コンピテンシー評価の概要・作成手順・評価基準項目サンプル・注意点・活用シーンを紹介!


コンピテンシー評価の概要・作成手順・評価基準項目サンプル・注意点・活用シーンを紹介!

人事評価基準にコンピテンシー評価を取り入れる企業が増えています。この記事では、人事課題の現状を知りたい人事担当者を対象として、コンピテンシー評価の概要やメリット・デメリット、評価基準作成法や注意点、活用シーンについて解説します。
コンピテンシー評価に対応する人事管理システムも紹介するので、社員のモチベーションを高めて生産性向上を促す人事評価実現のために役立ててください。

コンピテンシーとは何か

コンピテンシーとは高業績者の行動特性を意味します。高業績者の行動には、知能や出身校、年齢や性別に関わらず共通する傾向がみられることがわかっています。それをアセスメントテストや行動観察、インタビューなどで調査・分析し、行動特性としてまとめたものがコンピテンシーです。

コンピテンシー評価とは何か

コンピテンシー評価の概要と他の評価基準との違いについて、以下で説明します。

高業績者の行動特性をもとに評価基準を作成する手法

コンピテンシー評価とは、高い業績を上げている社員(ハイパフォーマー)に共通する行動特性を基準として、評価基準を作成する手法です。コンピテンシー評価では高業績者の能力にくわえて行動特性も把握し、他の社員の評価基準に設定します。この時社員への聞き取りや分析を十分に行うことがコンピテンシー評価のポイントとなります。

職能資格制度(能力評価)とどう違うのか

従来の評価基準である職能資格制度はジェネラリストとしての総合的な能力の度合いによって最終評価が決定されます。評価項目が「責任感・確動性・協調性・積極性」など抽象的な概念のため、評価しにくいというデメリットがあります。くわえて、長期継続勤務者の人件費が高くなりがちです。
コンピテンシー評価では普段の行動が主な評価指標となるため、明確で具体的な基準による評価が期待できます。

日本企業でのコンピテンシー評価の流れ

コンピテンシー評価は、人事評価システムの1つとしてアメリカを中心に企業への導入が始まりました。日本では1990年代から導入が始まり、2000年頃には大企業を中心に導入が進みました。評価対象となる社員の設定や目的は企業によって異なります。

関連記事:コンピテンシー評価とは?|用語の意味から導入のポイントまで詳しく解説

コンピテンシー評価を採用するメリット

コンピテンシー評価を採用する4つのメリットについて、以下でそれぞれ解説します。

人材育成の効率化を図れる

コンピテンシー評価では実際に成果の高い社員の「行動」を評価の基準に設定することによって、現場にあった実践的な評価基準に基づいた評価が可能です。くわえて、成果主義とは異なる評価基準を取り入れることができます。

具体的な評価基準により評価が容易になる

コンピテンシー評価において評価基準とするものは、責任感や協調性など特性の抽象的な概念ではなく、具体的な行動です。そのため、管理職が社員を評価しやすくなります。
また、評価を受ける社員も自らの行動についての評価になるため納得しやすく、不満が生まれづらくなります。

人材マネジメントが容易になる

コンピテンシー評価を導入すれば、職能資格制度や成果主義評価とは異なる指標で評価できるようになります。そこから、適材適所の人員配置や教育など、効率的な人材育成の促進につなげることが可能です。
社員の適性を評価するため、適材適所の人材配置がより容易になるのです。

評価対象の社員もメリットを得られる

コンピテンシー評価の導入によって社員は、自分が業績を上げるために目指すべき、具体的なモデル像を描けるようになります。評価基準が具体的なため、評価の理由にも納得しやすいでしょう。

コンピテンシー評価を採用するデメリット

コンピテンシー評価を採用する3つのデメリットについて、以下でそれぞれ説明します。

導入までのハードルが高い

コンピテンシー評価には定型のテンプレートがありません。企業独自のコンピテンシー定義と評価基準を、担当部署や職種、社内の等級などから設定し、細かく具体的に示す必要があります。評価基準を確立するまでに、高業績者の行動を分析し、評価モデルを開発し、テストをして調整してから導入するという手順を踏むため、運用まで手間と時間がかかります。

設定した評価基準が「正しい」とは限らない

設定したコンピテンシー評価基準が業績アップにつながる適正なものかどうかは、検証を重ねなければ判断できません。コンピテンシー評価を設定・運用するだけでなく、業績が上がるように調整が必要です。

環境に応じて改定やメンテナンスが必要

コンピテンシー評価基準は会社や部署、社員の年齢やスキルなどによって異なるため、サンプルをそのまま使えるわけではなく、環境にあわせて改定する必要があります。また、環境が変化した場合はコンピテンシー評価基準も変更するといったメンテナンスが必要です。

コンピテンシーモデルを作成する際に注意すべき点

最重要の目的は業績アップであることを意識しましょう。人材育成や配置検討など、人材マネジメントの精度や効率を向上させる基準は副次的なものです。全基準を高レベルで達成する人材の発見はコンピテンシー評価の目的とは異なります。
また、評価基準を定期的に見直して調整する必要があります。あくまで業績を上げるための評価基準ですので、定期的に見直しを行い、業績に貢献するよう改善していきましょう。

コンピテンシー評価基準・項目を作成する4つのステップ

コンピテンシー評価基準や項目を作成する手順について、それぞれのステップに分けて解説します。

1.評価基準となるコンピテンシーモデルを作成する

コンピテンシーモデル作成方法は以下の3つです。高業績者の実態と理想を掛け合わせてモデル化するのが現実的だといわれています。

  1. 高業績者の能力と行動を分析するために、対象者の上司や同僚にヒアリングする
  2. 管理職や経営者の理想像を追求しモデルを作成する
  3. 上記2つを掛け合わせて評価基準を作成する


2.評価基準項目を作成する

モデル分析後、分析内容を評価基準項目に落とし込みます。評価基準項目は企業ごとのオリジナルを作成することが理想です。コンピテンシー項目は多岐にわたり、モデルを一から設定すると時間や手間がかかるため、一般的なモデルケースの活用をおすすめします。モデルケースについては後述します。

3.コンピテンシー項目ごとに評価レベルを5段階に分ける

レベル分けにより、人事評価や採用などに活用する際、対象者がどのくらいコンピテンシーを満たしているか確認できます。5段階のレベル分けが一般的です。自社の状況や社員の平常時の様子などを踏まえ、自社にあったレベル分けを検討します。

4.社員に評価テストをしたうえで調整を行う

自社の高業績者を評価基準と照合し、高評価になるか確認します。次に、業績が中程度の社員を評価基準と照合し、高業績者との評価を比較してみましょう。複数回・複数人数でテストすると精度が高まります。テストの結果を見て、必要があれば評価項目や基準を調整しましょう。

コンピテンシー評価の基準は企業や部署によって異なります。HRテクノロジーなどを活用して構築すると運用の負担も軽いでしょう。

コンピテンシー評価を活用できるシーン

コンピテンシー評価は人事評価制度や能力・キャリア開発、面接や採用に活用できます。それぞれについて、以下で説明します。

人事評価制度への活用

以下の3ステップでコンピテンシー評価を人事評価制度に活かせます。

  1. コンピテンシー評価項目やコンピテンシーモデルを基準に、社員一人ひとりの目標設定を行う
  2. 自己評価と上司・同僚からの評価を行う
  3. フィードバックにより社員の成長を促す


面接や採用

面接の場でコンピテンシー評価を活用すれば、応募者の「行動」や根底にある「思考」、本質を把握できるため、自社にあう人材かどうかを判断しやすくなります。コンピテンシー評価を面接に活用する際は、応募者の具体的な成果と、成果を得る行動を裏付ける動機や工夫などを質問するとよいでしょう。
採用担当者の主観に寄らない公正な評価や、採用コストの削減が期待できます。

能力・キャリア開発

コンピテンシー研修を開催しましょう。目標設定によって目標達成への自発的な行動が促され、社員の成長につながります。研修後は目標の達成状況をフォローアップ研修や、上司・部下の1on1ミーティングなどでの定期的な確認が重要です。

コンピテンシー評価基準項目のモデルケース

コンピテンシー評価基準を作る際のモデルケース、採用担当者向けメディアが作成したコンピテンシー評価項目を以下で紹介します。

コンピテンシー・ディクショナリー

コンピテンシー評価基準項目のベースとして最もよく知られています。以下の6カテゴリー・約20項目をモデルケースとして使用するのが一般的です。なお、項目数は前後する場合があります。

達成・行動 達成志向
正確性・秩序・クオリティ
イニシアチブ
情報収集など
対人支援 対人関係への理解
クライアント・ユーザー重視
対人影響力 インパクト
組織理解
関係構築
マネジメント 他者の指導・育成
チームワーク
リーダーシップ
知的領域 分析力
概念化
専門性
個人の能力 自己管理
柔軟性
組織コミットメント力

コンピテンシーマスター評価項目

評価対象別にA~Hの8群・75項目からなります。以下、8群と主な項目を取り上げて紹介します。

全社共通目標 A群(自己成熟性) 冷静さ
ストレス耐性
自己理解など
B群(変化行動)意思決定) 行動志向
自立志向
自己啓発
目標達成への強い意志など
営業関連職 C群(対人・対顧客・営業活動) 第一印象
プレゼンテーション
条件交渉など
全職種 D群(組織・チームワーク) 上司との関係
チーム精神
政治力など
G群(情報) 情報の収集・整理・伝達・活用・共有・発信
管理関連職 E群(業務遂行) 専門知識
安定運用
文章力・計数処理力
処理速度
コスト意識など
企画・クリエイティブ職種 F群(戦略・思考) 視点
アイディア
状況分析など
役職者 H群(リーダー) 部下の指導・育成
コミュニケーション
公平さ
業務管理力など

WHOグローバルコンピテンシーモデル

3モデル13項目から成ります。WHOや保健に関する部分は自社に置き換えるとよいでしょう。

1. コア・コンビテンシー
1)確実で有効な方法でコミュニケーションを行う
2)自分自身をよく知り、管理できる
3)成果を出す
4)変化する環境の中で前進する
5)連携とネットワークを育てる
6)個性や文化の違いを尊重し、奨励する
7)手本となり模範となる

2.マネジメント・コンビテンシー
8)エンパワメント的で、やる気の高まった状況を作り出す
9)資源の効果的な活用を確実に行う。
10)部門組織をこえた協働を築き、推進する

3. リーダーシップ・コンビテンシー
11)WHOを将来的な成功へ推し進める
12)改革や組織的学習を進める
13)保健のリーダーシップ上でのWHOの地位を高める

※参考:三重県立看護大学紀要,11,93~99. 2007 WHOグローバルコンピテンシーモデルWHP 10Global Competency Model

コンピテンシー評価を取り入れた企業・自治体の事例

コンピテンシー評価を採用した国内企業の事例を、以下で3つ、紹介します。

虎の門病院

看護管理者の質の向上を目的として導入しました。「コンピテンシー・ディクショナリー」をもとに、師長や部長といった管理者のコンピテンシーを6カテゴリー16項目設け、6段階で評価しています。6段階を職級と照合し、職級ごとに必要とされるレベルがわかるように記載されていることが特徴です。
コンピテンシー評価導入にあたっては定義や事例などを明示するだけでなく、説明会を開催するなど、職員への定着に向けた取り組みも行っています。

豊田市

愛知県豊田市では平成18年(2006年)に「管理職の行動変容に向けた役割明示」として管理職に求められるコンピテンシーモデルを設定し、マネジメントのPDCAサイクルと連動して機能させています。評価項目の設定にあたっては、管理職のインタビューにくわえて市長の意見も踏まえ、階級とPDCAサイクルに応じて、25のコンピテンシー評価項目を設定しています。

カルビー株式会社

カルビー株式会社は一時面接から一対一でコンピテンシー評価を取り入れた面接を行っています。人事評価においても、2012年のコンピテンシー評価導入に伴い、職能資格制度・スキル評価制度による昇進や昇給の決定を廃止しました。
上司と部下が面談して達成目標を決定し、目標の達成度に基づいて人事評価を行うC&A(コミットメント&アカウンタビリティ=目標管理)を導入しています。

まとめ

コンピテンシー評価は行動特性による具体的な評価項目のため評価しやすく、評価対象の社員が目標を立てやすいなどのメリットがあります。しかし、自社にあったオリジナルの評価基準づくりは容易ではありません。

タレントパレットは、データ活用の視点に基づき、コンピテンシーはもちろん、MBOや360度評価など、さまざまな評価形式に対応するシステムを設計しています。ハイパフォーマーの行動特性は無料のTPI適性検査などで分析し、全社的な傾向と比較することも可能です。