パーパス経営に必要な5つの条件とは?概要や広まった背景・取り組むメリットも解説


パーパス経営に必要な5つの条件とは?概要や広まった背景・取り組むメリットも解説

パーパス経営に取り組む企業が増えています。しかし、MVVとの違いをはじめとして、パーパス経営の概念が分からない人もいるのではないでしょうか。この記事では、パーパス経営に必要な条件や、注目される理由などを解説します。自社のパーパス経営を検討するためにぜひ参考にしてください。

パーパス経営の概念とMVVとの違い

パーパス経営と混同されがちな概念に、「MVV」という言葉があります。この章では、パーパス経営の概念とMVVとの違いについて解説します。まずはパーパス経営について説明しましょう。


パーパス経営の概念

「パーパス(purpose)」は、目的や意図などと訳すことができ、そこから志や存在意義という考え方につながります。「自社は何のために存在するのか」「業務を通じて社員はどのように社会貢献できるか」という問いに対する答えがパーパスです。


パーパス経営とは、企業が社会に対してどのような存在意義がありどのように貢献していくのかをパーパスとして掲げ、そのパーパスを基に経営を行うことです。パーパスを経営の軸にすることで、事業の方向性を決めてより価値のある業務が行えるようになり、さらにステークホルダーの共感を得られやすくなるので経営安定にもつながります。国内でも新たな経営モデルとして注目されており、多くの企業がパーパス経営を取り入れ始めています。


MVVの意味とパーパス経営との違い

MVVとは「Mission(ミッション)・Vision(ビジョン)・Value(バリュー)」の総称です。ミッションとは企業が存在する意味や果たすべき使命、ビジョンは将来なりたい姿や構想、バリューはミッション・バリューを実現するための価値観や行動指針を指します。


MVVの主体は「企業」ですが、パーパス経営の主体は「社会」です。MVVでは社会への貢献を含めなくてよいですが、パーパスは社会にとってどのような存在・価値であるのかを盛り込む必要があります。これまではMVVを重視して経営理念を考える企業がほとんどでしたが、今後はパーパスを中心に検討する企業が増えていくでしょう。


パーパス経営の広まりと日本への影響

2018年にアメリカの投資運用会社ブラックロック社のCEO「ラリー・フィンク」氏は、「パーパスの重要性」を年次書簡で語っています。


2019年には、アメリカの大手経済団体「ビジネス・ラウンドテーブル」の声明が注目されました。「ビジネス・ラウンドテーブル」の声明には、以下の内容が含まれます。


  • 社員に適切な投資を行う
  • 顧客に価値を提供する
  • 会社が所属するコミュニティ(地域社会)への支援を行う など


声明では、株主至上主義から、人と社会を重視する企業活動に方針を変えるべきと訴えられています。株主至上主義では、企業活動において株主の利益獲得が重視される反面、社員や取引先などがしわ寄せを被るかもしれません。企業が成長を続けるには、社会全体の利益を意識した行動が求められます。


これらの動きにより、アメリカ全体で「パーパスのために働く」という意識が高まり、日本にもその考えが広がりつつあります。


パーパス経営の5つの条件

パーパス経営を成り立たせるための5つの条件を解説します。社会貢献のために自社ができることを追究しましょう。


条件1.社員からの賛同を得られること

社員のやる気は、パーパス経営にとって重要です。やる気は社員の生産性を向上させ、企業の成長力や競争力を高めます。リモートワークなどによる環境の変化で、やる気が低迷する社員は少なくありません。パーパス経営で仕事の意義を感じられれば、社員がやる気を取り戻してくれる可能性があります。


仕事への意義を感じられると社員のエンゲージメントが高まり、離職率の低下も見込めます。


条件2.社会貢献できること

社会貢献に関係するビジネスに取り組むと、ステークホルダーからの理解を得やすいと考えられます。ステークホルダーとは株主や取引先をはじめとして、企業と関わりのあるすべての人を指します。社員もステークホルダーの1種です。


社会貢献できるビジネスには、ジェンダー平等やエコを意識した取り組み、労働環境改善などがあげられます。


条件3.現在の事業と関係すること

社会貢献できる可能性があっても、専門外であればステークホルダーの賛同を得られにくいと考えられます。企業にノウハウがなければ、ビジネスが成功する可能性が低いためです。不慣れなビジネスに手を出すよりも、自社の得意なビジネスで社会貢献に取り組みましょう。


パーパス経営では、自社の活動を通じた社会貢献が重要です。自社の事業と関係ないパーパスでは意味がありません。


条件4.実現可能なこと

パーパス経営は、実行することが重要です。企業の規模や資金力、ノウハウなどに応じて現実的な目標を立ててください。小さな目標から成功を積み重ね、徐々に大きな目標を設定しましょう。


条件5.収益が見込めること

パーパス経営の結果業績が傾くと本末転倒です。収益が見込めるビジネスでなければ、ステークホルダーが納得しないだけではなく、社員のエンゲージメントも低下する恐れがあります。短期的には収益を上げられなくても、長期的に見て事業の柱になりそうなビジネスがパーパス経営に適しています。


パーパス経営に注目する企業が増えた5つの理由

理由1.SDGsへの意識が高まっているため

2015年の国連サミットにおいてSDGsが採択されました。SDGsとは、環境問題など社会的な課題に関係する17の目標から成り立っていて、2030年を目処に解決が望まれています。17の目標のなかには、個人が取り組む課題だけではなく、企業が主導すべきことも含まれています。


世間でもSDGsへの関心は高まっており、SDGsは企業が取り組むべき課題として広く認識されるようになりました。パーパス経営に取り組むことで、企業はSDGsを意識していると世間にアピールができます。また、日本政府もSDGsに取り組みサステナビリティな社会を目指すため、様々な取り組みを奨励・実施しています。


理由2.ESG投資に配慮した経営のため

SDGsに注目が集まるにつれ、環境や社会に配慮した経営を行う企業に投資したいと考える人が増えました。ESGとは、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の頭文字です。ESG投資とは、各企業の財務情報に加えて、環境に対する取り組みも重視する投資方法です。


パーパス経営へ取り組むと、環境や社会に配慮する企業であると投資家にアピールできます。


理由3.DXを推進するため

企業によるDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進も、パーパス経営が注目される理由の1つです。DX化を進めるうえで事業の構造や意思決定のプロセスなどを見直せるので、競争優位性の確立が期待できます。


DXではITツールを導入しますが、業務効率化やコスト削減だけが目的ではありません。ITツールを駆使してこれまでにない新しいビジネスモデルを生み出すことこそが、DXの真の目的といえます。そのためには、自社が求められていることや何のために存在しているのかを考え直す必要があります。つまり、パーパスの見直しが必要です。新しいビジネスモデルを生み出すためにも、パーパス経営によって企業の存在意義を見直しましょう。


理由4.ミレニアル世代・Z世代へのアピールのため

パーパス経営に取り組むことによって、ミレニアル世代(1980~1990年代中頃生まれ)やZ世代(1996年以降生まれ)へ「社会や環境への貢献を重視する企業」とアピールができます。


ミレニアル世代やZ世代は、インターネットが整った環境で育っているため、日常的に様々な情報・価値観に触れています。その影響もあり、企業に対して経済的価値だけではなく社会的価値を求める傾向が強いです。また、ミレニアル世代にはバブル崩壊や阪神淡路大震災などの大規模な災害を経験している人が多いため、安心して暮らせる社会を願う気持ちが大きいです。


近年、多くの企業は労働力が不足しています。現在労働人口の多くを占めるミレニアル世代やZ世代へ会社の魅力をアピールすることで、労働力不足の解消が期待できます。


理由5.主体性のある社員を育成するため

急激な技術の発展や新型コロナウイルス感染症の蔓延などを受け、社会は目まぐるしく変化しています。企業の存続のためには、企業の存在意義を明確にして、主体性のある社員を育成しなければなりません。


「何のために働くのか」という企業の回答としてパーパスがあると、社員はさまざまな事態に主体的に対応できます。


パーパス経営へのシフトで得られる5つのメリット

パーパス経営にシフトすることで、ステークホルダーからの信頼獲得や競争力の強化など企業の成長につながるメリットを得られます。この章では、パーパス経営の5つのメリットを解説します。パーパス経営にシフトすることで、会社にどのようなメリットがもたらされるのかご覧ください。


メリット1.ステークホルダーからの信頼獲得

企業を支える多くのステークホルダーからの信頼を得ると、企業成長につながります。社員からの信頼を得ると、エンゲージメントの向上により企業の生産性が向上します。取引先からの信頼を得ると、経営の安定化も可能です。


企業のイメージアップ、就職希望者の増加などもステークホルダーの信頼を得るメリットといえます。


メリット2.意思決定の高速化

企業が1つの物事を決定するためには、複数人の承認が必要です。企業の存在意義が明確であれば、意思決定がスムーズに進みます。また、社員がパーパスを理解していれば、共通の目標に向かって努力するため仕事のクオリティも高まります。


メリット3.競争力の強化

パーパス経営では、自社がどのように社会貢献できるかを考えます。顧客に寄り添う視点が生まれると、顧客の顕在的・潜在的なニーズに気が付けます。顧客のニーズに合う施策を展開し、競争力を強化しましょう。


また、エンゲージメントが高まった社員が主体的に意見を出すと、新たなビジネスモデルが生まれる可能性もあります。


メリット4.社員のエンゲージメント向上

パーパス経営には、社員のエンゲージメントを向上させるメリットがあります。エンゲージメントとは、社員の企業に対する信頼や貢献意欲のことを指します。離職率の低下や仕事へのモチベーション・業績向上に影響することから、近年広く認知されるようになりました。企業がパーパス経営を行うことで、社員は自身の業務が社会貢献につながっていることや働く意味を感じやすくなり、エンゲージメントの向上が期待できます。


メリット5.イノベーションの創出

パーパス経営への取り組みによって社員全員が同じ方向を向いて業務を行えるので、一体感が生まれてアイデアを出しやすい雰囲気が作れます。一体感が生まれることで他人のアイデアを受け入れやすくなったり、柔軟に物事を考えられたりするので、イノベーション創出へとつながるでしょう。さらに、社員のエンゲージメント向上によって、自分から積極的に行動する社員が増えるので、よりイノベーションの創出が期待できます。


パーパス経営の3つの注意点

パーパス経営を行う際は、下記のポイントに注意が必要です。

  • 行動が伴わないパーパスウォッシュの回避
  • 収益を疎かにしない
  • パーパス策定時にターゲットを限定しない


この章では、パーパス経営の注意点について解説します。パーパス経営への取組みを検討している企業の方は、これらのポイントに注意しながら進めていきましょう。


注意点1.行動が伴わない「パーパスウォッシュ」の回避

・元記事を修正・追記する

・パーパスウォッシュが発生してしまう要因として「内容が分かりにくい」「実現可能性が低い」「共感しにくい」など

・パーパス・ウォッシュになっている場合には、顧客や投資家からの評価を得られないとともに、従業員も実態との乖離に対して違和感を抱き、エンゲージメントやモチベーションが低下する可能性がある

・パーパスが飾りにならないように、具体的な行動に落とし込んで実行することを意識する


パーパス・ウォッシュとは、目標こそ立派なものの、中身のない経営手法を指します。パーパス・ウォッシュが起こる原因として、内容の分かりにくさや実現可能性の低さなどが考えられます。そこで、社会貢献を意識した目標を設定した上で、具体的に日々の業務に落とし込み実行していくことが大切です。パーパス・ウォッシュの状態になると、ステークホルダーからの信頼を失ったり社員のエンゲージメント・モチベーションが下がったりする可能性があるので注意しましょう。


注意点2.収益を疎かにしない

企業が事業を続けていくためには、一定の利益を確保しなくてはいけません。社会貢献は重要ですが、あくまでもビジネスなので、パーパス経営に取組みながらも利益を出す必要があります。そのため、パーパスを検討する際には、社会貢献だけではなく事業として継続できるかどうかも併せて考えましょう。その際にステークホルダーの意向も考慮しながら、パーパス経営を進めていくことをおすすめします。


注意点3.パーパス策定時にターゲットを限定しない

パーパスを策定する際に、ターゲットを限定しないようにしましょう。パーパスは、株主や重要顧客など一部のターゲットだけに向けた言葉を並べれば良いのではありません。ターゲットを限定するのではなく、社会全体のことを考えてパーパスを策定し発信していくことが大切です。


パーパス経営へ取り組む4ステップ

パーパス経営に取り組むときは、まずは自社の状況を分析してからパーパスを言語化し、事業・経営計画や普段の業務に落とし込む必要があります。この章では、パーパス経営に取り組むときの4ステップを解説します。これからパーパス経営へ取り組む企業の方は、ぜひ参考にしてください。


ステップ1.自社・ステークホルダーの状況分析を行う

パーパス経営に取り組むときは、最初にステークホルダーや自社の状況を分析しましょう。ステークホルダーの分析は、顧客調査や仕入れ先調査、CSR・SRに関する外部評価機関調査などの調査を行います。自社の現状を把握する代表的な分析方法は、以下の4つです。

  • 3C分析
  • コンピテンシー分析
  • SWOT分析
  • ケイパビリティ分析


どのような投資家や顧客、従業員がいて、どんな評価をされているのかを分析・把握することが大切です。


ステップ2.パーパスを言語化する

自社とステークホルダーの状況分析・把握ができたら、パーパスを言語化していきます。パーパスを言語化していくときは、経営層のみで考える方法と従業員にも参加してもらう2つの方法があります。パーパスを言語化する際に参加人数が多いとまとまりにくくなるため、自社の状況や規模などに合わせて方法を選択しましょう。


パーパスを言語化するときは、以下のポイントを押さえて言葉にしていくことが大切です。

  • 自社の利益につながるか
  • 実現可能なおかつ継続可能か
  • 合理性の有無
  • 社会課題解決につながるか
  • 社員のモチベーション向上につながるか


また、パーパスだけではなくその背景や想いなども言語化し、社員へ伝えるのがおすすめです。背景や想いを伝えることで、社員の理解が得られやすくなるでしょう。


ステップ3.事業・経営計画に反映させる

パーパスを言語化したら、事業・経営計画に反映させます。どのようなビジネスモデル・事業モデルを作っていくのか、パーパスを軸にして検討しましょう。また、事業面だけではなく、組織運営にもパーパスを反映させることが大切です。運営にパーパスを反映させることで、一貫性のある経営へとつながります。


この事業・経営計画へ反映する作業を丁寧に行えば、次のステップである業務への落とし込みがスムーズにできるようになります。


ステップ4.業務へ落とし込む

最終的に、策定したパーパスを日々の業務に落とし込んでいきます。パーパス自体はスケールの大きい内容になるため、日々の業務で意識することが難しいケースが多いです。そのため、なるべく社員が日々業務を行う上でパーパスを意識できるよう、工夫してみましょう。


社員が日々の業務でパーパスを意識できないと、結果として会社全体での体現が難しくなります。社員がパーパスを意識できるよう、上層部から発信するだけではなく、自身で考える機会や時間を与えることも大切です。


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まとめ

パーパス経営とは、「自社がどのように社会貢献できるか」を重視する経営手法です。パーパス経営に取り組むと、ステークホルダーからの信頼を得られるだけではなく、意思決定の高速化や、競争力の強化も見込めます。


パーパス経営に取り組むときは、まず自社・ステークホルダーの状況分析やパーパスの言語化を行い、事業・経営計画へ反映させます。最終的には、日々の業務へ落とし込み、社員がパーパスを意識できるように自身で考える機会や時間を与えることが大切です。


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