スキルを見える化し、“企画人材”を育てる ― CCCグループ


スキルを見える化し、“企画人材”を育てる ― CCCグループ

蔦屋書店、TSUTAYA、Tカードなど人々の日常生活に寄り添うカルチュア・インフラを次々と生み出し、拡大してきたCCCグループ。急激に増える従業員と、柔軟に形を変えるグループ体制を支える、人事組織の進化についてお話を伺いました。

澤和宏様
カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社 HRサービスセンター 部長

桶谷千穂様
カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社 HRサービスセンター DB ユニットリーダー

蔦屋書店、TSUTAYA、Tカードなど人々の日常生活に寄り添うカルチュア・インフラを次々と生み出し、拡大してきたCCCグループ。急激に増える従業員と、柔軟に形を変えるグループ体制を支えるべく、人事組織も進化を求められてきました。その中で、タレントパレットをどのように活用しているのか、お話をうかがいます。

グループの人事管理を効率化するため、タレントパレットを導入

―現状、グループの人事はどのような体制になっていますか?


澤様:CCCグループは、事業領域が大きく4つに分かれており、そこからさらに細分化する形で各事業会社が置かれています。それぞれの事業会社に人事機能があって、「事業人事」と呼んでいます。これに対し、我々HRサービスセンターはグループ持株会社の人事シェアードサービス機能として、各事業人事をサポートしている形です。

―グループの全員をタレントパレットで管理しているのでしょうか?。

澤様:グループ全体では正社員・契約社員が約6400人いて、タレントパレットで管理しているのは、その中の約3000人ですね。これは、HRサービスセンターが直接管理している従業員で、実際の人事施策等は先ほど申し上げた通り、所属する各事業会社の事業人事が担当しています。それ以外の約3400人については、我々は直接管掌せずに、各事業会社の人事部門が、それぞれのやり方、ツールで管理しています。

―お二人が所属されているHRサービスセンターは、事業人事からの相談に応じるイメージでしょうか?

澤様:そうです。たとえば「タレントパレットでこの情報をこういうふうに見たい」とか、「メンバーの育成を考えているが、タレントパレットを使って何かできることはないか」などのオーダーを拾い、「こういうやり方ができますよ」といった提案をしていくイメージです。

―いわゆる制度を作って周知して運用して…という動きとは違いそうですね。

澤様:はい、制度を作るのは事業人事の担当です。我々はあくまで、より良い方法を一緒に考えて実現をサポートする立場です。

―なぜ人材活用に、タレントマネジメントシステムを導入しようと思われたのでしょうか?

澤様:弊社はデータを扱う事業を行っている背景もあって、人材のデータベース化の構想は10年くらい前からありました。ただ、実現する手段が整っていませんでした。Excelで作ってみたり、Accessで組み立ててみたりと、試行錯誤はしたものの、なかなか活用できるレベルにはなりませんでした。

そのような中、2018年度に人事の中で、業務効率化プロジェクトが立ち上がりました。「申請のワークフローをどうしよう」「勤怠システムをどうしよう」など、業務の効率化の検討を進める中で、従業員にまつわるデータが散乱していることに再び焦点が当たり、ここを一元化することでも効率化が図れるのではないか、と検討をスタートしたのがきっかけでした。具体的な導入は2019年7月ですね。

―蓄積したデータ活用の効率化が最初のきっかけだったんですね。

桶谷様:はい。自己申告や適性検査、評価情報、異動履歴、勤怠情報など、従業員に関するデータは豊富にありましたが、全てがバラバラに保管してあったので、組み合わせて活用するにはとても手間がかかる状態でした。

先ずはそういった一連の情報をタレントパレットに統合し、人材データを有効に活用するための基盤を整備することを目標としました。

それぞれの会社の特性に合わせ、カスタマイズして活用

―それでは改めて、現在のタレントパレットの活用状況をお伺いできますでしょうか?

桶谷様:昨年度までの取り組みにより散在していた人事情報をタレントパレットに一元管理することができました。これらのデータはグループの共通基盤として私たちが管理運用し各事業会社に使ってもらっていますが、会社によって課題やニーズは異なりますので、活用方法は様々です。

たとえば中途採用に力を入れている会社では、在職者の属性を分析して採用に活かそうとしたり、入社したメンバーが早期に力を発揮できるよう育成をサポートする仕組みをタレントパレットに作り運用を開始したりしました。

また、アンケート機能を用いた組織サーベイを通して、組織のエンゲージメント向上を図っている会社もありますね。これは昨今のリモートワーク化が背景にあります。リモートワークが進む環境下で、従業員のエンゲージメントを維持・向上することは非常に重要となりますので、組織コンディションを可視化することで課題を早期発見し、改善に繋げていくことを目的としています。

グループ共通施策として年1回実施している自己申告もタレントパレットへの入力に移行しました。申告内容はこれまで人事しか参照できませんでしたが、キャリアプランや自分自身の強み弱み、価値観などは、上司と共通認識を持っておくことがキャリアの形成や育成には効果的ですから、一部の情報をキャリアプランシートにまとめ、上司と社員本人の双方が参照できるように準備を進めています。面談の場などでのコミュニケーションツールとして活用してもらえればと考えています。
自己申告は毎年更新されるものですので、タレントパレット上で過去の情報が閲覧できるようになれば、仕事内容や上司が変更になったとしても、過去の状況を踏まえたキャリアプランが作成できるようになります。

―もともとは効率化が目的だったとのことですが、人材活用にもかなり役立てていますね。教育の面ではいかがでしょう?

桶谷様:先ほど申し上げたキャリアプランシートにも繋ってくるのですが、一定以上の役職者には部下のマネジメントや育成に活かすことを目的として、自部門の部下のキャリア情報を参照できるようにしています。

また、ある事業会社では、職種別のスキルを定義してタレントパレット上で可視化し、スキル状況に応じた学習コンテンツを企画するなど、育成施策の展開を進めています。
eラーニングについては導入間もなくまだ構想段階ではありますが、社員が主体的に学びを得られるツールとして活用できればと考えています。
将来的には、個々の状況に応じて「あなたにおススメの学習プログラムはこちら」といったレコメンド機能が実装できれば理想的ですね。

―事業人事のみなさんからも、タレントパレットに関する相談は来ていますか?

澤様:結構来ていますよ。「こういうアンケートがやりたいんだけど」など、お話をもらっています。

桶谷様:アンケートは設計の自由度が高いので、各社の要望に柔軟に対応することができます。タレントパレットでアンケートを実施する最大のメリットは人事情報と掛け合わせができることですね。年代、役職などの属性別分析が容易ですし、回答がフリーコメントの場合は通常ですと一つ一つ人力で読み込む必要がありますが、テキストマイニングの機能を使えば全体傾向をあっという間に把握することができます。
可視化までのプロセスが短いことも活用が進んでいる理由です。

※活用画面はイメージとなります。

―各事業人事の方やマネージャー層へはタレントパレットは浸透していますか?

桶谷様:前述の通り各社の活用状況は様々ですが、タレントパレットでこんなデータを見たい、こういった使い方はできないか、といった相談を事業人事や現場マネージャーからもらえるようになってきていますので、認知は広がりつつあると感じています。ただ単に「従業員の情報が見やすくなりました」と言われても必要性がないとなかなか使ってもらえませんので、どんなことができてどんなメリットがあるのかを明確に伝えていくことが浸透に繋がると考えています。

澤様:課題が生まれたときに、タレントパレットを使って解決していく様子を見せていると、関心ある人はトライしてくれますね。

データ活用により、目指す人材像を可視化

―タレントパレットを使って、どんな組織にしていこうと考えていますか?

澤様:弊社グループは企画を立ち上げて、新しい顧客価値を生み出すことで収益を上げています。そのために、企画を作れる人を育てていかなければなりません。社内では「企画人材」と呼んだりしますが、実はその定義は曖昧なところもあります。まずはその定義を可視化し、過去のデータを参考に育成計画を組んでいけたらいいなと思っています。

現場で上司がメンバー一人ずつとちゃんと向き合って、どうやってこの人を育てていくのか、きちんとデータを見ながら自分の言葉で語れる。まずは現場にそのような状態を作りたいです。その一方で、企画人材の育成を人事として事業横断で体系化し、全社的に人材を育てていくというのが当面のビジョンです。そこに向けて、まずは主な職種ごとの育成に向けて動き始めています。

―職種ベースではすでに動き始めている、と仰いましたが、ビジョンの実現に向けて、具体的にどのようなことから着手しているんでしょうか。

桶谷様:一般的にスキルを一から定義することは難しいと思いますが、一部の職種については過去の取り組みによりスキルセットがありましたので、そこから可視化し検証を始めています。これらは現場の教育担当が主体的に進めていることで、私たち人事はそのベースとなる全社横断での共通スキルの体系化に着手しています。会社として目指す人材を可視化し、全員が共通の認識で育成に取り組めるような、そんな仕組みとしてタレントパレットが活用できればと思っています。

―タレントパレットが、人と人とのつなぎ役になりそうですね。

澤様:コミュニケーション面の強化に使っていきたいとは思いますね。そこに全社の組織情報も組み合わせて、たとえばタレントパレットを見れば、自分に合う仕事を探せたりとか、目指すポジションに必要な経験がわかったりする段階まで設計できたらなと思います。

自分のやりたい仕事はグループの中のどこにあるのか、どこの部署に行ったらできるのか、その部署に行くにはどんな力が必要か、そういうことを主体的に考えられるようになってくるともっと活用が進むし、従業員に対して価値あるものになれるかと思います。もちろん、本人のモチベーションにもつながりますしね。

―これから使いたい機能はありますか?

桶谷様:最終的には人材と仕事のマッチングをシステムで支援できるようになればと思っています。データを活用し客観的な判断を用いることで、勘や経験では検討されなかった配置や人選が可能になりますし、マッチ度が高まる事で個人のモチベーションも向上し、組織パフォーマンスも向上します。データ活用が人事戦略の実現に結び付く、そんな世界を目指したいです。