リカレント教育って?学び直しで時代の変化に対応できる企業を目指す


リカレント教育って?学び直しで時代の変化に対応できる企業を目指す

リカレント教育は、従業員のスキルアップの方法として注目されています。勤労意欲のアップや生産性向上に役立ちますので、メリットや方法について詳しく解説します。

こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。


リカレント教育とは、従業員のスキルアップの方法のひとつです。企業は従業員のリカレント教育を推進することで勤労意欲のアップや生産性向上を実現できます。


本記事を読めばリカレント教育の効率的な実施方法がわかり、長期的な業績アップにつなげられるでしょう。リカレント教育の概要やメリット、関連する制度などについて解説します。

リカレントとは?

リカレントとは日本語で「繰り返し」や「循環」を意味し、ビジネスでは「社会人の学び直し」を指す言葉です。高校や大学を卒業後、もう一度教育機関に通って新たなスキルや能力を身につけるプロセスを表します。


リカレントは「学び直し」とも訳され、もともとは個人単位での再教育と見なされてきましたが、近年では企業が従業員のリカレントを積極的に推奨するケースが増えています。


一度の学習だけではなく、継続的な学びやスキルのアップデートが必要とされる現代社会において、個人の自己成長につながるリカレントは企業にとっても重要課題です。

リカレント教育が広まった時代背景

リカレント教育はもともと欧米諸国で広まりました。欧米では以前より社会人の生涯教育が当たり前に受け入れられる風土があり、リカレント教育を前提とした人事評価制度を確立している企業が少なくありません。


世界的な流れを受け、日本でも2010年代以降学び直しやリカレント教育の重要性が認識され、生涯学習の一環として取り入れられています。そこで、日本でリカレント教育が浸透した時代背景を見ていきましょう。

平均寿命の延び

時代の変化を語るうえで平均寿命の延びは重要な要素です。平均寿命とともに働く期間も延びています。以下の表は、厚労省が公表している令和元年簡易生命表に基づく日本の平均寿命の推移です。

なお、2040年のデータは国立社会保障・人口問題研究所公表の日本の将来推計人口(平成29年推計)をもとにしています。このように、日本人の平均寿命は1955年以降一貫して上昇をつづけており、人生100年時代も現実に迫っています。


そのため、年金問題が深刻化しています。2019年時点のデータによると、60歳以上の年金支給額は国民年金で55,000円、厚生年金で147,000円です。


夫婦2人の年金を合わせても約200,000円で、一般的な生活費の260,000円には60,000円も届きません。これが年金ギャップです。さらに年金の受給額は今後も段階的に引き下げられる見通しですので、年金ギャップはますます広がるでしょう。


老後の年金不安を解消するためには、生涯現役で働きつづけられるスキルと能力、体力のキープが不可欠です。20代の頃と60代になった現在では、社会で求められる技能が異なります。


1年前に習得した技能さえもめまぐるしい時代の変化の中で陳腐化し、過去の遺物と見なされてしまう時代になっています。将来の年金ギャップを補えるだけの経済力がなければ、早期リタイアの余裕もありません。


こうした流れを受けて広まったのが、リカレント教育です。企業の戦力として長く働くためには、継続的な学びやスキルのアップデートが求められます。個人のスキルや能力の再活用につながるリカレント教育は、企業と従業員双方のメリットが一致した生涯学習の形態と言えるでしょう。

マルチステージ型を求められる時代の到来

企業の第一線で活躍できるのはマルチステージ型の人材です。終身雇用を前提とした企業の採用システムはすでに崩壊し、時代のニーズに合った即戦力が求められます。


ひとつの職務や技能のみを極めた職人肌の人材では求められるスキルの変化に対応できず、職域が狭まってしまうでしょう。生涯賃金の観点で考えても、大きな損失です。今や新卒で企業に就職すれば、一生安泰の時代ではありません。


適切な時期にリカレント教育を実施すればスキルのアップデートや新たなスキル獲得につながり、幅広い業務に対応できるマルチステージ型の人材へと成長できます。起業や独立などライフステージの変化だけでなく、企業内での存在価値を高めるうえでも継続的なリカレント教育が不可欠です。


企業は従業員のリカレント教育を積極的に推進すれば人材の再活用ができ、長期的なスパンでの業績アップ・生産性向上につながります。

目まぐるしい技術革新や情報過多の社会

VUCA(Voltility,Uncertainty,Conmplexly,Ambiguity)は、不確実で先の読めない現代のビジネスを象徴する言葉として定着しました。今後ますます複雑性をきわめ不確定要素が増えていくビジネスの潮流がVUCAという言葉で表されています。


リカレント教育はVUCA時代を乗り切る手段としても有効です。リカレント教育によって、テクノロジーやビジネスのフレームワークなど、時代の変化とともに生じる新たな概念やニーズを吸収し、企業から長期的に求められる人材として成長できます。


企業の視点でもリカレント教育は緊急性の高い課題です。企業が従業員の自発的なリカレント教育を推進することで社内全体の柔軟性が高まり、時代のトレンドを敏感にとらえられる企業風土の土台形成につながります。

リカレント教育と似ている用語を解説

リカレント教育にはいくつかの関連する用語があります。そこで、リカレント教育と意味を混同しやすい生涯学習やリスキリングとの違いを見ていきましょう。

生涯学習

生涯学習とは社会人になっても個人の趣味や教養を深めるカリキュラムです。生涯学習の場合、スポーツやレクリエーションなどビジネス以外の活動が含まれる特徴があります。


リカレント教育も生涯学習のひとつの形態であり、個人の成長やキャリア形成において重要な要素と言えるでしょう。

リスキリング

リスキリングとは企業に勤めながら専門の講座やカリキュラムを活用し、スキルの再構築を目指すプロセスです。企業に所属中の活動である点や教育機関に通わずにスキルを身につける点でリカレント教育とは異なります。


リスキリングもリカレント教育もともに人材のアップデートの面では必須であり、企業内での積極的な推進が必要です。

リカレント教育のサポートだけで終わらない、あらゆる人事データを統合して分析

リカレント教育を効果的に実施するためには、あらゆる人事データを収集・統合し、それに基づいた分析を行うことが重要です。『タレントパレット』の統合プラットフォームを活用し、組織全体のニーズや個人の学習成果を把握すれば、リカレント教育実施後の従業員のスキル適性を一元的に管理できます。


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【個人編】リカレント教育は補助金が使える?制度を紹介

国レベルでリカレント教育が推進されており、個人向けの補助金制度の拡充が進んでいます。個人で利用できるリカレント教育関連の補助金制度を見ていきましょう。

教育訓練給付金

リカレント教育を受けるコストを直接的に補填する制度です。給付金の対象講座を受講した場合、トータルの受講費用の20~70%が給付されます。


対象講座は文部科学省のウェブサイト『マナパス』から検索可能です。

高等職業訓練促進給付金

経済的自立が困難なシングル家庭の世帯主が対象の養成機関で資格を取得する場合、一定の範囲内で受講費用が補填されます。具体的な支給要件は、以下の通りです。


・児童扶養手当の支給を受けているか又は同等の所得水準にあること

・養成機関において1年以上のカリキュラムを修業し、対象資格の取得が見込まれること

・仕事または育児と修業の両立が困難であること※平成25年度入学者から父子家庭も対  象



支給額

月額100,000円 (市町村民税非課税世帯)

月額 70,500円(市町村民税課税世帯)


※養成機関における課程修了までの期間の最後の12ヶ月


月額140,000円(市町村民税非課税世帯)

月額110,500円(市町村民税課税世帯)

支給期間

修業期間の全期間(上限4年)


※令和元年度より、4年以上の課程の履修が必要となる資格を取得する場合、支給期間の上限は4年

キャリアコンサルティング

キャリア形成サポートセンターを利用すれば、専門スタッフによるキャリアカウンセリングを受けられます。在職中の相談も受け付けているため、安定した収入を得ながらセカンドキャリアについての相談が可能です。


また必要に応じて職業適性テストが受けられるため、セカンドキャリアにおいて自分に本当に向いている職種を把握できます。気軽な仕事上の悩み相談としても利用できるでしょう。

【企業編】従業員育成に役立つ支援制度を紹介

企業は従業員のリカレント教育を支援するために、様々な制度を活用できます。そこで、代表的な支援制度について紹介します。

人材開発支援助成金

企業が一定の要件に沿って従業員の資格取得およびスキルアップを継続支援した場合、トレーニングにかかる経費やトレーニング期間中の賃金等の一部を補填する制度です。人材開発支援助成金は対象者によって、以下のコースに分けられます。


・人材育成支援コース

・教育訓練休暇等付与コース

・人への投資促進コース

・事業展開等リスキリング支援コース

・建設労働者認定訓練コース

・建設労働者技能実習コース

・障害者職業能力開発コース

生産性向上支援訓練

企業の生産性向上に直結する要素を6~30時間の範囲内で受講するカリキュラムです。生産管理やIoTクラウド活用、マーケティングを複合的に学べる場を提供することで従業員ひとりあたりの生産性を向上させ、長期的な業績アップに結びつけます。


生産性向上支援訓練のカリキュラムは、以下の通りです。


・生産業務プロセスの改善

・横断的課題

・売上増加

・IT業務改善


また、令和4年度からは中小企業を対象に含めたDX人材育成コースも用意されています。

企業内のキャリアコンサルティング

従業員のキャリア形成を企業内部で支援する取り組みです。従業員の適正配置やキャリアプランの策定、リカレント教育の計画立案などにおいて、専門のコンサルタントが無料で従業員のセカンドキャリアをサポートします。

企業にリカレント教育がもたらすメリットは3つ

企業の視点で見たリカレント教育の主なメリットは、以下の3つです。


・生産性向上

・企業イメージの向上による離職率低下

・人脈の獲得


それぞれ詳しく見ていきましょう。

生産性の向上

従業員が最新の知識やスキルを習得すれば、業務の効率化や品質向上が期待できます。企業担当者が求められるスキルや能力、あるべき人物像を具体的に提示し共有することで従業員のモチベーションが高まり、全体的な生産性向上が可能です。


従業員の意欲を向上させるためにも、企業担当者は時代のトレンドをつねにキャッチするアンテナを立てておきましょう。

離職率の低下と企業イメージの向上

リカレント教育を適切に行うことで企業の社会的評価が高まり、ブランディングにつながります。また従業員に合わせた丁寧なリカレント教育を継続すれば従業員側の評価も高まり、離職率の低下に直結するでしょう。


リカレント教育を通して従業員と適切にコミュニケーションを取れるかどうかが、企業にとって生き残りの重要ポイントです。

リカレント教育研修を通じた人脈の獲得

リカレント教育研修は、従業員同士や他の企業との交流の機会の提供につながるので、新たな人脈やネットワークが広がるでしょう。また人脈の拡大は、さらなるビジネスチャンスの創出や情報共有などに役立ちます。

リカレント教育の注意点は4つ

リカレント教育を実施する際には、以下の4点に注意が必要です。

社内への周知活動を行う

リカレント教育の実施前には、必ず社内への周知活動を徹底しましょう。特に重要なのが目的意識の共有です。


リカレント教育の目的やメリット、実施方法などについて、従業員に対して適切な情報を周知すれば従業員のキャリアアップへのモチベーションが高まるとともに、在職中のリカレント教育受講への不安が取り除けます。社内でのコミュニケーションを活発化し、従業員の関心と参加意欲を高めることが重要です。

働き方の改善を行い学べる環境を作る

リカレント教育を社内に浸透させ、従業員の生産性を全体的に向上させるためには、働き方の改善や学びやすい環境づくりが必要です。柔軟な労働時間制度や学習支援施策の導入など、従業員のキャリアアップをサポートする取り組みを行いましょう。

「学び終えたあと」を考える

リカレント教育はあくまでもキャリアアップのスタートラインであり、ゴールではありません。企業は、従業員がリカレント教育後のキャリアアップを具体的にイメージできるよう、将来的なビジョンについてわかりやすく提示しましょう。すべての従業員がポジティブな将来像をイメージし、企業理念を共有すると理想的なリカレント教育は完結します。

まとめ

リカレント教育は循環や学び直しと訳され、企業や個人にとって社会の変化に対応しつづけるために重要な手法です。企業は各種補助金制度の利用や定期的なアナウンスを通して社内にリカレント教育を浸透させ、従業員の受講をサポートすると生産性向上や離職率低下を実現できます。


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