無断欠勤のペナルティで罰金を課すのは違法!減給が認められるケースや注意点を解説


無断欠勤のペナルティで罰金を課すのは違法!減給が認められるケースや注意点を解説

無断欠勤でペナルティを課せるのか知りたい方もいるでしょう。適切にペナルティを課さないと、企業側が不利になる可能性があります。本記事では、無断欠勤をした場合のペナルティや注意点について解説します。人事労務担当者は、ぜひ最後までお読みください。

こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。


「無断欠勤でペナルティを課すことはできる?」「ペナルティを課す際の注意点を知りたい」などのお悩みをお持ちではないでしょうか。


無断欠勤を頻繁に行う社員がいると、業務に支障をきたします。重大性を理解してもらうために、注意するだけでなくペナルティを課そうか検討する場合もあるでしょう。しかし、ペナルティは慎重に手順を踏んで行わないと、かえって企業側が不利になる可能性があります。


そこで本記事では、無断欠勤をした場合のペナルティついて解説します。ペナルティが認められるケースや、減給を行う際のポイントが分かる内容になっているので、ぜひ最後までお読みください。


無断欠勤のペナルティで罰金を課すのは違法


無断欠勤のペナルティとして罰金を課すことは、法律違反です。労働基準法16条(賠償予定の禁止)において、以下のように定められているからです。


”使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。(e-Gov法令検索 労働基準法


また、就業規則などに「出勤日に休んだら罰金5,000円」などのルールを定めるのも、法律違反に当たります。過去には、出勤日に休んだペナルティとして罰金を支払わせた事例が、大きな問題になりました。アルバイトとして働いていた高校生が、体調不良で欠勤したところ、ペナルティとして罰金されたという事例です。


無断欠勤で契約違反とみなして罰金を課すと、社員に訴えられる可能性があります。企業が法律に違反しているため、敗訴するでしょう。


無断欠勤のペナルティとして、給与から天引きを行うこともできません。給与は労働者が働いた分の対価であり、全額支払う必要があります。労働基準法24条で「賃金全額払の原則」が定められており、税金や社会保険以外の天引きはできません。


企業が一方的に天引きをすると、社員から訴えられる可能性があります。無断欠勤を理由に、罰金や給与からの天引きは不可であることを留意しておきましょう。


無断欠勤のペナルティが認められるケース2選


無断欠勤のペナルティが認められるケースは、以下の2つです。


  • 就業規則にルールを記載している場合
  • 改善が見られない場合


法律上、罰金を課すことはできませんが、減給は禁止されていません。ただし、病気や怪我などやむを得ない事情を考慮せずにペナルティを課すと、企業への不信感が募る可能性があります。ペナルティを課すかどうかは、慎重に検討しましょう。


就業規則にルールを記載している場合


無断欠勤を理由に減給を行うには、就業規則にルールを記載しておく必要があります。厚生労働省の「モデル就業規則」によると、減給は懲戒処分として記載されています。

”始末書を提出させて減給する。ただし、減給は1回の額が平均賃金の1日分の5割を超えることはなく、また、総額が一賃金支払期における賃金総額の1割を超えることはない。(厚生労働省 モデル就業規則

1回あたりの減給の金額は、1日における平均賃金の半額を超えてはいけません。また、社員に与える影響も考慮して慎重に検討する必要があります。社員が以下のようなやむを得ない理由で無断欠勤した際は、配慮することも重要です。

  • 事故・急病
  • 精神疾患
  • いじめ・ハラスメント


事故や急病は、誰も予測できないアクシデントのため、フォローが必要でしょう。まずは社員の回復が最優先です。精神疾患やいじめ・ハラスメントは、職場環境や人間関係が原因で発生している可能性があります。

企業側に責任があると判断されるケースも想定し、ペナルティを課すのは避ける方が無難です。フォローや適切な対処を行わないと、社員を追い込んでしまいます。ペナルティを課すかどうかは、無断欠勤の理由を考慮して判断しましょう。

改善が見られない場合


「何度も無断欠勤を繰り返す」「反省している様子がない」など、改善が見られないのであれば、減給は可能です。ただし、就業規則への明記が必要です。また、ハラスメントや精神疾患などが理由なら、減給は適切ではありません。

ハラスメントや精神疾患は、基本的に企業側に責任があります。減給を行うと、社員は企業に対して不信感を抱くでしょう。無断欠勤の理由を基に、減給の判断を下すことが重要です。また、企業は減給を行う前に、以下の対応を行う必要があります。

  • 口頭で注意する
  • 顛末(てんまつ)書を書かせる
  • 指導・教育を行う


減給は、あくまで改善が見られない際の最終手段と考えましょう。一度や二度の失敗なら、口頭で注意すれば改善される可能性があります。無断欠勤した社員への対応方法について詳しく知りたい方は、別記事「無断欠勤」をあわせてご確認ください。

損失が発生した場合は損害賠償を請求できる


無断欠勤によって、企業の業績に多大な損失を与えた場合は、損害賠償請求できる可能性があります。減給や罰金とは異なりますが、ペナルティとして考えられます。損害として挙げられるケースは、以下のとおりです。


  • 社員の悪ふざけ動画がSNSで拡散されて企業の信用を損なった
  • 企業の備品を破損した


故意か不注意かで、対応は異なります。近年は悪質な悪ふざけ動画が多く拡散されていることもあり、以前よりも厳罰が課されるケースが増えています。そのため、裁判所が悪質であると判断すれば、損害賠償が認められるでしょう。


損害の算定は煩雑なため、弁護士に依頼するのがおすすめです。顧問弁護士がいる場合は依頼すれば対応してくれます。現在いない場合は、弁護士事務所に問い合わせれば、相談に乗ってくれます。


なお、損害賠償額は給与から天引きできません。労働契約を締結している以上、社員が働いた分の給与は全額支払いましょう。損害賠償を請求する際は、無断欠勤のペナルティとは別で考えるのがポイントです。


無断欠勤のペナルティで減給をする際の2つの注意点


無断欠勤のペナルティで減給を行う際は、以下の2点を守る必要があります。


  • 1回の減給額が平均賃金1日分の半額を超えてはならない
  • 減給の総額が1月の賃金の10分の1を超えてはならない


減給金額は、法律で定められており、企業は法律に基づいて減給額を決定します。法律違反にならないように、限度額をきちんと把握しておきましょう。


1回の減給額が平均賃金1日分の半額を超えてはならない


1回の減給額は、平均賃金の半額以下に設定します。平均賃金とは、該当社員に対して過去3ヵ月間に支払った給与の総額を、期間の総日数で割った金額です。総日数には、出勤日だけでなく休日の日数も含めます。例えば、3ヵ月(92日)の給与総額が69万円である社員の平均賃金の計算式は、以下の通りです。


69万円 ÷ 92日 = 7,500円 


平均賃金は7,500円です。法律では、1回の減給額が平均賃金の半分を超えてはならないと定められています。つまり、平均賃金が7,500円なら、1回の減給額は3,500円までということです。誤って3,500円以上減給すると、法律違反になるため要注意です。


減給の総額が1ヵ月の賃金の10分の1を超えてはならない


減給の総額が、1ヵ月の賃金総額の10分の1を超えてはなりません。例えば1ヵ月の給与総額が30万の社員であれば、減給できるのは3万円までです。

減給額が大きい場合は、次の給与支給日以降に持ち越せます。例えば、1ヵ月の給与総額が30万円の社員に5万円減給するとします。1ヵ月で減給できるのは3万円までのため、残りの2万円は次の給与支給日に適用可能です。


無断欠勤のペナルティを課す際に心がけるべきこと3選


無断欠勤のペナルティを課す際に注意すべき点は、以下の3つです。


  • 就業規則を確認する
  • 代理を探す
  • 社員をフォローする


無断欠勤のペナルティは慎重に判断しないと、社員とトラブルになる可能性があります。トラブル回避のために、ぜひ参考にしてみてください。


就業規則を確認する


ペナルティを課せられるのは、就業規則に記載がある場合のみです。就業規則に記載せずにペナルティを課すと、社員に訴えられた際に、企業側が不利になります。ペナルティを課さなければならない状況に陥ったときに問題なく実行できるよう、日頃から就業規則を確認しておくのが大切です。

現状就業規則に記載がなければ、万が一に備えて変更を検討するのも一つの方法です。また、無断欠勤が多かったり理由が悪質であったりする際は、社員に対してペナルティで減給する可能性があると伝えておく必要があります。

社員の中には、就業規則をきちんと読んでいない方もいるでしょう。あらかじめ説明しておくと、無断欠勤を未然に防ぐ効果も期待できます。

代理を探す


無断欠勤をした社員の代理を探すのは、企業の役割です。シフト制の職場で無断欠勤された場合、業務に支障をきたさないように、代理を探すケースがあるでしょう。無断欠勤のペナルティとして、代理探しを欠勤者に頼んではいけません。社員には代理を探す義務がないので、強制しないように注意が必要です。

また、無断欠勤者の影響で業務に支障が出る場合、企業の管理体制に問題があるとも考えられます。代理を探して人数を補填するだけでなく、管理体制の改善が必要かどうか検討しましょう。

社員をフォローする


無断欠勤は契約違反のため、注意や処分を行うのが妥当です。しかし、社員のフォローを優先したほうが良い場合もあります。例えば、ハラスメントや精神疾患など、社内環境が原因で無断欠勤をしているケースが該当します。

人事労務担当者は、無断欠勤を理由にペナルティを課す前に、原因を把握することが重要です。原因を調べた結果、無断欠勤をした社員に落ち度がないのであれば、重いペナルティは課さずにフォローしましょう。

無断欠勤は、発生しないことが望ましいです。不安や悩みを抱えている社員の予兆をいち早くキャッチし、無断欠勤をする前にフォローすると、未然に防げる可能性があります。タレントパレットにはヘルスチェック機能」「ストレスチェック機能」が備わっています。社員の不安や悩みをキャッチして、無断欠勤する前にフォローが可能です。ぜひ、お気軽にお問い合わせください。

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まとめ


無断欠勤のペナルティとして、社員に罰金を課すのは法律違反です。また、給与からの天引きも、認められていません。ただし、何度も無断欠勤を繰り返しており、改善が見られない場合は、懲戒処分として減給できます。無断欠勤のペナルティとして減給する際は、ルールを就業規則に記載しておく必要があります


人事労務担当者は、適切に対処できるように、就業規則を確認しましょう。なお、減給額の上限は、法律で定められています。違反にならないよう、計算方法を把握しておくことがおすすめです。


無断欠勤でペナルティを課すのは、あくまでも最終手段です。無断欠勤は、発生しないことが望ましいため、社員の不安や悩みを素早くキャッチして、適切に対応しましょう。


社員の健康状態やストレスの度合いを把握したい方は、タレントパレットの導入を検討してみてください。ヘルスチェックやストレスチェックもできるため、悩みを抱えている社員を把握可能です。社員の状態が確認できれば、無断欠勤をする前にフォローできるでしょう。無料資料や体験版を用意しているので、ぜひお気軽にお問い合わせください。