エンプロイーエクスペリエンスを高める方法7選!注目されている背景や取り組みに成功した事例を紹介


エンプロイーエクスペリエンスを高める方法7選!注目されている背景や取り組みに成功した事例を紹介

エンプロイーエクスペリエンスとは、社員の体験を意味します。エンプロイーエクスペリエンスを高めることにより、企業としても社員の定着率アップなどのメリットが得られます。この記事では、エンプロイーエクスペリエンスとは何なのか、エンプロイーエクスペリエンスを高める方法などを解説するため、ぜひ参考にしてください。

エンプロイーエクスペリエンスとは?エンプロイーサクセスとの違いも解説

近年、企業の人材戦略において注目されているのが「エンプロイーエクスペリエンス」です。この章ではエンプロイーエクスペリエンスの基本的な考え方に加え、エンプロイーサクセスとの違いや組織づくりに活かされるかについて解説していきます。


エンプロイーエクスペリエンスとは

エンプロイーエクスペリエンスとは「Employee Experience」のことで、EXとも略されます。日本語に直訳すると「社員の経験」となります。具体的にいうと、社員が職場で働くことにより得られる経験価値のことです。


エンプロイーエクスペリエンスは社員が職場で経験できる要素すべてを指しており、具体的な例としては以下のような内容があげられます。


  • 社員が会社組織で得た経験
  • 健康状態
  • スキルアップ
  • 社員の満足度


エンプロイーエクスペリエンスは、カスタマーエクスペリエンス(顧客体験)などのマーケティング的な概念が人事領域にも派生し、生まれたものです。社員の組織への愛着や満足度を高めて、生産性を向上させようという考え方です。


エンプロイーサクセスとの違い

エンプロイーサクセスとは「Employee Success」のことで、日本語に訳すと社員の成功となります。社員一人ひとりが成功し、成果を上げられるように支援する考え方です。個人の目標達成やスキルの向上などをサポートすることで、本人の「成功体験」を生み出していくのがポイントです。エンプロイーエクスペリエンスは「働きやすさ」、エンプロイーサクセスは「成果を出せる支援」を指します。良質なエンプロイーエクスペリエンスがあることで、エンプロイーサクセスを実現できると言えます。


エンプロイーエクスペリエンスに取り組む4つの目的

人材の採用・定着・活躍がますます難しくなる中で「社員が長く、いきいきと働いてくれる企業」になるための取り組みとして、エンプロイーエクスペリエンスが重要視されています。この章では、エクスペリエンスが人事の課題を解決につながる取り組みであることを解説します。


エンゲージメント向上

エンゲージメントとは、社員の仕事または組織への関与度やモチベーションを指します。単なる満足度ではなく「この会社で働き続けたい」「貢献したい」と感じ、自発的に力を発揮する気持ちのことです。エンゲージメントが高い組織では個々のパフォーマンスが上がるだけでなく、離職率の低下や職場の雰囲気の改善にもつながります。エンプロイーエクスペリエンスの向上は社員の「働きがい」や「安心感」を高め、エンゲージメントを育てる土台づくりが可能です。


優秀な人材の確保

少子高齢化に伴い労働人口の減少が著しく進んでいるため、人手不足に悩む企業は多いです。特に優秀な人材を確保するためには、採用活動の際に「働きやすい環境」や「やりがいのある仕事」であることを認知してもらう必要があります。また現在は終身雇用にこだわらず、転職を視野に入れて働く人も増えています。


近年は人材の流動性が高まっており、企業は優秀な人材を確保するための努力が必要です。エンプロイーエクスペリエンスは「働きやすさ」や「やりがい」を醸成し、社員の定着率向上に貢献する取り組みです。既存社員がやりがいをもって働いている企業は、外部からも魅力的な会社に映るので採用活動も有利になります。


働き方改革の一環

現在の日本では、介護や育児が理由で長時間働けない人が増加しています。このような状況下で人材確保と定着率を高めるためには、社員に寄り添い多様な働き方を選択できる環境を作ることが大切です。働き方改革とは、それぞれの事情に合わせて多様な働き方を選択できる社会を作るための取り組みです。働き方改革のポイントとして、以下のようなことがあげられます。


  • 長時間労働の是正
  • テレワークや時短勤務など個々に合わせた働き方の実現
  • 雇用形態にとらわれない公正な待遇を確保


働き方改革は、社員のワークライフバランスとも密接に関係しています。「社員の心身の健康」や「仕事へのやりがい」など、働く中で得られるすべての経験を指すエンプロイーエクスペリエンスは働き方改革とも共通する部分が多いです。そのため働き方改革を実現するためにも、エンプロイーエクスペリエンスの向上が欠かせません。


収益向上につながる組織作り

労働環境や職場の人間関係は生産性に影響を与えると考えられており、企業収益にも直結する重要な要素です。働きやすく雰囲気のいい職場は従業員同士のコミュニケーションが活発になることに加え、心理的安全が与えられることにより本来の能力を十分に発揮できる環境が作られます。


また働きやすい環境であれば高いモチベーションを維持して業務を行えるので、生産性の向上が期待できます。さらに仕事に対する「やりがい」をもてることで、従業員の帰属意識が高まり定着率が向上が期待できるでしょう。離職率の改善や生産性の向上は企業収益アップにつながるとして、エンプロイーエクスペリエンスを注力する企業が増えています。


エンプロイーエクスペリエンスを高める方法7選

エンプロイーエクスペリエンスが浸透しつつある中で、実際には何から始めればいいのか分からないと感じている方も多いのではないでしょうか。この章では現場で実践しやすい方法を紹介し、エンプロイーエクスペリエンスを高めるための具体的なアプローチを解説します。


エンプロイージャーニーマップの活用

エンプロイージャーニーマップとは、人材の募集から採用、社員の退職までの経験をマップにして表したものです。社員がどのようなときにどのようなエンプロイーエクスペリエンスを得るのかを整理した図で、旅行時のスケジュール表や地図などをイメージすると分かりやすいでしょう。


異動や昇進、ライフイベントなど、職場でどのような経験をし、パフォーマンスを最大化するのかをまとめたものがエンプロイージャーニーマップです。


健康経営の推進

エンプロイーエクスペリエンスを実現するには、健康経営の推進が求められます。健康経営とは、兄弟的な視点から社員の健康管理を考えることです。


社員が心身に問題を抱えていたり安定していなかったりすると、企業にとっては退職や休職といった経営的なリスクが増加します。そのため、リスクを軽減するためにも、社員の健康に配慮した施策を打たなければいけません。具体的には、以下のような施策が考えられます。


  • 有給の取得率をアップさせるための施策
  • パワハラやセクハラなどのハラスメントの是正
  • 長時間労働を防止する取り組み
  • 定期的なストレスチェックの実施


社員が安心して働けるよう、心身の健康を保ちやすい職場づくりを目指すことが大切です。


関連記事:健康経営のメリットとは?デメリットや推進ポイント・活用方法も徹底解説


従業員サーベイを実施

従業員サーベイの実施も、エンプロイーエクスペリエンスを高めるには効果的です。従業員サーベイとは社員を対象としたアンケートの一種で、社員や組織の状態を調べるために行います。これらの結果を人事施策や戦略などに活かすことで、エンプロイーエクスペリエンス向上につながりやすくなります。


従業員サーベイの種類は、以下のとおりです。


  • パルスサーベイ
  • エンゲージメントサーベイ
  • モラールサーベイ


社員の満足度や不満など、企業に対する認識を把握できます。社員の感情を定量的・定性的に把握できるため、エンプロイーエクスペリエンス向上のための課題発見につながります。


関連記事:パルスサーベイで職場改革を|メリットや実施方法・設問例まで解説


労働環境の改善

エンプロイーエクスペリエンス向上のためには、オフィス環境の改善も重要です。社員同士がコミュニケーションを取りやすい環境を構築しましょう。たとえば、社員なら誰でも利用できるカフェを設置することで社員同士のコミュニケーション活性化につながります。また一時的に仕事から離れることができるので、リフレッシュしたいときにも効果的です。適度な休憩をとれる環境を作ることで、効率的な業務遂行につながり生産性の向上が期待できるでしょう。


オンボーディングの導入

オンボーディングとは、新規採用した人材の職場配置から戦力化させるまでの一連のプログラムを指します。オンボーディングに注力することで、新入社員は組織に馴染みやすい環境構築が可能です。仕事や企業に対して愛着を持てるため、帰属意識が高まり定着率アップが期待できます。早期離職の防止やスピーディな戦力化などの効果が得られるため、採用や教育コストの軽減など企業収益向上にも貢献するでしょう。


また活躍できるスキルや知識を早く身に付けられることで、新入社員のモチベーションが高まり仕事に対する「やりがい」を見出せます。オンボーディングによって社員に成功体験を積む機会を増やすことで、エンプロイーエクスペリエンス向上につながります。


スキルアップや学習の機会を設ける

単に日々の業務をこなすだけでなく、社員自身が成長できる機会を設けることでエンプロイーエクスペリエンス向上が期待できます。現在は1つの会社に長く勤めることにこだわらず、自身のスキルアップやより待遇のいい職場を求めて転職する傾向があります。そのため企業内でスキルアップや学習の機会を設けて、高い意識を持つ社員の満足度向上を目指すことが大切です。自身の成長やキャリアアップは仕事に対するモチベーションも高まるので、研修やメンタリングなどを通してエンプロイーエクスペリエンスの向上につながります。


評価制度の見直し

企業に対する愛着や仕事へのやりがいを向上させるためには、社員の努力や成果を適正に判断する「評価制度」であることが重要です。仕事の成果や能力を適正に評価されることで、業務への意欲にもつながります。エンプロイーエクスペリエンス向上には、適切な人事評価制度が欠かせません。また現状に対する評価だけでなく、社員の今後の目標に向けて企業ができるサポートや支援を検討することも大切です。


エンプロイーエクスペリエンスにおいて重要な「エンプロイージャーニーマップ」を解説

エンプロイーエクスペリエンスでは、エンプロイージャーニーマップが重要です。ここでは、エンプロイージャーニーマップの作成方法やポイントなどを解説します。


エンプロイージャーニーマップとは

社員が仕事を通して得るあらゆる体験・経験を「エンプロイーエクスペリエンス」と呼びます。エンプロイージャーニーマップとは、社員が会社で体験することを1つの図に書き出して「見える化」したものです。エンプロイージャーニーマップを用いて各段階における社員の期待や感情を整理し、労働者目線で「どのような体験を提供するか」を検討します。


エンプロイージャーニーマップで検討する内容は、採用前の出会いの段階から退職後まで広範囲にわたります。部分的な体験価値ではなく一連の流れを正確に把握するため、エンプロイーエクスペリエンスを向上させる施策を行う際はエンプロイージャーニーマップによる可視化が欠かせません。


作成方法

エンプロイージャーニーマップの作成は、以下のような流れで行いましょう。


  1. 社員へのヒアリング、意識調査
  2. ペルソナの設定
  3. フェーズの設置、作成
  4. アクションプランの作成


まず社員へのヒアリングや意識調査を行い、現在の制度への意見や考えを聞き取ります。ヒアリングを行う際は、部署や勤続年数など属性に偏りがでないように集めることが重要です。なお、入社時期や部署によって企業の見え方が異なることを理解しておきましょう。ペルソナを設定する際は、社員が抱える課題や行動パターンだけでなく過去の経歴・趣味など詳細に設定することが大切です。ペルソナ設定では「理想の社員像」をイメージしやすいので、企業側のイメージを盛り込みすぎないよう注意しましょう。


フェーズの設定では、入社から研修・配置など退職までのステップすべてを細分化して分類します。各フェーズにおいて想定される問題や企業側への要望を洗い出し、マップに落とし込みましょう。マップに落とし込んだ課題や要望に対して、具体的なアクションプランを検討します。すべての要望を満たすということではなく、企業理念への合致や組織強化につながるプランを立てることが大切です。


エンプロイーエクスペリエンス向上に取り組む企業事例3選

この章では、実際にエンプロイーエクスペリエンス向上に取り組む企業の事例を紹介します。具体的な取り組みや社員の変化を紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。


「最高の職場作り」を一手に引き受ける部署を創設し満足度とパフォーマンスを向上

某大手民泊サイトでは人事部をエンプロイーエクスペリエンスに取り組むチームとして、社員の体験価値向上に積極的に取り組んでいます。社員の健康に配慮した社内食堂の設置や、業務を効率化する最新テクノロジーの導入など働く環境を整備し良質な体験を得られる環境作りを徹底しています。オフィスの設計や健康面のサポートなど、社員が快適に働ける環境を構築するためにトータル的にプロデュースしているのが特徴です。


人事部や総務部の仕事は通常表立つことのないバックヤード業務ですが、エンプロイーエクスペリエンスチームとして施策を実施することで社員にも取り組み内容が明確に伝わります。企業が社員のために「働きやすい環境」を提供していることに気づけるので、チームとしての一体感が生まれ組織力の向上にもつながっています。


上司と従業員の定期的な面談によりキャリア形成をサポート

某クラウドサービス開発サービスでは、週に1度上司との面談により従業員の成長をサポートすることでエンプロイーエクスペリエンス向上に成功しました。定期的に行われる面談では、自社の価値観の共有とキャリア形成を考えた働き方などを話し合います。社員が「働きやすく」「やりがい」を感じられる職場環境を作ることにつながります。


スキルアップのサポートや学習支援の実施により従業員満足度を向上

世界的にも有名な某コーヒーチェーン店では、社員に充実した「学びの場」の提供によりエンプロイーエクスペリエンス向上を目指しています。大学の学費支給やオンライン講座への参加サポートなど、社員のスキルアップまたは学習に対して積極的な支援を行っています。学びに対する支援は社員の体験価値を高めることに加えて、個々のスキルアップや能力向上に成功しました。学習の機会やスキルアップのサポートは、長期的な企業価値の向上や社会貢献にもつながると考えて取り組んでいます。


まとめ

エンプロイーエクスペリエンスとは、社員の経験価値のことです。労働人口の減少が加速化しているため、人材の確保し定着させるにはエンプロイーエクスペリエンスを高める必要があります。エンプロイーエクスペリエンス向上を目指す際には、エンプロイージャーニーマップを作成や従業員サーベイの実施などを行いましょう。


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