アクティブラーニングとは?文部科学省が推進する理由、企業が導入するメリットを解説


アクティブラーニングとは?文部科学省が推進する理由、企業が導入するメリットを解説

アクティブラーニングとは、教育機関で導入される学習法のことです。企業の研修に導入することで、社員の主体性や問題解決力が向上します。この記事では、アクティブラーニングの概要、文部科学省が推進する理由、導入メリットなどについて解説します。

企業の研修にアクティブラーニングを導入すると、社員の主体性や問題解決力の向上に役立つといわれています。

アクティブラーニングは教育機関で導入される学習法ですが、社員教育へ応用する企業も増加傾向です。この記事ではアクティブラーニングの概要と注目される背景、導入のポイントなどについて解説します。

教育機関で導入される「アクティブラーニング」とは

アクティブラーニングとは、受講者が能動的に考えながら学習する姿勢をサポートする教育法です。指導者から受講者に一方的に情報を与えるような、講義形式が中心の教育法とは異なります。


アクティブラーニングではディスカッションやディベート、グループワークなどを通してさまざまな能力の育成を図ります。企業がアクティブラーニングを取り入れると単に知識を得るだけではなく、認知力の向上や倫理観の醸成も期待できる点が魅力です。課題解決に必要な能力を総合的に向上させられるでしょう。


課題解決に主体的に取り組める上に創造力が豊かな人材を養うための教育法として、企業からも注目されています。


文部科学省が推進する背景・理由

時代の変化やニーズに応じた人材育成が求められているなか、文部科学省はアクティブラーニングを推進しています。現在は、急速なグローバル化の影響によって企業で働く人材が多様化したため、各社員が協調性を発揮して課題を解決する能力が求められるようになりました。

また、変化の激しい社会環境のなかで企業が成長するためには、主体性を発揮して自己成長をできる社員が必要です。アクティブラーニングは、課題の発見と解決に向けて主体的かつ協同的な学習を体現する学習法です。現在の社会環境に適合できる人材を育成する方法として、適した学習法といえるでしょう。


企業がアクティブラーニングを導入するメリット・効果

企業がアクティブラーニングを導入するメリット・効果は次の5つです。

  • 問題解決力を磨ける
  • 主体性が身に付く
  • コミュニケーション力を育める
  • リーダーシップ力が養われる
  • 発想力や創造力が培われる


それぞれについて解説します。


問題解決力を磨ける

企業研修にアクティブラーニングを導入すると、課題解決の方法を受講者自身で考え、答えを導き出す機会が増えます。講師から一方的に知識を与えられたり、すぐに正解へと誘導されたりするのではなく、自分なりに答えを出すプロセスを体験できる点が魅力です。正解へと辿り着くプロセスを経て、論理的な仮説や検証をできるようになり問題解決力が磨かれます。


主体性が身に付く

アクティブラーニングでは受講者同士で協力しながら、課題の解決策を考える状況を作れるため、受講生の主体性が身に付きます。講師はサポートに徹するため、受講者は主体性を持って研修に取り組まなければ学習が進みません。


ビジネスでは、不足の事態に対して自分であればどのように対応すべきかを問われるケースも多く見られます。アクティブラーニングで主体性を育むと、ビジネスで発生した課題に対して、自分で解決策を考えられるようになります。


コミュニケーション力を育める

複数名のチームで学習を進める点もアクティブラーニングの魅力です。チームで課題の解決策を導き出すためには、受講者同士の意思疎通が欠かせません。そのため課題解決に向かう過程で、自然とコミュニケーション能力を育めます。


アクティブラーニングの受講生は、次のような対人スキルが身に付くでしょう。


  • 話を聞く力
  • 意見を伝える力
  • 意見をまとめる力


以上のスキルはビジネスをする上では欠かせない能力です。


リーダーシップ力が養われる

アクティブラーニングの学習は受講者が中心となって進めるため、リーダーシップ力が養われます。受講生は、各自で自分の所属するグループの課題解決に向けた行動を取ります。その際、受講生に求められることは、自分がなすべきことや責任の果たし方を考えることです。


自分が成すべきことを明確にして、責任を果たす姿はチームを牽引するリーダーに求められる重要な素養といえるでしょう。アクティブラーニングに基づいた学習プロセスは、現代社会に求められるリーダーシップの養成に役立ちます。


発想力や創造力が培われる

アクティブラーニングの受講生が試行錯誤をしたり、グループで議論を重ねたりする過程は発想力や創造力を高めるトレーニングになります。


アクティブラーニングで扱うテーマは、正解のない課題が多い点も特徴です。正解のないテーマについて受講者同士が議論を重ねると、誰もが自由に自分の価値観や考えを発表しやすくなります。その結果、各受講生は自分が持っていない価値観や考え方に触れる機会を得られるでしょう。


従来の常識や手法に囚われずに議論を展開できる機会を設けることで、イノベーションの下地作りにつながります。


企業がアクティブラーニングを実施する際の課題

企業がアクティブラーニングを実施する際には、次の課題があります。

  • 手法や指導方法の選択が難しい
  • 教員のスキルに左右される
  • 授業の進行に時間を要する


以下で、詳しく解説します。


手法や指導方法の選択が難しい

アクティブラーニングには多様な手法があるため、どの手法を選んで授業に組み込むか、選択が難しいでしょう。学生の能動的な姿勢を育むことが目的であるため、評価が難しい点も課題です。


指導者のスキルに左右される

アクティブラーニングの効果は、指導者のスキルに左右される点も課題として挙げられます。受講者同士が活発に意見を交換できるよう促すとともに、人前で話すことに苦手意識を持つ受講者には適切なフォローを行いましょう。


授業の進行に時間を要する

アクティブラーニングの授業の進行には時間を要するため、目標達成に時間が足りなくなるケースもあります。そのため、授業計画では余裕を持った時間配分が必要です。ICT機器の活用による効率化も検討しましょう。

アクティブラーニングの種類

アクティブラーニングの種類には、ジグソー法やThink-Pair-Share、KP法があります。それぞれについて詳しく解説します。


ジグソー法

ジグソー法は、次の流れで進めます。


  1. 均等にグループ分けした受講者に異なる課題を与える
  2. 次にグループを一旦解散して、同じ課題の担当者たちを集める
  3. 集められた各課題の担当者は専門グループを結成して、課題の解決方法について話し合う
  4. 専門グループ内で課題の解決法について整理できたら、再度もとのグループに分かれる
  5. もとのグループに分れた受講者は、専門グループ内で話し合ったことについて他のメンバーに教える


ジグソー法は各課題の解決策を導き出したうえで、他のメンバーにそれを分かりやすく伝えることで、自身の理解を深められるメリットがあります。


Think-Pair-Share(シンク・ペア・シェア)

Think-Pair-Share(シンク・ペア・シェア)では、まずは受講生自身が課題の解決策に考えたうえで、隣の人にも考えを聞きます。隣人同士が互いの意見を交換しながら、課題解決に取り組む学習法です。

課題に対する意見を自らが考え、それについて話し合うことで、表現力や理解力が深まります。自他の意見を比較しながら、よりよいアイディアを作り上げていくプロセスを体験できる点も魅力です。

KP法

「KP法」のKは「紙芝居」、Pは「プレゼンテーション」の頭文字です。KP法では、プレゼンテーションの担当者が発表の前に紙に学習のテーマをまとめておきます。次に、プレゼンテーションの進行に合わせて黒板やホワイトボードに、テーマについてまとめた紙を貼り付けながら説明をします。


KP法を実践すると、発信者が一方的にメッセージを伝える展開がなくなり、聞き手の思考を深め、議論のきっかけを作りやすくなる点がメリットです。


PBL(プロジェクト・ベースト・ラーニング)

PBL(プロジェクト・ベースト・ラーニング)とは、課題解決型の学習のことです。与えられた課題に対して、ディスカッションやグループワークを通じて解決策を探ります。既存の課題から実社会の問題まで扱い、課題解決力を育むことも可能です。


ディスカッション

ディスカッションは、決められたテーマをもとにグループで討論をし、結論を導く学習法です。授業では3〜10名以上のグループでディスカッションを実践します。ディスカッションを取り入れることにより、自主性や協調性を育むことも可能です。


学び合い

学び合いは、チームで目的を達成するために、協力しながら学び合う学習法です。受講者が自主的に課題を解決できるように、指導者はできる限り関与しないようにします。学び合いでは、知識や経験をもとに、教養や社会性、論理的思考を養うことが可能です。


アクティブラーニングの重要な3つのポイント

アクティブラーニングには、重要なポイントが3つあります。以下で、それぞれについて詳しく解説します。


1.主体的な学び

主体的な学びでは、学びに興味を持ち、自分のキャリアと学びを関連付け、将来に向けて粘り強く取り組むことが重要だとされています。また、学んだことを振り返り、次の学びに生かすことも、主体的な学びの判断基準の1つです。


2.対話的な学び

対話的な学びとは、受講者同士や指導者での対話を参考にしながら、自分の考えを広げて深める学びを指します。他者との対話以外にも、教材から得た先哲の考えを手がかりにした、自身との対話も必要です。


3.深い学び

深い学びとは、学んだ知識を他の知識と結びつけ、自分の考えを深めることを指します。情報を確認しながら考えを形成し、問題を見つけ解決策を考えたり、新しいアイデアを生み出したりすることが大切です。答えのない課題が増えるなか、クリエティブに学びを深めましょう。


アクティブラーニングを研修に導入する際の注意点

アクティブラーニングを研修に導入する際は、研修の設計を明確にして積極的な姿勢を受講生に徹底させることが重要です。さらにファシリテーション能力がある人材を講師に選ぶと、効果的な研修になるでしょう。


研修の設計を明確にする

研修の設計とは目的や対象、ゴールのことを指します。これらを明確にしなければ、アクティブラーニングを導入しても効果的な研修を実施できない可能性があります。


アクティブラーニングは、研修を進めるための学習法の1つに過ぎない点もポイントです。アクティブラーニングが研修の目的や対象に適しているのかを見極め、ゴールを達成が可能であるかを判断する必要があります。研修に適していない場合は、他の方法を実践することも1つの手段です。


研修に対する積極的な姿勢を受講生に徹底させる

研修で取り上げられる課題に対して、受講生が積極的な姿勢で臨むことが大切です。アクティブラーニングで受講生がとるべき積極的な姿勢とは次のとおりです。


  • 予習をきちんと行い、議論に備える
  • 主体的に知識を得ようとする
  • 考えの異なる人と議論しようとする


アクティブラーニングは受講生が主体性を発揮してはじめて学習が進みます。そのため、受講生が積極的に課題に取り組める工夫をすることが大切です。


ファシリテーション能力がある人材を講師に選ぶ

高いファシリテーション能力がある人材をアクティブラーニングの講師に任命すると、受講者に気づきを与えながら、ゴールへ誘導しやすくなります。


高いファシリテーション能力とは受講者同士の交流を生み出したり、意見を引き出したりする能力です。全体でディベートをする際などは、ファシリテーターが適切な質問や声掛けを行い、場を盛り上げられると効果的な研修を実現できます。


まとめ

企業がアクティブラーニングを取り入れると、社員の課題解決能力を高めたり、創造力を育成できたりします。アクティブラーニングの実施方法には、ジグソー法やThink-Pair-Share、KP法などがあるため、研修の内容に適した方法を選択するとよいでしょう。


優秀な人材を育てるためには、研修やeラーニングの受講記録やフィードバックを分析することも大切です。人材育成をDX化して研修に関するデータを分析すると、研修内容の改善や社員の教育に関する施策の検証にも役立てられます。


労務管理や人事評価、健康管理、ストレスチェックなどあらゆる人事業務をオールインワンで搭載したタレントパレットを導入すると、人材育成のDX化をスムーズに進められます。詳しく知りたい方は、下記資料をダウンロードしてみてください。


人材育成に役立つシステムの詳しい情報はこちら

人材育成に活用できるスキルマップの作り方