ヒューマンリソースマネジメント(HRM)とは?フレームワークや事例を紹介


ヒューマンリソースマネジメント(HRM)とは?フレームワークや事例を紹介

HRMとは、人材を経営資源として捉え、企業戦略に沿って採用・配置・育成・成果につなげる手法です。本記事では、HRMの意味や目的、必要性を理解するためにフレームワークや事例を紹介します。

こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。


組織の成長に欠かせない人材管理の手法として、HRM(ヒューマンリソースマネジメント)が注目されています。HRMとは、人材を経営資源として捉え企業戦略に沿って採用・配置・育成・成果につなげる手法です。
そこで本記事では、HRMの意味や目的、必要性を理解するために、フレームワークや事例を紹介します。本記事を読めば、HRMの基礎知識を身につけるとともに自社の人材管理に役立てるヒントを得られるでしょう。

ヒューマンリソースマネジメント(HRM)とは?

ヒューマンリソースマネジメント(HRM)とは、組織の中で人材を重要な経営資源と位置づけて、人材の活用による企業成長を図る理念を表します。HRMの視点では、企業の戦略に合わせた人材の特性を見極めて特性に応じて採用、配置し、さらに育てることによって成果を出す仕組みが求められます。
人事部門の責務だけでなく、各部門のリーダーであるマネージャーたちもHRMの考え方を理解して実践しなければなりません。そして、HRMの適用は人材育成を通じて組織の業績向上と競争力強化につながります。

ヒューマンリソースマネジメントが必要とされる背景

HRMが重視される背景には、主に2つの事情が存在します。1つ目は、労働力人口の減少です。少子高齢化と働き方の多様化が進行し、結果として国内労働力人口は縮小しています。このような状況下では、企業は限りある人材を最大限に活用しなければ成長できません。
2つ目は、従業員のキャリア形成の重視です。現代は「人生100年時代」と称され、従業員自身が自分の仕事や人生のキャリアを深く考えるようになりました。それに対応するために組織は従業員のキャリア形成を後押しし、その結果として従業員の満足度やモチベーションを向上させる必要があります。

ヒューマンリソースマネジメントに似た言葉との違い 

ヒューマンリソースマネジメント(HRM)とそれに近い概念であるPM、HCM、TMとの間には、人材に対する異なる視点が存在します。それぞれ詳しく解説します。

PMとの違い 

PMという概念は、主に人事労務管理に焦点を当てています。PMの視点では、人材は労働力あるいはコストとして認識され管理と統制が行われます。重視されているのは、企業の利益を重視する構造です。
しかし、HRMは人材を重要な資源として捉えて育成と活用を重視します。この観点は、企業戦略に基づく体制を支えるものです。
つまりPMが人材管理に主眼を置くのに対し、HRMは人材の成長に焦点を当てています。

HCMとの違い 

HCMは人的資本管理を指しており、人材の能力や経験を資本として位置づけてその投資と回収を重視します。企業価値の向上を目指す体制を反映しているのです。
対してHRMは、人材の才能や素質を資源として捉えてその開発と活用を目指します。経営目標の達成を重視する体制を体現しています。
HCMは人材の能力に焦点を当てる一方、HRMは人材の可能性に重きを置くのです。

TMSとの違い 

TMSとは、タレントマネジメントシステムの略です。TMSとHRMの違いは、人材をどのように見るか、どのように管理するかという点にあります。
TMSは、人材を企業の戦略に合わせて選択・配置・評価・報酬・教育するだけでなく、個々の能力や才能を把握して最大限に活かすのを目的としています。そのため、人材のパフォーマンス向上や離職防止、リーダー育成などに効果が期待できますが、専用のシステムやデータの管理が必要です。
一方HRMは、人材を企業の重要な資源と捉えて管理・運用するのを目的としています。HRMは、人事業務全般が効率化されるメリットがありますが、従業員のモチベーション低下や組織変化への対応力不足などの課題もあります。

人材の管理だけで終わらない、あらゆる人事データを統合して分析 

人事データとは、採用や配置、教育や評価、離職や定着などの情報を含みます。これらのデータを組み合わせて分析することによって人材の動きや動機、能力や成果などを明らかにします。HRMは、その人事データを活用して人材の最適化や戦略的な活用を追求するのです。

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ヒューマンリソースマネジメントの5つのフレームワーク 


ヒューマンリソースマネジメント(HRM)は人材を企業資源として有効に活用するための手法で、多種多様な理論やフレームワークが存在します。その中でも特に影響力のあるフレームワークはミシガンモデル、ハーバードモデル、ワーウィックモデル、ウルリッヒモデル、ゲストモデルの5つです。それぞれのフレームワークは、人材の捉え方、管理方法、そして組織のパフォーマンスに対する影響の視点に違いがあります。

1.ミシガンモデル 

ミシガンモデルとは人的資源管理(HRM)の基本的な概念を示すもので、1980年代にアメリカのミシガン大学で実施された研究がベースになっています。本研究では、人的資源管理が組織の業績にどのように影響するかが分析されました。
ミシガンモデルにおける人的資源管理は、組織の目標達成に必要な人材を確保・育成・活用するための統合的な管理手法として捉えられます。そのため、人的資源管理は、組織の事業計画や戦略と密接に関連しており、それらとの整合性や一致性を重視します。

2.ハーバードモデル 

ハーバードモデルとは、1984年にハーバード大学のビアーらが提唱したHRM(人的資源管理)のフレームワークです。ハーバードモデルは人材を単なるコストではなく、組織にとって重要な資源と捉えて従業員の満足度や生産性を高められると主張しています。
また、従業員だけでなく、株主や顧客、社会などのステークホルダーの利益も考慮する必要があります。本モデルは、HRMの基本的な考え方を示したものであり、多くの企業や研究者に影響を与えました。

3.ワーウィックモデル 

ワーウィックモデルとは、1990年にイギリスのワーウィック大学のヘンドリーらが提唱したHRM(人的資源管理)のフレームワークです。ワーウィックモデルは、組織内外のコンテキストがビジネス戦略に影響を与えることを認めつつも、ビジネス戦略をHRMに優先するという立場をとっています。
つまり、人事制度はビジネス戦略に沿って設計・運用されるべきだと主張しているのです。また、当モデルは、HRMの実践において経営者や人事担当者の価値観や信念が重要な役割を果たすべきだと指摘しています。

4.ウルリッヒモデル 

ウルリッヒモデルとは、1997年にアメリカの経営コンサルタントのデイブ・ウルリッヒが提唱したHRM(人的資源管理)のフレームワークです。ウルリッヒモデルは、人事部門が単なる管理者ではなく、戦略的な貢献者や変革の推進者として活躍すべきだと提案しています。
また本モデルは、人事部門が従業員や組織に価値を提供するために必要な能力やスキルも示しています。人事部門の役割や評価基準を明確化し、多くの企業に採用されました。

5.ゲストモデル 

ゲストモデルとは、1989年にイギリスのロンドン大学のデイビッド・ゲストが提唱したHRM(人的資源管理)のフレームワークです。ゲストモデルは、HRMがPMよりも優れたアプローチだと主張しています。
また本モデルは、HRMが従業員や組織にどのような影響を与えるかを評価する指標を提供しています。HRMとPMの違いや効果を理解するのに役立ちます。

ヒューマンリソースマネジメントの方法 

ヒューマンリソースマネジメントには、セルフマネジメント、ミクロマネジメント、マクロマネジメントの3つの方法があります。それぞれにメリットとデメリットがありますので、組織や従業員の状況に応じて適切に使い分けるスキルが求められます。

セルフマネジメント 

セルフマネジメントとは、従業員が自分自身の仕事観と向き合って仕事への姿勢を主体的なものにする考え方です。自分の能力や目標を把握して自己評価や自己改善を行ったり、自分の強みや弱みを知って適切な役割分担や協力関係を築いたりします。
セルフマネジメントは、従業員が自分の仕事にやりがいや責任感を持ち、業務効率やパフォーマンスを向上させられます。しかし、セルフマネジメントには一定のスキルや意識が必要であり、すべての従業員ができるわけではありません。そのため、組織側はセルフマネジメントを支援する仕組みや環境を整える必要があります。

ミクロマネジメント 

ミクロマネジメントとは、従業員に対して細かく指示や監督を行うことです。従業員の業務内容や進捗状況を常に把握して必要に応じてフィードバックやアドバイスを与えたり、従業員の個性やニーズに応じて対応して関係性やコミュニケーションを調整したりします。
ミクロマネジメントは、従業員の成長や問題解決を促進して品質や安全性などの基準を守らせるのです。しかし、ミクロマネジメントには時間や労力がかかり、従業員にとっては過干渉や圧力と感じられる場合もあります。そのため、適度な距離感や信頼関係が重要です。

マクロマネジメント 

マクロマネジメントとは、組織全体の目標や方針に沿って管理することです。組織の構造や役割、権限や報告の体系を構築して管理します。また、組織の理念や文化を形成・維持するのもマクロマネジメントの重要な要素です。
マクロマネジメントは、組織の一体感や方向性を高めて戦略的な意思決定や変革を促進できます。しかし、マクロマネジメントには客観性や公平性が求められ、従業員の個別の事情や感情にはあまり配慮できません。そのため、従業員のモチベーションやエンゲージメントを保つ工夫が求められます。

ヒューマンリソースマネジメントを導入している企業事例 


HRM(ヒューマンリソースマネジメント)を導入している企業事例として、日立製作所と日産自動車を紹介します。それぞれの事例を詳しく解説します。

1.日立製作所 

日立製作所は、社会イノベーション事業を展開するグローバル企業です。日立製作所は、人的資本経営の推進に取り組んでおり、その一環として日立人財データ分析ソリューション(HPA)を開発・導入しています。HPAは、従業員一人ひとりの生産性(働く意識)と配置配属へのフィット感を見える化し、人事関連の各施策への活用をサポートするシステムです。
HPAは、筑波大学の学術指導のもとに日立が開発したサーベイをもとに、個人の意識や行動に寄り添ったコミュニケーションや施策立案を可能にします。HPAは、日立製作所だけでなく、他社にも提供されており、多くの企業や組織が人的資本経営の推進に活用しています。

2.日産自動車 

日産自動車は、世界各地で自動車や関連サービスを提供するグローバル企業です。日産自動車は、2000年代からHRM(人的資源管理)の導入に取り組んでおり、その中心的な役割を担っているのがグローバルHR部門です。グローバルHR部門は、世界各地で働く約14万人の従業員に対して採用や教育、評価や報酬などの人事制度を設計・運用しています。
また、日産自動車のビジネス戦略に沿って人事制度を策定・実行し、戦略的パートナーとして経営陣と協力しています。グローバルHR部門はHRMの実践において、経営者や人事担当者の価値観や信念も重視しているのです。

まとめ

HRMとは、人材を経営資源として捉え、企業戦略に沿って採用・配置・育成・成果につなげる手法です。HRMが必要とされるようになった背景は、労働力人口の減少です。少子高齢化と働き方の多様化によって、労働力人口が縮小しています。限りある人材を最大限に活用するために、企業は人材の特性に応じて採用・配置しなければなりません。
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