アダプティブラーニングとは?メリットやデメリット、活用事例を紹介


アダプティブラーニングとは?メリットやデメリット、活用事例を紹介

個々の理解度やスキルに合わせて適した学習内容や教材を提供することを、アダプティブラーニングといいます。企業における人材育成にも活用できる手段です。

本記事では、アダプティブラーニングの特色やメリット、デメリット、活用事例を解説します。

こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。


アダプティブラーニングは適応型学習とも呼ばれ、個々の理解度やスキルに合わせてより適した学習内容や教材を提供することです。文部科学省が推進していることもあり、近年注目されています。人材育成にも活用できるため、導入を考えている企業も多いでしょう。


そこで今回は、組織やチーム体制を改善したい経営者や人事担当者に向けて、アダプティブラーニングの特色やメリット、デメリット、活用事例を解説します。アダプティブラーニングを活用した人材育成を検討中の方は、ぜひ参考にしてください。


アダプティブラーニングとは?

文部科学省が推奨するアダプティブラーニングとは、個々の理解度やスキルによって最適な学習内容や教材を提供する手法で、「適応型学習」ともいいます。


従来は受講者全員が同じ内容を学び、テストも事前に用意された設問に答えるケースが一般的でした。しかし、理解度や苦手なポイントは一人ひとり異なり、必ずしも他者と同じ学習方法が適しているとはいえません。


アダプティブラーニングでは、学習の進捗具合やテストの情報などを分析した上で、必要な学習内容や教材を抽出します。そのため、より効率的に学習することが可能です。


アダプティブラーニングはEdTechに含まれる

アダプティブラーニングは「EdTech(エドテック)」に含まれる学習方法です。


EdTechとは「Education(教育)」と「Technology(テクノロジー)」を掛け合わせた造語で、ITテクノロジーを活用して学習をサポートする仕組みや教育スタイルを意味します。


EdTechが導入されているのは学校教育だけではありません。学生向けの学習支援システムに加えて、企業研修や個人の学びにおいても広く注目を集めています。


EdTechとeラーニングの違い

インターネットをはじめとするテクノロジーの進化に伴って浸透した学習方法として、eラーニングを想像する方も多いでしょう。eラーニングはパソコンやスマートフォン、タブレットなどのデバイスを活用し、インターネットを通して学習するシステムを意味します。基本的に講師によるオンデマンド配信や音声を使用する、一方的な学習形式です。


EdTechもIT機器を使った勉強方法であり、場所や時間を問わず学べる点は共通しています。しかしEdTechではアダプティブラーニングの実施により、講師からのフィードバックを受け取ることが可能です。


また、受講者一人ひとりのデータを分析し、思考パターンや苦手分野を理解した上で、学習方法を提案します。つまりeラーニングとは異なり、双方向のコミュニケーションが可能となります。


アダプティブラーニングの歴史

アダプティブラーニングの歴史は1950年代に遡ります。当時、アメリカを中心にコンピュータを活用した教育支援である「CAI(Computer Aided Instruction)」の研究が行われていました。その後、1990年代に入るとパソコンが普及します。併せてCIAも進化し、2000年以降はICT(情報通信技術)の発達も進み、アダプティブラーニングの特色である個々の状況に合わせた学習をするための基盤が整いました。


日本でも2010年頃からEdTechを提供する企業により、アダプティブラーニングサービスがスタートします。2018年には経済産業省の事業である「未来の教室」において、EdTechを活用した新しい学び方の実証が始まりました。これを機に、日本でもアダプティブラーニングが広く注目され、学校現場や企業など様々なシーンで導入されています。


アダプティブラーニングの6つのメリット

アダプティブラーニングを実践すると様々なメリットがあります。どのようなメリットがあるか把握しておくと、より効果的に導入できるでしょう。アダプティブラーニングの6つのメリットを解説します。


1.一人ひとりの学習効果を高められる

アダプティブラーニングでは、個々の学習進捗やテスト問題の正誤などを蓄積・分析するため、学習状況や得意・苦手分野の可視化が可能です。講師はシステム上で受講生の状況をいつでも簡単に閲覧できます。


例えば苦手分野が明確になれば、強化するべきポイントを指導しやすいでしょう。円滑に正確な情報を把握でき、これまで気づかなかった課題を見出すきっかけになります。


2.カリキュラム・学習プログラムの作成を自動化できる

一人ひとりに合わせたカリキュラムや学習プログラムが自動的に作成できる点も、アダプティブラーニングのメリットです。

従来の学習では、受講生全員に既存のカリキュラムを提供していました。また、オリジナルの教材を作成する場合、講師の手間や時間がかかり非効率でした。一方、アダプティブラーニングは、AIにより個々に必要なオーダメイドの学習プログラムを提供できます。

既存のカリキュラムに受講生が学習スピードを合わせる必要がない点だけでなく、講師の手間を省くことも可能です。

3.過去のデータを活用した学びが可能

AIを活用するアダプティブラーニングでは、個々の情報だけでなく様々な受講生の情報を集積することが可能です。試験に合格した受講者や成績優秀者の学習状況、特性など過去のデータを踏まえた上で学習プログラムを提供します。


講師が受講者全員の得手不得手を完全に把握し、どこに課題があるのかを見抜くことは簡単ではありません。しかし、アダプティブラーニングを使うと、膨大な情報をもとに、現場では見つけられなかった課題をデータで確認できます。


4.各講師の指導力に影響されない

自動的に学習プログラムを生成できるアダプティブラーニングは、講師の指導力に左右されることなく、各々に必要なプランを提案できます。


従来の授業では各講師が受講生の学習進捗やレベルを理解し、学習プログラムを提示していました。指導力のある講師であれば、一人ひとりに適したプログラムやサポートを提供することも可能ですが、スキルが乏しい講師の場合、正しい学習につながらない可能性があります。


一方、アダプティブラーニングは指導品質が均一化されるため、講師のスキルを問いません。


5.講師がサポートに注力できる

アダプティブラーニングにより、AIやICTを活用すると講師の作業効率の向上が可能です。教育現場では、講師の人材不足や過重労働が問題となっています。その理由として挙げられるのが、指導以外の雑務が多い点です。各受講生に合わせた学習プログラムを提供するとなれば、その労力は益々増えてしまうでしょう。


しかし、アダプティブラーニングを活用すれば情報収集や分析、プログラムの作成まで自動的に行えます。講師の作業負担が軽減されることにより、本来必要な受講生へのサポートに注力することが可能です。


6.教育コスト削減につながる

場所や時間に捉われず学習できる点も、アダプティブラーニングの特色です。従来は講義や研修をするために、会場を準備しなければなりませんでした。学習を提供する企業は、会場費に加えて講師に支払う報酬や交通費などを用意する必要があり、コスト面で課題を抱えるケースも多いです。


なお、アダプティブラーニングを活用すると、オンライン上で学習を進められるようになります。従来のコスト削減につながるほか、教材の再利用が容易になる点もメリットの一つです。


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アダプティブラーニングの4つのデメリット

個々に見合った教育に役立つアダプティブラーニングですが、デメリットもあります。導入前にデメリットを把握しておくと、リスク防止につながるでしょう。アダプティブラーニングのデメリットを4つ解説します。


1.インターネット環境が必須

アダプティブラーニングはオンラインで学習する手法です。場所や時間を問わず活用できる点はメリットですが、効果的に取り入れるためにはインターネット環境の整備が求められます。


近年、在宅勤務が浸透してきたとはいえ、家庭によってインターネット環境の状態は様々です。自宅で学習をする場合、環境整備に費用がかかるほか、ICTに苦手意識を持っている方にとっては負担となる可能性があります。


2.機器の導入コストがかかる

インターネット環境の整備だけでなくパソコンやタブレット、Wi-Fi端末などを用意しなければならない点も、アダプティブラーニングのデメリットです。すでに整っている場合は問題ありませんが、新たに購入するとなると導入コストがかかります。


企業で導入する場合、インフラの状態や従業員数によって、想定以上の費用がかかる可能性もあるでしょう。また、システムを管理するための人的コストがかかる点も注意が必要です。


3.学習分野によっては不向き

アダプティブラーニングの大きな特徴は、分析データをもとに学習プログラムを作成できる点です。一見すると万能に思えるアダプティブラーニングですが、全ての学習分野に適しているとは限りません。


例えば医療現場において技能を習得する際や、コミュニケーション能力の向上を目指したディスカッションなどの非言語分野には不向きです。アダプティブラーニングを導入する際は、学習内容や目的を踏まえた上で検討しましょう。


4.モチベーションの維持は個人に委ねられる

アダプティブラーニングは場所や時間に関係なく、自分のペースで学習することが可能です。メリットともいえますが、自由度が高い分、モチベーションの維持は個人に委ねられるため注意しなければなりません。いくら個々に合わせたプログラムを提供しても、学習意欲が削がれてしまえば、自発的に学習を続けられず効果が得られないでしょう。


モチベーションを保つためには受講生と講師、受講生同士のコミュニケーションが大切です。積極的なコミュニケーションを意識すると、受講生の状況に合わせて必要なサポートができるほか、受講者同士で切磋琢磨しながら学習に取り組めます。


アダプティブラーニングの導入方法

アダプティブラーニングは、膨大な情報を分析・管理しながら受講生に合うプログラムを作成しなければなりません。受講生ごとのコンテンツを作成する必要があり、自社で対応することは困難です。


企業でアダプティブラーニングを導入する際は、eラーニングサービスが役立ちます。eラーニングサービスであればバリエーション豊かな教材が揃っており、幅広い分野への対応が可能です。


自社の業務に適したオリジナルコンテンツの作成ができるほか、受講者のレベルに合わせてプログラムを割り当てられるサービスなどもあります。また、様々な分野に長けた講師陣が在籍しており、質の高い学習を提供できる点も魅力です。


ただし、eラーニングは一方的な学習形式であるため、受講者の現状把握やコミュニケーションを取る機会を別に設ける必要があります。その際に役立つのが「タレントマネジメントシステム」です。


タレントマネジメントシステムを活用すると、受講者はもちろん全従業員の課題やスキルなどの把握、アンケートの実施、コミュニケーションの円滑化が可能になります。あらゆる人材データを一元管理し、いつでも手軽に確認できるため、アダプティブラーニングを導入する際は、タレントマネジメントシステムの活用も併せて検討してみるのがおすすめです。


アダプティブラーニングの活用事例

アダプティブラーニングは、教育現場だけでなく様々な企業で活用されています。活用事例を参考にすると、自社で導入する際の判断材料となるでしょう。主な活用事例として2パターンを紹介します。


JR西日本

JR西日本では、ペーパーレス化を目指してアダプティブラーニングを活用しています。幅広い業務をこなし、豊富な知識が求められる運輸関係司令職員に情報発信や共有、学習のほか、マニュアルのアップデートを効率的に行う手段を検討していたことが、アダプティブラーニング導入の発端でした。


導入の結果、職員の学習に対するモチベーションが上がり、繰り返し学習を的確に実施できるようになりました。従来、紙媒体を活用していた学習教材をデータ化する作業は手間がかかるものの、一度システムに入れてしまえば簡単にアップデートできる点も役立っています。


スムーズな情報伝達や速やかな更新が可能なアダプティブラーニングは、多くの従業員を抱えるJR西日本に適した手段となったようです。


三菱UFJ銀行

日本3大メガバンクの一つである三菱UFJ銀行でも、アダプティブラーニングを活用した学習を行っています。お金に関する高い知識やスキルが求められる中、教え手が不足しており新人に対して十分に指導できないことや、理解度が一定ではない点が新人育成における課題となっていました。そこで導入したのが、金融機関に特化したアダプティブラーニングです。


銀行の業務に欠かせない法務・税務・財務・為替のほか、自社の業務に合わせたオリジナルコンテンツを作成した結果、社内で実施したテストの点数が全体的に向上しました。また、受講生同士がサポートし合うことでチームワークが強固になった点も、アダプティブラーニングの効果といえます。


まとめ

アダプティブラーニングとは、個々に合わせた学習プランを自動的に生成し、効果的に知識やスキルを習得できる学習方法です。教育現場だけでなく、企業の人材育成や新人研修などにも活用されており、課題改善につながっています。


スムーズにアダプティブラーニングを導入するためには、体制づくりやツールの活用が重要です。


「タレントパレット」は様々な人材データを一元管理・分析して、企業の課題解決や経営戦略に役立つマネジメントシステムです。従業員のスキルと成長度合いの可視化が可能で、リスキリングや人材育成に活用できます。


また、eラーニングと講座研修を一元管理する機能も備わっており、従業員のスキルレベルをもとに、受けるべきコンテンツを自動推薦することが可能です。


アダプティブラーニングの導入を検討している人は、ぜひタレントパレットのシステムをご活用ください。


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