人事評価エラーを防ぐための具体的な対策とは?評価者に求められるスキルも紹介


人事評価エラーを防ぐための具体的な対策とは?評価者に求められるスキルも紹介

人事評価エラーとは、社員の評価が適切な評価を受けられないことです。職場環境を悪化させ、社員のモチベーションを下げる可能性があるため、早急な対策が必要となります。この記事では、人事評価エラーを防ぐための対策について具体的に解説します。人事評価エラー対策の参考にしてください。

人事評価エラーとは?

人事評価エラーとは、不適切な評価のことです。評価者の心理的状態による錯誤、私的感情の影響などで、適切な評価ができない状態であると、人事評価エラーが起こりやすくなります。社員が正当な評価を受けられないだけでなく、評価者が評価エラーを無意識に行っている点も問題です。評価エラーを防ぐためには対策が必要となります。

人事評価エラーにより想定される影響

人事評価エラーは、不適切な評価を社員に下すため、社内にさまざまな影響を与えます。代表的なものを4つ解説します。

生産性の低下につながる

評価エラーが発生していれば、社員は適切に評価されません。適切に評価されない環境では、社員の不満が高まり続けることになります。モチベーションの低下も避けられないでしょう。頑張ってよい成果を出しても、評価が不適切であれば、生産性を上げることも難しくなります。

信頼関係の低下につながる

評価者のほとんどは上司です。上司が評価エラーを繰り返せば、部下との信頼関係を構築することは難しいでしょう。上司と部下の信頼関係が低下すれば、社内の雰囲気が悪くなります。上司に反抗的な態度をとったり、指示に従わなかったりする社員が増えるかもしれません。この場合、部署やチーム内の関係性も悪化し、全体の意欲低下にもつながります。

離職率が高まる可能性がある

評価エラーを繰り返せば、社員は上司だけではなく、会社への信頼感も失う可能性が高まります。職場環境の改善も期待できなくなるかもしれません。このような環境下では、社員が働きがいを見出せなくなります。働きがいのない会社では離職率が高くなり、人材の流出につながる可能性もあるでしょう。離職率が高まると人手不足に陥り、労働環境がさらに悪化します。

組織の成長の鈍化につながる

人材は適切な評価により成長します。評価エラーによる評価が続けば、もともと優秀な人材であっても、頭角を現すことは難しくなるでしょう。評価エラーは結果として、優秀な人材を埋没させる原因になります。優秀な人材やこれから育つ人材が成長しなければ、企業の成長速度も鈍化し、後退するおそれさえあります。

人事評価エラーの原因と対策

人事評価エラーには原因があります。ここでは人事評価エラーが起こる原因と対策について解説します。 

ハロー効果による評価エラーの対策

ハロー効果による評価エラーは、潜在的な意識が生み出す評価エラーです。明るくて人当たりがよい人に高評価が集まったり、身だしなみの悪さだけで評価を下げられたりすることです。対策方法は、評価者が見た目や印象に左右されず、評価項目に対して誠実に評価することになります。

中心化傾向による評価エラーの対策

中心的傾向による評価エラーは、評価基準によせて当たり障りのない評価をしてしまうことにより発生します。評価者が自分の評価に自信がなかったり、部下の優劣をつけることにためらったりするため起こる現象です。対策方法は、判断基準に基づいて、客観的に評価する訓練を積むことです。訓練を繰り返せば適正な評価ができるようになります。

極端化傾向による評価エラーの対策

極端化傾向による評価エラーは、評価が極端になることです。寛大化傾向と厳格化傾向があるため、詳細は次で解説します。

寛大化傾向による評価エラーの対策

寛大化傾向による評価エラーとは、厳しい評価に対してためらいがあり、ついつい評価が甘くなってしまうことです。評価者としての責任を明確にし、評価能力を高めるための研修を実施する対策が必要となります。

厳格化傾向による評価エラーの対策

厳格化傾向による評価エラーとは、優秀な自分や難関をくぐり抜け出世した優秀な自分と比較することで、評価が厳しくなることです。部下に求める目標やレベルを把握し、適正に評価する訓練を積むことが必要となります。

逆算化傾向による評価エラーの対策

逆算化傾向による評価エラーも、適切な評価とはなりません。逆算化は賞与などの原資を先に決めておきます。その後、相対評価を参考に原資を割り振る形式となるため、適切な評価とはかけ離れたエラー評価となるのです。対策方法としては、まず原資の上限に振り幅をもたせます。次に達成基準を明確にし、評価する仕組みをつくることです。

期末誤差による評価エラーの対策

企業は、期末に決算をするため、期末成果により評価エラーが生じる場合があります。期末誤差とは、期首から期末までの期間で最終月の業績がクローズアップされ、高評価を得ることです。対策方法としては、評価基準を短く区切ることからはじめます。さらに、中間評価を行うなどすれば、適切な評価が可能となります。

論理的誤差による評価エラーの対策

論理的誤差は、評価者の推論が基礎となる評価エラーです。評価者は、出身大学や経緯などから、これまでの傾向を考慮して評価を下します。現場での状況を把握せずに評価する傾向があるため、現場と乖離した評価が下されてしまいます。対策として、評価項目の定量化の策定と評価者の訓練が必要です。

対比誤差による評価エラーの対策

対比誤差による評価エラーも適正な評価基準から逸脱しています。極端化傾向の厳格化傾向による評価に似ていることが特徴です。上司や評価者が会社の基準を用いずに自分自身を基準とするため、不適正で偏った評価となります。対策方法として、評価項目や基準の適正化を設定し、評価者に徹底して周知することが必要です。

人事評価エラーを防ぐためにすべきこと

人事評価エラーは、会社にとって何もよいことはありません。評価エラーを防ぐための施策を8つ解説します。

適切な評価基準を設定する

評価エラーが起こりやすい環境を改善しましょう。評価基準が時期によって異なったり、役員の顔ぶれによって異なったりするような環境では、評価エラーが出やすくなります。また、評価者の裁量に委ねる部分が多いほど、評価エラーが発生しやすくなるため、目標とルールを具体的に設定し、評価基準を明確にする必要があります。

評価基準を共有する

評価基準を設定するためには、評価者間での偏りをなくさなければなりません。評価者全てに評価基準を共有することで、その評価基準がたたき台となって、根拠が明確な新たな評価基準が完成します。社会環境の変化や時期に応じて、評価基準の見直しも必要です。バックオフィスのみで、評価基準を策定することがないように注意しましょう。

評価期間中の行動記録を残す

賞与の評価や昇給、昇格の評価は、評価期間が長くなる傾向があります。特に昇格の評価は、評価期間が非常に長いのが特徴です。適切な評価のために、対象者の行動記録を残すようにしましょう。評価者の記憶だけでは適切な評価とはいえず、評価者が異動すれば引き継ぎも難しくなります。行動記録が残っていれば適正な評価が可能です。

定期的に面談を実施する

定期的に対象者と面談することも、評価エラーを防ぐことに役立ちます。対象者に業務の進捗状況やプロセスを報告させたり、近況を尋ねたりすることは、対象者の状況を把握する上で大切です。進捗状況や近況から目標の達成が難しいとなれば、チーム内でのフォロー指示や目標の見直しを検討することも必要となります。

ほかの項目との関連付けをしない

ほかの項目と関連付けした評価を行えば、評価エラーが発生しやすくなります。たとえば、勤怠評価をする際に対象者の営業成績を関連付けすれば、営業成績がよい対象者は勤怠評価も良くなるということがあります。他の項目の評価は切り離して、対象となる項目を適切に評価することが大切です。

客観的な視点で評価を行う

評価者の中には、普段から気の合う部下に対して、評価が寛大になりやすい傾向をもつタイプがいます。プライベートでも仲のよい部下に対してはなおさらです。公私のけじめがつけられない評価者には、訓練が必要となります。部下を指導し育成する役目を意識して、客観的な視点で、全ての対象者に適切な評価を下す姿勢が大切です。

プロセスも評価を行う

評価者が対象者を評価する場合に重要なのは、プロセスの評価です。結果の評価だけであれば、パソコンやAIの評価で事足ります。結果が基準に満たない対象者であっても、プロセスが評価できれば適正な評価につながります。縁の下の力持ちを評価することも、評価者としての役目です。ただし、評価が偏らないように、複数の評価者の意見も参考にしましょう 。

評価者研修を実施する

適切な評価を下すためには、評価者が評価基準や評価方法などを正確に理解し、これらを遵守した評価を行わなければなりません。そのためには、評価者としてのスキルを身につける必要があります。評価者の研修を実施し、評価エラーの原因や対策を知ることで適切な評価ができるようになれば、評価エラーを防げるでしょう。

評価エラーとは|評価エラーの定義や発生原因・企業に及ぼす影響・対策などを解説!

評価者に求められるスキル

人事評価エラーを未然に防ぎ、適切な評価をするためには、評価者に求められるスキルがいくつかあります。

適切な人事評価をするためのスキル

適切な人事評価を下すためには、評価者が人事評価のスキルを磨くことが大切です。人事評価の目的を理解し、評価基準・評価方法に精通する必要があります。大事な部下の評価を下すのに、適当な評価は下せません。評価エラーが起こる原因や対策まで知見を深めることで、適切な評価ができるようになるでしょう。

フィードバックのスキル

評価者は、評価対象者の評価を下したのち、対象者になぜこの評価となったのかを適切にフィードバックする必要があります。また、フィードバックされた社員が、納得できるような説明も欠かせません。フィードバックのしかたによって、社員のモチベーションを上げたり、下げたりすることになります。

まとめ

人事評価エラーは、多くの社員を失望させるため、企業にとって大きなダメージを与えることになります。社員のモチベーションを下げるだけでなく、優秀な人材が流出することにもなりかねません。
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