働き方改革実現に向けた動きとは?企業にはどう影響するのか


働き方改革実現に向けた動きとは?企業にはどう影響するのか

働き方改革関連法案の施行に伴い、日本の労働環境が変わろうとしています。ではなぜ、このタイミングで働き方改革を導入し、労働環境を変える必要があるのでしょうか。それには、日本が当たり前としてきた働き方が大きく関わっています。当たり前を変えることは、企業側にも従業員側にもさまざまなメリットをもたらします。この記事では、働き方改革の内容と必要性について具体的に解説します。

働き方改革が進められている理由

働き方改革は、日本の課題を解決することを目的として導入された取り組みです。では、どのような課題が働き方改革導入の背景にあるのでしょうか。 1つ目は、少子高齢化によって労働人口が減少したことです。15歳以上65歳未満は生産年齢と呼ばれ、労働力の中核となる年代です。この生産年齢の人口は、1995年以降減少傾向にあり、今後さらに人手不足が加速するといわれています。そのうえ、生産年齢の中には、介護や育児が理由で働くことができないという人も含まれています。こういった状況を打破するために、企業と国が一緒になって働き方改革を推し進める必要があるのです。さらに最近では、70歳までの就業機会の確保が課題となっています。
2つ目は、長時間労働と過労死に関する問題です。日本の長時間労働者の割合は、就業者の約20%(2016年)となっており、この数値は世界でも群を抜いています。オランダやスウェーデンなど、長時間労働者の割合が就業者の10%以下となっている国も多いことから、日本では長時間労働が常態化していることがわかります。さらに、長時間労働が過労死に結びついているケースも少なくありません。そのため、働き方改革で長時間労働を是正し、健康で働ける環境を作り出す必要があるのです。
3つ目は、世界における日本の労働生産性の低さです。日本は、労働者が1時間で生み出す成果や労働者1人あたりの生み出す成果の指標である、労働生産性が低いといわれています。労働生産性の数値は、成果を生み出すための効率を表しており、国の経済成長に大きくかかわるものです。この数値は、労働者のスキルアップや経営効率の改善、業務効率化を行うことで、高めることができるといわれています。労働者1人あたりの生産性が高まれば、労働人口が少なくても必要な成果を確保できるのです。

働き方改革に対する厚生労働省の取り組み

2018年4月に閣議決定した改正法案に基づき、厚生労働省は働き方改革に対する取り組みを提示しています。例えば、「長時間労働の是正」のために、時間外労働の上限規制を導入しました。これに伴い、大企業から中小企業などに無理な発注をすることが心配されます。そのようなことが起こらないよう、厚生労働省や中小企業庁が、1066団体に「働き方改革関連法の施行に向けた取引上の配慮について」要請を実施しました。さらに、一定日数の年次有給休暇の確実な取得、時間外労働の割増賃金の見直し、勤務間インターバル制度の普及促進などを定めています。
「雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保」に向けては、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との不合理な待遇の差をなくすための規定整備を行いました。その結果、職務内容などを考慮したうえで、賞与や基本給などの不合理な待遇差や差別的取り扱いが禁止されるようになったのです。これは「同一労働同一賃金」と呼ばれます。 さらに、労働者に対して、待遇に関する説明を企業が行う義務も強化されました。
柔軟な働き方がしやすい環境整備」のためには、テレワークのガイドラインを刷新したり、導入を支援したりする取り組みを行っています。さらに、副業や兼業の推進や働き手支援を目的としたガイドラインの策定なども取り組みの1つです。「賃金引き上げと労働生産性向上」に向けては、企業へ賃上げを働きかけたり、予算措置や税制、取引条件を改善したりと、賃上げしやすい環境を整えています。「再就職支援や人材育成」に向けては、労働移動支援助成金を実施しています。助成金の対象となるのは、中途採用の拡大を図ったり、再就職援助計画などの対象者を雇い、継続して確実に雇用したりする事業主です。さらに、就職に向けたスキルアップやキャリア形成、海外人材の育成など、人材開発や人材育成にかかわる施策を数多く打ち出しています。
また「ハラスメント防止対策」として、企業向けの対策導入マニュアルを策定したり、ポスターやリーフレットを配布したりすることで、ハラスメント防止の重要性や防止対策のやり方に関する情報発信、労使の取り組み支援などを行っています。働き方改革について、具体的にどのようなところから取り組めばよいかわからないという場合は、「働き方・休み方改善ポータルサイト」を参考にするとよいでしょう。働き方改革の取り組み事例や、実態と課題を把握するための自己診断が可能です。
働き方改革は、取引条件改善など業種によって取り組み方が変わってきます。建設業では、建設業働き方改革加速化プログラムの策定、自動車運送事業では、トラック運転者の労働時間改善を荷主へ周知するなど、さまざまな取り組みが行われています。

長時間労働の改善

労働基準法の改正に伴い、36協定に時間外労働の上限が設けられます。これまでは36協定を締結すると、月45時間、年間360時間の時間外労働が可能でした。さらに、特別条項の設定によってそれ以上の時間外労働の上限がなくせることができたのです。しかし、長時間労働の改善を目指し、36協定の見直しが行われました。それにより、原則は月45時間、年間360時間が法定休日を除く時間外労働の上限ですが、特別な事業で労使が合意する場合、次のような上限が設けられました。
法定休日労働を除く年間の時間外労働は、年間720時間以内が上限です。さらに、法定休日労働を含む月の時間外労働は、100時間未満が上限です。また、1年間のどの2~6カ月の法定休日労働を含む月の時間外労働平均をとっても、80時間以内でなくてはなりません。つまり、原則である月45時間以上の時間外労働は、年間6カ月以内の必要があるのです。さらに、労働基準監督署が立ち入り検査を行う対象も増えました。
36協定を見直し、時間外労働の上限規制を設けることで、長時間労働の是正や過労死の予防が期待できます。ただし、時間内に業務を終えられるよう、生産性を高めることが求められるようになります。そのために、勤務間インターバル制度の導入に向けた環境整備や、勤怠管理システムの変更、人員体制の拡充及び整備など、さまざまな手立てが必要です。

非正規と正社員の格差を解消する

非正規社員の時給換算賃金は、正社員の時給換算賃金と比較すると、約6割に留まるといわれています。欧州では約8割といわれているため、日本は非正規と正社員の格差が大きいといえるでしょう。介護や子育てをしている場合や高齢者など、能力が優れているにも関わらず、非正規という働き方しか選べないという人も少なくありません。そのため、格差の解消が必要とされています。この格差解消のために打ち出されたのが、働き方改革の目玉ともいえる「同一労働同一賃金」です。
同一労働同一賃金」が目指すのは、能力や仕事ぶりの適正な評価により、同一企業内の非正規社員と正規社員間で不合理な待遇差が起こらないようにすることです。例えば、非正規のベテラン社員が、新卒正社員よりも給与が格段に低い場合、是正の対象となります。仕事内容と賃金のバランスがとれれば、非正規社員のモチベーションや、未就業者の労働意欲を高めることが期待できます。将来的には、非正規という働き方自体をなくし、ライフステージに応じて好きな働き方を選べる労働環境を目指しています。同一労働同一賃金の実効性を確保するためには、労働契約法や労働者派遣法、パートタイム労働法といった法制度やガイドラインの整備が必要です。

高齢者の就労を進める

国の調査によると、65歳以上になっても働きたいと考える高齢者は約6割も存在します。一方で、実際に働いている高齢者は約2割に留まるのです。さらに、生産年齢人口が減少して老年人口が上昇するという予測からも、働きたい高齢者の人口は増えていくと考えられます。そのため、高齢者が安心して働ける労働環境を整えることが求められています。その手立ての1つとして挙げられるのが、定年の延長です。従業員は65歳まで雇用されることを企業に求めることができ、企業は高年齢者雇用安定法によって希望者の定年を全員65歳まで雇用することが義務付けられています。企業によっては、定年を65歳に引き上げたり、60~65歳で好きな時期を選んだりと、さまざまな定年制度が導入されているのです。さらに今後は70歳までの定年延長が議論されています。
また、65歳以降でも無期雇用契約に転換できる取り組みや、高齢者のマッチング支援強化も行われています。これらの取り組みにより、優秀な人材を長期間雇用することができるようになりました。こうした人材はノウハウや技術を教え、若手人材を育成する指導者としての役割も果たしてくれるでしょう。将来に対する不安の解消につながるため、従業員のモチベーションアップや生産性の向上も期待できます。定年退職に伴う新たな人材の募集や採用、教育にかける時間を軽減することができ、コスト削減や雇用の安定といったメリットも考えられるでしょう。

補助金や助成金の整備も行われている

働き方改革を後押しするのが、さまざまな補助金や助成金です。有効活用することで、よりスムーズに労働環境の改善を進めることができます。ここでは、3つの助成金について紹介します。
1つ目は「キャリアアップ助成金」です。同一労働同一賃金を進めるための助成金で、状況に応じて7種類から選ぶことができます。キャリアアップ助成金を受けるためには、事業主が次の条件を満たしていなくてはなりません。雇用保険に加入しており、キャリアアップ管理者を配置していることです。さらに、対象となる労働者の名簿や賃金台帳、出勤簿など、法定帳簿の保管や整備も求められます。そしてもう1つ重要なのが、キャリアアップ計画書の作成です。労働者がキャリアアップするために、どのような取り組みを行うのかを記載したもので、この計画期間内に適切な取り組みを行うことも、受給条件の1つとなっています。
2つ目は、「時間外労働等改善助成金」です。生産性を高めながら、時間外労働の上限規制に対応した中小企業を対象とした制度です。休暇の取得促進や、労働時間の短縮、テレワーク導入などの取り組みを行うことで、助成金が支払われます。5つのコースにわかれており、それぞれ適用条件が異なります。
3つ目は、「業務改善助成金」です。サービスの利用や設備投資などにより、事業場内の最低賃金を引き上げた場合を対象とした制度で、設備投資などの費用を一部助成してもらえます。支給対象となるのは、事業場内最低賃金が1000円未満の中小企業や小規模事業者となります。引き上げる賃金の額に応じて、支給対象者が異なるため、事前の確認が必要です。事業実施計画の策定と実施、不交付事由のないことが条件となります。

働き方改革を実現するための方法

働き方改革を実現するための取り組みとして、次の4つが挙げられます。
1つ目は「テレワーク」です。時間や場所の制限がない柔軟な働き方です。自宅から直行直帰で営業などを行い、会議など必要な場合にのみ出社する外勤型と、オフィス以外の決まった場所(サテライトオフィスなど)で働く内勤型があります。
2つ目は「育児休暇」です。導入している企業も多く、特に、女性に限らず男性への育児休暇を進める企業が増えています。男性が育児休暇を取得することで、家族とのコミュニケーションが取りやすくなり、女性の職場復帰がスムーズにいくことが期待されます。
3つ目は「短時間勤務制度」です。育児や介護のために、勤務時間を通常より短くする制度です。男女関係なく取得でき、勤務開始と終了の時刻もライフスタイルに応じて好きに設定できるようにすることで、より柔軟な労働環境が整備できます。
4つ目は「フレックスタイム制度」です。総労働時間自体は変わらないのですが、1カ月の範囲内で始業と終業の時刻を自由に変動することができます。この制度を導入することで、会社が決めた就業時間よりも1時間早く出社して1時間早く退社したり、前日1時間残業したので1時間早く帰ったりするといったことが可能になります。

働き方改革は企業が率先して行うことが大切

働き方改革は、制度を整備したり、ITを導入したりといったハード面に注目し、重要視しがちです。しかし、とにかく新しいことをやってみるというスタンスだと、上手くいかない可能性が高いといえるでしょう。自社の企業風土をきちんと捉え、どの制度を取り入れ活用すべきかを検討する必要があります。そのうえで、まずは管理職自身が率先して行動し、組織に制度を浸透させていくことが大切です。

タレントパレットなら働き方改革も『見える化』できる

「タレントパレット」は企業が持つあらゆる社員情報を人材データとして集約し、分析することで科学的人事戦略を実現するための人材プラットフォームです。 『組織診断』機能を使えば、長時間労働が行われていないか、働き方改革法に則った基準で、月(年)における長時間残業社員や対象社員の残業回数をワンクリックで表示。いまの組織の状態を把握し、改善への意思決定にご活用いただけます。