こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。「離職率」や「定着率」は社員がどれくらい長く会社に在籍し、活躍してくれているのかを示す目安となります。
健全な企業運営を行っていくために欠かせないデータであり、人事担当者は正しい理解が必要です。そこで今回の記事では、離職率と定着率の計算方法や目安となる数値について解説します。離職率を改善するための施策も紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
離職率とは?定義や計算方法を解説
離職率は企業にとって重要な人事指標の1つであり、社員の働きやすさや組織の健全性を示す貴重な情報源です。この章では、離職率の定義と計算方法について解説します。
離職率とは「一定期間後に退職した人の割合」
離職率とは「一定期間後に退職した人の割合」を示す指標で、企業にとっては社員の流動性や定着度を把握するための重要なデータです。一定期間を経過した後、どれくらいの社員が退職したかを示します。ただし、離職率の定義や計算方法が法律などで定められているわけではないため「一定期間後」がどれくらいの期間を指すのかは、企業によって異なります。
離職率の計算方法
離職率の計算式は以下のとおりです。
一定期間中に離職した社員数 ÷ 元の社員数 × 100
多くの企業では、期初から期末までの1年間で退職した社員の割合で計算した離職率がよく用いられます。たとえば2023年4月1日の時点で100人の社員がいて、2024年3月末に90人に減っていた場合は、以下のように計算します。
10(対象期間中に離職した社員数)÷100(元の社員数)×100=10%(離職率)
離職率は単独ですべてを示す指標ではなく、定着率や採用率など他の人事データと組み合わせて評価することが重要です。また離職率を算出するときは、離職者の基準を決めておきましょう。定年退職者や出向者などを離職者に入れるか否かで、離職率の数値は異なります。正確な離職率を算出できない場合があり、数値によってはイメージダウンにつながりかねないため、結果の公表は慎重な判断が必要です。
離職率と定着率の計算方法の違い
離職率と定着率はいずれも企業にとって重要な指標ですが、それぞれ異なる視点から組織の状況を分析するデータです。離職率は一定期間内に退職した社員の割合を示し、労働環境や組織の課題を浮き彫りにします。一方で定着率は一定期間内に残った社員の割合を示し、企業がどれだけ優秀な人材を維持できているかを評価する指標となります。この章では、定着率の定義や計算方法を解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
定着率とは「一定期間後にも在職している人の割合」
離職率と似た言葉に、定着率があります。定着率とは「一定期間後にも在職している人の割合」を示す指標で、社員の長期的な安定性や組織の維持に関する重要なデータです。一定期間を経過した時点で、入社した社員のうちどれくらいが企業に残っているかを測ります。
定着率が高いほど、社員が長期間働き続けていることを意味します。また定着率も離職率と同様に、定義や計算方法が法律などで定められているわけではありません。
定着率の計算方法
定着率の計算式は、以下のとおりです。
一定期間後に在籍している社員数÷/元の社員数 × 100
たとえば2020年4月1日の時点で100人の社員がいて、2021年3月末に90人残っていた場合は以下の計算式で表せます。
90(対象期間に在籍している社員数)÷100(元の社員数)×100=90%(定着率)
定着率は、対象となる期間をどこで区切るかによって結果が異なります。定着率が低いから問題があると決めつけるのではなく、定着率以外の情報も加味した分析が必要です。また、企業によって算出の仕方が異なる点にも注意しましょう。
雇用動向調査による離職率と入職率
雇用動向調査における離職率は「常用労働者数に対する離職者の割合」で計算されています。常用労働者と離職者は、以下に該当する人です。
【常用労働者】
- 期間を定めずに雇われている者
- 1ヵ月以上の期間を定めて雇われている者
- 1か月以内の期間を定めて雇われている人または日々雇われている者で、前2ヶ月にそれぞれ18日以上雇われた者
【離職者(常用労働者のうち)】
- 退職した者
- 解雇された者
- 他企業へ出向した者、出向復帰した者
ただし「同一企業内の他事業所への転出者」は除かれます。
令和6年上半期(1~6月)の「雇用動向調査」における離職率の全国平均は8.4%でした。前年上半期より0.3%減少しています。上半期の離職率は、近年では平成19年(2009年)の9.6%が最も高い数値です。令和元年(2019年)に9.1%となった以外、平成20年(2010年)以降は8%台で推移しています。また、令和6年上半期の入職率は9.0%です。近年離職率が入職率を上回る「離職超過」となったのは、平成19年(2009年)平成20年(2010年)のみです。
入職率を就業形態別に見ると、以下のようになります。
【一般労働者】
離職率:6.8%
入職率:7.6%
【パートタイム労働者】
離職率=12.6%
入職率=12.5%
一般労働者においては入職率が上回っていますが、パートタイム労働者は離職超過となっています。
【必見】離職率の調べ方5選!注意点と自社と比較すべき5つの平均離職率を解説
他社の離職率を調べる方法
他社の離職率を調べる方法は、以下のとおりです。
- 業界レポートや市場調査データをチェックする
- 企業の口コミサイトで予測する
- 求人サイトの情報を確認する
- 業界の人脈を活用する
- 経営者や人事担当者からの直接情報を得る
調査機関や団体が公開しているレポートやデータであれば、各業界の離職率を知ることができます。企業の口コミサイトは社員からの評価が集まっています。「過去に辞めた理由」や「職場環境」に関する情報が多く見られるため、間接的に離職率を予測する手がかりになるでしょう。離職率を知りたい企業に関係者がいる場合は、直接調査することも可能です。
離職率が高い業種
令和6年上半期の推移をみると、一般労働者において離職者率が最も多かったのが「宿泊業・飲食サービス業」10.9%です。次いで「生活関連サービス業・娯楽業」が9.2%となっています。
パート労働者においては「宿泊業・飲食サービス業」17.9%、次いで「電気・ガス・熱供給・水道業」17.2%でした。どちらの労働形態においても、サービス業(他に分類されないもの)は除きます。「宿泊業・飲食サービス業」は就業形態に関わらず離職率が高いです。
新卒の3年以内の離職率
新卒入社から3年以内の離職率は、企業にとって非常に重要な指標です。企業にとって未来の中核を担う人材と期待される一方で、初めての社会人経験を通じて職場に対する期待や現実とのギャップを感じることが多い時期と言えます。新規学卒就職者の3年以内離職率は、以下のとおりです。
- 中学:50.5%
- 高校:38.4%
- 短大等:44.6%
- 大学:34.9%
事業所規模別3年以内離職率は、以下のとおりです。
事業所規模 | 高校 | 大学 |
---|---|---|
5人未満 | 62.5% | 59.1% |
5~29人 | 54.4% | 52.7% |
30~99人 | 45.3% | 42.4% |
100~499人 | 37.1% | 35.2% |
500~999人 | 31.5% | 32.9% |
1,000人以上 | 27.3% | 28.2% |
事業規模が大きくなるほど、3年以内の離職率が低い傾向にあります。
参照:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)」
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離職率が高くなる5つの原因
離職率が高くなる原因はさまざまで、企業や業種によって異なる要素が絡み合っています。この章では、離職率が高くなる主な原因を解説します。どのような要因が社員の退職を促進するかを理解し、取り組むべき改善策を検討しましょう。
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人間関係のストレス
職場での人間関係は、仕事のモチベーションや業務効率に大きな影響を与える要因です。上司や同僚との関係性が悪くなると精神的な負担が積み重なり、仕事に対する不満やストレスが増加します。また、人間関係の問題が長期化すると心身に不調をきたし、最終的には「辞めたい」という気持ちが強くなるでしょう。
さらに社内の人間関係に問題が生じている場合は、離職率が高くなることに加えて企業に対する信頼を失う原因にもなります。社員がストレスを感じやすい職場環境は、離職率を高める原因になります。
長時間労働の常態化
長時間労働の常態化は、社員の健康や仕事へのモチベーションに深刻な影響を与え、最終的には離職率の増加を招く一因となります。過度な残業や休日出勤が継続している職場では、社員が仕事に対して感じるストレスが増すため心身の疲労が蓄積します。このような状況では「このまま働き続けるのは難しい」と感じ、社員は転職を考えるようになるでしょう。
また社員のワークライフバランスが崩れ、心身の不調を起こせば仕事の効率は低下します。仕事の進みが悪くなれば残業がさらに増え、働く環境はより悪化していくでしょう。このような過酷な労働環境は人材の流出を招くことにつながり、企業の成長や発展にも悪影響を与える恐れがあります。
採用のミスマッチ
採用活動において企業が求めるスキルや経験と、実際に採用された人材の能力や適性が一致しない場合、仕事に対する不満やストレスが生じやすくなります。応募者の適性や価値観などを十分に見極めずに採用を決定すると、期待したパフォーマンスを発揮できず、双方が不満を募らせることになります。
社員は自分に合わない業務を続けなければならないため、長期的にストレスや不満を抱えて仕事をしなければなりません。このような状況では仕事へのモチベーションが維持できず、最終的には離職を選択する可能性が高くなります。
不適切な評価
不適切な評価は、社員のモチベーション低下や不満を招く原因です。社員は自分の努力や成果に対して適切に評価されていると感じることで、仕事へのモチベーションが高まります。しかし、不適切な評価が行われると「努力や成果が正当に評価されていない」と感じ、会社に対する不満が増加します。
また、過度に厳しい評価が行われると社員は自信を失い、職場での居場所がないと感じてしまうでしょう。「努力しても評価されない」「この仕事は向いていない」と感じた社員は、仕事に対する熱意を失って退職を選択する可能性が高まります。
待遇への不満
給与や労働条件など待遇面に不満を抱えると、仕事への満足度が低下する場合があります。特に、給与は離職率に影響する要因です。「長時間働いても給与が上がらない」「昇給やボーナスがない」など、努力や成果に見合わない報酬は社員の不満を招きます。
また、福利厚生や休暇制度など社員の生活を支える待遇が不十分だと、仕事と生活のバランスが悪くなってストレスや疲労を感じやすいです。待遇面に不満が多い職場は、より良い待遇を求めて転職を選ぶ傾向が高まります。
離職率の高さが与える影響
離職率の高さは、企業にとって多くの深刻な影響をもたらします。優秀な人材の流出や企業イメージのダウンなど、事業運営に大きなダメージを及ぼす可能性が高いです。この章では、離職率の高さが企業に与える影響について解説します。
人材流出
優秀な社員が頻繁に退職してしまうと、企業にとって重要なスキルや経験が失われます。企業の成長を支える中心となる人材が流出することは、業務の質や効率に直結する問題です。パフォーマンスが高い人材の離職は既存社員の負担を増やし、労働生産性の低下を招くことにつながります。
企業のイメージダウン
企業の離職率は、公表していれば誰でも調べられる時代です。離職率が高い企業は安定性に疑問を抱かせ、ブランド価値の低下につながります。また「働きにくい」「職場環境に問題がある」などのイメージを持たれる可能性が高く、新たな人材を採用する際の障害になりかねません。離職率の高さは企業のイメージダウンにつながり、売り上げ低下や経営悪化に発展する可能性も考えられます。
経営効率の悪化
離職率が高い企業は頻繁に新たな人材を採用し、育成しなければなりません。採用活動には広告費や面接の時間など、人材獲得のためのコストがかさみます。採用後は新入社員の教育や研修を行うため、本来の業務に必要なリソースを新人育成に割かなければなりません。
新人育成を優先するため、当面は業務効率が悪化する場合があります。また経験豊富な社員の退職は、企業全体の生産性に影響を与えます。業務の引き継ぎや知識の継承がうまくいかず、組織のノウハウや経験が失われてしまう可能性が高いからです。離職率の高さは人材採用や育成のコストが増加し、業務の生産性が低下など経営効率の悪化を招きます。
離職率を改善する施策
離職率の改善は企業にとって重要な課題であり、社員の定着を促進するためには具体的な施策が必要です。この章では、離職率を効果的に改善するための具体的な施策について解説します。
離職を検知する7つのアプローチとは?データ活用により離職防止を実現
待遇面の見直し
業界内での相場に対して自社の給与水準が低い場合は、転職を考える社員が増える原因になります。定期的に市場調査を行い、競争力のある給与を提供することが大切です。待遇面の改善は社員の定着率を高め、企業の競争力を維持するための効果的な方法です。
人事評価制度の見直し
透明で公正な評価制度を導入することは社員の定着率を高め、企業の成長を支える基盤となります。まずは、基準を明確にして「どのように評価されているか」を社員に知ってもらうことが大切です。また、業績だけでなくチームワークやコミュニケーション力など、さまざまな側面をバランスよく評価することが重要です。
採用プロセスの適正化を図る
採用プロセスが適切でないと、入社後のギャップやミスマッチが生じやすいです。曖昧な表現や過大な期待を避け、求職者が自分に合った職場かどうかを正しく判断できるようにすることで、ミスマッチ防止になります。
職場環境の改善
職場環境を整えることで、社員が長期的に働き続ける意欲を持てます。社員が1日の多くの時間を過ごすオフィスは、快適に働ける環境を整えることが大切です。業務効率が上がり、仕事に対する満足度も向上します。リモートワークやフレックスタイム制など柔軟な働き方を導入することで、社員のワークライフバランスを支援できます。
離職防止ツールの活用
離職防止ツールは社員の不満や問題を早期に把握し、適切な対応を取るための手段となります。社員が抱える悩みや課題を迅速に解決し、企業に対する信頼や忠誠心を高められるでしょう。ツールを積極的に導入することで社員の不満やストレスを早期に発見し、離職につながるリスクを軽減できます。
離職率を改善した企業事例「株式会社プレナス」
株式会社プレナスは、ほっともっと・やよい軒・MKレストランを全国展開する企業です。タレントマネジメントシステムの導入により、社員のエンゲージメントが向上と離職率改善につながった事例です。タレントパレットを活用して、人事評価制度の構築やアンケート機能によるパルスサーベイを実施しました。タレントパレットの導入により、それまで集約できないまま蓄積していた人材データを分析し、スキル育成や人材活用に役立てています。
まとめ
離職率は企業運営において重要な指標の1つであり、社員の定着状況を把握するために欠かせないデータです。正確な離職率を算出することで組織の人事戦略や労働環境の改善点を明確にし、有効な対策を講じることができます。
このような好循環を生み出すために有用なのが、タレントマネジメントシステムという人材管理方法です。科学的人事をワンストップで提供するタレントマネジメントシステム「タレントパレット」では、離職防止・定着率向上に向けたモチベーションの可視化やエンゲージメント向上、退職者分析などで離職率を下げ、定着率を上げるための施策を支援しております。離職率の増加にお悩みの企業の方は、ぜひお問合せください。
