業務別のなぜなぜ分析事例を紹介!目的や成功のポイントも解説


業務別のなぜなぜ分析事例を紹介!目的や成功のポイントも解説

なぜなぜ分析の具体的な事例を多数ストックしておけば、分析の精度が向上します。なぜなぜ分析導入前や導入直後の企業の人事・労務担当者の方が本記事を読めば、組織の課題をスピーディに解決して従業員が働きやすい職場環境を作れるでしょう。

こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。


なぜなぜ分析の精度を向上させるには、具体的な事例を多数ストックしておくことがおすすめです。組織の課題をスピーディに解決するためのフレームワークを活用して、働きやすい職場を作りましょう。


なぜなぜ分析の目的

「なぜなぜ分析」は、解決課題の抜本的な改善策を導き出すためのフレームワークです。解決すべき事象の原因を(Why)の問いかけを繰り返すことで本質的な原因を特定し、再発を防止する効果があります。


なぜなぜ分析の発祥はトヨタ自動車です。なぜなぜ分析を応用したトヨタ自動車のフレームワークはトヨタ生産方式と呼ばれ、海外でもカイゼンとして一般的に導入されています。


改善策の実行から評価、原因の特定までのフェーズを繰り返せば分析精度の向上が可能です。


なぜなぜ分析の手順

なぜなぜ分析には課題の設定から改善策の評価まで定まった手順があります。なぜなぜ分析のオーソドックスなプロセスを見ていきましょう。


1.対象となる問題を設定する

なぜなぜ分析を行うためには、まず課題の明確化が必要です。スタートラインが曖昧なまま分析を始めると論理的な検証が行えず、的外れな改善策が導き出されます。課題設定のOK例とNG例は以下の通りです。


OK例:リスティング広告のCTRが前月比で15%減少している→課題が明確

NG例:リスティング広告の効果が最近何となく減少している→課題が曖昧


OK例では改善が求められる課題の発生時期を限定したうえで事象を数値化し、論点を明確にしています。一方、NG例では発生時期を設定せず抽象的な表現で課題を設定しているため、本質的な改善点が見えません。


なぜなぜ分析では問題の範囲を限定し、具体的な数字とともにゴールを設定しましょう。


2.問題に対して問いを繰り返す

客観的な課題を特定・共有したら、Whyの問いを繰り返すことで根本的な原因を追及します。なぜなぜ分析を体系化したトヨタ自動車ではWhyの問いを最低5回以上繰り返す作業を推奨していました。現在は手法がさらに洗練され、分析の回数にこだわらず、抜本的な改善策が導き出された段階でいったん終了するのが主流です。


原因を掘り下げる際は、要素ごとの因果関係の整合性をつねにチェックしましょう。


3.根本的な原因に対しての改善策を立てる

課題の根本的な原因を特定したら、具体的な改善策を考えます。たとえば広告のCTR低下の根本原因がターゲットのミスマッチにあるのなら、出稿媒体の再設定が有効でしょう。社内の業務効率化が課題なら新規ツールの導入や大規模な人材の転換などが視野に入ります。


改善策を洗い出す段階では、それぞれのプランの実現可能性を具体的に検討する必要はありません。実現可能性の評価は別のフェーズで行います。


すべての従業員が当事者意識を持ち、目的を共有できる改善策の設定が重要です。


4.改善策の評価とさらなる改善を進める

改善策実施後は、評価のフェーズに移ります。導き出された改善策によって本当に根本原因が改善されたかを数値的に検証しましょう。


評価にあたっては、事前の目標設定が重要です。広告の例ならCTR10%上昇のように具体的な数字を入れることで客観性が生まれ、判断基準を具体化できます。具体的な評価基準の共有は主観的要素の排除につながり、評価の同一性担保が可能です。


詳細なデータを収集して結果を客観的に分析すれば、さらなる改善の方向性を導き出せます。

なぜなぜ分析の事例紹介

幅広い業界の分析事例を把握することで分析のパターンをストックし、自社への柔軟な応用が可能です。そこで以下の3つの業種に絞り、実際に導入されているなぜなぜ分析の事例をご紹介します。


・リスティング広告

・製造業

・介護業界

1.リスティング広告におけるなぜなぜ分析

広告業界での主要解決課題は、CPAの高騰です。CPA高騰によって広告の出稿コストが上昇すると、最終的な収益率低下につながります。一例として、リスティング広告におけるなぜなぜ分析をご紹介します。


事象:リスティング広告のCPAが前期比で15%高騰した

原因1:クリック単価が先月比で30%高い

原因2:予算の上限によりシーリングがかかっている

原因3:入札のコントロールが不充分

原因4:予算の拡大によって運用者の工数が増えた

解決策:リスティング広告の運用を外注に切り替える


広告運用の工数が増えたことで運用者の負担が重くなり、入札管理に割くべきリソースが不足している問題が根本原因として浮かび上がりました。詳細な分析の結果、広告運用を専門業者に外注することでリソースを大幅に作成し、入札管理の適正化が行えます。


2.製造業におけるなぜなぜ分析

ここでは例題として、主力部品の生産マシンが故障した事象を取り上げたなぜなぜ分析を見ていきましょう。


事象:主力部品の生産マシンが故障した

原因1:オーバーロードによってヒューズが切断された

原因2:内部の潤滑剤が不充分だったから

原因3:潤滑ポンプの汲み上げが不充分だったから

原因4:ポンプの軸が摩耗していたから

原因5:ストレーナー(濾過機)が未設置のため余計な粉が入ったから

解決課題:ストレーナーを新たに取りつける


マシンの故障原因をなぜなぜ分析で掘り下げた結果、ストレーナーの設置を解決策として導き出せました。このように、客観的な事実のみをつなぐことで因果関係が可視化され、本質的な原因を特定できます。


3.介護職におけるなぜなぜ分析

介護業界でも、重大事故防止の観点からなぜなぜ分析が取り入れられています。介護現場で起こりがちな利用者への連絡帳の入れ忘れ例から、分析の流れを見ていきましょう。



家族に渡す利用者の連絡帳を入れ忘れた

利用者のカバンごと施設に置き忘れた

利用者の移乗の際に不慣れなスタッフがカバンを車椅子からはずした

利用者の荷物管理のマニュアルが共有されていない

(改善策)


利用者の支援プランをマニュアルとして共有

普段担当しているスタッフが連絡帳記入の時間を取れなかった

複数の利用者の帰宅時間が重なった

ひとりのスタッフの業務負担が重すぎる

(改善策)


スタッフの分業化を徹底


このように、ひとつの課題に対して複数の原因が導き出される場合はそれぞれのケースについて分析を分岐させましょう。


なぜなぜ分析を成功させるポイント</h2>

なぜなぜ分析を業務改善に活かすには、成功させるためのポイントの把握が大切です。そこで、なぜなぜ分析を成功させるうえで注意すべきポイントをお伝えします。

思い込みで分析しない

個人の主観や思い込みは、客観的な分析を妨げる要因です。取引先へのメールの誤送信を問題事象として取り上げる場合、Aさんの忘れっぽい性格を原因に挙げるのはたんなる主観にすぎず、実践的な分析につながりません。


上記のケースでは、送信先の確認ミスが直接的な原因として考えられ、改善策としてはマニュアル共有の徹底やメール送信時のダブルチェックなどが挙げられます。


なぜなぜ分析では主観的な予想や思い込みにとらわれず、客観的なデータや事実に基づいて分析を行いましょう。


要素は単体で掘り下げる

なぜなぜ分析では複雑な要素を単体で切り分けて考えるのが基本です。複数の要素が絡んでいる場合でも、分析を進める際はそれぞれ切り離して考えます。


適切な例と不適切な例は以下の通りです。


適切な例:従業員の遅刻が多い

     従業員同士のコミュニケーションが不足している


不適切な例:従業員の遅刻が多く、コミュニケーションが不足している


適切な例では遅刻の大里コミュニケーション不足をそれぞれ別の解決課題として取り上げています。一方、不適切な例では2つの事象をひとつにまとめているため分析が複雑になり、本質的な原因が見えにくくなった結果、導き出される改善策も曖昧です。


解決課題は一文のみで完結させ、シンプルにまとめましょう。事象が複数存在する場合は、それぞれの事象についてなぜなぜ分析を進めます。

個人的なミスを回答にしない

なぜなぜ分析では、個人のミスや過失を根本原因として挙げるのはNGです。トラブルの原因を個人の資質や能力に帰結させると分析の客観性が失われるだけでなく、たんなる個人攻撃に終わってしまうリスクがあります。


不適切な例:営業部の新規顧客獲得件数が3ヶ月連続で下がっている→従業員Aの営業力が未熟

適切な例:営業部の新規顧客獲得件数が3ヶ月連続で下がっている→マーケティングでターゲットを絞り切れていない


掘り下げる回数にこだわらない

なぜなぜ分析では、必ずしも無限に問いを繰り返す必要はありません。トヨタ自動車では5回の原因追及を推奨していますが、あくまでも目安の数字です。


一般的には原因追及の回数をあえて決めず、本質的な原因と解決策が導き出された段階で分析をいったん打ち切り、改善策実施に移ります。原因追及を何度繰り返しても抜本的な改善策に到達しない場合は問いかけを一時中断し、課題設定に戻りましょう。


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なぜなぜ分析が失敗してしまう原因</h2>

失敗につながるなぜなぜ分析にはいくつかのパターンがあります。貴重なリソースを節減するためにも、なぜなぜ分析の失敗パターンを把握しましょう。

対象となる問題が抽象的

なぜなぜ分析成功のポイントは課題設定の具体性です。問題が明確に定義されていない場合、なぜなぜ分析を論理的に進められません。


抽象的な課題設定の例:部署内のモチベーションが下がっている

具体的な課題設定の例:重要なカンファレンスの参加率が30%低下している


抽象的な例ではモチベーションという数値化できない要素を取り上げているため具体性がなく、分析は失敗します。


具体的な例では数値データであるカンファレンス参加率に焦点を当てており、解決すべき課題も明確です。特定の問題事象を課題として取り上げたい場合は3W(What、Where, Who)を含めると具体性が出るでしょう。

回答につながりがない

事象と原因が論理的な因果関係で結ばれていない場合、分析ではなくたんなる連想ゲームで終わってしまいます。因果関係に基づいた分析を繰り返すなら、原因から課題に向かって文章でつなげてみましょう。客観的な因果関係の連鎖になっていれば分析は成功であり、論理的な改善策が導き出されます。


回答に論理的なつながりがない場合、課題設定のフレームを変えることで新たな視点を得るアプローチが有効です。

改善策が現実的ではない

なぜなぜ分析において最終的に重要なのは、改善策の実現可能性です。具体的な課題を設定して、論理的な因果関係に基づいた分析を繰り返したとしても、導き出された改善策の実現可能性が著しく低ければ役に立ちません。


改善策の実現可能性を評価する基準は予算や時間的コスト、人的コストなどです。たとえば、どんなに有益なツールであっても導入に予算を大幅に超えるコストがかかるのでは実現へのハードルは非常に高いでしょう。また、特定のトラブル解決のために膨大な人的コストを取られてしまうのでは本末転倒です。


改善策を評価する際にはあらかじめ数値的な評価基準を設けておき、実現可能性が高い順から優先的に実行します。優先順位を明確化しておけばすぐに実行できる改善策が見えやすくなり、次善策への移行もスムーズです。もしすべての改善策を実施しても目立った効果が得られない場合はあらためて課題設定のフェーズに戻り、原因追及からやり直します。

個人的な感情や推論で進める

なぜなぜ分析では起点から終点まで論理性と客観性を重視しましょう。主観的な感情や推論に基づいて分析を進めると、客観的な解決策を見逃す可能性があります。


なぜなぜ分析で最も注意すべきなのがネガティブな評価です。普段の勤務態度が芳しくなかったり個人的なトラブルがあったりするとどうしても評価のフィルターが曇ってしまい、課題とは関係ないところでマイナス評価を下してしまいます。


反対にポジティブな評価にも注意が必要です。勤務態度が真面目だったり上司への印象が良かったりすると評価にバイアスがかかり、たとえ業務上の改善点が発見されたとしても正しい指導を行えません。


個人的な感情や思い込みを排除するためにも課題設定や原因追及の段階で具体的な数字を取り入れ、客観的な分析を進めましょう。


まとめ

なぜなぜ分析の具体的な事例を通して分析の注意点や成功のポイントをお伝えしました。なぜなぜ分析は論理的な問題解決や業務改善において有効な手法です。客観的な事実のみを取り上げ原因追及を繰り返すことで事象の本質的な原因を抽出し、抜本的な改善策を導き出せます。分析の際には個人的な感情や推論、思い込みを排除し誰もが納得できる事実だけをつなげましょう。


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