25年ぶりの人事制度改定 より良い企業へと飛躍するために、柔軟な発想で取り組んでいく


25年ぶりの人事制度改定 より良い企業へと飛躍するために、柔軟な発想で取り組んでいく

日本の大手総合化学メーカーであるトクヤマ。昨年春に25年ぶりに人事制度を改定し、従来の日本企業の典型的な職能資格制度から役割等級制度へと踏み出しました。人材育成と戦略人事を軸としたトクヤマの新しい取り組みについてお話を伺います。

人材育成、人事や制度の在り方を見直すため
25年ぶりに人事制度を改定

― 人事制度を25年ぶりに改定されたとのことですが、どのような目的だったのでしょうか?

藤本様

昨年までの人事制度は1994年から導入した制度でした。従来の日本の人事制度の典型的なフレームである職務遂行能力に基づいた格付け、等級によって人材育成と処遇をしていく職能資格制度をもとに制定していました。しかしバブル崩壊の後、1997年のアジア通貨危機や山一証券の破綻等もあり、今までの安定成長、高度成長は続かないとの危機感が広まりました。そうなると皆同じように右肩上がりで処遇を上げていくことは難しく、弊社でも従来の枠組みはそのままに、貢献した度合に応じて処遇を行う「成果主義」を取り入れ、部分的な制度の見直しもしてきました。

しかし、ここ数年の中で、人材育成、人事や制度の在り方も一から見直そうというトップ方針もあり、抜本的に制度を考えることにしました。従来の職能資格制度は職能遂行能力によって処遇をする資格ですが、どうしても能力というのは目に見えづらく、結果的には年功的な運用になってしまいがちです。部分的には早く昇格するなど多少のメリハリはついていましたが、何歳になったら主任になり、何歳になったら課長になり、というような横並び感が強かったので、役割と行動に基づいた本当の意味での抜擢ができるような制度に変えていくため、役割資格等級制度へと見直しを行いました。

株式会社トクヤマ 執行役員 総務人事部門長 兼 人事グループリーダー 藤本 浩

見直しにあたっては、管理職だけでなく組合員レベルまでの見直しとなるため、労働組合との合意が必要となります。そのため、新しい制度では何が変わって、今までの制度では何が問題だったかということを掘り起こし、組合側と議論しながら全社での合意を進めました。その議論の中で従業員から、目標管理制度自体が形骸化していることや、新入社員や若い層には使われていないという意見もあり、目標管理制度の見直しにあたっては、今後はそのようなことのないよう、正しく制度が実行されているかどうかのエビデンスや確認を行うため、最新のシステムも取り入れながら、制度改定を実施しました。

従業員の成長と組織の成長に寄与するため
目標設定から評価に至るまでPDCAを回せる仕組みに

― それでタレントパレットをご導入頂いたのですね?

小早川様

人事制度改定の準備を進め、従業員への説明をしていく中で、きっちりとPDCAを回していくには何が必要かと考えた時、PDCAを確認するためのツールが必要だと考え導入の検討を始めました。

― どのような課題に対してPDCAをしっかり回していこうと思われたのですか?

小早川様

目標設定から評価に至るまでのプロセスを人事がしっかり把握できていなかったという点です。これまで評価に関しては大部分を現場に任せていて、人事では現場で付けた評価を集約するのみでした。職場間の目標設定の内容や評価の甘辛などのレベリングもできないまま最終評価が決定してしまっており、従業員の評価に対する納得性は低い状態にありました。皆が納得できる評価の運用と評価者のレベルアップを図る為、まずは人事が各職場の目標設定から評価に至るまでのプロセスを確認できる状態を作り出したいと考えました。

写真左から
人事グループ 主任 乙黒 和也 様 / 人事グループ 主任 小早川 亜希子 様 / 人事グループ 主席 藤原 直樹 様

藤原様

本来であれば、しっかりとPDCAを回し、そこから翌年の目標設定に正しくつなげ、本人の成長と組織の成長に寄与する仕組みこそが目標設定だと思いますが、そのPDCAが属人的で、組織や上長により濃淡が出ることもありました。組織や上長に関らず部下の成長を見据えた目標設定をしてもらい、人事も各部署の目標設定内容や評価を確認できるようにして、正しくPDCAを回したいと考えました。また、今までは紙で運用していましたが、紙では過去に遡ってこの人はどんな仕事をしてどのような評価を受けてきたかというのがわかりにくいため、システムを導入することで、人事、職場の上長とシステム上で簡単に共有でき、必要な時に見ることができる仕組みにしました。

人事評価をシステム化することで、人事・現場間での共有が容易に。

― 評価以外での活用はどのようにお考えですか?

小早川様

人材情報の可視化と一元化を考えています。これまで各部署に散在していた情報と人事が管理していた情報を分析機能に特化したシステムに集約し、それらの情報を共有・有効活用して、従業員のキャリアプランや全社的な育成ローテーションの検討などに役立てたいと考えています。また、これまであまり力を入れられなかった戦略人事への取り組みと、新しい制度に対する定期的なチェック・改善の仕組みづくりを考えています。

乙黒様

定期的なチェックというところでは、従業員の意識調査というものを計画しています。この調査では140問近くのアンケートを実施して、結果を分析して当社の強みや弱み、特性、何をするべきかなどを明らかにしようと考えています。

タレントパレットのアンケート機能では柔軟な設問設計とリアルタイム集計、社員データと紐付けた分析が可能。

藤原様

労働人口も減ってきており、これからは人材難の時代です。今いる従業員やこれから入ってくる人材をしっかりと育成しなければ企業の成長につなげていけないという危機感があります。そのためにも人材情報を一元化し、人材育成に寄与していきたいと考えています。

クラウドを活用したことで、社内のネットワーク外にいる
出向者や海外駐在員も同じツールを使えるように

― システム選定には何を重要視しましたか?

小早川様

初めての人でも感覚的に操作できることと、分析機能が充実していることです。今回システムを選定するにあたって、いくつかの会社の画面を見せて頂き、説明を受けましたが、操作のし易さはタレントパレットが一番でした。マニュアルやQ&Aも充実しており、人事メンバーにとっても使いやすいと思いました。また、タレントパレットは分析機能が非常に優れており、工数の削減が期待できると感じました。これまで資料作成にはかなりの労力を費やしていましたので、その時間で課題解決に向けた取り組みができると思いました。また、クラウド型のシステムのため、海外駐在員や出向者など社内ネットワーク外の従業員に対しても同じ環境で情報を発信・共有できるという点も大きかったです。その他としては、今使っている基幹システムとも問題なく連携できるということ、価格面についてもコストパフォーマンス以上の成果が期待できるシステムだということでタレントパレットを選定しました。

― 今までに資料作成にお時間がかかっていたというお話がありましたが、実際にはグラフの作成やデータの出力などのことですか?

乙黒様

今までは最新の情報を集めてくるところから始まり、資料作成には毎回時間がかかっていました。タレントパレットを導入後は、最初に準備さえしておけば、同じ条件で毎回グラフを作成できるので、大変楽になりました。

― 実際に導入されてから、人事部門の方々の中では効果や変化はありましたか?

小早川様

全従業員の目標設定が人事で確認できるようになったのは大きいと思います。タレントパレットを導入したことを機に、今回人事では初めて全従業員の目標設定の内容を資格等級ごとにチェックし、内容に問題があるものについては本人にフィードバックして差戻すということを行いました。また、これまでは期末の評価時期に各部署長から口頭で説明されていた個人の評価に関する説明も、タレントパレットで運用したことでシステム内にそういった内容を残すことができるようになりました。今までできなかったことができるようになったことで、仕事の量は導入前より増えたかもしれませんが、仕事の質は間違いなく上がるので、今後はさらに有用な情報をアウトプットしていくことができるのではないかと期待しています。

藤原様

人事の仕事の質が上がるということだけでなく、各部署の正しい目標設定や納得感のある評価につなげていかなければいけないと思っています。タレントパレットを導入したことでいろいろなことができることが分かったので、会社にとって、従業員にとっていかに役に立てるようにしていくかということが重要だと考えています。

乙黒様

今までは「この人は仕事ができるらしい」というような話はありましたが、実際に評価シートをタレントパレットで活用することで、人材の見える化、そして従業員の把握ができるようになったのは良かったと思います。

システムの導入による新しい仕組みづくりが評価され、社内表彰を受賞

― タレントマネジメントシステムの導入と活用により人事部門の方の社内表彰のお話を伺いました。社内的にどのような点が評価されたのでしょうか?

藤原様

社内表彰は小早川が受賞しました。表彰された内容は、タレントパレットの導入と活用の推進ですが、中身は大きく二つあり、一つは人事情報の一元化と共有化です。部署や上長への共有がうまくできていなかっただけでなく、人事部内でも複数チームがあり情報が散在していましたが、タレントパレットで一元化することで共有化もでき、効率化も図ることができました。そしてもう一つは、目標設定と評価制度の改善が行えたことです。海外に駐在している従業員や出向している従業員もおりますが、クラウド型のシステムのため、同様の仕組みで対応ができることが評価された点です。また、システムをただ導入すれば良いというわけではありませんから、人事としてどうしていきたいかということは勿論のこと、各部署での活用にあたってはどうするか、またベンダー側への開発要望など多くの調整を行い、システム導入だけでなく仕組みを変えたことが今回の社内表彰につながったと考えています。

会社の中期経営計画に則った戦略人事へ
ローテーションや組織構成の議論にもタレントパレットを活用

― 経営層の方から見て、導入の成果についてどのようにお考えでしょうか?

藤本様

二つメリットがあったと思います。一つは、従業員に向けて、こうしたシステムを新たに活用することでしっかりと人事制度の運用改善に取り組みますということが示せたこと。もう一つは、このタレントパレットにどういう機能があって、どういうことができるのかということを確認する中で、評価管理制度の徹底だけでなく、会社の中期経営計画に則って会社がどう進むのか、どう事業を行っていくのかに基づき、どのような人材が必要となるのかということを明確にして、それに向けた採用や育成、最適配置、異動などの戦略人事ができるようになると感じました。

佐藤様

戦略人事やタレントマネジメントなど、やりたいことは今までもありましたが、それまで人事が使っていたデータは使いづらかったり、データの引っ張り方もよくわからなかったりで、結局は表計算ソフトで管理していました。また、分析・比較するにはデータを集めるところから始めなければならず、なかなか手が出ませんでしたが、これらのアナログのデータをタレントパレットで一元化することで、皆が自分の手元で検討できるのではないかと思いました。

株式会社トクヤマ 人事グループ 主幹 佐藤 厚秀 様              

藤本様

顔と名前が一致するだけでも全然違いますね。今まで表計算ソフトで名前と略歴などの一覧を見ていたので、タレントパレットを使うことで簡単に従業員の顔と名前が一致し、情報もわかるので、議論する上ではすごくスムーズになったと思います。

佐藤様

人事はかなり使い始めていて、従業員の意識調査であるとか、アンケート機能を使って研修や説明会の日程調整に使ったりしていますが、組織的な滞留年数などもパッと見せることができますし、等級別に従業員を並べかえてキャリアを見ることができるので、私も人事担当者として各部署の部長とローテーションや組織構成について議論する時にはタレントパレットの機能を使ってデータを見せながら打ち合わせを行っています。また、そのような機会を設けることで、各部署長もタレントパレットを使えばこういう機能でこうしたものが見られるということを少しずつ認識してもらえているところです。

タレントパレットはドラッグ&ドロップで簡単に人事異動をシミュレーション。社員の入社年度や経験職種によって色分けするなど、属性を見える化することで検討時の情報共有も容易になる。

藤本様

我々の場合は5年ごとに中期経営計画を立てております。注力する事業に応じて、例えば海外売上髙比率の目標を今より高いものにしていきたいとすれば、海外で積極的にビジネスができる人材がもっと必要になりますし、採用から教育体系の部分でも考えていかなければなりません。事業展開に応じて必要な人材を育てていくことが必要になりますが、その中で我々の行っている施策が人事として独りよがりになっていないかということも定期的にモニタリングする必要があると思っています。タレントパレットで従業員の意識調査やエンゲージメントなどを定期的に実施し、モニタリングしながら活用していきたいと思っていますし、タレントパレットに大いに期待もしています。

より良い企業へと飛躍するために
従来の考えにこだわらず、柔軟な発想で取り組んでいきたい

― 今後、タレントパレットを活用して進めていきたい施策や目標はありますか?

小早川様

これまでは人材情報を各職場の上長にあまり公開できていなかったのですが、ようやくデータも集まり、権限設定も整理できつつあるので、段階的に情報を開示していきたいと考えています。これまで以上に部下の育成を考え、他部署とも情報交換しながらジョブローテーションに活用してもらえるようにタレントパレットの活用を進めていければと思います。

藤原様

単なる人事評価のシステムにするつもりはありません。人材育成などに寄与するだけでなく、組織開発に役立てたいと考えています。それもあり、タレントパレットで従業員に意識調査のアンケートも実施していますが、より組織に貢献できるような組織風土の醸成に活用できないかと思っています。そのために、目標設定や評価を通して土壌を作る、この組織にいたらなりたい自分になれる、成長できると感じてもらえるのも大事でしょうし、タレントパレットでは適性検査や組織診断の機能もついているので、組み合わせながらより良い企業になるために寄与する、そんな使い方をしていければと思います。そのためには、我々が従来からの考え方に凝り固まっていては、そこまで飛躍できないと思うので、より柔軟な発想で取り組んでいくことで、タレントマネジメントもタレントパレットもより活用できるのではないかと思っています。