法定休日日数の最低ラインは52日!年間休日が105日未満でも罰則を受けないケースを解説


法定休日日数の最低ラインは52日!年間休日が105日未満でも罰則を受けないケースを解説

「法定休日は何日必要なのか知りたい」という方も多いのではないでしょうか。法定休日は労働基準法第35条で定められており、十分な日数を付与する必要があります。本記事では、法定休日の日数の設定方法を解説するので、ぜひ最後までお読みください。

こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。


「法定休日は何日必要なのか知りたい」「自社の利益を上げるために、休日日数を見直したい」といったお悩みをお持ちではないでしょうか。


法定休日は、労働基準法第35条で定められており、決められた日数分の休みの取得が義務付けられています。しかし、具体的な日数がわからないと、自社の休日の見直しを行うことは難しいでしょう。さらに、違反すると罰則が科せられるため、正しい日数は把握しておきたいところです。


そこで本記事では法定休日の日数について解説します。違反するとどのような罰則が科せられるのかや、例外的に除外されるケースについても紹介します。本記事を読めば、自社にとって適切な休日の設定方法が分かるため、ぜひ最後までお読みください。


年間の法定休日日数の最低ラインは52日


年間の法定休日日数の最低ラインは、52日です。法定休日とは、労働基準法の第35条で定められた休みを指します。使用者が労働者に対して週に1日以上、あるいは4週に4日以上の休日を与えることが義務付けられています。なお、何曜日を法定休日にするかは、企業で自由に設定が可能です。


1年は52週(365日÷7日=52.14週)のため、労働基準法第35条に当てはめると、法定休日の最低日数は52日です。しかし、企業は労働基準法第32条も遵守しなければなりません。労働基準法第32条では、法定労働時間(1日8時間、週40時間まで)を超える労働は禁止されています。

1日8時間労働させる場合、52日だけでは法定労働時間の上限を超えます。週5日働く場合は、最低でも105日の年間休日が必要です。年間休日の最低日数の再計算方法は、以下のとおりです。

  • 1年間の法定労働時間:40時間×52.14週=2085時間
  • 1年間の労働日数:2085日÷8時間=約260日
  • 年間休日の最低ライン:365日-260日=105日


法定休日に出勤させた場合は、割増賃金を支払う必要があります。割増賃金について詳しく知りたい方は、別記事「法定休日残業」をあわせてご確認ください。

振替休日と代休の違い


法定休日に出勤させた場合、代わりの休みとして以下の休日を付与可能です。


  • 振替休日
  • 代休


基本的に、法定休日に出勤する義務はありません。しかし、イベントや緊急対応などで出勤させることもあるでしょう。振替休日と代休は、定義や賃金の計算方法が異なるため、違いを理解しておきましょう。


振替休日とはあらかじめ他の曜日を休みにすること


振替休日を与える際は、休日を出勤日にする代わりに、あらかじめ別日を休みにします。例えば、日曜日を出勤日にするのであれば、同一週の水曜日を振替休日にするなどです。振替休日を与えれば、基本的に割増賃金の支払対象にはなりません。


ただし、1週間の法定労働時間が40日を超えた場合は、超過分の労働に対しては25%以上割り増しして賃金を支払う必要があります。替休日を翌週以降に設定すると、1週間当たりの出勤日が6日になり、法定労働時間を超える可能性があります。


出勤日となる法定休日と同一の週に、振替休日を取得させるのがおすすめです。なお、振替休日を設定する際は、出勤日の前日までに社員への通告が必要です。


代休とは法定休日に緊急出勤した代わりの休みのこと


代休は、法定休日に出勤させた後に、埋め合わせとして与える休日です。例えば、トラブル対応などで法定休日出勤させた場合などに適用されます。緊急で出勤することになった場合は、事前の通告は行っていない可能性が高いでしょう。


代休を与えた場合は、法定休日出勤の割増賃金を支払いましょう。通常の賃金に対して、35%以上割り増しして支払う必要があります。振替休日と代休は混合しやすいので、以下のように覚えておくと分かりやすいです。


  • 振替休日:事前に与える休日
  • 代休:事後に与える休日


賃金の計算方法が変わるため、振替休日と代休の違いをきちんと理解しておくことが大切です。


休日と休暇の違い


休日と休暇は混同しやすいですが、法律上では明確な違いがあります。それぞれの定義を解説するので、理解しておきましょう。


休日


休日は、社員の労働義務がない日を指します。労働義務がないため、基本的には無給です。休日には、法定休日と法定外休日の2種類が存在します。法定休日は、労働基準法で定められた休日です。週1日以上、または1ヵ月4日以上与える必要があります。法定外休日は、労働基準法では定められておらず、企業が任意で設定できる休日です。


法定休日も法定外休日も、企業は任意の曜日に設定できます。週休2日制で土日休みの企業の場合、土曜日を法定外休日、日曜日を法定休日に設定しているケースが多いです。労働基準法第32条では、以下のように定められています。


”使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない。厚生労働省|労働基準法https://jsite.mhlw.go.jp/gifu-roudoukyoku/var/rev0/0115/6296/2014613171824.pdf

法定休日のみの場合、32条に違反する可能性があるため、多くの企業は法定外休日を定めています。

休暇


休暇は、本来の出勤日に労働義務が免除されます。休日は与える義務がありますが、休暇取得は社員の権利です。労働基準法で定められている主な休暇には「年次有給休暇」や「産前産後休暇」などが挙げられます。また「アニバーサリー休暇」「リフレッシュ休暇」など、独自の休暇を設定している企業も増えています。


休日は与える日数が法律で決まっているため、必ず社員に取得させる必要があります。休暇は与えなくても法律違反にならないですが、社員の満足度向上のために設定し、取得を促しましょう。休暇は福利厚生に当たるため、日数や種類の多さで他社との差別化が図れます。きちんと休暇を与えると、結果的に社員のパフォーマンスの向上につながり、自社の利益がアップする可能性があるでしょう。


法定休日日数を設定する際の2つの注意点


法定休日日数を決める際の注意点は、以下の2つです。


  • 年間休日日数が不足すると罰則を受ける
  • 変更する際は社員の同意を得る必要がある


注意点を正しく理解しておかないと、社員とのトラブルなどが起きる可能性があります。一つずつ解説するので、確認しておきましょう。


年間休日日数が不足すると罰則を受ける


法定休日を含めた年間休日日数に違反すると、罰則を受けます。労働基準法第119条「法定休日の付与義務違反」に該当し「6ヵ月以下の懲役、または30万円以下の罰金」に処されます。


法律違反を防ぐためには、企業は必ず社員に対して週に1日以上、あるいは4週で4日以上の休日を与える必要があります。法定休日の最低ラインは52日ですが、労働基準法第32条を遵守するために、法定外休日も与えましょう。こまめに休日の取得状況を確認し、法律を守れるように努めることが重要です。


変更する際は社員の同意を得る必要がある


法定休日について就業規則に明示している場合でも、労働条件の改善や業務形態が変わったなどの合理的な理由であれば、変更が可能です。ただし変更の際は原則、社員全員の同意を得なければなりません。変更の手順は、以下のとおりです。


  1. 法定休日の変更内容を経営層で確認・承認する
  2. 社員の過半数代表者から意見をもらう
  3. 就業規則変更届を作成する
  4. 就業規則・意見書・就業規則変更届を労働基準監督署に提出する
  5. 全社員に就業規則の変更を通知する


法定休日の変更は、社員のライフスタイルに影響を与えます。正しい手順を踏み、社員の理解を得るのが大切です。


法定休日を含む年間休日日数が105日未満でも罰則を受けない4つのケース


年間休日日数の最低ラインは105日ですが、例外的に下回っても罰則を受けないケースがあります。


  • 1日の労働時間が8時間未満の場合
  • 年間休日に有給休暇を含める場合
  • 労働基準法36条を締結している場合
  • 変則労働制を採用している場合


それぞれの条件を解説するので、ぜひ参考にしてみてください。


1日の労働時間が8時間未満の場合


法定労働時間(1日8時間、週40時間)に達していない場合は、年間休日が105日を下回ったとしても問題ありません。例えば労働時間が1日6時間で、法定休日の1日以外の週6日勤務したとしても、1週間の総合計労働時間は36時間です。

法定労働時間を超えないため、罰則の対象にはなりません。パートタイムや時短勤務の社員などが該当する可能性があります。雇用形態に応じて、勤務時間をきちんと管理しましょう。

年間休日に有給休暇を含める場合


有給休暇は「休日」ではないため、基本的には年間休日には含まれません。ただし、2019年に行われた労働基準法の改正で、条件を満たしていれば年間休日に有給休暇を含んで良いとされています。

労働基準法の改正で、フルタイム勤務の社員で年間有給日数が10日以上の場合は、5日分の取得が義務付けられました。年次有給休暇の計画的付与制度と呼ばれています。例えば年間10日の有給休暇を与えているなら、5日は社員が自由に取得できますが、残り5日は企業が計画的に付与できます。

したがって、年間休日100日+有給消化5日などと設定するのは、法律違反ではありません。ただし、年間休日100日だと、法定労働時間を超える可能性があります。適用するには、事前に36協定を締結しておきましょう。

労働基準法36条を締結している場合


労働基準法36条を締結している場合は、罰則対象になりません。労働基準法36条(通称36協定)では、法定労働時間外で勤務させる際の条件が設定されています。時間外労働の上限を月45時間・年360時間と定めており、範囲内であれば年間休日日数が少なくなっても違法ではありません。

ただし、労働組合・または社員の過半数との協定が必要です。加えて、労働基準監督署への届出も行います。また残業や休日労働をさせた場合は、36協定を締結していても、条件に応じて割増賃金を支払う必要があることを留意しておきましょう。

変則労働制を採用している場合


変則労働制を採用している場合は、月や年単位で労働時間の調整が可能です。そのため、ある月が法定休日日数の最低ラインを下回っていても、罰則の対象にはなりません。例えば、1ヵ月の労働時間が1日8時間×20日=160時間だとします。

変則労働制を採用すると、繁忙期は10時間、閑散期は6時間などと、労働時間を調整できます。1週間の労働時間の合計が、40時間内に収まれば問題ありません。ホテル業界や飲食業界などが、変則労働制を採用している傾向にあります。ただし、変則労働制は社員のライフスタイルに影響を与える可能性があるため、導入した方が良いでしょう。

法定休日を含む年間休みの日数が105日のメリット・デメリット


法定休日を含めた、年間休みの日数が105日のメリット・デメリットを解説します。メリット・デメリットを理解し、社員のモチベーションや自社の利益を上げるための参考にしてみてください。


メリット


法定休日が105日のメリットは、労働日が増えるため、売上げアップが見込める点です。105日は、法定休日を含めた年間休みの日数の最低ラインのため、基本的に下回らなければ法律違反ではありません。


また、労働日数は給与にも直結します。特に契約社員やアルバイトなどは時給や日給制の場合が多いため、給与が高くなる傾向にあります。


デメリット


法定休日が105日のデメリットは、社員のパフォーマンスが上がりにくい点です。一般的に、年間休日105日は少ないとされています。令和3年の「就労条件総合調査」の結果では、企業あたりの年間休日の平均日数は110.5 日でした。


休日が少ないと、社員がリフレッシュできず、長期的に見て仕事のパフォーマンスが下がる可能性が高いです。さらに、休日日数が少ないという理由で転職する社員が増え、優秀な人材の確保が難しくなるでしょう。


一見、年間休日が少ないほうが、利益を上げられるように考えられます。しかし社員のパフォーマンスを上げて、自社の利益を出すためには、年間休日は多い方が良いでしょう。


参照元:厚生労働省|令和3年 就労条件総合調査


まとめ


法定休日を含めた年間休日の最低ラインは105日で、違反すると罰則が科せられます。ただし105日を下回っていても、法律違反ではないケースもあります。年間休日日数105日は、法律上問題はありませんが、平均より少ないです。


適切に休日を設定すると、社員のパフォーマンスが上がり、長期的に自社の利益につながります。そのため、可能な限り休日を与えることがおすすめです。しかし、社員を多く抱えている企業では、休日の管理は煩雑になる場合もあるでしょう。


社員の休日や休暇の管理には、タレントパレットの導入をご検討ください。タレントパレットには、2022年7月にから労務管理機能を追加しました。社員ごとの休日の管理などが容易になり、人事労務担当者の負担軽減が期待されます。ぜひ、お気軽にお問い合わせください。