ビジョンとは?個人と組織における違いや重要性、活用ポイントを解説


ビジョンとは?個人と組織における違いや重要性、活用ポイントを解説

こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。

ビジネスにおけるビジョンとは、企業の理想の未来像を明文化したものを指します。普遍的で変更の少ない企業理念と比べ、ビジョンは時代の流れに応じて見直されるケースが多いです。
本記事では、個人と組織におけるビジョンの違いとその重要性、ビジョンを策定し社内に浸透させるポイントについてわかりやすく解説します。

ビジョン(vision)とは


ビジョンは、将来の見通しや未来像、理想像などを指す言葉です。ビジネスの場においては、企業が将来に向けてあるべき姿や理想像を明文化したものを指します。社会の流れや環境の変化に合わせて、ビジョンを変更する企業も珍しくありません。似た言葉に「企業理念」があり、こちらは企業が大切にしている考え方や価値観のことです。

企業理念は、経営者や創業者によって策定されたものが多く、普遍的で変わりにくいのが特徴です。一方、ビジョンは時代や環境の変化に合わせて見直され、具体的で変化しやすいという違いがあります。企業理念について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
「企業理念」については、こちらの記事をご確認ください。

個人と組織におけるビジョンの違い

個人のビジョンと組織のビジョンには、違いがあります。個人のビジョンは、個人の価値観や興味関心、情熱などを反映したものです。自分自身の目標や志向、今の価値観をもとに今後どういう自分になりたいか、という将来像に焦点を当てて決めると良いでしょう。

組織のビジョンとは、会社の共通の方向性や目的を指します。企業の内外に示すため、ブランディング戦略として活用されることもあるでしょう。多くの場合、企業活動の中核となる価値観やミッション、社会に対してどう貢献していくかなど、企業の考え方などを反映したものになります。

ミッションとバリューの違い

ビジョンとよく似た言葉に、「ミッション」「バリュー」があります。これらはそれぞれの頭文字を取ってMVVと呼ばれており、3点セットで活用しているケースも少なくありません。

ミッションは企業が何のために存在しているのか、何を目的に事業を行っているかなど、企業の存在意義を表します。よって、頻繁に変更することはありません。バリューは、企業が共有すべき価値観や方針です。バリューは、ミッションやビジョンを実現するための具体的な行動指針や行動規範、手法などをまとめたものといえます。

ミッションは一般的に不変とされていますが、バリューは中長期的な将来像ですから、社会の流れに合わせて変更されることも珍しくありません。バリューを変更した場合、併せてビジョンを変更するケースもあります。

ビジョン、ミッション、バリューは相互に関係し、一体となって構築されます。バリューはビジョンを支える土台となり、ビジョンはミッションを支える土台となるという関係があります。さらに詳しく知りたい方は、こちらの記事をどうぞ。
ビジョンミッションバリュー」については、こちらの記事をご確認ください。

経営管理だけで終わらない、あらゆる人事データを統合して分析

時代は人材情報「管理」から人材情報「活用」へ!
タレントマネジメントシステム『タレントパレット』で、様々な経営課題と向き合えます。

・従業員のあらゆる人材データを一元管理
・社員情報や生産性、満足度など人的資本ダッシュボードを構築
・人材データを自由に掛け合わせて候補者を瞬時に発見
・分析したデータを人事戦略の策定に活用

タレントパレットの資料を見てみたい

ビジョンのビジネスにおける重要性


「どうしてビジョンの設定が必要なのか?」と疑問を抱く方もいるでしょう。ビジョンは社会に対して、どのような未来をもたらすのか広く示すとともに、企業が進むべき道の指針となるため、重要度がの高いといえます。同時に、日々の業務の方向性を示し、従業員の行動や判断の基準としても用いられるものです。詳しく見ていきましょう。

企業が進むべき道の指針となる

ビジョンは、企業の目指す未来像を明確に伝えるものです。ビジョンを掲げると、社内外に対して自社の姿勢や志向を的確に伝えられます。従業員にとっては、ビジョンの存在が「自分が会社で行っている業務がどのような未来をもたらすのか」について考えるきっかけになるでしょう。

未来につながる仕事を担っているという自覚は、業務を行う上でのモチベーションアップにつながります。ビジョンを掲げることで、社外に対しては、投資家の印象が良くなる、顧客からの期待度が高まる、求職者が前向きな印象を抱きやすくなるなどの効果を得られるでしょう。

行動・決断の判断基準となる

ビジョンを掲げると企業の目標や方針が明らかになるため、日々の業務の中で方向性に迷ったときに、行動や判断の基準にできます。

経営判断だけでなく、現場で働く従業員の業務の指針にもなるため、迷うことがありません。例えば、現場で異なる意見が出た場合でも「どちらがよりビジョンに即しているか」という指針で進み方を判断できるため、ビジョンがない場合と比較してより早く的確な判断ができます。具体的なビジョンは、企業全体の一体感を醸成するでしょう。

ビジョンの策定方法

「会社のビジョンをどのように策定したら良いかわからない」という担当者の方もいるでしょう。ここでは、ビジョン策定の方法とポイントを解説します。

会社の価値観を明確にする

自社の歴史を振り返り、これまでの足跡をたどりながら、会社の価値観を明確にしましょう。
会社の創設者や設立目的について調べると、企業として重視すべき点や守るべき原則が見えてきます。

また、「現在会社が社会に対して何を提供しているのか」を改めて確認する必要もあります。現在提供している商品・サービスの価値観や、社会的意義を具体的に定義します。創設者や経営者、経営陣などを中心に、会社に対する想いや今後の展望などをヒアリングしましょう。

社内外の状況を分析する

社内外の状況を分析し、自社の強みや弱み、機会や脅威を把握しましょう。会社の未来を想像することが大切です。自社メンバーやお客様、社外関係者にヒアリングすることも、状況分析に役立ちます。自社メンバーには、会社の良さや課題について聞いてみると良いでしょう。顧客や社外関係者には、「商品やサービスの気に入っている点」や「自社の課題や期待感」などをヒアリングします。

事業環境の分析には、PEST分析やSWOT分析などのツールが役立ちます。

PEST分析の4要素は政治(Political)、経済(Economic)、社会(Social)、技術(Technological)で、これらが自社に与える影響を読み解く手法です。

SWOT分析の4要素はStrengths(強み)、Weaknesses(弱み)、Opportunities(機会)、Threats(脅威)で、自社の外部環境・内部環境を把握できます。自社のリスクや改善点などの発見にも利用されている手法です。

ツールを利用して分析すると、社内外の状況を効率良く把握できます。

ビジョンを言語化する

これまでのステップでまとめた内容を言語化します。ビジョンは具体的でわかりやすく、オリジナリティがあり、他社との差別化を図れるものが望ましいです。メインビジョンだけでは短すぎて、意図がきちんと伝わらないかもしれません。その場合は、ビジョンに副文を付けることで、ビジョンの背景や内容をより明確に伝えられます。

ビジョンを社内に浸透させるポイント

ビジョンを作ったら、社内に浸透させなければなりません。ここでは、浸透させるためのポイントと具体的な方法を解説します。

理解の促進

社内にビジョンを浸透させるためには、従業員が認知し、深く理解することが重要です。経営トップから、全従業員に向けてメッセージを発信してもらうと良いでしょう。一度伝えるだけでは浸透しないため、部署ごとに朝礼などを行い、こまめに周知させることも大切です。

上司から部下に一方的に伝えるよりも、双方向で意見を交わせる参加型のミーティングのほうが、深い理解につながります。ビジョンを伝えて共通認識を持つことを目的に、上司と部下とで1on1ミーティングを行うのも良いでしょう。露出機会を増やし、従業員が何度もビジョンに触れるような機会を設けることが大切です。

共感の喚起

言葉だけで伝えても、従業員全員から理解や共感を得ることは困難です。従業員が納得できるように、ビジョンをストーリーに落とし込んで伝えなければなりません。ビジョンの背景や経営層の思考、顧客への想いなど、従業員が具体的にイメージしやすい内容と併せて伝えて、浸透させましょう。

会社のビジョンを明確にし、より深く理解するために役立つのがビジョンマップです。ビジョンマップは、文字だけでなくイラストや図なども用い、ビジョンを図や表、文字にしてまとめたものです。社内にビジョンを浸透させる際に役立つビジョンマップについて詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
「ビジョンマップ」については、こちらの記事をご確認ください。

具体化・実践の推進

ビジョンは日々の業務に落とし込み、判断軸として利用しなければなりません。人事評価時の評価項目・評価指標とビジョンを連動させると、従業員はビジョンを強く意識するようになります。従業員の意識や日々の業務の中にビジョンを浸透させると、従業員が同じ方向を向いて仕事をするようになるでしょう。これによって、業務に対する迷いや方向性のズレを減らせます。

ビジョンをもとに戦略や行動を展開するアプローチや思考方法が、ビジョンドリブンです。組織全体がビジョンをベースに目標を設定し、行動することを重視した考え方です。ビジョンドリブンについて詳しく知りたい方は、こちらの記事をどうぞ。
「ビジョンドリブン」については、こちらの記事をご確認ください。

協働の促進

ビジョンを体現しているロールモデルを募集し、社内・社外に向けて発信しましょう。1つの部署だけで取り組むのではなく、他部署も巻き込んでインナーブランディング・アウターブランディングを進めると、社内の協働意識の醸成が見込めます。

企業経営で活用するポイント

ビジョンを企業経営で活用するための主なポイントは、以下の5つです。

  • 具体的でわかりやすいものにする
  • 全従業員にビジョンへの参加を促す
  • ビジョンに基づく戦略を策定する
  • 企業文化と統合させる
  • ビジョンを継続的に評価・修正する


詳しく見ていきましょう。

ビジョンを浸透させるためには、具体的でわかりやすいものにしなければなりません。抽象的すぎると、見る人によって解釈が変わるおそれがあるからです。行動指針とするためには、誰が読んでも同じ将来をイメージできるような言葉を選択するべきでしょう。難しい場合は副文をつけると誤解を防げるとともに、具体的なイメージを抱きやすくなるでしょう。

ビジョンは、経営者や役員だけのものではありません。全従業員がビジョンに関与・参加するよう働きかけましょう。それによって従業員の行動や思考の指針となり、業務に対する迷いやブレを減らせます。

ビジョンだけでなく、それに基づく戦略も策定して全従業員に伝えると、行動指針がより具体的になるでしょう。業務の中に落とし込むことによって、各従業員のビジョンに対する理解が深まることが期待できます。

ビジョンを企業文化と統合させましょう。そうすれば、企業全体がビジョンに沿った行動や価値観を持つようになります。社内に一体感が生まれ、強力な基盤となるでしょう。

ビジョンは中長期的な企業の将来像を明文化したものなので、社会や環境が変化した場合は修正や改訂が必要になります。継続してビジョンを評価し、必要な場合は変更を検討しましょう。

企業のビジョン活用事例

「具体的にビジョンをどう業務に活用すれば良いのかよくわからない」という方もいるでしょう。ここでは、企業のビジョン活用事例を3つ紹介します。

note株式会社

デジタルコンテンツの企画や制作などを行うnote株式会社のビジョンは、以下のとおりです。

  • noteがあることで、人々は本当に伝えたいことに専念できるようになる


このビジョンを実現するために、「すべての課題をクリエイティブに解決する必要がある」と考えて取り組んでいます。

ビジョンをより具体的な行動指針に落とし込んだバリューは、以下のとおりです。

  • クリエイター視点で考えよう / Creator First
  • 多様性を後押ししよう / Promote Diversity
  • クリエイティブでいこう / Be Creative
  • つねにリーダーシップを / Leadership
  • すばやく試そう / Try First
  • おおきな視点で考えよう / Think Big


ビジョンをバリューとしてより細かく噛み砕いて具体的に提示することで、行動指針として活用しやすくなっています。

MVVを策定した時の社員は25名、見直したのは70名弱の規模になった時です。従業員数が増えてきたことで、それまでは社内で当たり前だと考えられていたことが、当たり前ではなくなってきたそうです。これまではあえて明文化する必要がなかったことを社内で共有するために、バリューの見直しを行いました。

このように従業員数の増加などの理由で会社の規模や流れが変わり、これまでのビジョンだけでは対応しきれなくなったと感じた時点で、ビジョンの見直しを検討してみても良いでしょう。

PayPay銀行株式会社

ほとんどすべての取引をオンラインで完結できるサービスを提供しているPayPay銀行株式会社のMVVを見てみましょう。

ミッションとして「金融サービスを空気のように身近に」と掲げています。それを実現するためのビジョンは「大切な人に勧めたい銀行になる」です。

ビジョンをさらに具体的な行動指針に落とし込んだバリューは「支持される価値」「何事も自分ごと」「変化を活かす」となっています。

前提として「多くの人に自社の金融サービスを身近に感じて欲しい」という思いがあり、ビジョンはそれを具体的に表したでしょう。

このようにわかりやすく会社の方向性を掲げることで、従業員全員がどこに向かって日々の業務を行えば良いかわかります。PayPay銀行では、従業員が力を合わせて立ち向かい、進化するための方向性を示す「道しるべ」としてビジョンを活用しているのです。

弥生株式会社

ソフトウエア開発をしている弥生株式会社のビジョンは、以下のとおりです。

  • 共有・共生・共創の力を活かし、お客様の事業の立上げと発展の過程で生まれるあらゆるニーズにお応えする「事業コンシェルジュ」


具体的な行動指針となるバリューとして「お客さまの夢のために」「チーム弥生として」「末永いお付き合いを」の3つを掲げています。

弥生はミッション、ビジョン、バリューの言葉の横にそれぞれ以下の言葉を添えています。

  • Mission:弥生の使命/理念
  • Vision:弥生のありたい姿
  • Value:弥生の価値基準/行動指針


従業員の中にはビジョンやバリューといわれても、何のことか具体的にイメージできない人もいるでしょう。それぞれの言葉の隣に日本語で意味を併記することで、それぞれがが何を意味するのか一目でわかります。ミッション、ビジョン、バリューという言葉が社内に浸透していない場合は、弥生のように意味を併記しておくと良いでしょう。

まとめ

ビジョンは、会社の未来像や将来像を表すものです。社内外に浸透させることで、会社の信頼度アップや従業員の行動指針となることが期待できます。

ビジョンを策定するためには、会社の歴史を紐解くとともに、社内外での位置付けなどを再確認することが欠かせません。必要に応じてツールなどを用いて自社分析を行い、ビジョンを明確にしましょう。社内にビジョンを浸透させる方法の一つに、人事評価との連動があります。人事評価と連動させることで、従業員はビジョンを意識し、行動指針とすることができるでしょう。

人事評価に活用できるのが、タレントマネジメントシステムのタレントパレットです。人事評価だけでなく、入退社手続き・人材データ分析・労務管理・異動シミュレーションなど、人事管理に関するすべてを一元管理できます。人事評価システムの変更を検討している方は、ぜひタレントパレットの導入を検討してください。

タレントパレットのHPはこちら