VUCA時代に求められる人材|育成のポイントや組織づくりも解説


VUCA時代に求められる人材|育成のポイントや組織づくりも解説

近年は、テクノロジーの進化や従来当たり前だった制度が崩壊するなど、予測が難しい時代です。このような時代を「VUCA時代」といいます。この記事では、VUCAの時代に必要とされる人材やスキルについて解説します。VUCA時代の人材育成のポイントや組織づくりについても解説するので、ぜひビジネスの参考にしてください。


人材育成に活用できるスキルマップの作り方

VUCAとは

VUCAとは、以下4つの単語の頭文字をとったものです。


  • Volatility(変動性)
  • Uncertainty(不確実性)
  • Complexity(複雑性)
  • Ambiguity(曖昧性)


近年は、国家・地域間の紛争、気候変動、政権交代など予測が難しい出来事が次々と起こっています。VUCA時代とは、状況が目まぐるしく変化する予測困難な時代です。それぞれの単語の意味を確認してみましょう。


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Volatility(変動性)

Volatilityとは変動性を指します。物事の変化の激しさ、とりわけ急激な変化を表し、予測が難しい状態です。たとえば、新型コロナウイルスが急激に感染拡大し、リモートワークの導入が広がりました。感染拡大前は予測がつかなかった出来事です。変動性には、市場や顧客のニーズの把握など、素早く的確な対応が求められます。


Uncertainty(不確実性)

Uncertaintyとは、不確実性を指します。正しい情報がなく、確信がもてない状態です。これまで当たり前とされてきた価値観などが当然ではなくなり、先の見通しが立たなくなります。働き方の多様性でリモートワークの導入が進んだり、終身雇用が衰退したりと、ひと昔前には予測できなかったものが、今では当たり前となっていることも不確実性の結果といえるでしょう。


Complexity(複雑性)

Complexityとは、複雑性を指します。問題を構成する要素が多く、事象が複雑になることです。たとえば、企業が海外進出を試みた場合、日本と海外の常識の違い、ルールや習慣の違いで問題が複雑になることがあります。日本では成功していたものでも、海外ではさまざまな問題が障害となり、解決できないなどのケースも複雑性が原因のひとつです。


Ambiguity(曖昧性)

Ambiguityとは、曖昧性を指します。ひとつの事象が複数の解釈をもち、特定の課題に対する解決策が見つからない状態です。曖昧性のなかでは、過去の実績や成功体験などが通じません。また、曖昧性は先述したVUCAの変動性、不確実性、複雑性が絡み合って発生することもあります。問題が複雑化し、因果関係が不明となって問題解決がしづらくなります。


VUCAの起源

VUCAは軍事用語としてアメリカ陸軍士官学校で生まれた言葉です。本来は、国と国の争いが複雑化したことを指していました。2010年頃からビジネスの世界でも広がりを見せ、2016年に開催されたダボス会議にて「VUCA ワールド」という表現が使用されたことで広く使われるようになったといわれています。


VUCA時代の重要性が高まる背景

近年はまさに、グローバル経済の進展やAI技術をはじめとするテクノロジーの発展など、急速な変化がみられる時代になりました。消費者のニーズやビジネスモデルなども急速に変化しています。


また、世界で巻き起こる異常気象による災害や新たな感染症などに伴う市場や働き方の変化など、先の見えない時代の変化に対応し、適応していかなければなりません。ビジネスの世界では入念に準備したとしても、想定していない事態が起きれば対応する必要があります。先行きが不透明で、目まぐるしく変転する時代だからこそVUCAが注目されているのでしょう。


VUCA時代に起こること

VUCAの時代は、数年前には予測もできなかったような以下のようなことが起こります。


想定外の出来事が起きる

これまでの時代は、過去の経験や出来事からある程度の予測が可能でした。しかし、VUCA時代は、問題が複雑に絡み合う予測困難な時代です。想定外の出来事が急激に次々と起こります。現時点でも、地球温暖化に伴う異常気象や災害など、予測できない出来事が次々と起こっており、今後も油断はできません。


常識の概念が変わる

常識の概念が変わることもVUCA時代の特徴です。たとえば、新型コロナウイルスが感染拡大する前はオフィスに出勤して勤務することが常識で、リモートワークは今ほど広がっていませんでした。また、テクノロジーの進化によって、資源が負債となるケースも増えています。


VUCAの時代は、今まで常識だったものが、あっという間に非常識になったり、非常識だったことが常識になったりすることが特徴です。


新サービスが登場する

ビジネスにおいては画期的な新サービスが次々と生まれ、予測できない事態が起こっています。今までは業界内が競合でした。しかし、近年は競合という概念そのものがなくなったり常識を変えたりしています。たとえば、タクシー業界では「Uber」、ホテル業界では「Airbnb」というサービスが登場し、新たなビジネスモデルを作ったことで話題となりました。


VUCA時代に求められる人材の特徴

VUCA時代は、企業だけではなく人材にも大きな影響を与えます。VUCA時代に求められる社員のスキルを強化することが重要です。


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情報処理のスキルが高い人材

VUCA時代は、日々膨大な情報に接しています。正しい情報を選別できなければ、デマを信じてしまったり正確性の低い情報を拡散してしまったりするなど、行動を誤ってしまうこともあるでしょう。情報を正しく選別するには、膨大な情報を選べるリテラシーの高さと適切に処理できるスキルが必要です。


仮説を構築する力のある人材

予測が困難なVUCA時代では、完全な情報を得ることが難しい傾向があります。しかし、ビジネスではスピード感も必要です。目標に近づくためには、情報が完全に出そろっていない不完全な状態でも、仮説を立てて確度の高い仮説をつくる必要があります。


ニーズに応えるには何の技術が必要か、どのくらいの時間やコストがかかるかなどの感覚が必要です。確度の高い仮説を立てて目標に近づけるスキルがある人は重宝されます。


対応力の高い人材

VUCA時代は、先の見通しが立てづらく、予測できないトラブルに見舞われることもあります。常識が通じない状況や予期しない事態にも、臨機応変に対応できるスキルが必要です。また、明確な正解を見いだせない状況でも、冷静に分析して最適な判断を下せる人材が求められます。


学習能力の高い人材

変化の激しいVUCA時代においては、今まで強みとなっていた知識やノウハウが古くなる「スキルの陳腐化」が起こります。今あるスキルがいずれかは使えなくなることを予測し、新しいスキルを学び続ける努力も必要です。新しいことを学ぶ意欲や能力も重要になります。


VUCAの時代に求められるスキル

VUCA時代に求められる人材になるには、以下のスキルが重要です。予期せぬ出来事に対応できるように、スキルを強化する必要があります。


情報を収集するスキル

課題や問題を解決するためには、状況を判断するために多くの情報が必要になります。膨大な情報の中から、必要なものや正しいものを選別できる能力も必要です。近年は、インターネットやSNSの普及で多くの情報が簡単に入手できる一方で、デマや信憑性のない情報も多いため、情報を見極める能力も重要となります。


コミュニケーション能力

VUCA時代には、企業の対応力が求められます。見通しの立たない状況では、多様な価値観が必要です。そのため、企業は異なる価値観や経歴を持った社員を採用する必要があります。ただし、価値観や経歴が異なることで、衝突が起きやすくなることもあるでしょう。


さまざまな背景や事情を持つ社員と積極的にコミュニケーションをとって、問題を解決に導くスキルが重要になります。


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リーダーシップ

VUCA時代においては、スピーディな判断と適応力でメンバーを適切な方向に導くリーダーシップが必要です。経験のない出来事や予測できなかった問題に対して、スピード感を持って解決することが求められます。メンバーが不安な状況においては、リーダーが自発的に行動し、導いてくれると心強い存在となるでしょう。


VUCAの時代に生き残る組織を構築するポイント

予測が困難なVUCA時代でも、ある程度の備えは必要です。VUCA時代に生き残っていくには、以下のような組織を構築する必要があります。


ビジョンを明確にする

変化が激しいVUCA時代には、組織のビジョンを明確にしておくことが重要です。ビジョンが明確であれば意思決定がしやすくなり、方針の転換を迫られたときにもスムーズに判断できます。ビジョンが明確でない場合は、変化に振り回されて組織の軸がぶれてしまうこともあるでしょう。また、ビジョンが明確であれば、企業の方向性がわかりやすくなるため、組織に適した人材が集まりやすくなります。


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人材育成に力を入れる

ビジネス環境や業務内容の変化が激しく、業界という概念の境界が曖昧な現代においては、企業の競争力をさらに高めるために人材育成が重要です。自ら考え、行動できる主体性を持った人材を育成するためにも、思考力を高めるロジカルシンキングをはじめとした研修を実施するとよいでしょう。


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多様な人材を雇用する

従来は終身雇用制や新卒一括採用など、長期的に人材を育成する仕組みが主流でした。しかし、変化が目まぐるしいVUCA時代においては、従来の採用・育成方法が通用しません。柔軟な採用制度で、多様な人材をそろえて変化に対応することが重要です。


一括採用だけでなく、通年採用を導入することもよいでしょう。イノベーションを起こすには、多様な価値観、年齢、経験の人材が必要になります。


働き方を見直す

変化の激しい時代への対応力が求められるVUCA時代においては、多様な人材が必要になります。多様な人材を採用するには、柔軟な働き方が必要です。


柔軟な働き方を導入すれば、育児で思うような仕事に就けなかった人や介護で昇進を諦めた人なども働きやすくなります。テレワークやフレックスなど、さまざまな働き方を取り入れることで、今まで採用できなかった人材も獲得しやすくなるでしょう。


世の中の動向をチェックする

世の中の動きや流行を把握し、動向を敏感に感じ取れていれば、予測がしやすくなります。世の中は常に激しく変化し続けているため、新聞やニュースなどで情報を収集する癖をつけておきましょう。集めた情報を分析することで、仮説構築力が高められます。


マネジメントを改善する

VUCA時代に対応するために多様な人材を獲得できていても、働きやすい環境が整っていなければ生産性は向上しません。必要であれば、マネジメントの見直しが求められます。人材が多様化すればするほど、多くの事情が重なったり多様な働き方に対応したりしなければなりません。多様性を尊重するダイバーシティの観点が必要です。


OODAループを活用する

OODAループとは、意思決定や行動を早める思考法です。以下4つの頭文字をとっています。


  • Observe(観察)
  • Orient(適応)
  • Decide(決断)
  • Act(行動)


改善策を導くフレームワークとしてPDCAが有名ですが、PDCAは4つのフェーズを繰り返して実行し、時間をかけることが前提です。スピーディな対応が求められる VUCA 時代には、迅速に回せるOODAループが有効とされています。それぞれの工程をチェックしてみましょう。


Observe(観察する)

Observe(観察)は、情報収集を目的としたステップです。現状を観察し、情報を収集します。環境や市場動向だけでなく、現場関係者の気持ちや感情などの観察も必要です。外部環境、内部環境、他社の動向などを客観的に観察します。


Orient(適応する)

Orient(適応する)は、Observeで観察したデータを経験や知識、データなどと組み合わせて、現状を分析するステップです。このステップでは、まだ行動は決定しません。計画と現状を比較し、実行もしくは修正などの行動指針を検討します。


Decide(決断する)

Decide(決断する)は、Orientで判断した方向性を参考に、複数の選択肢の中から効果の出やすい戦略やアクションプランを決定するステップです。現状を把握したうえでリスクや不確実性を考慮し、適切な対策を講じます。


Act(行動する)

Act(行動する)は、Decideで決定したプランを実際に実行するステップです。このステップでは、実行した結果の観察は含まれません。結果にとらわれずに、やりぬくことが大切です。結果が出た後は、次回の意思決定の判断材料にします。


VUCAの時代の人材育成のポイント

企業がVUCA時代を生きるには、先述したような人材やスキルを理解したうえで、人材育成を効果的に実施することが重要になります。


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実践型の研修を取り入れる

先の見通しが立てづらいVUCA時代は、市場の変化に対応するため、実践を通じた人材育成が必要です。座学形式の研修では、イメージがわきづらいため、育成には不十分といえるでしょう。物事の一連の流れを体験できる実践型の研修は、主体性を育み、徐々に自立心を育みます。


学習できる環境を整備する

VUCA時代の変化は一度だけではありません。急激な速さでときには何度も変化が訪れます。人材育成も一度で終わりではなく、学習を継続し続けることが必要です。新しい情報を吸収する歩みを止めないためにも、企業は自発的な学習を支援することが求められます。近年は、勉強会や外部の研修などの補助を支援する企業も増えました。


VUCA時代の組織づくりのポイント

VUCA時代においては、競争力を維持する組織づくりも必要になります。具体的なポイントは以下のとおりです。


アジャイルの組織構造を導入する

アジャイルの組織構造とは、現場に一定の権限を与えて、実行・改善を短期間に繰り返す構造を指します。計画を重視するのではなく、実行しながら改善を加えていくことが特徴です。変化が激しいVUCA時代においては、物事を小さく始めて、失敗しそうな時点で引き返すアジャイルの考えがマッチします。柔軟なチーム編成で、迅速に意思決定をする仕組みを導入しましょう。


人事戦略にデータを活用する

VUCA時代は人事戦略にデータを活用することもおすすめです。分析データで意思決定の根拠を強化すると、人事戦略の精度と効果が高まり、効率的な人材マネジメントを実現できます。人材データを収集・分析することで、戦略的な採用や管理も可能です。


まとめ

予測が難しいVUCA時代を生き抜くためには、人材育成や組織構築が重要です。人材育成においては、実践型の研修や学習環境の整備が求められます。また、人事戦略にデータを活用することで、効率的な人材マネジメントにつながり、戦略的な採用や人材管理が可能になるでしょう。人材マネジメントを効率的に行うためには、システムの導入がおすすめです。


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