価基準を明確にしておけば、社員のモチベーションアップにも役立ちます。業績(成果)評価は業績が数値化しやすい営業職でよく用いられていますが、その他の職種でも数値化が可能な項目を含めることで公平性のある評価がしやすくなります。
情意(行動)評価
情意(行動)評価とは「業務に対して積極的だったか」「周囲との協調性は保てているか」などの勤務態度を評価する方法です。能力が高くても勤務態度が悪いと職場の雰囲気が悪くなり、周囲の仕事に対する意欲や業務効率にも影響を与えます。そのため、企業の業績に直接関係がなくても情意評価はとても重要です。
情意評価は評価をする人の主観が入りやすく人事評価エラーが起こる可能性が高いため、公平性を保って評価ができるよう評価者側が注意をしたり、複数人の意見を参考にしながら判断をしたりすることが大切です。
【手法】評価制度の4つの作り方
コンピテンシー評価
「コンピテンシー(competency)」とは、「能力」や「適格性」という意味を持ちます。しかし人事評価では「職務や役割などの各分野において優秀な成果を発揮する社員の行動特性」を指します。いわゆる「仕事ができる社員」の行動パターンや思考法、特性、基礎能力などを分析・一般化して評価項目として用います。
MBO(目標管理制度)
「MBO(目標管理制度)」とは「Management by Objectives」の略称で、社員個人やグループごとに設定した目標に対し、一定期間でどれだけ達成できたかを評価する方法です。社員と組織の目標をリンクさせることによって、社員が仕事に対するやりがいを感じながら組織への貢献度を高めることができる評価手法のひとつです。目標は、社員自身で設定をします。高い評価をもらうためにあえて低い目標を設定する可能性があるので、注意が必要です。
360度評価
「360度評価」とは、対象となる社員に関わる人たちが評価に関わるという方法です。直属の上司はもちろん、先輩社員や同僚、部下など、多方面からの視点を持って評価することで、公平な評価を目指します。評価される社員にとっても、評価する側にとっても気づきが多く、個々の成長を促すことのできる評価方法のひとつです。
バリュー評価
バリュー評価とは、企業の価値観や行動指針をどのくらい理解して行動できているのかを評価する制度です。社員のスキルや業績だけではなく、企業への貢献度や行動を重視するのがバリュー評価の大きな特徴です。近年では年功序列制度や成果主義に代わり、バリュー評価を取り入れる企業が増えてきています。
【手順】評価制度の作り方7STEP
STEP1:現状の把握
評価制度を作るときは、最初に自社の現状を把握しましょう。自社の課題が何かを洗い出したり、経営理念を確認したりすることで、より自社に合った人事評価制度を策定することができます。リアルな声を聞くために実際に評価をしている人・評価を受ける人に話を聞いて、課題を把握するのも良いでしょう。
STEP2:目的の設定
評価制度を組み立てるにあたって最も大切なことが、「評価制度が何のためにあるのか」という目的を明確にすることです。目的を設定し、しっかりと周知することによって、社員自身も仕事をする上でどのように努力をするべきか方向性が明確になるからです。まずは、「どのような人材を育成していきたいのか」、「組織をどのように成長させたいのか」「経営目標を達成するためにはどのような組織体制が必要か」など、理想とする今後の事業展開を具体的にイメージしてみましょう。そのゴールに到達することこそが、その組織にとっての評価制度設定の目的となります。
STEP3:評価基準の作成
評価制度の目的が明確になったら、次はどのようにして評価をするのか基準を定めます。組織というのはさまざまな役職や等級によって構成されているため、それぞれの立場に対して何を求めているのか、どのような行動や成果を求めているのかを、具体的にできるだけ細かく基準を設定しましょう。また、評価基準は社員一人ひとりがきちんと理解できるように分かりやすい表現で言語化することが大切です。なお、評価基準として以下の3つの方法が使われる場合もあります。
STEP4:評価項目の作成
設定した評価基準をもとにして、具体的な評価項目を作成します。「能力」、「業績」、「熱意」といったざっくりした内容ではなく、「難しい案件に根気よく取り組む」、「部下に対してきめ細やかな指導ができる」など、より細かな評価項目を、役職や職種ごとに内容を変えて設定することが大切です。その際、組織で優秀とされている人材を意識し、その社員の働き方や考え方、仕事への取り組み方などを参考にして項目を設定するのも効果的でしょう。
STEP5:評価方法の決定
評価項目の作成をしたら、具体的にどのように評価をするのか評価方法を決めます。1~5やA~Eまでの5段階で評価をすることが多いですが、中心化傾向という人事評価エラーを防ぐために、1~4などの偶数段階で評価を実施する企業も増えています。評価方法とあわせて、評価点をどのように報酬や等級制度と連動させるのかも検討しましょう。
STEP6:運用方法の決定
評価制度の中身が決定したら、本格的な導入に向けてスケジュールを作成します。運用開始までに評価制度導入の目的や意図が社員に正しく伝わっていることも大切なポイントです。
一般的には、評価担当者は直属の上司が任命されることが多いです。公平性のある評価が必要となるため、私情や思い込みを挟まない評価ができる人でないといけません。必要に応じて、人事評価制度への理解を深める研修を実施しましょう。
STEP7:評価制度の振り返り
評価制度は、評価をしたらそこで終了ではありません。評価結果を基に適切なフィードバックをすることが大切です。フィードバックの際には結果へのプロセスだけではなく、改善点や期待している点など社員のモチベーションが上がる内容を伝えましょう。また、評価結果が社員の待遇に影響する場合は、説明責任が伴うので慎重に行う必要があります。
さらに、最初に作った評価制度が完璧とは限らないので、定期的に振り返って改善していくことが重要です。社員から評価に対する不満が出ていないか、公平な評価ができているかなどを基準にしながら、制度を振り返って見直しを行いましょう。
評価制度を作る際に決めておくべき3つのポイント
残業時間の評価
評価制度を作るときには、残業時間をどのように評価するか決めておきましょう。これまでの日本では、残業が多い=仕事への意欲が高いと良い評価をされることが多かったのですが、近年はこの考え方が変わってきています。働き方改革が推進されていることから、残業の長さではなく、成果を重視して評価をする企業が増えつつあります。
テレワークの評価
近年はさまざまな働き方が導入されているので、テレワークをしている社員への評価方法も決めておくことをおすすめします。テレワークをしているとどのように業務を進めているのかが分かりにくいため、MBO(目標管理制度)を導入している企業が増えています。しかし、MBOではプロセスを評価することができません。プロセスを評価しない場合、社員によっては不満を抱いてしまう可能性があるので、なるべく働きぶりが目に見えるようにして評価に組み入れる工夫が必要です。
情意(行動)評価の仕方
情意(行動)評価は、評価をする人の主観や思い込みが入り人事評価エラーが発生しやすいため、いくつかの項目を使って総合的に評価することをおすすめします。主な評価項目として、以下の5つがあります。
- 協調性:他の社員と協力して業務を行えるか
- 規律性:規則や指示を守れているか
- 積極性:チャレンジをしているか
- 責任制:責任を持って最後まで業務を行えるか
- 経営意識:経営に関わるという自覚や行動など
これらの評価項目を用いて総合的に評価を行い、人事評価エラーが発生しないよう工夫をすることが大切です。
評価制度を作る2つのメリット
公平な人事評価を実現できる
評価制度を作ることで、公平な人事評価の実現につながります。評価の基準が明確になっていれば評価をする人が迷いにくくなり、また公正で適切な判断が可能です。
人事評価をするときの基準は、大きく分けるとデータや数字で表せられる定量評価と、働きぶりなど数値化しにくい定性評価の2種類があります。評価制度では、この2種類の評価を取り入れて行うことが重要です。定性評価は数値化しにくいこともあり、評価をする人によって評価が分かれやすくなりますが、評価制度によって公平に評価できるようになります。
被評価者が納得感を得られる
評価制度は被評価者側にもメリットがあり、評価のプロセスが明確化・透明化されることで、被評価者が納得感を得られるようになります。基準が明確になることで、評価されるスキル・知識や企業が求めている人物像などが被評価者側でも把握できるようになります。
ただし、そのためには被評価者側が人事評価制度の内容を確認できるようにしなくてはいけません。評価制度の概要や評価基準などをマニュアルとしてまとめて、全社員が見れるようにしておきましょう。
評価制度を作る際の4つの注意点
社員にわかりやすい評価制度であることが大切
評価項目、評価基準などの評価方法や、評価対象となる期間、誰が評価をするのかなど、評価制度の具体的な内容や方法、また評価の具体的な根拠などを、社員一人ひとりが正しく理解していることが大切です。社員の理解度を深めるため、評価制度に関するマニュアルを作成するのもよいですが、内容が複雑すぎると目を通してもらえないので、なるべくシンプルに必要最低限の情報をまとめるようにしてください。
また、評価を伝えるだけではなく、社員が納得できる目標作りやフィードバックも重要なポイントです。評価者ごとに評価結果が異なると、不満を持つ社員が増えていきます。誰もが納得できる基準で適切な評価が行われるようにしましょう。
結果だけでなくプロセスも評価に含める
人事評価の基準を目標達成率や売り上げなど目に見える物だけで判断してしまうと、成果を数値化できない業務や部署で働く社員に不公平感が生じます。組織にはさまざまな立場、役職の社員がいますから、全ての社員が公正に評価されるよう、結果だけでなくプロセスも評価に含めることが大切です。
評価者の教育を行う
評価制度を作る際に、評価者側の教育も重要なポイントとなります。評価者は評価制度や基準を十分に理解をするだけではなく、以下のスキルを身につけることが必要です。
- 目標設定:社員それぞれのスキルに合った目標を設定するスキル
- 観察とコーチング:社員をしっかりと観察し意欲を引き出させるコミュニケーションスキル
- 客観的思考:固定概念や目立つ部分だけで判断しないスキル
必要に応じて評価者を対象としたトレーニングを実施し、必要なスキルを身につけてもらうようにしてください。
評価エラーを防ぐ
人事評価は、人間が行うため思い込みや先入観によって公平さが保たれない「評価エラー」が発生する可能性があります。例えば、以下のようなものが評価エラーに該当します。
- 中心化傾向
- ハロー効果
- 厳格化傾向
- 極端化傾向 など
これらのような評価エラーを防ぐためには、明確な基準の設定が必要です。また、複数の視点から社員を評価する「多面評価(360度評価)」を取り入れるのもおすすめです。
評価制度作り方のまとめ
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