経営戦略と人事戦略を連動させるメリット|手順や施策例、ポイントなどを解説


経営戦略と人事戦略を連動させるメリット|手順や施策例、ポイントなどを解説

経営戦略と人事戦略は異なる概念ですが、組織の目標を達成するためには両者を密に連携させることが大切です。本記事では、経営戦略と人事戦略を連動させるメリットや、それぞれの戦略の策定手順などを解説します。経営戦略と人事戦略を連動させるための施策も紹介するので、ぜひ参考にしてください。


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経営戦略とは

経営戦略とは、企業が経営の目的を達成するために立てる計画のことです。経営資源を最適化して目的を果たせるよう、中長期的な方針を決定します。


また、具体的な施策を実行する仕組みづくりも、経営戦略の一部です。


経営戦略の3分類

経営戦略は、以下の3つに大別されます。

全社戦略

企業やグループ全体の方向性を定める戦略。中長期的な戦略や、経営リソースの配分などを決定する

事業戦略

各事業の部門・部署別に立てる戦略。全社戦略の内容に基づき、事業ごとの事業領域の設定や資源配分、ビジネスモデルの設定などを行う

機能別戦略

社内の機能別に立てる戦略。生産戦略や販売戦略、物流戦略など。それぞれの機能を最適化するために策定される

上記の3分類を基本としつつ、特定のテーマや目的のために戦略を策定することもあります。


人事戦略とは

人事戦略とは、採用活動や人材育成などの人事業務を改善し、企業の生産性を向上させるための計画です。経営資源の1つである、「ヒト」に関わる業務の変革を目的とします。人事戦略は、経営戦略の3分類である機能別戦略の1つです。


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経営戦略と人事戦略の重要性

経営戦略と人事戦略は、なぜ策定する必要があるのでしょうか。ここからは、経営戦略と人事戦略、それぞれの重要性について解説します。


経営戦略の重要性

現代は、変化の激しい時代です。市場の動向や顧客ニーズの変化に対応するためには、未来を見据えた経営戦略が不可欠であり、その重要性はますます高まっているといえるでしょう。


経営戦略の立案により、企業は自社が持つ強みを把握し、経営資源(ヒト・モノ・カネ)を適切に運用できるようになります。


人事戦略の重要性

近年、従来の人材マネジメントを続ける企業では、人材の確保に苦戦するケースが少なくありません。そのおもな要因としては、以下のようなものが挙げられます。


  • 雇用の流動化
  • 働き方の多様化
  • 労働人口の減少 など


このような状況で、人材の確保や定着、離職防止を達成するためには、人事戦略の策定が欠かせないでしょう。


たとえば「ワークライフバランスの充実を支援する」「評価制度を見直す」などの施策により、社員が働きやすい環境を構築すれば、人材が定着しやすい組織を実現できます。


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人事戦略と戦略人事の違い

人事戦略とよく似た言葉に、「戦略人事」があります。


戦略人事とは、企業が目的を実現するため、人的経営資源を適切に管理する仕組みや考え方のことです。人事戦略と比べて経営に近い視点でのビジネス理解が求められ、多くの場合はトップダウンで進められます。


一方、人事戦略は、人材の採用や業務効率化などにフォーカスした戦略です。


なお、人事戦略の立案には、上流工程にある戦略人事の内容が大いに反映されるため、両者は切っても切り離せない関係にあるといえるでしょう。


経営戦略と人事戦略、戦略人事の関係性

ここまでの内容をまとめると、戦略人事は「経営戦略と連動した人事戦略を策定し、実行すること」と言い換えることも可能です。


人事戦略には、本来、経営戦略に直接関与する意味合いは含まれていません。人事戦略と経営戦略を密接に連携させるための取り組みが戦略人事であると考えられるでしょう。


経営戦略と人事戦略を連動させるメリット

経営戦略と人事戦略の連動は、企業の競争力と社員エンゲージメントの向上につながります。


競争力の向上

経営戦略と人事戦略を連動させると、両者の間でタイムラグが起こりにくくなり、経営に対して人事観点で的確かつ迅速な提言を行えます。また、市場の変化に応じて、経営戦略をスピーディに実行できるようになり、組織としての競争力が強化されるでしょう。戦略をもとにした無駄のない人事投資を行えるため、人事コストの削減にもつながります。


エンゲージメントの向上

社員が経営戦略と担当業務の関連性を理解できるようになれば、仕事に対するモチベーションが高まります。


また、戦略に基づくキャリア形成を後押しすることや、戦略の実現に貢献した人を評価する仕組みを構築することも、社員の意欲を高める要因となります。


自分の成長が企業の成長に結びついているという実感が高まれば、企業への貢献意欲もアップし、エンゲージメントの向上につながるでしょう。


経営戦略と人事戦略の連動におけるよくある課題

経営戦略と人事戦略を連動させる過程には、以下のような課題がつきものです。


経営層や各部門との連携不足

人事部門と経営層や各部門との連携が不足していると、戦略の整合性がとれなくなってしまいます。経営戦略と人事戦略の連動を目指すのであれば、経営層や各部門と従来以上に密なコミュニケーションを取る必要があるでしょう。


人事部門における経営者のパートナーとして経営戦略の実現を支援する「HRBP」や、経営陣の一員であり人事部門のトップである「CHRO」などのポジションを配置することもおすすめです。


人事担当者のスキル不足

経営戦略と人事戦略を連動させるためには、人事部門に対して、経営やビジネスへの深い理解が求められます


これまでとは異なる知識やスキルを求められるため、必要な能力を持つ人材が不足する可能性もあるでしょう。そのような事態を避けるためには、人事部門社員の育成に力を入れることも大切です。


人材データの分散

経営戦略と人事戦略を連動させるためには、人材データを適切に活用しなければなりません。しかし、多くの企業では社内の人材データが分散しており、データを十分に活用できていないという問題を抱えています。評価や育成などに関するデータを適切に活用するためには、人材データの一元管理を実現することが重要です。


経営戦略を策定する手順

経営戦略を策定する基本手順は、次のとおりです。


  1. 経営理念やビジョンを明確化する
  2. 現状を分析する
  3. 課題やリスクを洗い出す
  4. 経営戦略を策定する


それぞれ、以下で詳しく解説します。


経営理念やビジョンを明確化する

まずは、自社の経営理念を明確化します。経営理念に決まったスタイルはないので、分かりやすく文章化しても、人の心を捉えるようなキャッチーなフレーズを考案してもよいでしょう。


経営理念は普遍的なものであるべきとされるため、長期的な視点で考えることが大切です。その後、明確化した経営理念をもとに中長期的なゴール(ビジョン)を定めます。いつまでに、何を達成するのか、具体的な目標を設定しましょう。


現状を分析する

戦略の立案には、現状分析が欠かせません。市場やトレンドなど自社を取り巻く「外部環境」と、自社の経営資源や強みなどの「内部環境」を分析しましょう。自社の強みと弱みを明確にしておけば、目標達成のための手段を見つけやすくなります。


課題やリスクを洗い出す

現状分析の結果に基づき、目標と現状とのギャップを自社の経営課題とします。課題が明確になれば、「課題を解決するにはどうすれば良いか」という観点から、具体的な解決策(方法)を決定しやすくなるでしょう。


また、解決策を実行する上でのリスク要因を洗い出すことも重要です。人材不足が懸念されるなら採用活動を強化するというように、リスクの解消手段もセットで検討します。


経営戦略を策定する

最後は、ここまで検討してきた内容をもとに、経営戦略を固めていきます。経営戦略を形骸化させないためには、経営計画に落とし込むことが重要です。具体的な経営計画を立てたら、各事業部に共有します。なお、戦略は立てて終わりではなく、実行・振り返りのプロセスも設けましょう。


経営戦略と人事戦略を連動させる手順

経営戦略の策定後、人事戦略との連動を図る手順は次のとおりです。


  1. 経営戦略を踏まえた人事目標を設定する
  2. 人材に関する現状を分析し、課題を洗い出す
  3. 具体的な施策を決定する


それぞれ、以下で詳しく解説します。


経営戦略を踏まえた人事目標を設定する

まずは、策定した経営戦略をもとに、人事領域における目標を設定しましょう。


たとえば、経営戦略に新規事業の立ち上げが含まれる場合は、「新規事業に必要な人材を○人育成する」といった目標を立てます。


この際、経営ビジョンが達成されたときの人材ビジョン(社員がどのような状況になっているか)を考えることが重要です。


人材に関する現状を分析し、課題を洗い出す

次に、人事に関する自社の現状を分析します。社員の年齢構成やスキル、ヒアリングの結果などのデータを整理し、経営目標とのギャップを把握しましょう。社員に対してヒアリングを行う際は、データを長期的に集めると判断の精度を高めやすくなります。


目標とのギャップを把握したら、解決すべき課題を明らかにします。


具体的な施策を決定する

最後に、ここまで検討した内容に基づき、具体的な施策や人事計画を検討しましょう。採用活動や人材育成など、各人事業務に一貫性を持たせることが重要です。


また、具体的なアクションが決まったら実行に移し、施策の効果を検証する必要があります。目標を達成できたのか否かを判定するための基準を含め、効果測定についても検討しておきましょう。


経営戦略と人事戦略を連動させるための施策例

ここからは、経営戦略と人事戦略の連動を実現させるための、具体的な施策を紹介します。


人材ポートフォリオ

人材ポートフォリオとは、経営戦略に基づいて人的資本を最適化する手法です。


人材ポートフォリオを作成すると、社内のどこに、どのような人材が、どのくらい配置されているのか、企業の人的資本の構成内容を可視化できます。


これにより、社員のスキルに合わせて最適な人材配置を実現できるうえに、不足している人材も明らかになるでしょう。採用活動や人材育成、評価制度の見直しにも役立ちます。


スキルアップやリスキリング支援

経営戦略と人事戦略を連動させるためには、社員のスキルアップを支援することも重要です。また、近年は職務に必要なスキルを新たに取得する「リスキリング」にも注目が集まっています。


戦略の実現のため、社員に求めるスキルを明らかにし、スキル取得に向けた教育体制を整えることが大切です。


タレントマネジメント

タレントマネジメントとは、社員それぞれのスキルや経験などを把握し、人材マネジメントに役立てることでパフォーマンスの最大化を目指す手法です。


タレントマネジメントを導入すると、経営戦略に基づいたスキルや資格などを持つ人材の育成や配置が可能となります。また、社員のモチベーション向上や、企業との信頼関係の構築にもつながるでしょう。


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デジタルツールの活用

経営戦略と人事戦略の連動を効率化するため、デジタルツールの活用も検討しましょう。


たとえば、人材マネジメントにタレントマネジメントを導入する場合は、タレントマネジメントシステムの活用がおすすめです。社員のデータを一元管理でき、採用や育成、配置などを統合的に管理しやすくなります。


タレントマネジメントシステムを活用すれば、人材管理の効率が高まり、最適な人材配置や計画的な人材育成を実現しやすくなるでしょう。各社員のポテンシャルを生かした活躍を推進できる点もメリットです。


デジタルツール以外の事例として、AIやビッグデータを活用し、将来的な人材ニーズの予測や社員1人ひとりへの最適な学習コンテンツの提供に役立てるケースもあります。


経営戦略と人事戦略の連動を成功させるためのポイント

経営戦略と人事戦略の連動を成功させるためには、以下の3つのポイントを押さえることが大切です。


現場のモチベーションを高める

戦略人事は、経営側の視点に傾きやすい傾向があります。そのため、現場の社員が置いてきぼりにならないよう注意し、社員のモチベーションを高める施策を打ち出すことが必要です。また、現場の社員に寄り添い、信頼関係を築くことも心がけましょう。新たな施策を実施する際は説明会を開催し、社員の理解を促すと、施策が受け入れられやすくなります。


整合性を意識する

人事方針や施策にズレがあると、混乱を招く原因になります。全ての施策や計画を俯瞰で見たときに、全体の整合性が取れているかをチェックしましょう。


なお、はじめは整合性が取れていても、さまざまな施策や計画を実行するうちにだんだんとズレが生じる可能性もあります。万が一に備えて、軌道修正ができる体制を整えておくことも大切です。


目標達成に向けた風土づくりを進める

経営戦略と人事戦略を連動させ、戦略人事を推進するためには、人事部門だけでなく企業全体の風土づくりが不可欠です。


「経営理念を浸透させる」「人事部門が経営視点に立った提言を行うことを周知する」「社員同士のコミュニケーションを活性化する」などの施策を行い、組織が一丸となってゴールを目指せるような風土をつくりましょう。


まとめ

経営戦略と人事戦略を連動させることは、企業の成長につながります。まずは経営戦略を踏まえた人事目標を設定し、課題を洗い出したら、具体的な施策を検討しましょう。


経営戦略と人事戦略を連動させる施策はさまざまありますが、タレントマネジメントシステムの活用も有効です。


タレントマネジメントシステムを導入するなら、タレントパレットをご検討ください。


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