職務記述書は求人情報に必須?理由や目的・作成方法まで解説


職務記述書は求人情報に必須?理由や目的・作成方法まで解説

職務記述書は、採用のミスマッチ防止や公平な人事評価などに役立てられていますが、それ以外にも様々なメリットがあります。今回は、職務記述書のメリット・デメリットや作成方法などをご紹介しましょう。

こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。

職務記述書とは、アメリカやヨーロッパなどで人事・採用時に用いられている書類です。採用のミスマッチ防止や公平な人事評価などに役立てられていますが、それ以外にも様々なメリットをもたらしてくれる理由から、日本でも注目を浴びています。そこで今回は、職務記述書を取り入れる目的やメリット・デメリット、作成方法などをご紹介しましょう。

職務記述書とは?

職務記述書とは職務内容を詳細にした書類であり、ジョブディスクリプションとも言われています。業務や人事評価の明確化を目的に、業務の内容・権限・責任・必要なスキル・資格などを記載します。

日本ではあまり導入が進められていませんでしたが、成果主義のアメリカやヨーロッパなどの外資系企業では一般的に使用されているのです。人口減少や高齢化が進む日本において、職務を定義する職務記述書は今後さらに注目を集めるでしょう。

職務記述書の作成が求められる理由

担当業務や範囲、必要スキルが定義された職務記述書は、アメリカやヨーロッパなどでは採用や人事に用いられるケースが多いです。なぜ現在日本で必要性が高まっているかというと、ジョブ型雇用や外国人雇用が増加しているためだと言えるでしょう。

ジョブ型雇用とは労働時間や勤務年数ではなく、職務やスキルなどで評価する雇用システムです。少子高齢化や生産年齢人口の減少などが原因で人材不足に悩まされる企業は多く、少ない人員で高い生産性を保たなければなりません。

そのような悩み解消の足掛かりになってくれるのが、職務記述書です。求める人材や能力の明確化とそれに適した報酬の設定により、即戦力となる人材の確保ができるようになります。また、外国人雇用者の増加に合わせて、海外では一般的な職務記述書の作成が求められるケースも多いです。

職務記述書を導入する目的


職務記述書には様々な内容を盛り込む必要があり、さらに正確性も求められるため作成には時間がかかります。しかし、それでも導入を検討する企業は後を絶ちません。続いては、企業が導入する目的について解説しましょう。

採用での目的

職務記述書を導入する目的として、まず採用時の適正判断があります。企業が求人を掲載する際には求人募集要項の掲載が一般的であり、2つの書類は似ているように感じるかもしれません。確かに求職者向けに提示する点は同じですが、内容は大きく異なります。

求人募集要項は待遇面を重視した内容となっており、詳しい仕事内容は記載されていません。例えば、雇用形態や給与、勤務地などが記載されるのが一般的です。一方で職務記述書は職務内容や権限、必要スキルなどをより詳細にまとめた内容となっており、採用のミスマッチ防止に役立てられています。

人事での目的

職務記述書を導入する事により、採用基準や評価基準が明確になり、公平な人事評価が実現しやすくなります。職務給制度を導入する企業においては評価者によって結果のバラつきが出やすく、不満を感じる従業員が出てくる恐れもあるでしょう。

そのような事態を防ぐためには評価者による差が出ない制度が必要であり、そこで大切になってくるのが職務記述書です。業務内容がきちんと定められていれば達成度がわかりやすくなり評価者の負担軽減につながるほか、従業員にとっても方向性が明確になるメリットもあります。従業員のモチベーションアップは生産性向上につながるため、積極的に導入すべきでしょう。

職務記述書運用による影響

採用や人事の際に活用されるケースが多い職務記述書ですが、それ以外にも多くのメリットがあります。どのような良い影響を与えてくれるのかを具体的な4つのメリットをご紹介しますので、導入に悩んでいる企業はぜひ参考にしてください。

会社業務に適した人材が集まる

求人募集時に職務記述書を用いると、マッチング度の向上が期待できます。会社が必要とする人材が曖昧な企業の場合は求職者とのギャップが発生してしまうと、入社後に「イメージと違う」「予想していた仕事内容でない」などの不満が理由で退職するケースは多いです。

職務記述書により業務内容が明確になれば実務経験のある応募者が集まりやすく、双方が求める人材像のギャップが少なくなります。また早期退職率が低下し、勤務年数の長期化にもつながるでしょう。

生産性向上

従業員の業務内容や範囲が明確になると効率の良い仕事が可能です。誰が担当者なのかがはっきりするため進捗状況の把握が容易になり、無駄な時間をカットできる分それぞれ業務に集中できるようになります。

業務の効率性アップは生産性向上にもつながり、さらにはコスト削減や労働環境改善、従業員のモチベーションアップなどのあらゆるメリットをもたらしてくれるでしょう。また、誰が担当者なのかわからない曖昧な業務が減り、仕事上の無駄や非効率性の高いタスクの発見にも役立ちます。

特定分野に特化した人材育成が可能

職務記述書で業務内容を明確にし、それに応じた報酬を定めると即戦力の確保がしやすくなるだけでなく、自分の仕事量や成果目的が把握しやすいため高い効率性を見込めます。また、様々な部門を転々と異動せず指定の場所でスキルを磨いてもらうため、特定分野に特化したスペシャリストの育成も可能です。

テクノロジー化が進む現代社会ではあらゆる分野で高い専門性が求められており、スペシャリストの存在は欠かせません。そこで職務記述書を導入すれば、効率的な人材育成が期待できます。

人事評価に客観性が得られる

職務記述書は業務をきちんと行えているか、成果を達成できたかなどの評価にも役立ちます。業務内容が不明確だと評価基準も曖昧になり、上司の個人的主観が反映されやすくなるため、内容に納得できない従業員も少なくありません。公平な評価をしてくれない企業で働くモチベーションは保てず、退職を検討するケースもあります。

評価の際に職務記述書を用いたり、書類に基準を明記したりすると客観的に判断が可能になり、従業員も不公平感を感じにくくなるでしょう。

【項目別】職務記述書の書き方と具体例

職務記述書には決まったフォーマットはありませんが、一般的にはポジション・業務内容・職務責任・職務目的・必要スキルや資格、経験年数の5項目が必要です。各項目の記載方法や具体例などをご紹介します。

ポジション

ポジションとは、管理職や職位といった社内での立ち位置です。部下の人数や他部門との関係性などを伝えると、どのような立ち位置での入社となるかを具体的にイメージすることに役立ちます。課長・部長・係長などの職位だけでなく、営業部課長・開発部部長・エンジニアリング部係長などと表記するとわかりやすいでしょう。

また、一般的な呼び名とは異なるポジション名の場合は誤解を生む可能性があります。注釈を加えたり、他の企業と同じ表現を用いたりすることが大切です。

業務内容

入社後の様子が想像しやすい業務内容や範囲は、なるべく具体的に盛り込みましょう。入社後にどのような仕事をするのか、どこまでが業務範囲なのかを明確にすると、求職者は自分のスキルや経験が活かせるかどうかの判断ができます。

大切なのは、詳細に盛り込むことです。例えば「営業活動」とだけ記載するのではなく、以下のように詳しく記載しましょう。

【業務内容】
電話・メール・訪問による営業活動、提案資料・見積書作成、アフターフォロー、その他営業活動に必要な業務、部下の育成、他部門との情報連携

職務責任

職務責任とは、従業員が全うすべき業務の範囲です。企業が求める職務義務だけでなく、それを遂行するにあたって負ってもらいたい項目を伝えます。

営業職の場合は、営業活動が職務義務に該当します。営業活動を全うするためには、事前調査や提案書・見積書の作成は必須であり、それらを行わない従業員は職務責任を果たしていないと言えるでしょう。

営業職であれば「営業活動のスムーズな遂行・他部門との連携・部下の育成」などと記載し、どの領域まで責任があるかを伝えることをおすすめします。

職務目的

職務目的も重要な記載事項の1つです。業務内容が営業活動であったとしても、営業相手が企業なのか個人なのか、新規開拓なのかルート営業なのかで職務目的は異なります。企業側が従業員に求める目的がわかりやすく伝わるよう、以下のように文語体を用いて記載するケースが多いです。

「商品・サービスの価値や利便性を伝え、企業様が抱える悩みやお困りごとに寄り添った提案をしていただきます。商品について知っていただくための新規顧客の開拓が最優先です」

必要スキル・資格・経験年数

業務遂行のための必要スキルや資格、経験年数などについても記載しましょう。特定のスキルや経験がないと業務を担当できない場合は、資格名まで明記してください。例えば「普通自動車第一種運転免許」「Microsoft Officeソフトを用いた資料作成」などです。

また、部下の育成も職務内容に含まれる場合「営業経験○年以上」「マネジメント年数○年、マネジメント人数○人」などと求められる経験年数や実績も記載するとわかりやすいでしょう。

職務記述書の活用だけで終わらない、あらゆる人事データを統合して分析

職務記述書は採用や評価の際に役立ちますが、より効率的に運用するなら正しいデータ管理は必須です。また、既存従業員の職務や資格などをデータにまとめることで、適した人材配置も可能になります。

人事データをうまく活用するのなら、人事戦略に役立つタレントパレットがおすすめです。データ管理から分析、人事評価、人材育成など様々なシーンで役立ちます。

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【3step】職務記述書の作り方


職務記述書の主な記載項目がわかったら、次はいよいよ作成です。作成時のステップを詳しく解説しますので、ぜひご覧ください。

企業にとって理想的な人材の把握

まずは企業がどのような人材を求めているか把握しましょう。ポジションや職務目的の参考にして、求める人材の大枠を確認します。

例えば積極的に行動できる人、途中で投げ出さずコツコツと作業できる人、リーダーシップのある人などが該当します。実際に近くで現場を見ている経営責任者や部長にヒアリングを行い、どのような人物が必要なのかを明確にしましょう。

求める人材の能力を確認する

理想的な人物像のイメージが固まったら、より詳細に求める人材を決めます。求められる役割や責任範囲、目標などの部分を埋めていきましょう。職務遂行にあたって必要なスキルや経験を明確にし、成果目的を達成するために求められる能力を明らかにしていきます。

実際に現場でその業務を担当する従業員にヒアリングすることも大切です。さらにマネージャーや上司、先輩などの様々なポジションにいる従業員に話を聞くと、より信頼度の高い情報が得られます。

職務記述書に載せる文章を作成する

必要な情報が収集できたら、次は文書の作成です。集まった内容を一つひとつ整理し、不要な情報はカットしながらわかりやすい内容へと仕上げていきます。

作成時には誤字脱字がないか、間違った受け取り方をするわかりにくい表現はないかなどを確認し、最後は現場従業員やマネージャーなどに内容のズレがないかを確認してもらいましょう。

職務記述書運用上の注意点

多くのメリットがある職務記述書ですが、注意点も存在します。しかし、事前に注意点を知っておけば対策できますので、ぜひチェックしてください。デ

部署間での関係悪化の可能性がある

業務内容を明確にすると、柔軟性が失われやすいというデメリットがあります。職務記述書には記載されていない業務外の仕事は行う必要がなく、上司が部下に強制することもできません。そのため、担当が曖昧な業務はどこの部署が行うのか揉める可能性があり、場合によっては部署間の関係性やチームワークが悪化する恐れもあります。

そのような事態を防ぐためには、職務記述書にチームにおける目標や達成のために全体で遂行すべき業務、共同で行う仕事内容などの記載が大切です。職務範囲を絞りすぎず、ある程度幅を持たせれば柔軟性が失われずに済むでしょう。

定期的な更新が必要

職務記述書は、一度作成したら終わりではありません。企業が掲げる目標によって求める人材やスキル、資格は年々変化するため定期的な見直しや更新が必要です。特に部署の変更や組織変更、事業縮小などがあった際には内容の見直しが欠かせません。

会社内部に大きな変化がなくても実際の仕事と差異がないか、正しい評価に役立っているかなどの見直しは大切です。また、従来のような年功序列制度がなくなることで、不満を抱く従業員が出てくる可能性にも注意しましょう。

ゼネラリストが育てにくい

職務記述書を用いた採用は特定業務に従事する契約なので、幅広い業務を担当できるゼネラリストの育成は困難です。専門性の高さが求められる仕事が多いためスペシャリストの存在ばかりに注目されやすいですが、業務を円滑に進めるためにはゼネラリストの存在も必要になってきます。

また特定分野だけでなく幅広い仕事を経験したい求職者にとって、職務記述書による採用はネックとなる部分です。部門ごとに採用スタイルを変更する、導入前にゼネラリストの採用と育成を行うなどの工夫をし、スペシャリストとゼネラリストが一緒に活躍できる環境を整えましょう。

まとめ

職務記述書は人事や採用に役立てられているほか、即戦力になる人材の確保やスペシャリストの育成がしやすくなるメリットもあります。また、既存の従業員にとっても達成すべき目標が明確になることでモチベーションのアップにつながるでしょう。しかし、柔軟性が失われやすい、ゼネラリストを育てにくいなどの点には注意が必要です。

職務記述書を導入するなら、ぜひタレントパレットも一緒に活用してみてください。人材データ管理や分析をもとにした最適な人材配置が可能になり、生産性向上にもつながります。

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