360度評価とは?メリット・デメリットと導入目的を解説|失敗・成功事例も紹介


360度評価とは?メリット・デメリットと導入目的を解説|失敗・成功事例も紹介

360度評価とは、上司だけでなく同僚や部下など、複数の立場からのフィードバックを通じて、社員の行動やマネジメントを多角的に可視化する評価手法です。

360度評価を導入することで、「評価が上司の主観に左右されている」「日常の行動や周囲への貢献が正当に評価されていない」「管理職のマネジメント課題が見えにくい」といった人事・現場双方の悩みを解消できる可能性があります。

本記事では、360度評価の基本的な仕組みや2つの方式、導入目的、メリット・デメリットについて解説します。さらに、よくある失敗原因や成功事例、円滑に運用するためのポイントまでを体系的に解説します。
360度評価を単なる評価制度で終わらせず、人材育成や組織改善につなげたい企業には、評価結果をデータとして蓄積・分析できる「タレントパレット」がおすすめです。評価データを人材情報と掛け合わせることで、行動変容や育成効果を可視化し、制度を形骸化させない運用を実現できます。

ぜひ本記事を参考に、自社に合った360度評価の導入と定着を検討してみてください。

360度評価とは?

360度評価とは評価対象者の上司だけでなく、同僚や部下など幅広い立場の人物が多角的に評価する手法です。働き方の多様化する近年において、注目されている評価方法のひとつです。現在リモートワークを導入する企業が増えており、上司だけからの評価方法では適正に判断しにくくなっています。

また、組織構造が年功序列の「ピラミッド型組織」から、成果や貢献度を重視した「フラットな組織」に変化しています。働き方や組織構造の変化に対応するためには、特定の上司による評価ではなく多面的な意見が反映される360度評価が有効です。
特定の上司のみから評価される制度と比べ、多角的な意見が取り入れられる360度評価は公平性を保ちやすいため、評価対象者が納得感を得られやすいです。

360度評価の2つの方式


360度評価には、以下の2つの方式があります。
●      記名式
●      匿名式
 
この章では、2つの方式のメリット・デメリットを紹介します。「評価者が特定されない」ことを重視したい場合は匿名式が有効ですが、それぞれのメリット・デメリットを理解して選択しましょう。
 

記名式

記名式は、評価者の名前を記載して実施する方法です。記名式のメリットとデメリットは、以下のとおりです。
【メリット】
●      評価責任が可視化されることで無責任な評価が減る
●      正確な評価を得やすい
●      心理的安全性を担保することでコミュニケーションの活性化が期待できる
 
【デメリット】
●      評価に忖度が入って透明性や公平性が損なわれる
●      評価前に根回しを行う可能性がある
●      人間関係が悪化する恐れがある
 
記名式の場合、評価に対する責任が可視化されるため無責任な内容が減り正確性が高まります。しかし評価に慣れていない従業員も多いため、心理的な負担が増してデメリット面が強く出る場合がある点には注意が必要です。
 

匿名式

匿名式は、評価者の名前を伏せて実施する方法です。匿名式のメリットとデメリットは、以下のとおりです。
【メリット】
●      本音の評価を得やすい
●      気兼ねなく評価ができる
●      心理的な負担が少なくなる
 
【デメリット】
●      個人批判になる恐れがある
●      感情的な評価になりやすい
●      評価責任が希薄になる
 
匿名式を採用した場合「評価者が特定されるかもしれない」という心理的負担が減少し、本心からの評価を得やすいメリットがあります。一方で評価に対する責任が希薄になるため、批判的または感情的な内容にならないよう注意が必要です。

360度評価を導入する目的


ここでは、360度評価を導入する際に掲げるべき、主要な目的について解説します。
 
360度評価を導入する目的は、主に次のとおりです。
●      公平な人材育成と行動変容を促進するため
●      評価への納得感を高め社員エンゲージメントを向上させるため
●      多角的に組織課題を発見し改善につなげるため
 

公平な人材育成と行動変容を促進するため

360度評価の目的は、評価によって序列を決めることではなく、対象者の自律的な成長と行動変容を促すことです。
上司による一方向の評価では、成果は見えても、日々の行動や周囲への配慮、マネジメントの実態まで十分に把握できない場合があります。その結果、上司の前では問題が見えにくい行動が見過ごされてしまうのです。
360度評価では、同僚や部下からのフィードバックによって、自己認識と他者評価のギャップが明確になります。この気づきが、自ら改善しようとする意識を生み、行動変容につながります。
 

評価への納得感を高め社員エンゲージメントを向上させるため

評価制度への不満は、「評価基準が不透明」「上司の主観に左右されている」といった納得感の欠如から生じやすくなります。
360度評価では、複数の立場からの意見を取り入れることで、特定の評価者の主観に依存しにくい仕組みを実現します。数値目標に表れにくい周囲への支援や調整役としての貢献も評価対象となりやすく、「自分の働きを見てもらえている」という安心感が生まれます。
この納得感は、組織への信頼や帰属意識を高め、社員エンゲージメントの向上につながります。結果として、モチベーションの維持や離職防止といった効果も期待できます。
 

多角的に組織課題を発見し改善につなげるため

360度評価の特徴は、個人へのフィードバックにとどまらず、集計・分析によって組織全体の課題を把握できる点です。
部署別や役職別にデータを俯瞰することで、特定の部門で評価が偏っている傾向や、管理職層に共通する弱点を定量的に把握できます。たとえば、部下からの評価が低い部署があれば、マネジメント上の問題を早期に察知できます。
また、全社的に不足している行動特性が明確になれば、研修内容や人材配置の見直しにも活用できます。評価結果を組織開発に結びつけることで、制度運用の効果を高められるでしょう。

360度評価と他の評価手法との違い


ここでは、360度評価と、企業で一般的に導入されている他の人事評価手法との違いについて紹介します。
●      180度評価(上司・自己)
●      MBO(目標管理)
●      ピアレビュー(同僚評価)
 

180度評価(上司・自己)との違い

180度評価は、上司と本人による評価で完結する一般的な手法です。一方、360度評価は、同僚や部下といった第三者の視点を加えることで、上司の目が届かない行動を可視化する手法です。
近年は、リモートワークの普及やプレイングマネージャーの増加により、上司が部下の行動を常に把握することが難しくなっています。その結果、180度評価では現場での協力姿勢や指導態度が十分に反映されない場合があります。
360度評価であれば、こうした死角の補完が可能です。成果評価としての180度評価と、行動把握を目的とした360度評価を併用することで、評価の納得感が高まります。
 

MBO(目標管理)との違い

MBOは、期初に設定した目標に対する達成度といった成果を評価する手法です。一方、360度評価は、成果に至るまでの行動や周囲への影響を評価する手法です。
成果重視の評価だけでは、短期的な結果を優先し、チームへの配慮が後回しになるリスクがあります。360度評価を併用することで、成果を出す過程での行動や組織貢献も可視化できます。
MBOで成果、360度評価で行動を評価することで、結果とプロセスの評価の両立が可能です。これにより、持続的に成果を生み出す人材育成につながります。

目標管理(MBO)とは|メリット・デメリット、実施手順や注意点・ツールの選び方を解説 | タレントマネジメントラボ

ピアレビュー(同僚評価)との違い

ピアレビューは、同僚同士が互いの仕事ぶりを評価する手法で、横の関係に焦点を当てています。一方、360度評価は、上司や部下といった縦の関係も含めて評価を行う点が大きな違いです。
ピアレビューは連携や専門スキルの評価に適していますが、マネジメントやリーダーシップの把握には限界があります。360度評価では、部下から見た上司の行動や影響も評価対象となるため、管理職の育成や組織運営の改善に活用しやすくなります。
目的に応じて手法を使い分けることが重要です。
 

360度評価を導入するメリット


ここでは、360度評価を導入することで得られる、個人および組織への具体的なメリットについて紹介します。
 
360度評価を導入するメリットは、主に次のとおりです。
●      自己評価と他者評価のギャップが可視化され内省が進む
●      上司のマネジメント行動が改善され育成の質が上がる
●      部門を超えてコミュニケーションが活性化する
 

自己評価と他者評価のギャップが可視化され内省が進む

360度評価のメリットは、自己評価と他者評価のギャップが数値として明確になり、本人の内省が深まる点です。
上司一人による評価は主観的と受け止められがちですが、複数の同僚や部下からの視点が加わることで、評価の妥当性が高まり、客観的な事実として受け入れやすくなります。自分では適切だと思っていた行動が、周囲には異なる印象を与えていたと気づくことで、行動を見直す動機が生まれます。
このプロセスにより、外部からの強制ではなく、自ら改善に取り組む姿勢が育つでしょう。人事は結果を丁寧にフィードバックし、本人の前向きな気づきを促す支援が求められます。
 

上司のマネジメント行動が改善され育成の質が上がる

管理職のマネジメント行動は、上位者からは把握しにくく、課題が見えづらい領域です。
360度評価では、部下や同僚からのフィードバックを通じて、現場での接し方や指導方法が明らかになります。これにより、指示の具体性や相談しにくい雰囲気など本人だけでは気付きにくい、具体的な改善点を把握できます。
管理職自身が自らの行動を客観的に理解することで、マネジメントスタイルの見直しが進むでしょう。また、常に見られている意識が働くことで、不適切な言動の抑止にもつながります。結果として、部下が安心して成長できる環境が整い、育成の質を向上できるでしょう。
 

部門を超えてコミュニケーションが活性化する

360度評価に他部署のメンバーを評価者として含めることで、社員の行動は自部署中心から全体最適を意識したものへと変化します。
評価項目に他部署への協力姿勢が含まれることで、情報共有や連携を意識した行動が増えます。これにより、縦割りになりやすい組織構造の中でも、部門を超えたコミュニケーションが活性化されるのです。
 
また、フリーコメントを通じて感謝や評価が伝えられることで、互いの貢献を認識する機会が増えます。この積み重ねにより、協力し合う文化の醸成につながり、組織全体の関係性を良好に保つ効果を生むでしょう。

360度評価を導入するデメリット


ここでは、360度評価の導入時につまずきやすい3つの主要なデメリット(リスク)について紹介します。
 
360度評価を導入するデメリットは、主に次のとおりです。
●      主観・バイアスが入り評価のブレが起きやすい
●      忖度・仲良し評価・報復不安で回答の質が落ちる
●      設問・回収・集計・面談で運用工数が増えやすい
 

主観・バイアスが入り評価のブレが起きやすい

360度評価では、評価の専門家ではない社員が評価者となるため、主観や感情に左右されやすくなります。
特定の印象に引きずられて全体を高く評価してしまうケースや、直近の出来事だけで判断してしまうケースが代表的です。このようなバイアスが重なると、評価結果が対象者の実態を正確に反映しなくなります。 
その結果、評価への納得感が低下し、制度への不信感を招く恐れがあります。これを防ぐためには、評価者にバイアスの存在を理解してもらうと同時に、設問を具体的な行動にもとづいた内容に限定し、解釈の幅を狭める工夫が重要です。
 

忖度・仲良し評価・報復不安で回答の質が落ちる

低評価による人間関係悪化や報復を恐れることで、本音を避けた無難な回答が増えやすくなります。とくに、評価結果が処遇に影響すると認識されると、忖度や仲良し評価が常態化する可能性があります。
一方で、匿名性を悪用した過度な低評価が行われるリスクも否定できません。これらを防ぐためには、導入初期は育成目的に限定することを明確にし、評価者が安心して回答できる環境を整える必要があります。
 

設問・回収・集計・面談で運用工数が増えやすい

360度評価は、多数の評価者が関与するため、運用工数が大きくなりやすい制度です。
評価者の選定や回答回収、未回答者への対応、集計作業など、人事担当者の負担は増加します。現場社員にとっても、評価入力の件数が多いと通常業務に支障をきたし、回答の質が低下する恐れがあります。
また、結果を本人に伝えるためのフィードバック面談にも時間が必要です。手作業での運用には限界があるため、対象者を絞るなど段階的に導入する工夫が求められます。
 

360度評価が失敗する主な原因


ここでは、360度評価の導入において多くの企業がつまずく、典型的な5つの失敗原因について紹介します。
 
360度評価が失敗する主な原因は、次のとおりです。
●      目的が曖昧なまま運用を開始する
●      評価者への教育・研修が不足している
●      過度な設問数により回答負担が増大する
●      結果を活かさず返却で終わり制度が形骸化する
●      匿名性の不徹底に伴う誹謗中傷・報復不安が発生する
 

目的が曖昧なまま運用を開始する

360度評価が失敗する要因は、導入目的が社内で共有されていない点です。
表向きは育成目的と説明しながら、実際には処遇への影響を示唆すると、社員は強い不信感を抱きます。その結果、低評価による不利益を恐れて無難な点数を付け合う状態が生まれ、本音のフィードバックが集まらなくなります。
このような状況では、どれだけ手間をかけても有益なデータは得られません。導入初期は結果を処遇に反映しないと明確に示し、成長支援のための制度であると断言することが不可欠です。
 

評価者への教育・研修が不足している

360度評価では、多くの一般社員が評価者となるため、評価に対する知識や経験の不足が問題になりやすいです。
事前の教育がないまま実施すると、印象に引きずられた評価や、差をつけることを避けた平均的な評価が増えます。また、自由記述欄でも感情的な表現や抽象的なコメントが目立ち、建設的なフィードバックにならない場合があります。
評価結果の公平性が損なわれると、制度への不満が高まる原因となります。こうした事態を防ぐためには、評価エラーの存在を理解してもらい、具体的な行動にもとづいて評価する姿勢を浸透させる研修が必要です。
 

過度な設問数により回答負担が増大する

設問数を増やしすぎることも、360度評価が失敗する大きな原因です。
ひとりの社員が複数名を評価する仕組み上、設問が多いと回答負担は増加します。評価項目が多すぎると、面倒になり、同じ点数を付けてしまう可能性があります。
これを防ぐには、評価項目を重要な行動特性に絞り込み、回答が負担にならない設計が求められます。
 

結果を活かさず返却で終わり制度が形骸化する

評価結果を本人に返却するだけで終わらせるのは、360度評価を形骸化させる典型例です。
評価を成長につなげるには、結果返却と同時に対話の場を設ける必要があります。上司や人事が評価内容を一緒に読み解き、今後の行動改善について話し合うことで、360度評価の効果が発揮されます。
 

匿名性の不徹底に伴う誹謗中傷・報復不安が発生する

匿名性が確保されていないと、360度評価に対する信頼を損ないます。回答者が特定される可能性があると、評価者は本音を避けるようになります。また、評価者探しが始まることで、人間関係が悪化する恐れもあります。
一方で、匿名性を悪用した誹謗中傷が発生するリスクも否定できません。これらを防ぐには、少人数の場合は集計を行わないなどの明確なルールを設け、コメント内容も人事が確認する体制が必要です。
 

360度評価の失敗事例


ここでは、360度評価の運用において実際に発生した失敗事例(トラブル)について紹介します。
 
360度評価の失敗事例は、主に次のとおりです。
●      記名式を採用してしまうケース
●      フリーコメントが具体的すぎて評価者が特定されるケース
●      守秘義務が徹底されておらず情報が漏れるケース
●      評価者の素性が伝わり、社員同士の関係が悪化するケース
●      「バレるのが怖い」と評価が遠慮がちになってしまうケース
●      評価が偏り、社員のモチベーションが低下してしまうケース
●      評価制度自体が機能しなくなるケース
 

記名式を採用してしまうケース

記名式は責任ある回答を促す側面がありますが、日本企業では「批判すると不利益があるのではないか」という不安が大きいです。その結果、評価者は無難な賞賛コメントや高評価を付け合い、改善点が出にくくなります。
導入初期は匿名を前提とし、本音を書いても安全である環境を整えることが不可欠です。
 

フリーコメントが具体的すぎて評価者が特定されるケース

匿名で実施していても、フリーコメントが具体的すぎると評価者が特定される恐れがあります。
日時や案件名、会議の詳細などが含まれると、対象者が容易に書き手を推測できてしまうためです。実際に、改善要望を書いた部下が特定され、その後の関係が悪化した事例もあります。
これを防ぐには、個人特定につながる情報を書かないルールを明確にし、人事がコメントを事前確認して表現を調整するプロセスを設けることが重要です。
 

守秘義務が徹底されておらず情報が漏れるケース

運用側による情報漏洩は、制度への信頼を一瞬で崩壊させます。
評価内容を知り得る立場の人が、雑談の中で評価者の存在を示唆すると、言われた側は強い不信感を抱きます。一度でも情報漏洩が起きると、「秘密が守られない制度」という認識が広まり、次回以降は本音が書かれなくなるでしょう。
評価データは極めて機密性の高い情報として扱い、閲覧権限の制限や守秘義務の徹底が不可欠です。
 

評価者の素性が伝わり、社員同士の関係が悪化するケース

厳しい評価を受けた対象者が犯人探しを始め、職場の雰囲気が悪化するケースもあります。
コメントの言い回しなどから評価者を決めつけ、業務上の態度が冷たくなるなどの報復行動が発生することがあります。
これを防ぐには、少人数部署では結果を合算する、コメント表現を人事が整えるなど、物理的に特定できない仕組みが必要です。
 

「バレるのが怖い」と評価が遠慮がちになってしまうケース

評価者の匿名性が担保されていないと、忖度した評価が発生します。
とくに、権限をもつ上司に対しては、実態と異なる高評価が集まりやすくなります。その結果、問題が表面化せず、改善の機会を失ってしまうでしょう。
誰が誰の評価をしたかわからない仕組みを明確に示し、安心感を周知することが重要です。
 

評価が偏り、社員のモチベーションが低下してしまうケース

評価者の主観や好みに左右された評価が行われると、対象者は不公平感を抱きます。
業務行動ではなく性格や印象で評価されると、「正当に見てもらえていない」と感じ、意欲を失います。これが続くと、優秀な人材の離職にもつながるでしょう。
評価項目を具体的な行動にもとづいた内容に限定し、評価者に印象評価を避ける意識をもたせることが必要です。
 

評価制度自体が機能しなくなるケース

複数の問題が積み重なると、360度評価は形骸化します。
目的が曖昧で負担が大きく、結果も活かされない状況では、社員は真剣に取り組まなくなります。回答率や内容の質が低下し、制度は単なる年次作業になるでしょう。
制度を維持するには、毎年運用を見直し、評価が行動改善につながった実感を積み重ねることが重要です。
 

360度評価の成功事例


ここでは、360度評価を導入し、組織風土の改善や人材育成に成功した企業の具体的な取り組みについて紹介します。
 
360度評価の成功事例は、主に次のケースです。
●      評価項目を行動レベルで明確化して評価精度を高めたケース
●      匿名性の仕組みを整えて安心して回答できる環境を作ったケース
●      評価者選定をルール化し公平性を確保したケース
●      周知・コメント指導・面談など運用フローを標準化したケース
●      結果を育成と組織改善に活用して効果を高めたケース
 

評価項目を行動レベルで明確化して評価精度を高めたケース

成功企業では、評価項目を抽象的な性格表現ではなく、具体的な行動レベルで定義しています。
たとえば「責任感がある」などの設問は評価の解釈がばらつきますが、評価尺度(行動アンカー)を用いることで状況と行動を基準に評価できるようになります。
評価者は事実にもとづいて判断しやすくなり、評価される側も改善すべき行動を具体的に理解できます。
 

匿名性の仕組みを整えて安心して回答できる環境を作ったケース

360度評価を定着させた企業では、匿名性を担保する仕組みを整えました。
●      回答データを社内に残さず外部で集計する
●      少人数部署では他部署とあわせて集計する
 
このような、個人が特定されない環境を構築することで、評価者が安心して本音を書けるようになりました。
 

評価者選定をルール化し公平性を確保したケース

評価者選定を本人任せにせず、明確なルールを設けた企業では、評価の公平性が向上しました。
一定期間内に業務で関わった人を必須条件とし、上司・同僚・部下の比率を固定することで、利害関係の偏りを防いでいます。
 
さらに人事が関与することで、仲良し評価を抑制しました。
この仕組みにより、多角的なフィードバックが集まり、評価の信頼性が高まりました。
 

周知・コメント指導・面談など運用フローを標準化したケース

制度を文化として根付かせた企業では、運用フローを標準化しています。
評価者には事前研修で具体的なコメントの書き方を指導し、感情的な批判を防ぎました。管理職にはフィードバック面談の進め方を共有し、対話の質を高めています。
これにより、評価結果が将来の行動改善に向けた建設的な話し合いに活用されるようになりました。
 

結果を育成と組織改善に活用して効果を高めたケース

先進的な企業では、360度評価の結果を組織改善にも活用しています。
個人の評価にとどめず、部署や職層ごとに集計して傾向を分析しました。その結果をもとに、特定部署の管理職研修や育成施策を重点的に実施しています。翌年には評価スコアが改善し、離職率の低下にもつながりました。
データを継続的な改善サイクルに組み込むことで、制度の効果を最大化しています。
 

360度評価を円滑に運用するポイント


360度評価の匿名性を向上させる方法はありますが、完全に「バレる」のを防ぐことは難しいでしょう。そこで万が一評価者が誰かが対象者にバレてしまっても、前向きに受け入れられるようにすることが大切です。

目的を理解してもらう

360度評価を実施する際は、導入前から目的を明確にしておくことが重要です。「なぜ360度評価を導入するのか」を全社員に周知し、評価する側・される側が納得して取り組める体制を整えましょう。
評価対象者は「誰が評価したか」ではなく「自分の強み・弱み」に注目して、自身の成長機会だと認識してもらう必要があります。
また対象者の成長につながる評価の仕方や、納得を得られるコメントの書き方をするように周知しておくことが大切です。事前に研修や質疑応答の場を設け、360度評価を実施する目的を正しく理解してもらいましょう。
 

誹謗中傷を避ける

改善が必要なことや不足していることなどを伝える際は、相手を傷つける言い方・表現は避けましょう。360度評価の目的は、評価対象者をさまざまな目線で評価して成長を促すことです。
誹謗中傷のような内容になってしまえば、相手はショックを受けて自信が持てなくなります。個人的な主観だけで評価するのではなく、相手を客観的にみることの重要性を評価者に理解してもらうことが大切です。
 

フィードバックを充実させる

360度評価を行ったあとは、社員へのフォローを行い行動改善を促していく必要があります。評価制度では、結果を伝えるだけでは不十分です。大切なのは、社員の成長につながるフィードバックです。
不足している部分と高く評価しているポイントを具体的に伝え、対象者が前向きに捉えられるフィードバックを行いましょう。充実したフィードバックを行い、社員の納得感を高めて前向きに行動改善できる環境を作ることが大切です。

360度評価に関するよくある質問


ここでは、360度評価について、よく寄せられる疑問に回答します。
 

360度評価は通常の人事評価と何が違うのですか?

人事評価は、上司が成果や業績を評価し、処遇を決めることが主目的です。一方、360度評価は、同僚や部下の視点を通じて日常の行動やプロセスを振り返り、成長につなげることが目的です。
360度評価では数字に表れにくい協力姿勢や問題行動も把握できるため、通常評価を補完する役割を果たします。両者を併用することで、成果と行動の両面を評価できるでしょう。
 

360度評価はどの職種・役職に向いていますか?

360度評価は幅広い職種に適用できますが、効果が出やすいのは管理職です。
管理職は自分のマネジメントを指摘される機会が少なく、課題に気づきにくい立場にあります。部下からの匿名フィードバックは、接し方や指導方法を見直す貴重な材料になります。
 

360度評価を実施する適切な頻度はどれくらいですか?

一般的に適切とされる頻度は、年1回です。
360度評価の目的である行動変容には一定の時間が必要であり、短期間で繰り返しても変化が見えにくくなります。頻度が高すぎると、評価者の負担が増え、回答の質が低下する恐れもあります。
年1回を定点観測として実施し、その間は1on1などで進捗を確認する運用が、負担と効果のバランスが取れた方法です。
 

360度評価を導入するなら「タレントパレット」がおすすめ!


360度評価は、上司ひとりの視点に依存しがちな従来の評価制度では捉えきれなかった行動やマネジメントの実態を可視化し、人材育成や組織改善につなげるための有効な手法です。自己評価と他者評価のギャップに気づくことで、社員の内省や行動変容を促せる点が特長です。
 
360度評価を成功させるためには、目的を明確にし、設問設計や運用フロー、フィードバックまでを一貫して設計することが欠かせません。
360度評価を継続的な人材育成に活かすには、評価結果を蓄積・分析し、次のアクションにつなげられる仕組みが重要です。

大手エンタープライズ・中堅企業シェアNo.1(*)「タレントパレット」であれば、360度評価の結果を人材データと統合し、管理職育成や組織課題の可視化まで一気通貫で対応できます。
360度評価を導入し行動改善と組織成長につなげたい企業は、制度設計とあわせてツール活用も検討し、評価を人材戦略の武器として活かしましょう。
 
(*)出典 ITR「ITR Market View:人材管理市場2026」人材管理市場:ベンダー別売上金額シェア(2024~2025年度予測) 

この記事の監修者

蒲谷崇

株式会社プラスアルファ・コンサルティング

執行役員

【保有資格】

事業会社の人事・総務部門、社労士法人や人事向けシステムベンダーなど約20年に渡って、人事労務、タレントマネジメント分野に従事。

社労士法人では、労務アドバイザリー業務を担当、タレントマネジメントベンダーでは約12年間、企画、営業など幅広く担当し、市場の黎明期からシステムの普及を牽引。現在は、コンサルティング部門の責任者として、金融、自動車、メーカー、電力・エネルギー等のエンタープライズ企業のタレントマネジメント導入プロジェクトを多数推進している。

HRカンファレンスへの登壇など講演活動や記事執筆に精力的に取り組み、幅広く情報発信を行う。「HR未来共創研究所」の研究員としても活動し、2025年より執行役員に就任。