ダイバーシティの意味とは?メリットや課題をわかりやすく解説!


ダイバーシティの意味とは?メリットや課題をわかりやすく解説!

多様性を意味するダイバーシティ。ビジネスのグローバル化が進む昨今、ダイバーシティ経営への注目が高まっています。当記事ではダイバーシティの意味や3つの種類、ダイバーシティ経営が企業にもたらすメリットを紹介します。

こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。

多様性を意味するダイバーシティ。ビジネスのグローバル化が進む昨今、ダイバーシティ経営への注目が高まっています。様々な属性の人が集まる機会が増加するにつれ、自身との違いに戸惑ったり、トラブルが発生したりする可能性も高まるため多様性への理解が必要です。当記事ではダイバーシティの意味や3つの種類、ダイバーシティ経営が企業にもたらすメリットを紹介します。ダイバーシティへの理解を深め、実業務や企業環境に落とし込むと新規事業のひらめきや成長につながるでしょう。

ダイバーシティの意味

近年は様々なタイミングでダイバーシティという言葉を耳にしますが、具体的にどのようなものや取り組みを指すか知らない人もいるでしょう。本章ではダイバーシティの概要や類似用語を解説します。

ダイバーシティとは?

ダイバーシティ(Diversity)は多様性を意味する言葉です。会社や学校、地域コミュニティなどの集団において年齢や性別、人種や宗教など様々な属性の人が同じ環境に集まった状態を指します。
ダイバーシティは元々、人権問題や雇用機会均等への理解を促す機会に使われていました。しかし、ビジネスにおけるグローバル化が進んだ現代においては多様な人材を登用・活用し企業の生産性や競争力を高める経営戦略として用いられています。

ダイバーシティ&インクルージョンとは?

ダイバーシティとあわせてインクルーシブやインクルージングという言葉も耳にしますが、インクルージョンの意味は人やものごとを受け入れることです。多様性を指すダイバーシティと包括を指すインクルージョンを合わせ「ダイバーシティ&インクルージョン」と呼び、世界中の多様性を受け入れる社会や企業づくりをあらわしています。

ダイバーシティとインクルージョンの違い

あわせて用いられる機会が多い2つの用語ですが、ニュアンスが大きく異なります。ダイバーシティは同じ環境に属する様々な人を指す一方で、インクルージョンは多様性を持った人々が同じ環境に属し、さらに関わり合う状態です。ダイバーシティでは底に多様性を持った人が「いる」だけですが、インクルージョンでは一段階進み「相互に関わる」ステップにいる点が大きく異なります。

具体的な例を挙げると、一つの学校に様々な国籍や宗教、マイノリティを持つ子どもが所属している環境でお互いの文化や習慣の違いを知ったうえで双方が快適に過ごせるルールや仕組みを作り上げ、ともに過ごすことがインクルージョンです。

ダイバーシティの種類

集団に所属する人々が快活に過ごすために必要なダイバーシティは3種類に分類できます。本章ではデモグラフィー型とタスク型、そしてオピニオン型のダイバーシティについて見ていきましょう。

1. デモグラフィー型(表層的ダイバーシティ)

デモグラフィー型は表層的ダイバーシティとも呼ばれ外面的な多様性を指します。具体的にはその人の年齢や性別、人種や国籍などが、ダイバーシティの代表的な項目です。

企業が行う取り組み例としては、下記の項目が挙げられます。

  • 男女の雇用機会均等
  • 国内企業における外国人の積極採用
  • 年功序列の廃止
  • シニア層の雇用


2. タスク型(深層的ダイバーシティ)

タスク型は内面的な多様性を指し、深層的ダイバーシティと呼ばれるダイバーシティの種類です。デモグラフィー型では、表面上の多様性や能力や経験など見える個性を重要視しますが、タスク型ではその人が本来持つ強みや特長を生かす点にフォーカスしましょう。

なかなか理解されない内面的な多様性を理解し合うと、従業員同士が互いのよさを生かしながら業務に取り組みます。個々の特徴を尊重する環境はイノベーションを起こしやすく、停滞した企業の次の一手にメリットをもたらし、かつ個性を認め合う環境は従業員が自身の意見を発出しやすく主体性やモチベーション向上にも効果的でしょう。

3. オピニオン型

オピニオン型は組織自体の多様性を推進する取り組みや環境を意味します。社内にどれだけ有意義なアイディアを持つ人材がいたとしても、社内に主張しにくい雰囲気が漂っていたり、ポジションによって発言が尊重されなかったりする環境ではダイバーシティの推進を進められません。企業のトップや経営陣がダイバーシティを推進することを明言し、社内体制を整えることが先決です。

ダイバーシティの歴史

本章ではダイバーシティの歴史を海外と日本に分けて解説します。現在の認識に至るまでの歴史を紐解くことでダイバーシティの本質を捉えられるでしょう。

海外におけるダイバーシティの歴史

ダイバーシティは1960年代のアメリカが発祥とされています。はじめから1970年代までは人種差別や女性差別の解消を目的とし公民権運動や女性運動が盛んになったことから、米国雇用機会均等委員会(EEOC)が設置され、差別を受けていた人々が主張できる環境が整い始めました。しかし、取り組みは難航し、少しずつ法整備を進めながら差別撤廃に向けて歩みを進めます。時が進み、1980年代からはダイバーシティの考え方がアメリカ国内に浸透し始め、個人の考えだけにとどまらず企業が率先して捉え、推進する動きが高まりました。ダイバーシティを企業に取り入れることでサービスや商品のコモディティ化が発生していた企業の差別化にも効果をもたらし、推進する企業が増加します。

さらに1990年代になると、ダイバーシティにインクルージョンの思考が加わりました。多様性を認めるだけでなく、皆が当事者としてそれぞれの個性を受け入れて生かす考え方が
企業に浸透し、現在ではアメリカ国内の多くの企業でダイバーシティ&インクルージョンの動きがごく普通に見られます。

日本におけるダイバーシティの歴史

日本におけるダイバーシティの歴史は比較的浅く、1980〜1990年代にかけてはじまりました。その頃の日本では、男女の雇用差別が大きな課題となっており差別を是正するために法律の整備が進みます。具体的には1985年に「男女雇用機会均等法」が制定されました。さらに、1999年には「男女共同参画社会基本法」が制定され、企業の男女差別禁止が義務化。男女差別をきっかけに少しずつダイバーシティの考え方が広がり始めています。

さらに、現在も課題である少子高齢化もダイバーシティ推進を後押ししました。少子高齢化が進むと労働人口が減少しハンディキャッパーや女性、外国人など多様な人材の確保が求められ、働くことが難しかった人がやりがいを持って仕事をしたり貢献したりするために必要な法整備や福祉サービスの整備が進められています。その結果、現在の日本では多様な価値観を理解したうえで雇用をする認識が定着する傾向にあると言えるでしょう。

ダイバーシティが注目を集める背景


近年特に高い注目を集めているダイバーシティの概念は時代や人々の変化が関係しています。本章ではダイバーシティが注目を集める理由を4つ見ていきましょう。

1. 企業活動のグローバル化

インターネットをはじめとした情報技術の発達が企業のグローバル化を急激に進めました。現地に行かずとも世界規模でビジネスに取り組める環境は、多様性への理解を後押しします。これまで交流がなかった国籍や宗教観を持つ人々と仕事を進めるうえで個性を認め、生かす努力は必要不可欠です。

2. 少子高齢化に伴う労働人口の減少

日本では少子高齢化が深刻な社会問題として挙げられ、国全体で対策を急いでいます。しかし、少子高齢化はすぐに食い止められるものでないため、これまで労働の中心にいなかった人々を続々と採用する動きが高まっているのが現状です。

ハンディキャップを抱えて働けない人たちを最新技術で活用して採用したり、育児や介護で働けない人々をフルリモートワークで採用したりする取り組みが進んでいます。

3. 価値観の多様化

少子高齢化や技術革新により、従来は働けなかった人々が活躍の機会に恵まれるようになりました。その結果、様々な価値観を持つ人や境遇にある人が自身の意見を発信し共感されるケースが目立っています。世間全体で価値観の多様化を受け入れる流れができたため、企業においても多様な価値観を前提に採用や人事評価が求められる流れができつつあり、ダイバーシティを考慮した経営活動が求められるでしょう。

4. 社会構造の変化

日本国内においてはダイバーシティの広がりを受けて、社会構造の変化を進める動きも見られます。実際に東京都渋谷区では性的少数者の人権を尊重する社会づくりを推進する取り組みが進んでいるのです。具体的には、渋谷区パートナーシップ証明書を発行する条例の制定が挙げられます。法的拘束力こそないものの、マイノリティと言われる同性の関係性において積極的な取り組みを実現したできごとは、日本国内に驚きをもたらしたと同時にダイバーシティの加速を感じさせる事例でしょう。

企業活動におけるダイバーシティ

国内外問わず社会全体でダイバーシティ推進に取り組む中で、企業としても取り組みを進める動きが高まっています。本章ではダイバーシティの考え方を企業に落とし込んだダイバーシティ経営について見ていきましょう。

ダイバーシティ経営とは?

ダイバーシティ経営(マネジメント)とは、属性を問わずスキルを持つ人材を登用し企業成長を図る経営手法です。企業の成長には社会の課題解決が欠かせません。経済のグローバル化や少子高齢化など世界を取り巻く課題に対して自社が得意とするポイントで属性を超えた人材の採用・育成を行いましょう。

社会問題に企業規模でアプローチすることで、企業競争力の強化を図るだけでなく社会貢献にも寄与する効果が期待できます。

経済産業省が提唱する「ダイバーシティ2.0」とは?

ダイバーシティ経営を推進するうえで重要な資料となりうるのが経済産業省が提唱する「ダイバーシティ2.0」です。ダイバーシティの新たな方向性を示すもので中長期的に企業価値を生み出し続けるサポート資料と言えます。

働き方改革との関連性

ダイバーシティ経営への取り組みは働き方改革にも関係するでしょう。2018年頃から政府が中心となり、共働き家庭や働きにくい人々が社会に進出しかつライフワークバランスをとれる企業づくりを進めています。雇用形態を問わずよりよく働き、生きるためにはこれまで活躍に場がなかった人々の協力が不可欠です。企業が採用する人材にダイバーシティを取り入れると、働き方改革にも寄与するメリットがあります。

ダイバーシティ推進だけで終わらない、あらゆる人事データを統合して分析

ダイバーシティ推進は企業の強み各従業員のスキルを整理したうえで、一丸となって進めていく必要があります。タレントパレットでは従業員のスキル管理や人材育成に必要な機能が充実しているため、あらゆる人事データを一元管理して業務に生かせるでしょう。

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ダイバーシティ経営の4つのメリット

本章ではダイバーシティ経営における4つのメリットを解説します。ダイバーシティ経営の導入は企業成長やDXに効果を発揮するでしょう。

メリット1. リテンションの強化

ダイバーシティ経営への取り組みは、リテンション(人材確保)に効果的です。転職が一般化したことから各企業は優秀な人材が定着せず、企業成長に支障をきたしています。ダイバーシティ経営に取り組み多様な人材を活用すると、働き方にも多様性を持たせられるでしょう。あらゆる属性の人材に対応した働き方の提案は、人材の定着や企業成長につながります。

メリット2. リスクマネジメントの強化

同一属性が多い組織にはグループシンキングが生じやすいと言われています。グループシンキングは無言の圧力から集団が誤った判断をとることを指し、企業にとって不適切な選択であってもその場の雰囲気や意思を優先する事態のことです。
企業に全く異なる属性の人材登用を行うと、グループシンキングの発生を防げたり暗黙の了解が誤った方向に進んだりするのを食い止めるため、リスクマネジメントに役立ちます。

実際に、リーマンショック後の時価総額の推移を見ると、取締役に女性が加わっている企業の方が、そうでない企業よりもパフォーマンスの回復が早いという傾向が顕著に表れました。ダイバーシティ推進は、厳しい環境変化への対応力、順応力を高める方策の一つと言えます。

メリット3. イノベーションの創出

ダイバーシティ経営は新たなアイディアが生まれるメリットもあります。多様な人材がそれぞれの知識や経験、価値観を持ち寄るとこれまでにない新しい発想が生まれやすくなるでしょう。特にVUCA時代に突入し、既存の経営戦略に行き詰っている企業に対しては突破口となる可能性もあります。

メリット4. 対外評価の向上

多様な人材の登用はステークホルダーや社会からの企業イメージにも寄与します。社会的に多様性が求められる風潮がある中、率先してこれまでと異なる属性の人材を採用すると時代に適した企業であると判断されたり、共感を呼び自社のファン獲得につながったりするでしょう。

ダイバーシティ推進の3つのポイント


メリットが豊富なダイバーシティ経営ですが、ポイントを踏まえることで属性の異なる人材の有効的な活用が可能です。ここではダイバーシティの推進に欠かせないポイントを3つ紹介します。

ポイント1. 多様なワークスタイルの実現

ダイバーシティ実現には国籍や宗教、年齢や性別など様々な人材が参画します。企業は人材に合わせたワークスタイルの提案が求められるでしょう。具体的には育児や介護で従来の働き方が難しい人材には、フルリモートワークやフルフレックス制度の導入を行い、また障害を抱える人材に対しては苦手なものを考慮した業務の依頼などが挙げられます。

ポイント2. 多様性への意識を醸成

ダイバーシティの実現は、多様な人材を採用して終わりではありません。入社後に研修プログラムの実施や相談窓口を設置し適切なケアを行うことで社内の意識を少しずつ醸成します。

ポイント3. 活躍機会の提供

どれだけ様々な属性の人材を確保しても、スキルを生かせる場を提供できなければやがて離れていきます。人材を確保する場合は適切なポジションや業務内容を整えたうえで採用に進めましょう。

ダイバーシティ推進で期待される効果

本章はダイバーシティの推進で社会や企業に期待される効果を4つ紹介します。いずれも深刻な課題に対応できる点が特徴的です。

効果1. シニア層の活躍推進

平均寿命の伸びや年金額の低下からシニア層が活躍する機会が増えています。勤労意欲の高いシニア層をアドバイザーとして登用すると新人の教育や企業の成長に活用できるでしょう。ただし、シニア層を登用する場合はダイバーシティ経営に関する研修や参考資料を参照してもらったうえでの参画が大切です。

効果2. 女性の活躍推進

働き方の多様性が定着すると、女性が活躍しやすい企業環境が整います。育児をしながら管理職を務められるようになれば、結婚後も不安を感じず働けるようになり、国内で課題となっている女性の管理職登用にも効果的です。

効果3. 障害者の活躍推進

障害者の積極的な登用は難しい課題ですが、ハンディキャップを抱えた人材が働きやすい職場づくりはほかの従業員にもメリットをもたらします。その人に合わせた「合理的配慮」を行う習慣は誰もが働きやすい環境づくりによい影響をもたらすでしょう。

効果4. 外国人の活躍推進

外国人登用もまた凝り固まった思考や業務内容を改革するきっかけです。日本人が長年培った「こうあるべき」を一度問い直すことで、課題の突破口を見つけられる可能性があります。

ダイバーシティ推進における課題

ダイバーシティの推進には課題が付きまといます。これまで経験したことがない価値観に触れることで従業員が不安を覚えたり、これまでのやり方に疑問を持ち不満を噴出させたりする可能性があります。

特に既存の従業員はこれまでの社内風土や業務の進め方に慣れているため、異なる属性の人材が加入した場合は戸惑いが大きく退職を検討する可能性もあるでしょう。ダイバーシティ経営に取り組む場合は、既存の従業員の意見や思いを十分に加味したうえで新たなフェーズに進むために企業風土の転換を進めます。

ダイバーシティの取り組み事例

時代のニーズに適合しているダイバーシティの考え方ですが、企業規模の取り組みにためらいを感じる経営陣や担当者もいるでしょう。本章ではダイバーシティの取り組みを実際に行った企業を3社紹介します。

事例1. ベネッセホールディングス

通信教育や出版を主軸とするベネッセホールディングスは、下記4つの観点からダイバーシティ推進に取り組んでいます。

  • 女性の活躍を推進
  • 障害者の雇用促進
  • シニアの活躍
  • 様々な地域での雇用


いずれもダイバーシティ推進の要となる項目で、ベネッセでは取り組みを掲げるだけでなく具体的な実施のデータを公表し行動を社会全体に発信している点が特徴的です。

事例2. キリンホールディングス

大手ビールメーカーのキリンホールディングスは女性従業員の声を採用し、下記の制度導入を行いました。

  • 在宅勤務制度
  • 別居結婚の支援
  • 転勤の禁止(一定期間)
  • 希望地での復帰支援制度


キリンホールディングスでは経営陣のひとりよがりな戦略や制度の制定でなく、実際に働く人材の声を取り入れたダイバーシティ推進のため、従業員の士気向上にもつながっています。

事例3. P&G

アメリカに本社を置くP&Gはダイバーシティ&インクルージョンを掲げ、さらに「文化」「制度」「スキル」を柱としてダイバーシティの推進に努めています。具体的には
社内へのダイバーシティ&インクルージョンの浸透や自社開発のトレーニングプログラムの提供、階層別研修の実施などです。
実際に取り組みの一つである女性活躍推進の項目では、女性管理職比率36%を達成しています。さらに、自社で開発したダイバーシティ&インクルージョン研修プログラムを無償で提供し世界にダイバーシティ&インクルージョンを広げる活動も行っているのです。

まとめ

ダイバーシティ経営の考え方は企業が長期にわたり、社会から支持を受け成長するために欠かせない要素です。しかし、既存従業員からの理解や適切な人材配置を行わなければ浸透せず終わる可能性もあります。人事管理ツールを用いた正確かつ効率的な人材やスキルの整理を行ったうえで推進を進めましょう。

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