ジョブローテーションは幹部候補の育成に効果的?目的やメリット・デメリットを解説


ジョブローテーションは幹部候補の育成に効果的?目的やメリット・デメリットを解説

こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。

ジョブローテーションは、幹部候補などを育成する目的で多くの企業で導入されてきました。ジョブローテーションを導入することで、幹部候補の育成においてどのような効果があるのでしょうか。

この記事では、ジョブローテーションを導入する目的とともに、メリット・デメリットなどを解説します。幹部候補を育成するためにジョブローテーションの導入を検討している場合は、ぜひ参考にしてください。

ジョブローテーションとは

ジョブローテーションとは、社内の人材を定期的に配置転換し、幅広い職務経験を積ませるための制度です。特に、幹部候補に対してジョブローテーションを実施すると、管理職の役割を果たすために必要な力を身につけられると考えられています。


ジョブローテーションを実施する目的

ジョブローテーションの実施には、さまざまな目的があります。ここでは、目的について解説します。


幹部候補を育成する

幹部として活躍するには、自社の業務全体に対する理解が必要不可欠です。ジョブローテーションを実施すればさまざまな業務を経験できるため、将来、幹部としての役割を果たすために役立ちます。


属人化を防ぐ

ジョブローテーションを行えば、業務の属人化を防ぐことも可能です。定期的に新しい業務に携わることができれば、モチベーションの低下やマンネリ化などの防止にもつながります。属人化を防ぐために、幹部候補以外の社員に対してジョブローテーションを実施している企業もあります。


ジョブローテーションの実施期間

ジョブローテーションの実施期間は、対象者によって異なります。ここでは、対象者ごとのジョブローテーションの期間について解説します。


新入社員や若手社員が対象の場合

新入社員や若手社員が対象であれば、ジョブローテーションの目安期間は3~6か月程度です。短期間でさまざまな業務を経験し、自社の業務の全体像を把握できるようにします。また、各社員の適材適所を見極めるために実施するケースもあります。


幹部候補が対象の場合

幹部候補を対象としてジョブローテーションを行う場合、期間を3~5年ごとに設定している企業が多いようです。ある程度の時間をかけ、それぞれの業務について深く理解できるようにしています。


ジョブローテーションを実施するメリット

ジョブローテーションを実施すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、企業と社員それぞれにとってのメリットを解説します。


企業にとってのメリット

ジョブローテーションを実施すれば、将来活躍する幹部候補やジェネラリストを育成できます。実際にさまざまな業務を経験し、自社のビジネスの全体像を正確に把握したり組織全体の課題へと取り組めるようになるからです。


また、すべての社員を対象としてジョブローテーションを行うと、適材適所の人材配置を実現できます。社員同士の接点も増えるため、部署間で連携しやすくなるでしょう。さまざまな業務経験により、新しいアイデアも生まれやすくなります。


社員にとってのメリット

社員がジョブローテーションで幅広い業務を経験した場合、さまざまな知識やスキルを身につけられます。また、実務経験を通し、自分自身がどのような業務に向いているか把握できます。社内における人脈も広がるため、どのような業務に携わるうえでも社員間で協力しやすくなり、効率性や生産性の向上も期待できるでしょう。


また、定期的に違う業務を担当すれば、マンネリ化が起きにくくなります。仕事に対するモチベーションが高まり、より意欲的に働けるようになります。


ジョブローテーションのデメリット

ジョブローテーションには、デメリットといえる部分もあります。ここでは、企業と社員それぞれにとってのデメリットを解説します。


企業にとってのデメリット

ジョブローテーションを行う場合、対象となる社員は短期間で複数の部署を異動するため、異動が発生するたびに教育の工数や業務に慣れるまでの時間も必要になります。仮に、ジョブローテーションを行っている途中で社員が退職すると、教育にかかったコストを回収できない可能性があります。


さらに、各部署に短期間しか在籍できないため、スペシャリストの育成には向いていません。なお、社員自身がジョブローテーションを希望していなければ、短期間での異動が退職理由になる恐れもあります。


社員にとってのデメリット

ジョブローテーションでさまざまな部署を経験すれば、1つの分野について専門的な知識やスキルを身につけることが困難です。自分が望んでいない部署へ異動になる可能性もあります。希望に合わない部署で働くとなると、仕事に対するモチベーションが著しく下がる恐れがあるでしょう。


また、ジョブローテーションでは、短期間での異動が前提となっています。部署に異動するたびに新しい業務について学ばなければならず、社員にとって負担になる可能性があります。


幹部候補向けジョブローテーション導入の流れ

ここでは、幹部候補に対してジョブローテーションを実施する際の流れについて解説します。


幹部候補の対象者を選定する

まずは、対象となる幹部候補を選定しましょう。適正、年齢、勤務年数などの条件をもとに、ふさわしい人物を厳選します。ただし、一方的に指名するのではなく、必ず社員の意向を確認するための面談を設けたうえで最終的な判断をしましょう。


異動先や期間を決める

企業と幹部候補それぞれの意向を確認し、それぞれが納得できる異動先や期間を決めましょう。異動先や期間を決める際は、対象者の性格や価値観にも最大限配慮することが大切です。


ジョブローテーションを実施する

対象者から同意を得たら、実際にジョブローテーションを実施します。受け入れ先となる部署の準備が整い次第、対象者を異動させましょう。なお、目的や今後の見通しも事前に伝える必要があります。


ジョブローテーションに向いている企業

ジョブローテーションが向いている企業には、特徴があります。ここでは、ジョブローテーションに向いている企業の特徴を解説します。


複数の部署で連携が必要な企業

複数の部署が連携しながら業務を進めている場合、ジョブローテーションは効果的です。部署間のコミュニケーションが必須となるため、社員を短期間で異動させると交流を促進できます。たとえば、製造部門、研究開発部門、マーケティング部門など、視点が異なる複数の部署を経験すると、社員同士が配慮し合って業務を進められるようになります。


幅広いエリアで事業展開している企業

拠点がさまざまなエリアにある企業も、ジョブローテーションに向いています。たとえば、日本全国で事業展開している企業の場合、本社と各拠点の両方でジョブローテーションを行うと、より広い視野で業務に取り組めるようになります。海外に拠点がある場合も同様です。ジョブローテーションを経験した社員がそれぞれの橋渡し役として活躍できます。


ジョブローテーションに向いていない企業

企業によっては、ジョブローテーションが向いていないケースもあります。ここでは、具体的にどのような企業にジョブローテーションが向いていないのか解説します。


専門的スキルが必要な企業

各部署で専門的な知識やスキルが必要な企業には、ジョブローテーションはおすすめできません。ジョブローテーションのために高度なスキルをもつ人材が異動した場合、業務全体の生産性が著しく低下する恐れがあります。ジョブローテーションは、自社の業務内容や特徴も考慮したうえで実施しましょう。


小規模な企業

スタートアップ企業やベンチャー企業など小規模な企業にも、ジョブローテーションは向いていない可能性があります。小規模な企業では、そもそも1人でさまざまな分野の業務を兼任している場合が多いからです。そのような状況でジョブローテーションを実施しても、思うような効果は得られません。


ジョブローテーションを実施する際のポイント

ジョブローテーションを実施する際は、意識したいことがあります。ここでは、具体的なポイントを解説します。


1. 目的や期間などを明確にする

ジョブローテーションを実施する前に、目的、期間、業務内容などの詳細を明らかにしておきましょう。対象者に詳細を示し、本人が十分に納得したうえで取り組めるようにする必要があります。


2. 個別面談を実施する

ジョブローテーションを行う場合、必ず事前に個別面談を実施しましょう。対象者の意向を把握し、なるべく希望に配慮してください。また、ジョブローテーションを終えた後に人事担当者や所属長との面談を設けることも大切です。


3. 公正な人事評価を行う

ジョブローテーションを実施すれば、対象者はそれまでと異なるまったく新しい業務に取り組まなければなりません。その結果、過去のような成果を出せなくなる恐れがあります。人事評価の際は、その点を考慮したうえで適切な判断をすることが大切です。


ジョブローテーションを導入している企業の事例

ジョブローテーションは、さまざまな企業で導入されています。ここでは、具体的な事例を紹介します。


総合職を対象にしたジョブローテーションを実施

建材資材や住宅設備機器などを製造販売しているある企業では、総合職を対象にジョブローテーションを行っています。さまざまな業務経験を積み、視野を広げたりキャリアの選択肢を増やしたりすることが狙いです。また、社員個人の適正を見極めたり能力を開花させたりする目的もあります。


入社から10年間のジョブローテーションを実施

総合商社として有名なある企業では、新卒入社から10年間かけてジョブローテーションを実施しています。長期間かけて計画的にジョブローテーションを行い、人材育成や組織の活性化につなげています。ジョブローテーションにより、社員は自社の業務の全体像を正確に理解したうえで働けるようになりました。


ジョブローテーションの実施は今後増えるのか

ジョブローテーションは、企業においてどのような扱いになっていくのでしょうか。ここでは、ジョブローテーションの今後について解説します。


ジョブローテーションは今後縮小する可能性がある

ジョブローテーションには一定の効果があると考えられているものの、社員にとっての負担が大きいという問題点もあります。そのため、今後はジョブローテーションの実施が縮小する可能性もあるでしょう。


新たな人事制度の活用も増えている

近年は、ジョブローテーション以外の人事制度も積極的に活用されています。たとえば、社員が自ら志願して異動できる「社内公募制度」や「社内FA制度」などの人事制度があります。今後は、これらを活用する企業がさらに増えていくでしょう。


まとめ

ジョブローテーションを実施すれば、幹部候補となる社員の育成にさまざまなメリットがあります。ただし、ジョブローテーションにはデメリットもあるため、ほかの人事制度とともに導入を検討するとよいでしょう。


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