退職を理由に降格人事を行うのは違法になる可能性あり!減給できる4つのケースも説明


退職を理由に降格人事を行うのは違法になる可能性あり!減給できる4つのケースも説明

「退職を理由に社員を降格させることはできるのだろうか」と疑問に思っている方は多いのではないでしょうか。降格人事は、社員の給与やプライドに関係するデリケートな問題です。本記事では、退職希望の社員の降格人事や減給、注意点について解説します。

こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。


「退職を希望している社員を降格させるのは違法なの?」「降格人事を行うときの注意点が知りたい」とお悩みの方がいらっしゃるのではないでしょうか。


降格人事は、社員の給与やプライドに大きく関わるので、慎重に判断することが重要です。また、退職を理由にした降格は違法になる可能性があります。減給も基本的には無効ですが、特例として退職が理由でも、有効と認められるケースがあります。


そこで本記事では、退職を理由とした降格が違法になる理由や減給できるケースを解説します。退職する社員の降格人事について知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。


降格人事とは社員の役職や地位を下げる処分


降格人事とは社員の役職や地位を引き下げることです。以下の2つに分類されます。


  • 懲戒処分による降格
  • 人事異動による降格


懲戒処分による降格は、就業規則の違反に対する制裁です。社員の無断欠勤やパワハラなどがあった場合に、会社が「懲戒権」を行使するケースです。一方で、人材の配置変更や社員の能力不足などを理由として、人事異動による降格を実行する場合もあります。会社の権限である「人事権」の行使によって実行させる降格です。


人事異動による降格には、以下の2種類があります。

解任(降職)

・社員の職位を下げる

・役職を再検討する場合に行われる

降級(降格)

・社員の給与等級や職能資格を下げる

・給与等級を再検討する場合に行われる

降格人事を行うときは、懲戒処分と人事異動のどちらに該当するか確認しましょう。


降格人事を実行する3つの理由


降格人事は、以下のような理由で実行されます。


  • 規則違反や職務怠慢
  • 能力不足
  • 配置転換


降格人事の理由を社員に問われたときに、しっかりと説明できるように詳しく見ていきましょう。


規則違反や職務怠慢


社員の就業規則違反や職務怠慢により、降格人事が実行されることがあります。就業規則違反や職務怠慢の例を以下の表にまとめました。

就業規則違反の例

・ハラスメント

・横領

・機密情報の持ち出し

職務怠慢の例

・正当な理由のない遅刻

・無断欠勤

・過度な職場離脱

内容によっては降格人事を実行する前に、指導や厳重注意を行う必要があります。適切な手順を踏んだにも関わらず改善が見られない場合に、降格人事を実行します。処分を行うときは、社員が納得できずにトラブルに発展する可能性があるため、細心の注意を払いましょう。


能力不足


社員の能力やスキルの不足も降格人事の理由に当てはまります。例えば、部下の指導や管理をするスキルが欠けている場合、営業部員の著しい業績不振や業績悪化などが該当します。ただし、一時的に能力を発揮できないだけで、教育すれば改善が見られるケースもあるでしょう。また、適性のない部署に配置されているために、能力を発揮できていないことも考えられます。


十分に事実関係を把握しなかったり、本人に弁明の機会を与えなかったりすると、会社側の責任が問われることがあるので要注意です。降格人事を実行すると、社員に精神的なダメージを与えることになるので、慎重に判断する必要があります。能力不足を理由とした降格人事について詳しく知りたい方は、別記事「降格人事能力不足」をあわせてご確認ください。


配置転換


人材配置のために、降格人事が行われることもあります。「降格」にはネガティブなイメージを持つ方が多いでしょう。しかし、配置転換による降格は、社員の適性に合った場所に異動させられるため、ネガティブではない側面があります。


「新たな部署での知見を深めたい」「リーダー職でいるよりもサポートメンバーとして貢献したい」といった社員の希望が叶えられる可能性があるのが、配置転換です。処罰が目的ではなく、新しいスキルを磨くために配置転換をする降格は、ポジティブな一面があります。


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退職を理由に降格人事を行うのは違法になる可能性あり


問題を起こさずに働いてきた社員が退職する際に降格人事を行うと、違法になる可能性があります。東京労働局に実際に問い合わせたところ、降格人事の違法性は「退職の理由」によって決まるとのことです。


例えば、課長クラスの社員が3ヶ月後に退職するとします。客先との兼ね合いから、退職後に新しい課長を設けるのでは、業務上不都合が生じるケースがあります。業務に支障をきたすことを避けるために、退職が決まっている社員の降格人事を行うことは、正当だと認められやすいです。


しかし、就業規則に降格人事の内容の記載がなかったり、理由が不当であったりする場合は、違法になる可能性があります。正当な理由がない限りは、退職予定の社員を降格させるのは避けるのが無難です。降格人事をどうしても行わないといけない場合は、当該社員に納得してもらえるように説明しましょう。


降格人事で退職が理由の減給は原則違法


退職のみを理由に減給するのは、原則違法です。もし退職を理由として減給した場合、会社は社員から「未払い賃金」として減給分を請求される可能性があります。社員の未払い賃金請求に会社が対応しない場合はトラブルに発展し、訴訟を起こされるリスクもあります。例外もありますが、基本的に退職を理由とした減給はできません。


退職が理由の降格人事で減給できる4つのケース


基本的に、退職を理由にした減給は難しいです。しかし、例外として以下の場合は減給できる可能性があります。


  • 本人の同意がある場合
  • 月の途中で退職した場合
  • 会社に損害を与えて退職した場合
  • 減給処分の場合


減給は社員の生活に大きく関わることから、トラブルにつながりやすいです。トラブルを未然に防ぐためにも、ここでしっかり確認しておきましょう。


本人の同意がある場合


退職する社員が同意した場合は、減給が可能です。しかし、減給に同意するよう強要したり、口頭だけで済ませたりすると、不当だと見なされるため注意してください。正当性を示すために、社員には減給を認める旨を記載した「同意書」にサインしてもらうことが重要です。社員本人が同意した証拠として残せるため、揉め事が起こっても対処できます。


月の途中で退職した場合


月の途中で退職する社員の給料を「日割り計算」し、結果的に減給になることは違法ではありません。ただし、労働した日数分を確実に支払わなければ、違法になります。例えば「引き継ぎ期間については、給与は発生しない」「月の途中で退職すると、その月分の給与は支払えない」といった理由で減給するのは違法です。日割り計算する場合は、社員が働いた日数分は必ず支払う必要があります。


会社に損害を与えて退職した場合


会社に損害を与えたことが原因で社員が退職する場合は、賠償請求した金額を給与から差し引ける場合があります。給与に変更はなく、損害賠償請求の金額を差し引くことから、結果として支払う賃金が低くなるのです。


一般的に、給与と賠償金の相殺はできませんが、社員からの申し出があった場合は認められることがあります。ただし、トラブルに発展するなどして裁判になった場合、社員が不利益を被るような内容になっていないか厳しく判断されます。社員から給与と賠償金の相殺を申し出られたら、不当とみなされないように慎重に判断しましょう。


減給処分の場合


社員の責任を追求する場合は、懲戒処分として減給できるケースがあります。しかし、懲戒処分による減給を実行する場合は、以下のルールを守る必要があります。


  • 1回の懲戒処分の減給:1日分の平均賃金の50%以内
  • 1ヶ月の間の懲戒処分の減給総額:月の賃金の10%以内


規定の範囲を超えた減給はできないため、決まりに則って実行することが重要です。


降格人事で退職されないための5つのポイント


降格人事を行うときの5つのポイントは以下のとおりです。


  • 就業規則の明記を確認する
  • 根拠を用意する
  • 事前に指導や注意をする
  • 権利の濫用に気をつける
  • モチベーションの低下に留意する


降格人事によって会社から重要な人材が離れて行ったり、法に触れてトラブルが起こったりすることを防げるように、詳しく解説します。


就業規則の明記を確認する


降格人事の判断基準や制度の詳細は、就業規則に明記しておきましょう。とくに懲戒処分や降格(降級)のケースは、就業規則の記載が必須です。会社が就業規則に則り、正当な処分を行っていることを社員に説明できるようにしておく必要があります。


社員が降格人事に納得できずに訴訟を起こした場合、就業規則に処分についての明記がないと違法になるケースがあります。降格人事を行う前には、就業規則の明記があるかを確認しておくと、問題が起こっても慌てずに対処できます。降格人事が違法になるケースについて詳しく知りたい方は、別記事「降格人事違法」をあわせてご確認ください。


根拠を用意する


降格人事を行うときには、社員に納得してもらうだけでなく、会社を守るためにも根拠を用意しておくことが重要です。根拠を集める方法は以下のとおりです。


  • 当該社員への聞き取り
  • 関係者への聞き取り
  • メール
  • 書類
  • 音声データ
  • 警察の調査結果(違法行為の場合)


「能力不足で業績が下がり続けている」といった理由で降格の場合は、会社の環境が影響していないか調査しましょう。社員が必要以上に業務を抱え込んでいる場合や、嫌がらせを受けている可能性を考慮する必要があります。業績不振を理由とした降格人事を検討しているなら、証拠を明示した上で、当該社員の実力による結果という説明ができることが大切です。


事前に指導や注意をする


降格人事を決定する前には、指導や注意をする必要があります。社員の能力が不足している場合は、指導や注意によって改善する可能性があるためです。また、トラブルが発生しても指導や注意を行った事実があれば、降格人事の正当性を問われた際に説明しやすいでしょう。会社が処分を下す前に、社員の不足している能力を補う努力やケアを行うことが重要です。


権利の濫用に気をつける


解任(降職)や降級(降格)を決定するときは、人事権の濫用に該当しないか留意しましょう。懲戒処分は、就業規則に則り、懲戒権の行使によって処分を決定できます。しかし、人事権は会社の裁量が大きいため、権利の濫用として違法性があると判断されやすいです。


例えば、有給取得のタイミングが不適切として降格したケースは、違法と判断される可能性があります。違法になるかどうかのポイントは、当該社員が被る不利益の度合いです。実行しようとしている降格が、権利の濫用にならないよう注意が必要です。


モチベーションの低下に留意する


降格人事は、当該社員のモチベーションが下がるだけでなく、周囲の人間にも影響が出る可能性があります。降格人事が、適切な処分や人材配置でなかった場合、当該社員と同様に周囲の人間も不満を抱きやすくなるためです。


社員全体のモチベーションが下がって、退職者を出さないためには、どの立場から見ても正当と認識できる降格を行うことが重要です。また、当該社員の様子を見守って、モチベーション低下に留意しながらフォローする必要もあります。


降格人事によってチームのモチベーションは大きく影響を受けるため、管理者はメンバーの変化を認識しておくことが重要です。タレントパレットには、3秒で社員のモチベーションを調査できる機能があります。設問の内容は自由に変更でき、簡単なアンケートから、本格的な調査まで柔軟に行えます。効率的に部下の状況を把握したい方は、ぜひ資料を請求してみてください。


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まとめ


降格人事は社員の給与やプライドに関わるデリケートな問題のため、慎重な判断や配慮が必要です。退職を希望している社員の降格は、違法になる可能性があるため、正当性のある理由を説明できるようにしておきましょう。対策としては、日頃から社員と密にコミュニケーションをとり、退職や降格の際に誤解が生まれないことが大切です。


タレントパレットには、多様な角度から社員の満足度を分析したり、改善ポイントを見つけたりできるシステムが備わっています。降格人事にまつわるトラブルは、日常的に社員の満足度を認識し、改善していくことで防げることもあるでしょう。降格人事によるトラブルを防ぎたい方や、社員の状況を分析して働きやすい環境作りをしたい方は、ぜひ資料請求をご検討ください。


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