研修管理はエクセルでも可能｜LMSの機能や導入メリットも解説

2025.06.10

研修の成果を出すために職場で初めて研修管理を導入する際は、効率よく正確にできる管理方法を検討するでしょう。本記事では、研修管理に関する情報収集をしている人に向けて、エクセルで研修管理をする方法やその課題などを解説します。また、研修管理システムを導入するメリットや選び方についても解説するため、ぜひ参考にしてください。

人材育成に役立つシステムの詳しい情報

人材育成に活用できるスキルマップの作り方

研修管理に関する基礎知識

まずは、初めて職場で研修管理をする人のために、研修管理の基礎知識を解説します。

研修管理とは

研修管理とは、社員が受講する研修の内容や進捗状況がどのようになっているかを一元管理し、把握することです。研修管理の目的には、社員のスキルアップやキャリア開発のサポート、企業の生産性向上、コンプライアンス遵守の意識付けなどがあります。

研修管理は、社員それぞれの能力や価値を最大限に引き出すだけでなく、企業の利益の底上げにもつながる重要な業務です。

研修管理の業務内容

研修管理と一言でいってもその業務内容は多岐にわたり、たとえば、研修の実施や提出物の管理、受講状況の管理、研修の効果測定が挙げられます。それぞれのおもな業務内容は、以下のとおりです。

研修の実施：社内研修、社外研修、eラーニングでの学習などを企画、実施する
提出物の管理：受講者が研修で課されるレポートや資料作成など課題の提出状況を管理する
受講状況の管理：社員それぞれの受講状況を管理する。研修を欠席している社員や遅刻・途中退出が多い社員がいれば注意喚起を行うなど、研修への積極的参加を促す
研修の効果測定：研修によって得られた成果、身についたスキルなどをチェックする。結果を踏まえて、次回に実施する研修の内容を見直す

エクセルを活用した研修管理

初めて研修管理をする場合、専用のツールを購入するのではなく、すでに使用しているエクセルを活用して管理したいと考える人も少なくないでしょう。

結論からいうと、不便な面があるもののエクセルでの研修管理は可能です。メリットとしては持ち合わせているツールであるため、初期コストをかけずに始められます。また、使い慣れているツールでもあるので、一からシステムの使用方法を覚えなくて済むため、習熟するまで

にかかる時間が少ないこともメリットの1つです。

小規模の企業では、まずはエクセルを活用した研修管理をするとよいでしょう。一方、社員の多い企業では、研修管理ツールを導入するのがおすすめです。

エクセルによる研修管理の課題

エクセルを用いた研修管理は導入しやすさがあるものの、いくつかの課題があります。以下のような課題について対策が可能な場合は、エクセルを使用して研修管理を実行してみましょう。

作業ミスが発生する場合がある

エクセルで研修管理をする場合は、必要な入力項目があります。研修受講者の情報や出欠状況・テスト結果などのデータをその都度手作業で入力しなければなりません。手作業によるデータ入力作業は、ヒューマンエラーが発生しやすいため、正しい情報が入力されておらず的確なデータ管理ができない可能性があります。

さらに、受講完了などの情報をエクセルに入力するためには、メール連絡・口頭確認・管理表への入力など、別の方法やツールを挟まなければなりません。結果、報告忘れや行き違いによるミスなどが発生する恐れもあります。

また、エクセルは同時に複数人で作業するのには向いていません。そのため、2人以上の管理者がいる場合には、同時編集によるミスが発生しないよう、作業のタイミングを工夫する必要もあるでしょう。

日程調整や進捗確認に手間がかかる

エクセルによる研修管理では、Web会議システムやチャットなどエクセル以外のツールを使い、受講者の日程調整や進捗確認が必要です。研修管理に複数のツールを使用すると、管理者にも受講者にも手間がかかります。

また、日程調整や進捗確認の後に、エクセルにその結果を反映する必要があります。ツールの多用は手間が増えるだけでなくミスが起きる要因にもなるでしょう。

研修管理の担当者は、研修管理のみを担当するわけではなく、複数の業務と並行している場合が一般的です。そのため、研修管理に手間がかかれば、その他の業務にも支障をきたします。

情報セキュリティが万全ではない

研修管理業務では、受講の進捗やテスト結果のほかに社員の個人情報や人事データなども扱います。

また、研修管理は複数人で行う場合が多いでしょう。そのような場合は、エクセルのパスワードを共有したり、複数の端末からアクセスできるようにしたりする必要があります。そのため、何らかの理由でパスワードが漏えいする事態を起こし、情報セキュリティ上のリスクやトラブルが発生する危険性が高まります。

エクセルではなく研修管理システム（LMS）による研修管理も可能

これまでに解説したように、エクセルを活用した研修管理は可能ではあるものの、デメリットやリスクも存在します。研修管理に活用できるツールはエクセル以外にもあるので、違うツールを使用すれば、エクセルによる研修管理での懸念点を解決することもできるでしょう。

研修管理システムは、研修に関するさまざまな業務の一元管理を可能にするツールで、Learning Management System（以下LMSとする）と呼ばれることもあります。

研修管理システム（LMS）の機能

LMSを活用すると、エクセルを使用した研修管理と比べ手間やミスを減らすことができます。具体的にどのような機能があるのか、一般的に搭載されている内容を詳しく紹介します。

研修情報の登録

LMSには、研修情報を登録して、情報などを確認したり研修対象者に周知したりする機能があります。登録できる内容の一例は、以下のとおりです。

研修の内容
研修の対象者
対面研修の定員設定
対面研修の日時や会場
eラーニングの受講期限
eラーニングのテスト
eラーニングの受講アンケート

研修の予約やキャンセル

LMSには、研修情報を登録できるだけでなく、社員が研修へ参加するための予約や、受付・キャンセルをする機能があります。また、システムによっては、それぞれの研修に対して申し込み条件の設定や定員の制限・受講日の変更・キャンセル待ちの自動繰り上げなどの細かな機能もあります。

機能を使いこなせば、受講する社員が研修の申し込みや変更を自身で行えるようになり、研修管理者が都度操作しなくともシステム上で完結できます。そのため、研修管理者の作業工数を大幅に減らせるでしょう。

受講者の管理

LMSには、受講対象者である社員の個人情報や所属などのデータも、一括管理できる機能があります。

この機能を活用すれば、受講者の氏名以外の情報も研修管理に使用できるようになり、受講者をグループ分けして、部署や役職ごとに研修管理することが可能です。活用例としては、受講対象者の絞り込みや研修でグループワークをする際のグループ分けなどがあります。

さらに、所属や役職ごとに閲覧権限を付与すれば、管理職が部下の受講状況を確認できるようにもなるため、各部署でのフォローもしやすくなるでしょう。

受講料の決済

社内研修は、基本的に社員が無料で受講できるものの、なかには社外の有料研修に任意で参加するケースもあります。なお、自社で実施する研修を社外の人に有料で提供するケースもあるでしょう。LMSには、有料の研修を実施する場合に、受講料を決済できる機能があります。

システム上で研修申込者に支払い金額の通知をしたり、支払い期限のお知らせやリマインドをしたりできれば、研修管理者の業務負担も減らせるでしょう。また、システムによっては、請求書や領収書を発行する機能もあります。

支払い機能を利用したい場合は、導入予定のシステムに決済機能があるかどうかも事前に確認しておきましょう。

出席状況や進捗の管理

LMSには、受講者による出欠登録機能や、進捗状況の確認機能もあります。さらに、これまでの受講履歴や成績を管理する機能もあるので、必要な研修を受けているかどうか、いつまでに受講が必要なのかなどを自身で確認できます。

また、LMSは出欠状況をリアルタイムで確認することも可能です。研修管理者は実施した研修にどれくらいの参加者がいたか、受講対象者が予定どおり研修を受けたかなどを研修会場に行かずに、システム上で確認できるようになります。

eラーニング機能

LMSには、対面研修の管理だけでなく、研修用のeラーニングコンテンツを制作したり配信したりする機能があります。

eラーニングとは、インターネットを通じて学習できるシステムです。映像や音声をパソコンやタブレット端末などで確認して受講できるため、受講者は場所や時間を選ばず、自由に研修を受けられるメリットがあります。

システムによって対応しているeラーニングコンテンツの種類や、制作機能の操作性が異なるため、eラーニングの導入を検討したい場合は、あらかじめ機能の詳細を確認しておくとよいでしょう。

研修に関する提出物の管理

LMSには、研修に関する課題やテスト、レポート、受講アンケートといった提出物を管理する機能もあります。必要書類の回収や保存などをLMSのシステム上で行えるので、研修管理者の作業工数を減らせるでしょう。

また、システム上で課題の提出状況も確認できるため、提出物の未提出者がひと目で分かります。さらに、テストを自動採点し成績を集計することも可能なので、時間をとられていた研修後の諸作業も減らせるでしょう。

受講者への通知やリマインド

LMSには、受講者へ必要な連絡事項をメールで配信する機能があります。送信内容や送信条件を設定しておけば、決まった日時に受講対象者へ自動送信することも可能です。メール配信機能の使用例は以下のとおりです。

研修の申込完了連絡
研修前のリマインド
受講開始通知
未受講者への受講促進
未提出課題の催促

など

なお、システムによっては、通知やリマインドで使用するテンプレートを登録できる機能や、ファイル添付機能などもあります。

修了証の発行

LMSには、研修を修了した受講者に対して、修了証を発行できる機能があります。このシステムを利用すれば、受講者自身で発行が可能なため、研修管理者が手配する手間も減らせるでしょう。

ただし、修了証の発行機能がないシステムや、オプションサービスになる場合もあります。研修の修了証発行が必要な場合は、事前に導入予定システムの機能を確認してください。

データの収集と分析

LMSには、研修に関するさまざまなデータを収集したり分析したりする機能があります。LMSで収集できるデータの一例には、以下のものがあります。

テストの平均値の算出
受講者の受講中の集中度
受講の満足度
受講者それぞれの得意・不得意分野

など

これらのデータは、今後実施する研修の見直しや実施方法の検討のほか、自社のプロジェクトのチームメンバー選定などにも役立つでしょう。

システムによって収集できるデータは異なるため、導入前にシステムの使用目的や使用範囲を把握して、検討するようにしてください。

研修管理システム（LMS）を導入するメリット

研修管理に役立つ多彩な機能が利用できるLMSの導入メリットを解説します。

作業効率化・自動化

LMSの導入によって、今まで手作業で入力していた研修管理業務を自動化できるようになります。

研修管理のために複数のツールや手段を用いている場合は、管理をLMSのシステム上で一元化することで業務全体の効率が向上し、結果として、研修管理業務の工数が減少するでしょう。これまで研修管理に多くの時間を費やしていた担当者の業務負担を減らしたり、より重要な業務に集中したりできるようになります。

そして新たな取り組みができるようになれば、これまで以上に社員の人材育成やキャリアアップに注力することも可能です。

研修効果の向上

LMSを導入すると、システム上で研修に関する情報をリアルタイムに確認できるようになります。また、LMSを活用して社員のスキルを一覧にしたり、スキルレベルを可視化できるスキルマップを作成したりすることも可能です。

これらを活用すれば、社員の研修の成果や課題が可視化できるため、的確なフォローアップができるようになります。また、研修データをLMSで分析すれば、今後の研修計画に生かせるので、より精度の高い研修が実施できるようになるでしょう。

人材育成に活用できるスキルマップの作り方

コスト削減

LMSを導入することで、システム上で研修案内や研修資料を閲覧できるようになり、これまで研修のために用意していた紙の資料が不要になります。さらに、eラーニングを活用すれば、社員がいつでも場所を選ばず研修を受けられるようになるため、会場を用意するコストも削減できるでしょう。

また、業務効率化と自動化が実現すれば、従来よりも研修管理業務に人材を割く必要がなくなるため、研修管理に割り当てる人件費の削減も可能です。加えて、LMSで研修にかかった費用や成果を分析できるため、費用対効果を確認できるようにもなります。

これにより効果が薄い研修を洗い出せるようになり、不要な研修を廃止してコスト削減につなげることもできます。

社員のモチベーションアップ

LMSを導入することで、研修で得られる効果の分析ができるようになるため、研修を適切に見直せるようになります。研修の質が上がり、成長を感じられるようになれば、社員も研修を有意義な時間と捉えられるようになります。

また、eラーニングによる研修は、対面研修のように決められた時間に集合する必要がなく、いつでもどこでも受講可能であり、受講者の利便性が高い研修方法です。

このように研修の価値を高められれば、受講者自身の成長に対するモチベーションも向上するでしょう。

人材育成に活用できるスキルマップの作り方

研修管理システム（LMS）の選定には時間と労力がかかる

現在、さまざまな種類のLMSが市販されています。各社から販売されているLMSは、それぞれに特徴や強みがあり、商品によって搭載されている機能や価格が異なります。

そのため、初めてLMSを導入する場合、数あるシステムのなかから、自社に適したシステムを見つけ出すには時間と労力を要するでしょう。

自社に合うLMSを探すためには、あらかじめシステム導入の目的や、システムに求める要件を明確にすることが近道にもなります。選定の判断基準を設けておくことが、LMS導入を成功に導くための重要なポイントです。

研修管理システム（LMS）を選ぶポイント

自社の特性や研修管理の目的に合うLMSを導入するためには、以下のようなポイントごとに情報を整理して検討しましょう。

研修管理システムとは？必要な理由やメリット、デメリットなどについて解説

実績

導入を検討しているLMSが自社に適しているか判断するためには、検討中のLMSを導入している企業や、システムの評判を確認するとよいでしょう。自社と類似する業種や同規模の企業を選ぶことで、自社での導入イメージを持ちやすくなり、より良い決断につながります。

機能やカスタマイズ性

LMSを導入しても機能に不足があると、別のツールや手段を加えなければならなくなり、手間やミスが増える原因になります。導入を検討しているLMSが、自社のニーズに沿った機能を提供しているか、細かな機能まで確認しておきましょう。

また、自社独自の業務プロセスや組織体系、日本特有の企業文化に合わせて、システムを柔軟にカスタマイズできる利便性が整っているかどうかも重要なポイントです。

操作性

効率よく研修管理業務をするためには、システムをストレスなく利用できるか、直感的に操作できるかという点にも注目する必要があります。使いやすいシステムであれば、研修管理者の業務効率が上がりスムーズな研修運営ができるようになります。

さらに、研修を受ける社員も積極的にシステムを活用するようになり、研修参加率やeラーニングの受講率向上も期待できるでしょう。

情報セキュリティ

LMSでは、多くの社員の個人情報を取り扱います。テストの結果やスキル、課題などの情報も含まれるため、社外はもちろん、社内にも情報が漏れないように注意を払いましょう。そのためには、十分な情報セキュリティが整っているシステム選びが重要です。LMSの情報セキュリティでチェックすべき点には、以下のものがあります。