キャリアプラトーの要因と企業ができる対策|企業にもたらすリスクも解説


キャリアプラトーの要因と企業ができる対策|企業にもたらすリスクも解説

キャリアプラトーは、仕事や昇進に関する悩みによってスランプに陥った状態を指します。社員がキャリアプラトーに陥る理由はさまざまです。そのため、企業は原因を特定して、1人ひとりにマッチした対策を打たなくてはなりません。本記事では、キャリアプラトーの定義や陥る理由、対処法などを解説します。


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キャリアの停滞を意味するキャリアプラトー

プラトーという言葉は、高原や台地、「学習や作業が停滞した状態」などの意味合いで使われてきました。プラトーに由来するキャリアプラトーは、「職務上の成長が停滞した状態」を示します。特に企業においては、40代から50代のミドル層で、キャリアプラトーが顕著に表れる傾向です。ただし、若くして昇進を重ねてきた30代の社員が、突如としてキャリアの伸び悩みに直面するケースも見られます。


2種類のキャリアプラトー

キャリアプラトーのタイプは主に2種類です。具体的には、モチベーションの低下によるものと、昇格・昇進の停滞によるものがあります。


1.モチベーションの低下によるキャリアプラトー

モチベーションの低下によるキャリアプラトーは、日々の業務に対して単調さや行き詰まりを感じ、職務上の成長が見込めないと考えてしまう状態です。


モチベーションが低下した背景には、長年同じ業務を続けることによる飽きや、刺激の少なさといった要因があります。ただし、モチベーション低下の原因は個人によって異なり、職場環境や人間関係など、複数の要素が絡み合っている場合も少なくありません。


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2.昇格・昇進できないことによるキャリアプラトー

昇格・昇進できないことによるキャリアプラトーは、自身が望むポジションへの昇進が困難だと認識し、将来のキャリアに対して悲観的になってしまう状態です。組織におけるポジションは社会的評価や自己実現に大きく影響するため、昇格・昇進の停滞は、個人の自尊心にも関わる深刻な問題となる場合があります。


キャリアプラトーが注目されるようになった経緯

時代とともに変化する社会情勢や経済状況を背景に、キャリアプラトーの重要性は徐々に高まってきました。キャリアプラトーが注目されるようになった経緯を解説します。


キャリアプラトーの研究開始

1970年代のアメリカでは、ベトナム戦争後の社会変動と女性の職場進出が進むなかで、管理職ポストが大幅に削減されました。


従来の昇進モデルが機能しなくなり、多くの社員が昇進の機会を失うなかで、キャリアプラトーに関する研究が開始されています。


バブル期前後の日本におけるキャリアプラトー問題

日本企業でキャリアプラトー問題が認識されたのは、従来の年功序列型の人事制度から、成果主義への移行が始まったタイミングです。それまでの勤続年数に応じて自然に評価が上がっていた状態から、成果による評価を重視するようになったことで、多くの社員がキャリアプラトーに直面しました。


バブル景気による管理職ポストの増加により、一時的にキャリアプラトーの問題は緩和されています。しかし、バブル崩壊後には再び深刻な課題として、キャリアプラトーが認識されるようになりました。


近年の日本におけるキャリアプラトー問題

近年は、年功序列制度の崩壊に加え、ダイバーシティなどの風潮もあり、ミドル層の非役職者が増加しています。その結果、キャリアプラトーに直面する人々が一層増加している状況です。


キャリアプラトーを引き起こす要因

キャリアプラトーの理由は社員によって異なります。個人的な要因から組織的な課題まで、社員と企業を悩ませるキャリアプラトーの要因について把握しておきましょう。


仕事や人間関係のマンネリ化

同じ業務を長期間続けていくうちに、仕事に対する新鮮味は徐々に失われるものです。


ベテラン社員は、豊富な経験と専門知識を持つ貴重な存在といえます。しかし、上司からの指導や新たな刺激を受ける機会が減少することで、社員本人は成長の実感を得にくく、自己啓発のモチベーションも低下しがちです。


仕事や人間関係にマンネリ化した状況では、新たな課題への挑戦意欲が薄れ、キャリアプラトーに陥りかねません。


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現状維持したいという気持ち

長期間同じ環境にいると、状況を変えたくないという気持ちが生まれる場合があります。特に、一定の実績や評価を得ている場合、現状の居心地のよさから変化を避けたいという気持ちが強くなりがちです。昇進や新たな役割への挑戦を躊躇し、結果的にキャリアプラトーを招いてしまうケースが少なくありません。


また、社員本人が状況を問題視していない場合、キャリアプラトーからの脱却をより難しくさせるでしょう。


ワーク・ライフ・バランスの崩れ

仕事と私生活のバランスが崩れると、仕事へのモチベーションが低下し、キャリアプラトーを招く場合があります。近年は、ワーク・ライフ・バランスを重視する価値観が広がっており、昇進に伴う業務負担の増加を避けるべく、あえて現状維持を希望する社員も少なくありません。


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自身が感じる能力の限界

現状を変えたい、キャリアを発展させたいという希望を持ちながらも、実際の行動に移せない社員もいます。


過去の経験や実績、人脈による自信はあっても、新たなスキル習得や未知の分野への挑戦に対する不安が、挑戦を思いとどまらせてしまうためです。また、周囲との比較により自己効力感が低下し、チャレンジ精神が損なわれてしまった社員もいます。


社員それぞれが無意識のうちに設けてしまった心理的な壁は、キャリアプラトーを脱却する障害となりがちです。特に、長年の実績がある社員ほど、「失敗できない」「今のポジションを失うのが怖い」という思い込みから、新たな挑戦に二の足を踏む傾向が見られます。


社内におけるポストの不足

組織のポスト数には制限があるため、個人の能力や実績が十分であっても、望むポジションに就けない状況が発生するのが現状です。努力や成果が必ずしも報われるとは限らない、昇進も昇給も期待しにくいとなれば、社員のモチベーションの低下を招き、キャリアプラトーを引き起こしかねません。


社員の成長支援体制の不備

社員が成長意欲を持っていても、支援する体制が整っていない組織では、キャリア発展の機会が制限されます。


研修制度が充実していない、上司からの適切なフィードバックが得られない、自己啓発に励む姿勢が疎んじられるといった組織では、成長を妨げられた社員がキャリアプラトーに陥るでしょう。


社員の成長を阻む企業の状況は組織全体の競争力にも影響を及ぼすため、早急な解決が重要です。


キャリアプラトー対策として企業ができること

キャリアプラトー対策は多岐にわたります。社員1人ひとりの状況に応じ、適切な施策を講じましょう。ここでは、キャリアプラトー対策として、企業ができる具体的な施策を解説します。


キャリアプラトーの原因を明確にする

社員1人ひとりが抱えるキャリアプラトーの原因はさまざまです。効果的なキャリアプラトーの対策に向け、まず個々の状況を正確に把握しましょう。たとえば、1on1面談などの対話を通じて、社員の悩みや課題を丁寧に探っていく必要があります。


特に、自身もキャリアプラトーを経験した上司やベテラン社員は、過去の経験から適切なアドバイスを提供できる頼もしい存在です。キャリアプラトーに陥った原因を特定できれば、以下で解説する具体的な施策を検討できるようになります。


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モチベーションを引き出すフィードバックを行う

ミドル層の社員は、日常的なフィードバックを受ける機会が減少しがちです。しかし、具体的なフィードバックは、社員の自己効力感とモチベーションを高める重要な要素となります。


面談の際は、社員のポジティブな側面に焦点を当て、成長への期待を示すことが効果的です。本人の強みやスキルを言語化して伝えると、自己効力感が育まれ、キャリアプラトー脱却につながる、新たな挑戦へのモチベーションが生まれます。


また、改善が必要な点を指摘する場合は本人の成長を願う助言として伝え、受け手の心理的安全性に配慮しましょう。

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社外と交流する機会を提供する

社内では共有しづらい悩みや課題を抱える社員は少なくありません。そのため、社外の人々と率直に話し合える機会を提供することで、気兼ねなく思いを打ち明けられる環境を整えるとよいでしょう。


異なる環境で働く人々との交流は、新たな視点や価値観との出会いをもたらし、自身のキャリアを見つめ直すきっかけとなります。企業にとっても、社員が構築した人的ネットワークを通じて、新たなビジネスチャンスの創出につながるかもしれません。


仕事内容に変化をつける

大規模な異動が難しい場合でも、職務内容に適度な変化を取り入れると、マンネリ化の防止に効果的です。また、新規プロジェクトの担当や後輩の育成責任者といった新たな役割の付与は、キャリアプラトーに悩む社員にとって刺激となります。


また、社員の希望に応じて柔軟な異動ができるように、人事制度の見直しも視野に入れるとよいでしょう。たとえば、社内公募制度や自己申告制度の導入など、さまざまな施策が考えられます。


社内の体制を見直す

昇格・昇進による、生活リズムの変化を懸念する社員は少なくありません。そのため、昇進後も柔軟な働き方を可能にする制度の整備や、適切な処遇の見直しが重要です。


社員が望む働き方を考慮して社内の体制を見直すと、キャリアアップへのモチベーションが湧きやすく、ワーク・ライフ・バランスも維持しやすい環境を整えられます。


スキルアップの機会を提供する

「業務遂行に必要なスキルが不足しているかもしれない」と感じる社員に対しては、適切なスキルアップの機会を提供しましょう。たとえば、社内研修の充実、社内勉強会の開催、外部研修への参加支援などが挙げられます。


なお、過度な業務負担がスキル向上の妨げとなる可能性もあるため、適切な業務量の調整も検討してください。


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キャリアコンサルティングを受ける機会を提供する

専門家によるキャリアコンサルティングは、社員のキャリア形成に対する意識を高める効果があります。


厚生労働省の2022年度「能力開発基本調査」でも、多くの事業所がキャリアコンサルティング導入後、社員のモチベーション向上を実感していました。定期的なキャリア面談の実施は、社員の成長支援において重要な役割を果たすといえるでしょう。


※参考:令和4年度「能力開発基本調査」の結果を公表します|厚生労働省


キャリアプラトーがもたらすリスク

キャリアプラトーは、個人のキャリアの問題にとどまらず、組織全体にも深刻な影響を及ぼす可能性があります。


たとえば、長期間同じ部署で働く社員が増えると、特定の業務が特定の個人に依存する「属人化」が進行するかもしれません。


また、人事異動による組織の活性化も困難になります。キャリアプラトーにより現状維持を望む社員が増えると、異動を拒まれる事例が増えるためです。


さらに、社員のモチベーション低下に起因する生産性の低下も想定されます。キャリアの停滞感から仕事へのモチベーションを失った社員のなかには、離職を選ぶ人も少なくありません。


このようなリスクを避けるためにも、企業は社員のキャリアプラトーを早期に把握し、適切な対策を講じましょう。


キャリアプラトーと関連が深い言葉

キャリアプラトーと関連が深い言葉を解説します。プロティアン・キャリア、バウンダリーレスキャリア、キャリアアンカーは、個人のキャリア形成に対する考え方や価値観を理解する上で役立つでしょう。


プロティアン・キャリア

プロティアン・キャリアは、トレンドに応じて柔軟にキャリアを形成していく考え方です。ギリシャ神話の変幻自在な神である「プロテウス」に由来します。


プロティアン・キャリアのキャリア観を持つ人は、自律的にキャリア開発を進め、常に新しい可能性を追求する姿勢が特徴的です。そのため、キャリアの停滞を自ら打開する力を備えており、キャリアプラトーに陥るリスクが比較的低いとされています。


バウンダリーレスキャリア

バウンダリーレスキャリアは、組織や職種の境界を越えて、自身の興味や関心に基づいてキャリアを構築していく考え方です。


バウンダリーレスキャリアを重視する人は、特定の企業に縛られず、自己実現の機会を求めて柔軟に活躍の場を変えていく傾向が見られます。しかし、企業にとって、優秀な人材の流出は望ましいものではありません。


企業は、バウンダリーレスキャリアという概念を意識しつつ、キャリアプラトー対策に努める必要があります。


キャリアアンカー

キャリアアンカーは、アメリカの組織心理学者である、エドガー・H・シャインが提唱した概念で、個人の職業選択や意思決定の核となる価値観です。


キャリアアンカーは経験を通じて形成され、一度確立されると容易には変化しないとされています。明確なキャリアアンカーを持つ人は、自身の価値観に沿ったキャリア選択を行いやすく、結果としてキャリアプラトーを回避しやすい傾向です。


まとめ

キャリアプラトーは社員それぞれの問題ではなく、企業の成長を妨げる組織的な問題です。キャリアプラトーに陥る原因は、社員それぞれ異なります。企業は1人ひとりが抱えている問題を把握し、適切な対策を講じなければなりません。


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