人事の未来を、ともに考える~|HR Future Insight|Vol.01

HR Future Insight創刊号をお届けします。
HR未来共創研究所は、設立から1年を迎えました。多くの方々とのネットワークが広がっていることに、心より感謝申し上げます。
皆様とのコミュニケーションをより深めるべく、本連載では、HR未来共創研究所が蓄積してきた知見をもとに、人事の未来を皆様とともに考える場にしていきたいと思います。
どうぞよろしくお願い申し上げます。
HR未来共創研究所
所長 藤元健太郎
※HR未来共創研究所は、株式会社プラスアルファ・コンサルティングとD4DR株式会社が共同運営する「人事の未来を考えるシンクタンク」です。
2026年、生成AIは私たちの働き方を急速に変えつつあります。
AIは「答えを出す」能力において、すでに多くの領域で人間を凌駕し始めました。
それでは、AI時代となって、人間はどのような役割を果たすべきなのでしょうか。
創刊号では、150年続いた教育の常識を問い直し、AI時代に求められる「問いを立てる力」の重要性について考えます。
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▼ 今月のテーマ
【藤元健太郎の視点】
「問いを立てる力」が人材の価値を決める時代
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AIのIQは「140」へ。ホワイトカラーを凌駕する知能の衝撃
2022年のChatGPT 3.5リリースがもたらした衝撃から4年、生成AIはいよいよホワイトカラーの業務へと本格的に組み込まれる段階に入りました。
一部のIQテスト調査によれば、現在の生成AIのIQはすでに140を超えており、これは人間のトップ0.135%に位置する知能水準に相当します。日本の人口に換算すれば、AIを知性で凌駕できる可能性を持つ人は、わずか16万6千人にすぎません。すなわち、大多数の日本人はすでにIQの面でAIに追い抜かれているのです。
さらに、これまでの「問いに答えてもらう」という受動的な活用から、今後はAIエージェント化が進むことで、自律的にタスクを遂行する時代へと移行していきます。社内会議のための資料作成といった典型的なホワイトカラー業務がAIに代替されるだけでなく、そもそも現在の形の社内会議が必要なのかという問い自体にまで、AIの介入は及ぶでしょう。
人間に求められる役割は「問いを立て続ける」こと
これまでのビジネスの世界では、人間が業務を担うために最適化された組織やワークフローが構築されてきましたが、AIの登場により、業務遂行に必要なデータが改めて定義され、AIが最大限に活用できるワークフローへと全体最適される時代が来るでしょう。その時、人間に求められるのは、「問いを立て続ける」ことに他なりません。
パーパス・ミッション・ビジョン・バリューの不断の問い直し、活動市場の再定義、利潤を生む事業と業務オペレーションの再構築——これらを高速かつ飽くなき姿勢で繰り返すことが、人間によるマネジメントの本質となります。
それはすなわち、課題を解決する力よりも、課題を発見する力の方が重要になるということです。正しい答えを見つける能力を育むというこれまでの教育の根本的な前提さえも、問い直されることになるでしょう。正解が存在するものはAIで十分です。正解が存在しないことに対して問いを立て、仮説を構築し、検証し、意思決定し続けること——それが人間の役割になるのです。
もはやアイデアの発想やユニークな創造性でさえ、AIは侵食しつつあります。人間に求められるのは、新たな価値を探求し、創造的破壊を繰り返す「プロデューサー」であり「アントレプレナー」としての立場——つまり、創造性そのものではなく、実際の価値の創出者としての地位を確立することなのです。
リアルな現場オペレーションについては、コスト面も含めたロボティクスの普及にはまだ時間を要するため、今後10~20年は人間が介在し続けることになります。生産年齢人口が減少する日本において、ブルーカラーの必要性はむしろ高まっていくでしょう。
その一方で、ヘッドクォーターの業務や組織は、今後数年で劇的に変容することが確実視されています。AI時代を見据えた新しい人材像の定義とフォーメーションの再構築は、今まさに取り組むべき喫緊のテーマです。
経産省「未来人材ビジョン」が示す能力転換
経済産業省の「未来人材ビジョン」は、生成AI普及以前の3年前の段階において、管理職層への調査結果として、求められる能力が「注意深さ・ミスがないこと」「責任感・まじめさ」「信頼感・誠実さ」から、2050年に向けては「問題発見力」「的確な予測」「革新性」へとシフトすることを明示しています。
これから求められる人材像

(出所)経済産業省「未来人材ビジョン」(令和4年5月)
業務スキルベースのこれまでの人材育成戦略は、本質的な見直しを迫られています。AIによってITのハンドリングが容易になった一方で、それはむしろホワイトカラー全員にITスキルとリテラシーが改めて不可欠になることを意味します。多くの日本企業でDX(デジタルトランスフォーメーション)がいまだ推進途上にある中、AX(AIトランスフォーメーション)としての戦略の見直しと転換もまた喫緊の課題となりつつあります。
AI活用の推進は現場に委ねるとしても、AIによる経営戦略の抜本的な見直しは、経営層が主導しなければ前には進みません。それは、人的資本経営戦略の再構築そのものなのです。
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