【テンプレートあり】ジョブディスクリプションとは?記載項目や注意点を解説


【テンプレートあり】ジョブディスクリプションとは?記載項目や注意点を解説

ジョブディスクリプションとは、特定のポジションの業務内容を詳しく書き表した書類のことです。ジョブディスクリプションを作成することで、生産性の向上や人事評価の公平化などのメリットがあります。この記事では、ジョブディスクリプションの作り方やテンプレートを紹介します。ジョブディスクリプションの作成方法が分かる内容となっているので、ぜひ参考にしてみてください。

ジョブディスクリプション(職務記述諸)とは

ジョブディスクリプションとは「職務記述書」と訳される、人事関連の文書のひとつです。ある特定のポジションにおいて、担当する業務の内容が詳しく記載されています。ジョブディスクリプションの目的は、必要なスキルや出すべき成果などをポジションごとに明確化することです。


明確化されることによって、適切な人事配置や人材の採用、さらには成果に見合った待遇の決定などに役立ちます。ジョブディスクリプションに記載のある内容について詳しくは後述しますが、大まかには職務の内容はもちろん、責任や権限、勤務条件なども含まれます。


ジョブディスクリプションが日本で注目され始めた3つの背景

ジョブディスクリプションは、日本でも注目されつつある人事関連の文書です。この章では、ジョブディスクリプションが日本で注目され始めた背景について詳しく解説します。


ジョブ型雇用にシフトする企業が増加

日本では長らく「メンバーシップ型」と呼ばれる雇用制度が主流であり、社員は職務を限定されず、会社の一員としてさまざまな業務を担うスタイルが一般的でした。しかし少子高齢化の進行により労働人口が減少し、平均年齢が50歳を超える地域も増えるなど、社会構造が大きく変化しています。


多くの企業では従来の年功序列や終身雇用といった制度を維持することが難しくなっており、成果に基づいた公平な評価や柔軟な働き方が求められるようになってきました。このような背景を受けて「職務」を明確に定義し、内容に基づいて採用・配置・評価・報酬を行う「ジョブ型雇用」へとシフトする企業が増加しています。ジョブ型雇用の導入にあたっては、職務内容を具体的に記述した「ジョブディスクリプション」が不可欠であり、重要性が改めて注目されています。


海外の評価基準を導入する企業が増加

近年、日本では人口減少による人手不足が深刻化しており、外国人労働者の雇用が着実に増加しています。企業は国籍や文化の違いを受け入れ、多様な人材を活かす「ダイバーシティ(多様性)」への対応が求められています。


欧米や外資系企業では、従来から「ジョブディスクリプション(職務記述書)」を基盤としたジョブ型雇用が一般的です。日本企業においてもグローバルな人材と公平にコミュニケーションを取り、共通のルールで人事管理を行う必要性が高まっています。特に、海外に拠点を持つ日本企業では、現地法人との間で人事制度の整合性を保つために、ジョブディスクリプションを用いたジョブ型雇用を本社にも導入するケースが増加しています。


高度なIT技術職の需要が増加

日本企業では長年、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が重要課題とされてきました。現場では推進に必要なスキルや経験を持つ人材の不足により、十分に浸透していないのが実情です。スイスの国際経営開発研究所(IMD)が発表した「世界デジタル競争力ランキング2021」によると、日本は64カ国・地域中28位となり、過去最低を記録しました。国際的に見ても、日本のデジタル対応の遅れは明らかです。


こうした状況を受けて、多くの日本企業では高度なITスキルを持つ専門人材の確保と育成が喫緊の課題となっています。これらの職種は担当する業務やスキル要件が明確であるため、ジョブディスクリプションを活用した「ジョブ型雇用」との親和性が高く、導入・運用しやすい分野とされています。結果として高度IT人材の採用や配置などを明確化する手段として、ジョブディスクリプションの重要性が一層高まっています。


ジョブディスクリプションを導入する5つのメリット

ジョブディスクリプションを導入するメリットは、以下のようなものがあります。


  • 採用時のミスマッチ防止
  • 評価の公平感が生まれる
  • スペシャリスト(専門家)が採用しやすい
  • 業務内容の明確化による生産性向上
  • 社員のキャリア開発の支援につながる


この章では、ジョブディスクリプションを導入することで得られる具体的なメリットについ解説します。


採用時のミスマッチ防止

ジョブディスクリプションを導入することで、採用におけるミスマッチを防ぐ効果が期待できます。職務内容や求めるスキル・経験などの要件を事前に明確にしておくことで、企業側は採用基準をぶれずに保てます。また、求職者側も応募前に自身の業務イメージを持ちやすいです。


「思っていた仕事と違った」といった入社後のギャップを最小限に抑えることができ、社員のモチベーション低下や早期退職のリスクも軽減されます。特に即戦力人材の採用や専門職ポジションでは、職務の明確化が企業・求職者双方にとって大きなメリットとなるでしょう。


評価の公平感が生まれる

ジョブディスクリプションは担当業務の範囲や求められるスキルだけでなく、貢献度に見合った報酬や成果基準も明確に定義するものです。そのため社員ごとの目標達成度や職務への貢献度に基づいた評価が可能になり、評価に対する納得感や公平性が高まります。


定められた職務内容と成果基準に照らして評価を行うことで、上司の主観や曖昧な印象に左右されない客観的な人事評価が実現します。結果として評価を巡る不満や誤解を減らすことができ、社員のモチベーション維持にもつながるでしょう。また評価基準が明文化されていることで評価プロセス自体も効率化され、人事部門の業務負担の軽減にも貢献します。


スペシャリスト(専門家)が採用しやすい

近年、多種多様な業界で高度な専門性を持つ人材の確保が重要な経営課題となっています。専門性の高いスペシャリストの採用・育成を進めるうえで、ジョブディスクリプションの導入は有効です。ジョブディスクリプションによって職務内容や求められるスキルが明確になることで、求職者は自らの専門性がどのように活かされるかを判断しやすくなります。


また職務の難易度や市場価値に応じた適正な報酬を提示することができれば、スペシャリストのモチベーション向上や長期的な育成にもつながります。さらにジョブ型雇用を軸とした制度は、スキルや実績を重視する中途採用市場との親和性が高く、即戦力となる専門人材を確保するうえでも有利です。


業務内容の明確化による生産性向上

ジョブディスクリプション導入は、企業の生産性向上にも大きく寄与します。「誰がどの業務を担うのか」「どこまでが責任の範囲なのか」といった職務分担が明確になることで、社員は自身の役割に集中し、指針に沿って効率的に成果を出すことが可能です。


また職務内容や責任の所在が明示されていることで、企業側と社員との間に生まれがちな業務の認識のズレを防ぐことができ、無駄な調整や誤解によるトラブルも減少します。このようにジョブディスクリプションは職場全体の業務の透明性を高め、個々の社員が職務に集中できる環境を整えることで組織全体の生産性向上につながります。


社員のキャリア開発の支援につながる

ジョブディスクリプションには、各職務に必要とされるスキルや業務内容が具体的に記載されています。そのため、社員にとって自身のキャリアを考えるための有力な指針となります。職務要件が明確であることで、社員は「どのような能力を伸ばすべきか」「次に目指すべき職務は何か」といったキャリアパスを主体的に描きやすくなるでしょう。


また自己成長やスキルアップに向けた目標設定がしやすくなり、学ぶべき内容や経験すべき業務が明確になります。企業側にとっても、ジョブディスクリプションをもとに社員の能力や志向に応じた育成プランの策定がしやすくなり、キャリア開発支援や人材配置の戦略を立てるうえでの基盤となるでしょう。結果として、企業と社員が同じ方向を見ながら成長していく土台が整います。


ジョブディスクリプションを導入する3つのデメリット

ジョブディスクリプション導入は、業務の明確化や専門性の向上などのメリットがある一方で、組織運営や人材育成においていくつかの課題も生じます。特に職務範囲が厳密に定められることで柔軟な人事異動が難しくなり、社員のスキルの幅が限定される点は見逃せません。この章では、ジョブディスクリプション導入によって起こり得るデメリットについて解説します。


仕事内容に柔軟性がなくなる

ジョブディスクリプションを導入すると職務内容が詳細に定められるため、社員が記載された業務以外には積極的に関わらなくなる可能性があります。結果として一人ひとりの仕事内容に柔軟性が失われ、チーム内での臨機応変な対応や助け合いが難しくなる恐れがあります。


このようなデメリットを防ぐためにはジョブディスクリプションには必須の職務だけでなく、スキルアップや自己成長のための時間を確保する旨を明記し、必要に応じて他の業務への協力も求められることをあらかじめ共有しておくことが重要です。職務に関する項目以外も記載しておくことで、柔軟な業務運営と個人の成長の両立を図ることが可能です。


作成の負担が増える

ジョブディスクリプションの作成には、多くの工数と時間が必要となる点がデメリットとして挙げられます。職務内容や責任範囲を具体的かつ詳細に記載する必要があるため、準備や調整に手間がかかります。


日本の多くの企業では、これまで職務が明確に定義されていないケースも多いです。そのため現状の業務を整理しながら、正確なジョブディスクリプションを作成しなければなりません。ジョブディスクリプションを作成するためには、担当者や関係者の協力が不可欠であり、工数がかさんでしまいやすいです。


ジョブローテーションが難しい

ジョブディスクリプション導入は、ジョブローテーションを難しくする可能性があります。ジョブディスクリプションにより仕事内容が明確に定義され、社員は特定の専門分野に特化したスキルや知識の習得に集中することになるためスキルの幅が限定されやすいです。結果として、幅広い業務をこなせるゼネラリストの育成が困難になります。


また定められた職務範囲外での異動が難しくなり、異動や転勤が原則できないためポストに空きが出た際には新たな採用が必要になるケースも増えます。さらにジョブ型雇用のもとでは専門性の追求に重点が置かれるため、ジョブローテーションの概念自体が存在しません。このことからチーム内での仕事の柔軟な分担や連携が薄れ、業務の一部が放置されるリスクもあります。


ジョブディスクリプションを活用できるシーンとは

ジョブディスクリプションをもっとも活用できるシーンは、マネージャー層の抜擢や育成を行う場面です。職務が定義されていることで、社員もマネージャーも自身に求められているミッションを具体的に理解し、自分のキャリア形成について目標を立てて考えることができます。


ジョブ型人事制度を提案するときの資料として

ジョブディスクリプションは、社内でジョブ型雇用制度について議論する際にも役立ちます。今後どのような人材で仕事を進めるべきかを示す、雇用制度の転換を検討している会社にとって重要な資料になるのです。


求人票を作成するとき

ジョブディスクリプションは、特に中途採用の求人票を作成するときに役立ちます。職務内容が整理されているため、より内容の濃い求人票を作成しやすく、ミスマッチの防止にもつながるでしょう。日本でも例えばアルバイト、パート社員は、すでにジョブディスクリプションを導入している人事制度といえます。


職務を整理するとき

業務を棚卸しする際にジョブディスクリプションを活用すれば、不要な業務を省略できる可能性があります。効率のよい仕事のためには、定期的に整理を行うのがおすすめです。


ジョブディスクリプションの作り方を紹介

では具体的に、ジョブディスクリプションをどのように作るのか、作り方を紹介します。


手順1:情報収集

まずは各職務に関する情報を収集します。例えば職務の等級、職務内容、必要とされる知識・スキル、権限などです。


企業が求めるものと、現場での認識との間でギャップを最小限にとどめるため、現場のヒアリングも実施しましょう。


手順2:情報の精査

収集した情報をマネージャー、人事担当者などで精査し、業務内容を決定します。必要に応じて、対象となる職務の担当者や専門家にアドバイスを求めることもできます。


手順3:ジョブディスクリプションの作成

情報がまとまったら、実際に書類として作成します。A4サイズ1枚程度に収まる量を目安として、テンプレートに沿って項目を埋めていく方法が一般的です。さらに、「ビジネスを取り巻く状況の変化に応じて変更が生じる可能性がある」と但し書きを入れておくと安心でしょう。


ジョブディスクリプションのテンプレート

ジョブディスクリプションのテンプレートの一例をご紹介します。記入項目は以下のとおりです。

項目

記入例

職種名

仕事の職種名を記載

職種のグレード

グレードに対して必要とする要件を記載

職務概要

職務の全体像をまとめて記載

具体的な職務内容

具体的な仕事内容について、複数段落を用いて説明

期待されるミッション

できるだけミッションを定量的に記載

組織との関わり方

業務フローや関連部署と関わりを記載

責任・権限に関する補足

責任と権限の範囲を記載

勤務条件

雇用形態、勤務時間、時間外手当の有無などを記載

必要なスキル・資格

必要な資格、専門的な知識やスキル、学歴を記載

各項目の内容について、詳細は以下で解説します。


ジョブディスクリプションに記載すべき項目

では、ジョブディスクリプションに記載すべき項目について解説します。テンプレートの内容をそれぞれ掘り下げてみましょう。


職種の基礎情報(職種名、等級)

まず、職種の基礎情報について記載が必要です。

 

職種名は、例えば「営業」や「総務」といったかたちで記載します。社内でさらに詳しい分類がある場合は、現状に応じて記載内容をアレンジしましょう。

 

また等級については、「一般」「初級管理職」などの記載方法があります。能力、役割などをもとに5段階程度に分けるのが理想的ですが、これも社内の人事制度にあわせて段階を決定してください。


職務の概要・内容

具体的な職務の概要や、内容について記入する欄です。

 

まずは職務の全体像がわかるよう、ポジションの目的、担当する仕事内容など、概要をまとめて記入するとよいでしょう。さらに職務内容をリアルにイメージできるよう、具体的に箇条書きで記載します。

 

このとき記入された内容を理解しやすいように重要度や優先度、頻度の高い職務内容を上位に記載することが大切です。


期待されるミッション

期待されるミッションとは、例えば売上件数や金額などを示しています。この内容は数値化するなどして、できるだけ具体的に記載するのがおすすめです。


組織との関わり方

組織との関わり方は、そのポジションの人がどのように組織のフローに関わるのか、関連するチーム名があるかどうか、といったことについて記載します。

 

中途採用の求人などを行う場合、組織との関わり方があらかじめ理解できることで、応募者とのミスマッチの可能性を減らせます。


責任・権限に関する補足

責任・権限に関する補足の欄には、そのポジションの人が持つ権限、責任の範囲を記載します。社内外で権限に違いがある場合は、その旨も明記するようにしましょう。

 

直属の上司や部下について、役職や人数を記入しておくと、さらにスムーズです。


勤務条件

勤務条件とは、雇用形態、勤務時間、時間外手当支給の有無、勤務地等のことを示しています。

 

この欄に記入することは、従来、求人票などに記入されていたことと同じです。


必要なスキル・資格など

必要なスキルや資格などの欄には、そのポジションで必要な知識やスキル、学歴などを記載しましょう。

 

これらの他に、待遇や福利厚生について記載することも重要です。スキルや資格に応じて何らかの諸手当があるようならば、あわせて記入しましょう。


ジョブディスクリプション作成における3つの注意点

ジョブディスクリプションは、記入に穴があると企業の運営に支障を来すこともあります。ジョブディスクリプションを作成するときの注意点を確認しましょう。


業務内容はしっかり柔軟性を持たせる

まず初期の段階で、業務内容を網羅したジョブディスクリプションを作成しないと、誰も担当していない業務が出てくる可能性があります。穴があると生産性が低下する恐れもあり、注意したいところです。

 

一方で、業務内容を詳細に定義しすぎると、すぐに形骸化する恐れが出てきます。そうならないためには、業務のゴールをきちんと設定し、それまでのやり方に柔軟性をもたせるべきです。適切な柔軟性があれば、的確に業務目的を遂行できるでしょう。


見直しを定期的に行う

経営状況などの変化で、職務に求められるスキルが変わってくる可能性は十分にあります。ジョブディスクリプションと現場状況の乖離は、チームワークが発揮できなくなる、社員のモチベーションが下がる等、生産性の低下につながるものです。実際の業務内容とジョブディスクリプションとの間にズレが生じないよう、定期的に見直す必要があります。


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現場と業務の乖離をなくす

ジョブディスクリプション作成においては、現場の実態と乖離しないことが重要です。実際の業務内容と異なる記述があると求職者との期待値のズレが生じ、早期退職や職場環境への悪影響を招く恐れがあります。また生産性向上や効果的な人材マネジメントの妨げにもなるため、現場への丁寧なヒアリングを通じて正確な業務内容を把握することが欠かせません。このように現場と業務内容の乖離をなくすことで、より現実的で実践的なジョブディスクリプションの作成が可能となります。


まとめ

ジョブディスクリプションは、仕事内容を明確に定義し、スムーズな人事や評価・採用に役立てるものとして、注目度が上がっています。ただし作成にあたっては、職務内容の洗い出しから定期的な見直しまで、手間のかかる部分も多いといえるでしょう。

 

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