こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。
「人的資本経営がなにかを知りたい」「達成するための具体的な方法が分からない」このようなお悩みをお持ちの方が、いるのではないでしょうか。
人的資本経営とは、社員のスキルを資本と捉えて人材価値を最大限に引き出し、中長期的な企業価値を向上させることを指します。近年日本でも注目されている考え方です。なぜ必要なのか、どのようなメリットがあるのかを理解しておかなければ、適切に実行できないでしょう。
そこで本記事では人的資本経営の重要性やメリットを解説します。成功させるためのポイントも紹介するので、ぜひ最後までお読みください。
人的資本とは社員を投資によって価値が高まる資本と捉えること
人的資本とは、自社で働く社員を投資によって価値が高まる資本と捉えることです。以下に焦点を当てた概念が人的資本であり、企業に利益をもたらす重要な無形資産と言えます。
- 社員のスキル
- 知識
- ノウハウ
- ポテンシャル
社員の価値が高まれば、生産性の向上や組織全体のレベルアップにつながるため、企業は人的資本に投資する価値があります。人的資本と類似した言葉に「人的資源」がありますが、考え方が異なります。人的資源は、社員によってもたらされる経済的な価値です。人材育成などにかかるコストを下げることが重要視されます。
一方で人的資本の場合、人材育成にかかる資金は企業の成長にとって不可欠と考えます。企業が経営するにあたり、人材は必要不可欠なもので、消費すべき資源ではないという考え方です。
人的資本経営とは社員に投資して企業価値を高めること
人的資本経営とは、社員のスキルやポテンシャルを「資本」と考えることです。人材価値を最大限に引き出し、中長期的な企業価値を向上させることが目的です。2018年12月には、ISO30414「人的資本に関する情報開示のガイドライン」が策定されました。ISO30414には、人事や労務に関する情報を明示する際に、意識すべき基本的な指針が集約されています。
海外では、投資家などのステークホルダーが人的資本に注目しており、人事や労務に関する情報開示を強く求めている状況です。また、日本政府は2023年度から一部企業に対し、有価証券報告書への人的資本情報の記載を義務付けています。
そのため、今後さらに人的資本経営に注目が集まることが予想されます。ISO30414について詳しく知りたい方は、別記事「iso30414 経済産業省(人的資本経営 iso)」をあわせてご確認ください。
人的資本経営が注目される5つの背景
ここでは、人的資本経営が注目される5つの背景について解説します。
- スキルにお金が使われるようになった
- 企業の成長において人的資本の重要性が高まった
- 人的資本関連の情報開示が求められるようになった
- 人材の確保が難しくなった
- ESG・SDGsの重要度が高まった
これから人的資本経営に取り組みたいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
スキルにお金が使われるようになった
人的資本経営が注目を集めている理由は、スキルにお金が使われるようになったためです。これまでは、各企業が生産した商品が売れる製造中心の経済でした。しかし近年では、以下を重視する動きが強まっています。
- スキル
- 知識
- ノウハウ
ミニマリストや断捨離などが流行ったことで、モノを所有するよりも、スキルにお金を使う時代へと変化しつつあります。会社としては、スキルやノウハウを持った社員をどのようにして活かしていくかを考える必要があるでしょう。
企業の成長において人的資本の重要性が高まった
一昔前は工場を持っていれば、誰が働いても同じ利益が出ました。しかし、現在はアイデアから新サービスや新商品を生み出すケースが多く、企業で働く個人の能力が重視されています。
変化の激しい市場の中で競合優位性を保つためには、社員がクリエイティブになれる環境を整えなければなりません。企業は社員の成長をサポートしたり、能力を発揮する場を作ったりすることで、結果的に競争力を高められます。
人的資本関連の情報開示が求められるようになった
人的資本関連の情報開示が求められるようになったことも、人的資本経営が注目を集めている理由です。近年海外では、投資家が企業に対して人的資本に関する情報開示を求めています。
日本でも、人的資本について発表された実例があります。経済産業省が2020年9月に公表した「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究報告書」です。報告書の中では、今後は人的資本や価値を創造するための人材マネジメントにシフトするべきだと示してあります。情報の開示が求められている観点から、企業は以下の人的資本の関連情報を正しく把握して、経営に盛り込みましょう。
- 人材戦略
- 人事施策
- 人的資本に関する投資
人的資本の情報を開示することで、市場や顧客から優良企業のイメージを持たれやすいメリットもあります。今後人的資本に力を入れ始める企業が増えていくでしょう。
参照元:経済産業省|持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究報告書
人材の確保が難しくなった
人的資本経営が注目されるようになった理由は、人材の確保が難しくなったためです。従来は終身雇用が一般的で、総合職として幅広い業務を行う「メンバーシップ型雇用」が主流でした。しかし近年では専門的なスキルを重視する「ジョブ型雇用」が注目されつつあります。
社会を取り巻く労働市場の変化に対して、企業の人材戦略とのギャップが大きくなっているのが実情です。ギャップを埋める方法として、人的資本が注目を集めています。
ESG・SDGsの重要度が高まった
ESG・SDGsの重要度が高まったことも、人的資本経営が注目される理由です。ESGとは、以下のアルファベットの頭文字を取った言葉です。
- Environment(環境):環境への配慮
- Social(社会):社会問題への対応
- Governance(企業統治):正当な企業統治
ESGは、企業が今後も成長を続けるために不可欠な要素とされています。ESGの取り組みも会社の成長を判断する要素の一つです。さらに近年では、SDGs(持続可能な開発目標)も注目集めている取り組みです。SDGsは17の目標で構成されており、働き方改革やESGの取り組み強化なども含まれています。
しかし、日本の多くの企業はSDGsへの対応を意識していても、実行に移せていないのが実情です。今後はよりSDGsの取り組みにシフトしていく必要があるという理由から、人的資本が注目されています。
人的資本経営を行うメリット3選
ここでは、人的資本経営を行うメリットを3つ紹介します。
- 企業なイメージが良くなる
- 資金の増大が期待できる
- 生産性が向上する
人的資本経営を実施する前に、メリットを把握しておきましょう。
企業のイメージが良くなる
人的資本経営を実施すると、投資家や顧客からの企業イメージが良くなるとされています。近年では、人的資本経営に関係する動きが世界的に高まっている状況です。アメリカでは米国取引委員会(SEC)が、上場企業に向けて人的資本経営に関する情報の開示を義務付けました。
今後は情報の開示によって、人的資本の重要度が高いことを示す必要があるでしょう。情報を開示すれば、投資家だけでなく世間に対して優良企業であるというイメージを持たせられます。
資金の増大が期待できる
人的資本経営を実施することで、資金の増大が期待できます。人的資本に興味を持つ投資家が増えているためです。投資家に人的資本経営に注目していることをアピールすれば、投資をしてくれる可能性が高まるでしょう。
投資家に自社の株を多く購入してもらえれば、株価の上昇につながり、企業価値のアップが期待できます。さらに人的資本に投資できる資金も集まるため、投資家からの資金調達は、企業にとって大きなメリットをもたらします。
生産性が向上する
社員の質が高まり、生産性が向上することも、人的資本経営を実施するメリットです。例えば、社員のスキルや能力を向上させるための補助を実施したとします。社員の質が上がり、生産性が向上すれば、企業の持続的な成長につながります。
また社員のワークライフバランスを考慮した経営も大切です。社員の満足度がアップして、会社に貢献したいという気持ちが高まる可能性があります。人材情報を整理して、人事部門や経営陣が適切に社内の人的資本の状況を把握することが重要です。
人的資本経営に必要な3つの視点
ここでは、人的資本経営に必要な3つの視点について解説します。
- 経営戦略と人材戦略をリンクさせる
- 目標と現状のギャップを把握する
- 自社の価値向上につながる企業文化を定着させる
企業価値の向上のための人材戦略を実施できているかどうかを考える際に必要な視点なので、ここで確認しておきましょう。
経営戦略と人材戦略をリンクさせる
人的資本経営では、経営戦略と人材戦略をリンクさせる必要があります。策定した経営戦略を実施するためには、どのような人材が必要になるのかを定めないといけないためです。また経営戦略との結びつきを念頭に置きながら、自社に適した採用や育成を実施するなどの、人材戦略を練ることが重要です。
目標と現状のギャップを把握する
人的資本経営には、目標と現状との相違を定量的に把握することが大切です。ビジネスモデルの相違や経営戦略と人材戦略の食い違いを正すためには、以下の社員情報を把握する必要があります。
- 能力
- 経験
- 配属
常に情報収集を行い、目標と現状との相違を把握しておくのがポイントです。課題を解決するためにもPDCAサイクルを回し、人材戦略を見直しましょう。
自社の価値向上につながる企業文化を定着させる
人的資本経営では、存在意義(パーパス)や企業理念を定義し、持続的に企業価値を上昇させることが大切です。企業文化は、社員の意識や行動によって形成されていきます。企業トップが、粘り強くパーパスや経営理念を伝えるのがポイントです。
人的資本経営に必要な5つの要素
ここでは、人的資本経営で必要な要素を5つ解説します。
- 経営戦略の実現と変化に対応できる人材の確保・最適化
- 多様な知識・経験を有した社員の掛け合わせ
- リスキリング・学び直しの実行
- 社員のエンゲージメント向上
- 時間と場所にとらわれない働き方の実現
人材戦略を考えるときに必要な知識なので、ぜひ参考にしてください。
経営戦略の実現と変化に対応できる人材の確保・最適化
経営戦略を実現するには、変化に対応できる社員の確保と業務の質の最適化が必要です。理想の人材を定めて、動的な人材ポートフォリオを策定し、運用しましょう。人材ポートフォリオとは、社員の構成内容を示したものです。どのようなスキルを持った人が、どの部署に何人在籍しているのかなどを把握できます。
動的とは、現状をリアルタイムで把握することです。動的な人材ポートフォリオを整えると、自社で働く社員の状況をリアルタイムで正確に把握できます。適材適所の人材配置など、人事戦略の目標を達成しやすくなるでしょう。
多様な知識・経験を有した社員の掛け合わせ
現代社会では、多様な経験や価値観を持ち合わせている人材を受け入れ、人的資本として経営に活かしましょう。さまざまな経験や知見を組み込むと、継続的な価値の向上が期待できます。多様な知見をかけ合わせると組織改革が起きて、革新的な事業のヒントが得られる可能性が高まります。
リスキリング・学び直しの実行
リスキリング・学び直しの実行も、人的資本経営を実施する際に求められる要素です。リスキリングとは、新たなスキルや知識を身につけることです。企業は社員が自らのキャリアを考え、学び直しができるような体制を整備する必要があるでしょう。さらにリスキリングや学び直しの習慣を、社員に身につけさせることも大切です。
ビジネス環境や経営環境が変動し続ける中でも、柔軟に対応できるような人材へと成長します。組織変革を実現するためにも、経営陣が率先してリスキリングや学び直しを実行する必要があるでしょう。リスキリングについて詳しく知りたい方は、別記事「リスキリング」をあわせてご確認ください。
社員のエンゲージメント向上
社員のエンゲージメント向上も人的資本経営で求められる要素です。エンゲージメントとは、社員の企業に対しての信頼感や帰属意識を指します。エンゲージメントが高いと、企業への貢献意欲の向上、離職率の低下などが期待できます。企業は以下の方法を取り入れれば、エンゲージメントを高めることにつながるでしょう。
- 研修・教育体系を整備する
- 特別休暇を導入する
- 副業・兼業を認める
人的資本経営を実施する際は、社員一人ひとりを適切に分析して、エンゲージメント向上に努める必要があります。エンゲージメントの分析には、タレントマネジメントシステム「タレントパレット」の導入をご検討ください。
タレントパレットには、パルスサーベイやESサーベイ、サンクスポイントなど、さまざまな機能が搭載されています。また人材データを一元化・分析できるため、人事に関する業務の効率化が可能です。
社員のエンゲージメントを向上させ、離職率の低下や企業への貢献度意欲の向上を図りたい方は、ぜひ導入を検討してみてください。タレントマネジメントシステムについて詳しく知りたい方は、別記事「タレントマネジメントシステム」をあわせてご確認ください。
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時間・場所にとらわれない働き方の実現
人的資本経営には、時間・場所にとらわれない働き方の実現が求められます。現代社会では、働き方改革や世界情勢の影響で、多様な働き方への対応が必要です。リモートワークや時短勤務制度などを導入すると、時間や場所にとらわれない働き方が実現可能です。
加えて、オフィス外でも業務が滞りなく進められるように、オンラインツールの整備や1on1の設定が必要になるでしょう。業務プロセスの再検討やコミュニケーション手段の見直しも実施する必要があります。
人的資本経営まとめ
人的資本経営は、社員のスキルやポテンシャルを「資本」と考えます。人材価値を最大限に引き出し、中長期的に企業価値を向上させることが目的です。しかし、実行する項目が多いため「自社に人的資本経営を取り入れるのは大変だ」と感じることもあるでしょう。人的資本経営を効率良く実施するために、タレントパレットの導入をご検討ください。
タレントパレットは、人材データの一元化や分析を行い、組織のポテンシャルを最大化させるタレントマネジメントシステムです。人的資本経営のための人事戦略に効果的なツールが数多く搭載されているので、ぜひ導入を検討してみてください。