人材マネジメントに役立つフレームワーク8選|人材マネジメントの基本概念や必要性、導入手順も解説


人材マネジメントに役立つフレームワーク8選|人材マネジメントの基本概念や必要性、導入手順も解説

こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。


「自社の人材リソースを有効に活用できるように改善したい」「人材リソースを有効活用し、事業発展へつなげたい」という方は多いのではないでしょうか。


少子高齢化の影響により優秀な人材を確保するのが困難になり、既存社員のポテンシャルに期待する状態が続いています。人材を採用できたとしても早期離職の可能性があり、自社の発展につながらないことも課題のひとつです。経営目標の達成には、既存社員をマネジメントし、パフォーマンスアップを目指すことが重要です。


この記事では、人材リソースの活用方法について解説します。既存社員を適切にマネジメントし、事業を発展させたい方は、ぜひ最後までお読みください。


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人的資本経営時代の人材マネジメント戦略


人材マネジメントとは

人材マネジメントとは、企業の経営戦略や目標の実現、競争力の維持・強化を目的に、人材を戦略的かつ有効に活用する仕組みです。評価制度や報酬制度、等級制度などの整備や教育訓練の充実により、個々の能力を最大限に引き出し、働く意欲を高めます。

また、採用・異動・退職といった人材の流れを適切に管理して、組織全体のパフォーマンス向上を目指します。 

人材マネジメントと似ている用語との違い

人材の活用・管理においては、さまざまな用語や概念があります。ここでは、人材マネジメントと混同しやすい用語について解説します。
 

人的資源管理

人的資源管理は、社員の経験や知識を、企業の経営戦略や目標の達成に向けて活用するための取り組みです。人材マネジメントには、人的資源管理の考え方に「人を単なるコストではなく、成長可能な資源である」という視点が加えられています。育成を通じて価値を高めることを重視し、より戦略的な活用を目的としているのが人材マネジメントです。 


人事労務管理

人事労務管理は、採用・配置・評価・賃金などの業務を担う「人事管理」と、福利厚生・労使関係などの「労務管理」で構成されています。人事労務管理においては、労働に関する制度や業務の管理に重きが置かれています。一方で人材マネジメントは、企業の目標達成に向けて個々の能力を戦略的に引き出すという、経営的な視点とアプローチを重視する取り組みです。


人材マネジメントの必要性が高まっている背景

企業が人材マネジメントを実施するのは、どのような理由からでしょうか。企業を取り巻く背景について解説します。

企業が人材不足に陥っている

近年の日本では、少子高齢化の進行により生産年齢人口が減少し、多くの企業が深刻な人材不足に直面しています

内閣府が公表した「令和4年版高齢社会白書」によると、総人口に占める65歳以上人口の割合(高齢化率)は、令和3年は28.9%と30年間で2倍以上になりました。高齢化率は、令和18年に33.3%、令和47年には38.4%に達するとみられています。一方、平成7年から減少し続けている、15歳~64歳人口の割合は令和3年が59.4%で、今後も減少し続けるでしょう。

企業の競争力・生産性向上のためには、限られた人材を有効活用しなければなりません。
人材マネジメントは、必要とする人材の採用や適切な配置、育成によって、個々の能力を最大限に引き出すことを目的としています。企業や組織のパフォーマンス向上のために、人材マネジメントは不可欠といえるでしょう。 

参照:令和4年版高齢社会白書(全体版)|内閣府

働き方が多様化している

働き方改革の推進や、働き方に対する価値観の変化により、時間や場所に縛られず柔軟な労働環境を望む人が増えています。リモートワークやフレックスタイム制などを取り入れつつ、生産性を向上させる仕組みを構築しなければなりません。

個々の能力やスキルを最大限に引き出すことを目的とする人材マネジメントは、多様な働き方に対応するために必要な取り組みといえます。

必要とされる人材像が変化している

DX化が進むなか、データを活用して迅速かつ適切な判断を下せる人材が求められています。技術面だけではなく、大きく変化し続ける環境への適応力も欠かせません。


企業においては、ITやDX関連の人材の育成や評価制度の見直しも必要です。求める人材像が変化したことで、従来にはなかった制度や取り組みが求められるため、人材マネジメントの重要性が高まっています。


人材マネジメントの対象となる6つの要素

人材に関わるさまざまな分野において、管理や最適化をするのが人材マネジメントです。ここでは、人材マネジメントを構成する6つの要素について解説します。

採用

採用とは、新たな人材を雇うことを指します。企業の経営戦略と目標達成のために必要な人材の確保を目的としています。実際の採用活動を始める前に、どのような人材を採用すべきであるかを明確にしましょう。そのために、自社に不足している能力や経験を洗い出して「求める人材像」を定義します。

定義付けにおいては、能力や経験だけではなく、企業理念や価値観への共感性も重要です。

教育・育成

経営目標を達成するためには、社員に新たな知識やスキルを継続的に習得させて、個々のパフォーマンスを高める必要があります。社員の段階に応じて、以下のような内容を学ばせることでスキルアップを図りましょう。

新入社員:基礎知識やビジネスマナー、理念やビジョンの共有
中堅社員:専門性の強化、資格取得
管理職:リーダーシップ、コーチング

手法としては、座学やeラーニングのほか、OJTなどがあります。

評価

人材マネジメントにおいては、成果や貢献度にもとづいて適切に評価し、報酬や処遇に反映させることが重要です。ただし、社員が納得できる評価でなければ、モチベーションが下がり、生産性が低下する可能性があります。適正に評価するには、明確な基準を設定して社員に共有するのが効果的です。評価だけではなく、項目ごとの達成度を共有すれば、より納得感が高まるでしょう。 

評価基準を設けると、未達成の項目も確認できることから、業務を遂行する際の目標を設定しやすくなります。目標の明確化によりモチベーションを保ちやすくなり、目標達成を目指して生産性の向上も見込めるため、組織力の強化も期待できるでしょう。

報酬・処遇

人材マネジメントにおける報酬には、給与やインセンティブ、福利厚生などが含まれます。魅力ある報酬制度は、社員のモチベーションを引き出し、能力を最大限に発揮させる効果があります。また、エンゲージメントも向上し、定着率アップにつながるでしょう。

報酬を決めるうえで重要なのは、成果と報酬を結びつける明確な仕組みづくりです。「頑張りが正当かつ公平に評価されている」と社員が実感できる報酬制度を整えましょう。

配置・異動

社員の適性やスキルに応じた配置や異動は、人材マネジメントの重要な要素です。適切な配置は、社員の能力を最大限に引き出し、業務効率や生産性の向上につながります。逆に、現在の部署や職種が合っていない場合には、異動によって適切な配置を実現させましょう。異動によって新たな挑戦の機会が生まれ、社員の成長が促されます。

配置と異動を管理することで適材適所が実現し、社員と組織の双方にメリットがもたらされるでしょう。 

休職・退職

出産・育児・介護・病気などで休職する社員が安心して働けるように、明確な休職制度と柔軟な復職支援体制を整えます。休職においては、休暇の取得期間、休職中の待遇や保険関係を定めなければなりません。復職時には、業務の調整、フォローアップ面談などを実施して、スムーズな職場復帰を図ります。

社員のライフステージに応じたサポート体制を整えることで職場への信頼感が高まり、人材定着にもつながります。 

人材マネジメントにおいて必須となる4つのマネジメント手法

人的リソースを有効活用するには、社員をマネジメントする必要があります。ここでは、4種類のマネジメント方法について解説します。


  • タレントマネジメント
  • ストレスマネジメント
  • パフォーマンスマネジメント
  • スキルマネジメント


適切なマネジメントにより、社員のモチベーションアップと生産性向上が期待できます。ぜひ参考にしてください。


タレントマネジメント

タレントマネジメントは、社員の適性に合った役割を振り分け、才能を最大限に引き出すのが目的です。成功させるには、社員のスキルや得意分野を分析することが重要です。社員の適性を把握すると、適切な人材配置ができるようになります。結果として、社員の満足度が高まるだけではなく、生産性向上も期待できるでしょう。

また、タレントマネジメントは採用活動にも活かせます。求職者の人柄やスキルを分析したうえで採用すれば、自社に適した人材を確保できます。入社後のミスマッチ防止にもなるため、採用・教育コストの削減にもつながるでしょう。

近年は、タレントマネジメントシステムが普及したため、システム上で社員情報を一括管理ができます。弊社では、社員情報を管理するだけではなく、分析も可能な「タレントパレット」を提供しています。人事業務の効率化が図れるので、ぜひお気軽にお問い合せください。

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ストレスマネジメント

ストレスマネジメントは、社員が抱えている仕事や人間関係の不満へ適切にアプローチし、ストレスの軽減・解消を図ります。ストレスへの耐性や感じるタイミングは、人によって異なります。また、ストレスがどの程度まで蓄積されているかを、客観的に把握するのは容易ではありません。ストレスを解消できずにいると、社員のパフォーマンスは低下してしまいます。

社員の不満を解消するだけではなく、業務品質を向上させるためにも、ストレスマネジメントが必要です。ストレスマネジメントとして、社員が自身の気持ちを伝える機会を設けましょう。たとえば、不満などを匿名で報告できる窓口を社内に設置すると、社員が安心して相談できます。

ただし、問題を根本的に解決するには、ストレスを感じている社員を、経営者や人事担当者が早期に把握することが重要です。業務内容や部署内の人間関係が、ストレスの原因である場合には、社員を異動させることでストレスが解消する可能性があります。

システムを導入し、関係者に知られないように相談できる体制を整えるなど、社員がストレスを抱えにくい環境を構築しましょう。

パフォーマンスマネジメント

パフォーマンスマネジメントでは、社員の業務品質や効率の向上を目指します。取り組むことで社員の生産性が高まり、業績アップにもつながります。パフォーマンスの向上を目指すためには、精度の高いフィードバックを提供できる体制づくりが欠かせません。

社員は、上司から評価される機会が多いでしょう。上司が的外れなフィードバックをすると、社員のパフォーマンスは向上しません。また、不満が蓄積して信頼関係が築けないリスクもあります。そのため、上司として評価する立場にある社員は、フィードバックの精度を高める必要があります。

経験や勘に頼るのではなく、社員の保有スキルや性格などを考慮した上で、納得してもらえる評価をすることが重要です。社員の業務品質を客観的に判断し、改善された点には良い評価を与え、今後の課題も共有しましょう。適切な難易度の課題を与えれば、それが目標となり、社員のパフォーマンス向上が期待できます。

スキルマネジメント

スキルマネジメントとは、教育や研修により、社員の能力を高める取り組みです。実行する際は、各社員の得意分野だけではなく、苦手分野も明確にしましょう。苦手分野の業務にあたっていると、スキルの習得に時間がかかるためです。適性のある部署があるなら、スキルの習得を促すよりも異動させる方が、社員のパフォーマンスを発揮できる可能性があります。

社員の得意・不得意を把握するには、スキルの種類を知っておきましょう。スキルは、以下の2つに分類できます。

  • ハードスキル
  • ソフトスキル


ハードスキルとは、語学やプログラミングのような、測定しやすいスキルのことです。一方で、ソフトスキルはコミュニケーション能力や問題解決力などが該当し、客観的な評価が難しいのが特徴です。スキルマネジメントの際は、スキルを細分化し、社員の適性を判断しましょう。

弊社が提供しているタレントパレットなら、チェックシートに回答してもらうだけで、社員全員のスキルを可視化できます。また、スキルに関するデータを蓄積できるので、研修制度の構築にも役立ちます。ぜひ、お気軽にお問い合せください。

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人材マネジメントに役立つフレームワーク8選

人材マネジメントの取り組みをスムーズに進めるためには、フレームワークの活用がおすすめです。以下で主なフレームワークについて解説します。

ロジックツリー

ロジックツリーは、課題を分解して書き出すことで可視化するフレームワークです。複雑であったり漠然としていたりする課題を整理して原因を特定し、解決策を導き出します。複数の要素に優先順位をつけやすくなることから、効率よくアクションを起こせるでしょう。また、解決までのプロセスも可視化できるため、納得感が得られやすいというメリットもあります。

SWOT分析

SWOT分析は、自社の現状把握や課題分析に役立つフレームワークです。「Strength(強み)」「Weakness(弱み)」「Opportunity(機会)」「Threat(脅威)」の頭文字から名付けられました。内的要因として強みと弱みを、外的要因として機会と脅威を整理・分析する手法です。人材マネジメントにおいては、社員の育成状況や課題の把握・分析に活用します。

プラス要因 マイナス要因
内部環境 Strength(強み) Weakness(弱み)
外部環境 Opportunity(機会) Threat(脅威)

TOWS分析(クロスSWOT分析)

TOWS分析は、課題解決の方法や目標達成の施策を導き出すフレームワークです。SWOT分析の4要素を掛け合わせて分析することから、「クロスSWOT分析」とも呼ばれています。SWOT分析で「強み・弱み・機会・脅威」を洗い出した後に、TOWS分析において4要素を掛け合わせ、具体的な行動計画や施策を検討します

  強み     弱み  
 機会  強み×機会 弱み×機会
 脅威  強み×脅威 弱み×脅威

MVV

MVVとは「Mission」「Vision」「Value」の頭文字で、企業の経営戦略の策定に活用されるフレームワークです。 「ミッション=使命」「ビジョン=将来像」「バリュー=価値観」を言語化し、企業の方向性や価値観を社員に示します。社員が会社の使命や理念、行動指針を共有することで、組織に一体感が生まれ、人材マネジメントの円滑な運用につながります。

PPM分析

PPM(Product Portfolio Management)分析は、自社の経営資源の配分を最適化するためのフレームワークです。「市場成長率」と「市場占有率」の2つの軸のなかで、事業や製品・サービスを分類し、経営資源の配分を決定します。分類のカテゴリは、以下の4つです。

花形(Star):利益を出しやすいが、市場成長率が高く競争が激しい分野
金のなる木(Cash Cow):利益は安定しており、競争が低く穏やかな分野
問題児(Problem Child):投資で成長する可能性があるものの、リスクを伴う分野
負け犬(Dog):事業の成長や利益が見込めない分野

PPM分析の考え方を人材マネジメントに応用すると、社員のスキルや経験に基づいた適材適所の配置がしやすくなります。

PEST分析

PEST分析は、企業が直面する外部環境への戦略を策定するためのフレームワークです。政治(Politics)、経済(Economy)、社会(Society)、技術(Technology)の4つの視点から、外部環境の変化が企業に与える影響を予測・分析します。人材マネジメントにおいて、長期的な人材戦略を立てるためには、外部環境への考慮が欠かせません。社会のさまざまな変化に応じて、採用や育成方針を立てるために活用されます。

人材ポートフォリオ

人材ポートフォリオとは、経営戦略と連動して「いつ」「どの分野で」「どのような人材が」必要であるかを可視化するフレームワークです。自社の人材構成と、将来的に必要となる人材とのギャップを把握できるというメリットがあります。

社内の人材構成の可視化は、採用計画や教育体制づくり、人材配置の最適化、評価制度の構築など、戦略的な人材マネジメントに役立ちます。

ビジネスロードマップ

ビジネスロードマップとは、目標達成に必要なタスクや工程を整理するフレームワークです。目標を達成するために実行すべきことや中間目標など、ゴールまでの道のりや計画を時系列に可視化します。想定される課題やリスクも事前に洗い出しておくことで、トラブルが発生した場合にも柔軟かつ迅速に対応できます。


人材マネジメント導入の流れ

人材マネジメントはどのようにして進めるのでしょうか。ここでは人材マネジメントを取り入れる際の流れについて解説します。

1.課題を明確にする

人材マネジメントの実施においては、課題の明確化から着手します。目指しているゴールと現状とのギャップを可視化して、課題を把握しましょう。 優先して取り組むべき課題が明確になったら、人材の構成や能力などを多面的に分析し、対策を検討します。課題を明確にするプロセスを通じて、人材マネジメントの方向性も具体化されて、実効性が高まります。

2.必要とする人材像を決める

組織の課題が明確になったら、解決に向けて必要な人材像を設定しましょう。併せて、既存の社員のスキルや経験を可視化する必要もあります。人材像に合う社員が自社内にいる場合には、配置転換や教育を実施します。

ふさわしい人材がいないのであれば、新たな人材の採用も検討しなければなりません。その際には、スキルや経験に加え、自社の理念を理解している人材を選ぶことも重要です。

3.計画を立てて実行する

課題の解決に向けて、具体的な施策を立案し、実行へと進みます。時間軸に沿って優先順位を整理したうえで、目標や計画を立てたり、人材の配置や予算などを決めたりしましょう
人材マネジメントにおいては、さまざまな要素を考慮しながら、細かく計画を立てることが重要です。計画が整ったら社内に共有し、進捗を確認しながら実行しましょう。 

4.効果検証と改善をする

計画に基づいて施策を実行したら、定期的に効果検証と評価をします。評価には数値化したデータを活用すると、施策の有効性を確認できます。改善すべき点も明確になるため、未解決の課題を特定して、計画の修正や新たな施策の立案をしましょう。 このような取り組みを継続することで、人材マネジメントの効果を高められます。


まとめ

少子高齢化の影響を受けて、人手不足に陥る企業が増えています。経営目標を達成するには、既存社員のパフォーマンス向上を促す取り組みが必要です。人材マネジメントを実施して、教育や評価の制度などを最適化することで、社員のスキルアップやモチベーションの向上が期待できます。結果として社員の生産性が高まり、経営目標を達成しやすくなるでしょう。


教育や評価を最適化するには、社員の特性や保有スキルなどの把握が重要です。弊社が提供しているタレントパレットは、社員のスキルのデータ化や一括管理が可能です。また、人材の情報をまとめるだけではなく、分析もできるので、社員の生産性を高める取り組みを実行しやすくなります。ぜひ、無料資料をダウンロードしてください。


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