【注意】半休取得日の残業で法定労働時間を超えたら割増賃金が発生!3つの注意点も解説


【注意】半休取得日の残業で法定労働時間を超えたら割増賃金が発生!3つの注意点も解説

社員が半休を取得した日に残業をした場合の取り扱いがわからないという方は多いのではないでしょうか。そこで本記事では、半休を付与した日の割増賃金の考え方を具体的なケースを用いて解説するので、人事担当者の方はぜひ参考にしてみてください。

こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。


半休は有給休暇の取得を進める有効な方法ですが、残業の取り扱いにお悩みの方は多くいるのではないでしょうか。例えば、午前中に半休を取って午後から出勤したが、仕事が終わらず残業になってしまったというケースは少なくありません。


残業への理解がないと、社員から残業代の請求があった際にトラブルになる可能性もあります。そこで本記事では、半休取得時の残業の取り扱いについて解説します。残業の取り扱いを理解できる内容になっているので、ぜひ最後までお読みください。


半休を取得した日に残業させた場合の割増賃金


半休を取得した日であっても、残業代の支払いは必要です。また労働時間が8時間を超えた場合は、割増賃金での支払いが義務付けられています。残業の割増賃金は、労働基準法で定められた1日8時間、週40時間を超えた時間外労働に対して支払いが必要です。


例えば、午後のみの勤務であっても、労働時間が8時間を超えれば割増賃金の支払いが必要です。割増賃金は「1時間あたりの基礎賃金×対象の労働時間×割増率」で計算します。割増賃金率は、労働基準法で以下のとおり定められています。


  • 法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えたとき:25%以上
  • 時間外労働が限度時間(1ヶ月45時間、1年360時間)を超えたとき:25%以上
  • 時間外労働が1ヶ月60時間を超えたとき:50%以上


基礎賃金が2,000円で法定労働時間を1時間超えた場合、超過分の賃金は以下の式で計算可能です。


2,000円×1時間×1.25


企業は時間外手当として、2,500円支払います。


参照元:厚生労働省|労働時間・休日

東京労働局|しっかりマスター労働基準法


半休取得時の残業の割増賃金の3つの注意点


割増賃金には、所定労働時間や休憩時間などを考慮する必要があります。ここでは、半休取得時の残業の割増賃金に関する3つの注意点を解説します。


  • 所定労働時間内であれば割増賃金は発生しない
  • 残業時間を計算する際は休憩時間を考慮する
  • 時間外労働以外の手当を考慮する


自社の運用状況と照らし合わせて、確認してみましょう。


所定労働時間内であれば割増賃金は発生しない


割増賃金は、労働基準法の法定労働時間8時間を超えた場合のみ発生するため、所定労働時間を超過したとしても、割増賃金の支払いは不要です。例えば、所定労働時間が7時間の方の場合は、1時間の残業では割増賃金は発生しません。


上記のケースでは、所定労働時間を1時間超えた勤務ですが、法定労働時間は超えていません。このようなケースは「法定内残業」と呼ばれます。


残業時間を計算する際は休憩時間を考慮する


労働時間は、休憩時間を引いて計算する必要があります。休憩時間は労働基準法で以下のとおり定められています。


  • 6時間以上の労働に対して45分
  • 8時間以上の労働に対して1時間


例えば、13~22時の間に勤務した場合、労働時間が8時間以上になるため1時間の休憩が必要です。休憩の1時間を引くと、労働時間は法定内の8時間になるため、割増賃金は発生しません。休憩時間を含めるかどうかで、労働時間は変わってきます。残業時間の計算の際には、休憩時間を考慮して計算しましょう。


時間外労働以外の手当を考慮する


割増賃金は、法定労働時間8時間を超えた「時間外労働手当」だけではありません。残業の有無にかかわらず、以下の場合にも支払いが必要です。

  • 休日手当(法定休日に勤務させた場合):35%以上
  • 深夜手当(22時から5時までの間勤務させた場合):25%以上


午前半休で午後13時から23時まで労働させた場合は、法定労働時間を超えた1時間分の割増賃金だけでなく、1時間の深夜手当が必要です。割増賃金の計算の際には「休日手当」「深夜手当」の有無を確認しましょう。

【ケース別】半休を取得した日の残業の取り扱い


ここでは、残業の理解を深めるため3つのケース別に取り扱い方を解説します。


  • 午前半休で法定労働時間を超えた場合
  • 午前半休で終業時刻を過ぎた場合
  • 午後半休で午前の勤務が伸びた場合


判断に迷ったケースをイメージして、確認してみましょう。


午前半休で法定労働時間を超えた場合


午前半休で法定労働時間を超えた場合は、割増賃金が必要です。例えば、午後の労働時間が13時から23時までであった場合、休憩1時間を引いた労働時間が9時間になり、法定労働時間を1時間超過します。また、22時を1時間超過しているため深夜手当も必要です。


1時間分の割増賃金率は、時間外(25%)と深夜(25%)を足して合計50%になります。残業代の計算式は「1時間当たりの基礎賃金×1時間×(25%+25%)」です。半休取得日の残業は、22時を超えた深夜手当が必要な時間帯にかかる場合が多いため注意が必要です。


午前半休で終業時刻を過ぎた場合


午前半休で終業時刻を過ぎた場合、法定労働時間を超過していなければ、割増賃金の支払いは不要です。例えば、終業時刻が18時の方が半休を取得した日に、13時から19時まで働いたとしても、法定労働時間内であるため割増賃金は発生しません。


残業は、会社が定めた終業時刻を超過した場合に発生すると勘違いされがちです。割増賃金は法定労働時間を超過した場合に支払うことが義務付けられた制度であるため、会社が定めた終業時刻と混同しないように気をつけましょう。


午後半休で午前の勤務が伸びた場合


午後半休で午前の勤務が伸びてしまった場合は、半休の取り消しが必要です。例えば、午後半休を13時から取得していたにも関わらず、勤務が14時まで伸びてしまった場合などが該当します。


14時からの「早退」または「有給の勤務免除」として取り扱いましょう。本来休暇をとっていた時間の労働は、社員が請求していた半休を会社が与えなかったと判断されます。午後半休で午前の勤務が伸びた場合は、残業とは取り扱わないと理解しておきましょう。


半休制度の運用の2つのポイント


半休は適切に運用することで、社員にとって利用しやすい制度となります。ここでは、半休制度を運用する際の2つのポイントを解説します。


  • 残業の取り扱いを就業規則に明記する
  • 時間有給制度の導入を検討する


社員が半休を活用しやすくなるポイントを紹介するので、確認してみてください。半休制度について詳しく知りたい方は、別記事「半休」をあわせてご確認ください。


残業の取り扱いを就業規則に明記する


半休取得時の残業の取り扱いは、就業規則に明記する必要があります。また、社員とのトラブルを回避するため、以下の2点を明記しておきましょう。


  • 割増賃金率
  • 残業の事前許可制


割増賃金率は、社員に周知するためにも就業規則に記載しておきましょう。また、割増賃金率が法改正によって変わった場合には更新が必要です。2023年4月からは、60時間を超える時間外労働の割増賃金率は、大企業・中小企業共に50%に引き上げられました。長時間労働を抑制するなどの理由から、割増賃金率は今後も改正されることが考えられます。


残業の事前許可制は無駄な残業を減らすために、就業規則に記載しておいた方が良いでしょう。事前に上司の許可が必要であれば、社員の自己判断で残業をするリスクが減ります。残業は会社が社員に命じて行わせるものという考え方を、社内に周知することが大切です。


就業規則は、社員の同意なく会社が一方的に変更することはできません。就業規則に半休取得時の残業の取り扱いを記載することで、一般の社員にも理解が広がるでしょう。


時間有給制度の導入を検討する


半休制度を導入しても有給休暇の取得が進まない場合は、時間単位の有給との併用を検討してみましょう。時間単位での有給取得は、労働基準法の改正により2019年から認められた制度です。1時間単位で有給の取得ができるため、社員にとって活用しやすいと言えます。


ただし、時間単位での有給取得は、労働基準法により年5回を上限と定めています。そのため、有給休暇のすべてを時間単位で取得することはできません。1日や半日単位の有給休暇と併用して、利用を促進することで、有給休暇取得率の向上が期待できます。


働き方改革による残業時間規制


半休は、有給休暇を取得しやすくする制度として効果的です。しかし、半休を取得した日に残業が発生してしまっては、長時間労働の抑制にはつながりません。働きやすい会社を作る上で、半休制度と合わせて、長時間労働を抑制する取り組みが求められています。


国は働き方改革を推進するため、2019年に労働基準法を改正し「時間外労働の上限規制」を明確にしました。これまで、36協定を締結すれば1日8時間・週40時間を超えた労働が可能でした。しかし、36協定を締結した場合であっても、以下の時間を超えた労働は禁止されることになりました。


  • 1ヶ月の上限45時間
  • 1年の上限350時間


また、これまで36協定の上限時間を超えた労働は「特別条項」の締結を条件に、1ヶ月単位で認められていました。しかし、労働基準法の改正で特別条項を定めていた場合であっても、以下の時間を超えた労働は禁止されました。


  • 1年の上限:720時間
  • 時間外労働・休⽇労働の合計:⽉100時間未満
  • 時間外労働・休⽇労働の合計:「2か⽉平均」「3か⽉平均」「4か⽉平均」「5か⽉平均」「6か⽉平均」がすべて1⽉当たり80時間以内
  • 月45時間を超える労働:年6回まで


国の長時間労働に対する規制は、厳しくなっています。企業は有給休暇の取得促進と合わせて、長時間労働を抑制する取り組みを推進していかなければなりません。


参照元:時間外労働の上限規制わかりやすい解説


まとめ


半休を取得した日の残業には、法定労働時間の8時間を超過した場合に割増賃金が必要です。また残業時間が22時を超えた場合には、深夜手当としての割増賃金の支払いも必要になります。


しかし、半休は社員のリフレッシュなどを目的に利用する制度であるため、残業が発生することは本来望ましくありません。長時間労働を抑制することは人材の獲得や定着に重要な要素であるため、有給休暇の取得や残業の抑制対策を検討していく必要があります。


長時間労働を抑制するためには、社員の働き方の現状や課題の把握が必要です。しかし規模の大きい企業では、社員一人ひとりの労働時間などを見える化することは困難です。労働時間の見える化には、人材データの一元管理ができる「タレントパレット」をぜひご活用ください。


タレントパレットは、社員の残業回数を見える化し把握できます。例えば、残業回数の多い部署や時期などの把握が容易にできるため、長時間労働抑制策を考えやすくなります。長時間労働を抑制し、働きやすい会社を作るためには現状の把握から始めてみると良いでしょう。「タレントパレット」にご興味のある方は、お気軽にお問い合わせください。