ピープルマネジメントとは?特徴やメリット、成功のためのポイントを解説


ピープルマネジメントとは?特徴やメリット、成功のためのポイントを解説

近年、働き方や価値観の多様化などにより、ピープルマネジメントが注目されています。ピープルマネジメントとは、社員一人ひとりの能力や個性を理解し、最大限に活かすためのマネジメント手法です。ピープルマネジメントを適切に行うことで、チームのエンゲージメントや生産性が向上し、離職率の低下や組織の競争力強化にもつながります。

今回の記事では、ピープルマネジメントの特徴やメリットについて詳しく解説します。成功するためのポイントも紹介しているので、マネジメントに課題を感じている方や、チームの力を最大限引き出したいと考えている方は参考にしてください。

ピープルマネジメントとは?従来の手法との違いを解説

企業の成長には優れた戦略だけでなく、人材の力をいかに引き出すかが鍵となります。従来のマネジメント手法は業務や効率を重視する傾向がありましたが、近年では個々の価値観や多様性を尊重する「ピープルマネジメント」が注目を集めています。


ここでは、ピープルマネジメントの定義や従来の手法との違いについて解説します。事前に基礎知識をしっかり身につけることで、成功する可能性を高められます。


ピープルマネジメントとは

ピープルマネジメントとは、社員一人ひとりの特性や能力を理解し、組織全体の成果につなげていくマネジメント手法です。指示命令型マネジメントとは異なり、社員とのコミュニケーションや信頼関係を重視しながら、個々の成長を促します。


心理的安全性の確保やフィードバック、キャリア支援なども含まれており、人的資源を管理するのではなく、活かすことに焦点を当てているのが特徴です。現代の多様な働き方や価値観の変化に対応できるアプローチ方法として、多くの組織で導入が進んでいます。


従来のマネジメントとの違い

従来のマネジメントもピープルマネジメントも、社員一人ひとりの力を最大限に発揮して、組織の成果を最大化することが目的です。ただし、従来のマネジメントは、いかに「成果」を上げるかというパフォーマンスの向上を重視していました。


営業成績のように、数値で把握できるものが従来のマネジメントの対象です。また、従来のマネジメントは、マネージャーは成果に対して責任を問われました。ピープルマネジメントでは、マネージャーは人材開発や育成にも責任を持ちます。


ピープルマネジメントを知るにはクルト・レヴィンの法則の理解が重要

ピープルマネジメントの理解を深めるうえで重要なのが、クルト・レヴィンの法則を知ることです。ドイツの心理学者クルト・レヴィンが提唱した概念の1つで、「B=f(P,E)」という式で表しています。


Bは「Behavior(行動)」、fは「Function(関数)」、Pは「Personality(人間性など)」、Eは「Environment(職場の人間関係など)」です。クルト・レヴィンの法則は、「社員の行動は、周囲の状況にも左右される」ことを示しています。つまり、ピープルマネジメントを実施すると、企業全体が良い方向に進むと考えられます。


ピープルマネジメントが重要視されている背景

ピープルマネジメントが重要視されている背景として、主に以下の3つが挙げられます。


  • 転職や独立など雇用に対する考え方が変化している
  • 人手不足が深刻になっている
  • 働き方や価値観が多様化している
  • ビジネス環境が変化している


ここでは、それぞれの背景を社会環境の変化に基づき解説します。


転職や独立など雇用に対する考え方が変化している

インターネットの普及や転職サービスの登場により、働き方に対する考え方が大きく変化しました。2000年代以降は、キャリアアップやスキルアップを求めて転職を希望する人が多くいます。転職は単に仕事を変更するのではなく、キャリアの向上やライフスタイルの改善を実現するための有効な手法のひとつです


また、現在は国または地方自治体の支援制度やクラウドソーシングサービスが充実したことで、起業したり、フリーランスとして働いたりする人も増えています。特に若者や女性の起業者数が増加傾向にあり、今後も独立に挑戦する人が増えていくと予想されています。


そのため、会社側は優秀な人材に残ってもらうための施策が不可欠です。そこで社員一人ひとりに向き合い、エンゲージメントを高めるピープルマネジメントが注目されています。


参照元:2024年版 小規模企業白書


人手不足が深刻になっている

日本では少子高齢化の影響により、慢性的な人手不足が深刻な課題となっています。特に若年層の労働人口が減少する中で、優秀な人材の確保は企業にとって死活的な問題です。求人数よりも求職者数の方が少なく、買い手市場が続いています。


求職者は選択肢が多くあるため、大手や給料が高い会社、福利厚生が整っている会社に応募が偏りがちです。また、求職者にとって働きやすさも重要なポイントであり、ピープルマネジメントを実施することで職場環境の改善にもつながります


働き方や価値観が多様化している

テレワークや副業、フレックスタイムなど、働き方の選択肢が増える中で、従業員の価値観やライフスタイルが多様化しています。また、給与や福利厚生などの待遇以外に、ワーク・ライフバランスや習得できるスキルなど、人によって会社・仕事に求める内容も異なるようになりました。従来のマネジメント手法では、個々のニーズに対応しきれず、エンゲージメントの低下や離職につながるリスクが高まっています。


こうした背景から、社員一人ひとりの働き方やモチベーションに応じた柔軟な対応が求められるようになり、ピープルマネジメントが重要視されています。個人の強みや希望を尊重しながら適切にマネジメントを行うことで、組織全体のパフォーマンス向上にもつながります


ビジネス環境が変化している

新しいテクノロジーの登場やインターネットの普及などに伴い、ビジネスを取り巻く環境は急激に変化しています。例えば、リモートワークの拡大により、遠隔地のコミュニケーションの難しさや、仕事の進めにくさを実感した人も多いのではないでしょうか。社会の変化に適応するためには、ピープルマネジメントで社員の「個」の力を鍛え、組織全体の適応力を高める必要があります


ピープルマネジメントを実践する3つのメリット

ピープルマネジメントを実践すると、得られるメリットは以下の3つです。


  • 社員の自立性向上が期待できる
  • 社員のエンゲージメント向上につながる
  • 上司と部下の信頼関係が構築できる


ピープルマネジメントは社員一人ひとりと向き合うため、自立性やエンゲージメント向上を期待できます。また、コミュニケーションを通じて信頼関係を構築することも可能です。ここでは、それぞれのメリットについて詳しく解説します。


社員の自立性向上が期待できる

マネージャーと密にコミュニケーションを取ると、社員自身が内省する機会が増えます。行動を振り返り達成感を得ると、仕事へのモチベーションが向上して主体的な行動を取れるようになります。従来のような細かい指示を出すマネジメントでは、社員の自立性が育ちません。マネージャーに対して、コーチングを意識したサポートを求めましょう。


社員のエンゲージメント向上につながる

従来のマネジメント手法では、マネージャーは成果の達成にこだわりがちでした。パフォーマンスを発揮できていない社員にとって、マネージャーは煙たい存在であったかもしれません。ピープルマネジメントでは、マネージャーと社員が親密にコミュニケーションを取り、お互いの距離感が縮まります。マネージャーや企業に対して強いつながりを実感すると、社員のエンゲージメントが向上し、企業全体で生産性の向上が期待できます


関連記事:社員のエンゲージメントを高めるための具体的な方法9選|成功のポイントも解説


上司と部下の信頼関係が構築できる

ピープルマネジメントでは社員一人ひとりと向き合い、個々の成果を最大化することを目的としています。限られた時間の中で優先すべき管理業務として取り組むことで、部下の強みや課題に合った適切なサポートが可能になります。


また、ピープルマネジメントでは、コミュニケーションを重要視しているのも特徴です。定期的な1on1ミーティングの実施や相談しやすい環境を作り、お互いを理解し合うことで、上司・部下間またはチーム内における信頼関係を構築できます


ピープルマネジメントの実践への4ステップ

ピープルマネジメントは、以下のステップに沿って実践しましょう。


  • ピープルマネジメントを実施する環境を整える
  • マネジメントの量を改善する
  • 一人ひとり公平な評価基準を定める
  • フィードバックの質を高める


ここでは、ステップごとにやるべきことを詳しく解説します。


STEP1:ピープルマネジメントを実施する環境を整える

ピープルマネジメントを実践するには、目標設定や日常的なコミュニケーションなど、社員一人ひとりと向き合う時間をしっかり確保する必要があります。しかし、マネージャーは自身の業務に加えてこれらの対応も求められ、負担が大きくなりがちです。


そのため、ピープルマネジメントを実施する前に、まずはマネージャーの役割や業務範囲を明確にし、無理なく続けられる仕組みを整えることが重要です。また、ピープルマネジメントを効率的かつ効果的に進められるツール導入も検討しましょう。その他、勉強会や研修を通じてマネジメントスキルを持つ人材を育成し、社員の能力を引き出せる体制を広げていくことも求められます。


STEP2:マネジメントの量を改善する

ピープルマネジメントは、社員一人ひとりの成長や成功にこだわり、組織全体の目標達成につなげていく手法です。1on1ミーティングやフィードバックを定期的に行い、個々としっかり向き合えるようにする必要があります


STEP3:一人ひとり公平な評価基準を定める

評価基準を明確にし、社員の納得感を高めることが大切です。職務内容や部署によって達成すべき目標は異なるため、社員一人ひとりに適した評価項目を設定しましょう。評価項目は明確かつ、誰でも理解しやすい内容に設定する必要があります。


そのため、評価基準を定める際は、具体的な成果や行動を定義することが重要です。また、被評価者の役職やスキルに応じて等級を設け、職務内容や能力に合わせて判断することも求められます。


STEP4:フィードバックの質を高める

ピープルマネジメントは社員の成長や成果を重視するため、マネージャーのフィードバックが非常に重要です。個々の目標や役割を正確に把握したうえで、できていることや改善が必要なことを具体的に伝える必要があります。


フィードバックをする際は行動に焦点を当て、人格や能力などを否定するような言い方は避けるべきです。社員が次にすべきことを理解し、さらに成長できるようなフィードバックが求められます。フィードバックは日常的に行い、リアルタイムで伝えましょう。


また、社員が理解しやすいように伝えるだけでなく、自主性を促すフィードバックができるマネージャーを育てることも欠かせません。事前にマネージャーをはじめとした管理職を集めて、研修を実施する必要があります


ピープルマネジメントを実践する際の5つのポイント

ピープルマネジメントを実施する際は、以下のポイントを押さえましょう。


  • 社員とのコミュニケーションの機会を増やす
  • 評価の公平性を保つ
  • 社員主体の目標設定を行う
  • マネジメント研修を実施する
  • ピープルマネジメントに役立つシステムを導入する


マネージャーは、公平な視点を持ちつつ社員に寄りそう姿勢が求められます。ここでは、それぞれのポイントについて詳しく解説します。


社員とのコミュニケーションの機会を増やす

ピープルマネジメントを成功させるためには、日常的なコミュニケーションの質と量が非常に重要です。定期的な1on1ミーティングや雑談を通じて、社員の悩みやモチベーションの変化を早期に把握することができます。


また、信頼関係の構築にもつながり、心理的安全性が高まることで、社員は意見を出しやすくなり、組織全体のパフォーマンスも向上します。一方通行の指示ではなく、双方向のやり取りを意識することが大切です。


評価の公平性を保つ

ピープルマネジメントは社員一人ひとりと密に向き合うため、個人の感情に左右されやすいのが特徴です。評価において、公平性が課題となるケースも少なくありません。しかし、評価が不公平だと、社員の不満やモチベーション低下を招く恐れがあります。


そのため、ピープルマネジメントにおける評価は従来の「査定」の要素ではなく、成長促進のための「フィードバック」と捉えて実践することが大切です。また、特定の立場の人からの意見にとらわれず、多角的に評価することで自己認識と成長促進が期待できます。「360度評価」であれば幅広い立場からの意見を取り入れるので、客観的で公平性のある評価が可能です。


社員主体の目標設定を行う

ピープルマネジメントにおけるマネージャーの役割は、社員が主体性を持って行動できるようにサポートすることです。従来のトップダウン型の目標設定ではなく、社員自身が関わるボトムアップ型の目標設定を導入することが、ピープルマネジメントの基本となります。一方的に目標を指示せず、社員自身が自分の役割を理解したうえで目指すべきゴールを設定することが大切です。


自分で設定した目標には責任感と意欲が生まれやすく、日々の業務に対する自発性も高まります。マネージャーは目標の方向性や整合性を確認しつつ、社員の成長意欲やキャリアビジョンを理解し、サポートしてあげましょう。


マネジメント研修を実施する

社員それぞれの目標や状態は可視化しにくいため、ピープルマネジメントの成功に向けて、マネージャーには高い能力・スキルが求められます。マネージャーの能力を高まるためにも、ピープルマネジメントの研修は必須です。しかし、従来のマネジメントを実施していれば、自社にノウハウがないかもしれません。従来のマネジメントに慣れているマネージャーが、新しい方法に馴染みにくい可能性もあります。円滑なピープルマネジメントの導入に向け、社外講師による研修もおすすめです。


関連記事:管理職研修の役割・必要性とは?具体的な手順や実施時のポイントを解説


ピープルマネジメントに役立つシステムを導入する

社員一人ひとりの状況やデータを把握するためには、システムの導入が欠かせません。システムで社員のデータを一元管理すると、スムーズなピープルマネジメントを実現できます。また、システムにより主観を省くと、マネージャーは客観的なデータを元にしたフィードバックも可能です。


例えば、システムを導入することで、業務時間の推移やエンゲージメントスコアの分析などができるようになります。おすすめのシステムは、のちほど詳しく解説します。


関連記事:タレントマネジメントシステムの"これだけは外してはいけない"選び方と必要な思考


ピープルマネジメントを実践する際の注意点

ピープルマネジメントでは、公平に社員を評価することがポイントです。社員の言葉に耳を傾ける姿勢は大切ですが、特定の社員に肩入れしすぎてはいけません。マネージャー自身の感情が入りすぎた評価は、不公平な評価につながります。


また、ピープルマネジメントを導入する際は、社内で混乱が起きないよう計画的に進めるべきです。成果や実績を重視する社員にとっては、頑張りを認めてもらえないと思われる可能性があります。「ピープルマネジメントの目的は個人と組織の成長である」と社員に伝え、ピープルマネジメントを浸透させましょう。


ピープルマネジメントに活用できるおすすめのシステム

上述したように、ピープルマネジメントでは、社員の評価を公平に行う必要があります。システムを導入すると、客観性の高いデータを取得できます。データの一元管理と分析には、タレントパレットがおすすめです。


タレントパレットとは?

タレントパレットとは、人材データの一元管理・分析に役立つタレントマネジメントシステムです。ピープルマネジメントだけではなく、人事戦略の意思決定や人材育成などにも活用できます。


タレントパレットには、社員の経歴や適性、評価などのあらゆる人材データが時系列で蓄積されています。社員の希望や考え、日々のモチベーションからエンゲージメントなど、定量化が困難なデータもタレントパレットを使うと分析可能です。


タレントパレットの機能

タレントパレットは「人材の見える化」に活用できます。一元管理されたデータを見ると、マネージャーは社員の経歴や適性などをすぐに把握できます。「人材データ分析」にもタレントパレットは有効です。社員個人のスキルを組織のスキル平均やモデルキャリアプランと比較すると、成長させるべき部分が見えてくるでしょう。


また、タレントパレットにはテキストマイニング機能が搭載されています。社員がよく使うキーワードや社員アンケートの発言傾向などを分析すると、社員のメンタルの状況やエンゲージメントを推測できます。


タレントパレットの詳しい情報はこちら

まとめ

ピープルマネジメントは、社員一人一人と向き合い、目標達成や成長をサポートするマネジメント手法です。従来の手法は成果やパフォーマンスの向上を重要視していましたが、ピープルマネジメントではモチベーションやエンゲージメントなどの精神面も含まれています。しかし、ピープルマネジメントはマネジメント陣のスキルも問われるため、定期的に研修を行うことが大切です。


タレントパレットを導入することで、ピープルマネジメントを効率的に実施できるようになります。アナログでは難しい評価基準の作成も、タレントパレットを使えばデータとして管理することが可能です。また、公平性も保てるため、ピープルマネジメントが成功しやすくなります。


タレントパレットの詳しい情報はこちら