アサーティブコミュニケーションとは?注目される背景や実践方法を紹介


アサーティブコミュニケーションとは?注目される背景や実践方法を紹介

相手の立場や主張を尊重しつつ、適切に自分の意見を伝えることをアサーティブコミュニケーションといいます。特にコミュニケーションに悩む企業から、注目されている手法です。

本記事では、アサーティブコミュニケーションの概要や進め方などを解説します。

こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。


相手の立場や主張を尊重しつつ、適切に自分の意見を伝えることを「アサーティブコミュニケーション」といいます。働き方改革やテレワークの浸透により、コミュニケーション不足が叫ばれる中、ビジネスシーンにおいても注目されている手法です。聞いたことはあるけれど、どのように実施するべきか分からないという方は多いでしょう。


組織やチーム体制を改善したい経営者や人事担当者に向けて、本記事ではアサーティブコミュニケーションの概要や実践するためのステップなどを解説します。社内のコミュニケーションを活性化させて良質な人間関係を構築したい方は、ぜひ参考にしてください。


アサーティブコミュニケーションとは?

アサーティブとは英語で「assertive」と表記され、「自信に満ちた態度の」「積極的な」という意味です。自分の意見に自信を持ち、相手に対して正しく伝えることを指しており、「アサーション(assertion)」と呼ばれることもあります。


なお、アサーティブコミュニケーションは、自分の意見を一方的に押し付けることではありません。相手の意見や立場も配慮しながら、互いに気持ちよく意見を交わすコミュニケーションです。仕事において、アサーティブコミュニケーションで円滑な交流が図れると、良好な人間関係の構築に繋がります。


アサーティブコミュニケーションが企業経営で注目される背景

アサーティブコミュニケーションは、人間関係の構築に悩む方に向けて開発された手法で、その歴史は70年以上になります。古くからある手法ですが、働き方の多様化が求められる昨今、特にビジネスにおいて注目されるようになりました。続いては、その理由として3つの背景を解説します。


上司と部下の良好な関係作りに役立つ​​

社内で上下関係を気にせず、コミュニケーションを取ることが難しいという方も少なくありません。上司が一方的に意見を押し付けると部下は萎縮してしまい、たとえ上司の意見が間違っていたとしても受け入れることしかできないでしょう。反対に部下の反応を気にしすぎて、正しい指導ができないケースもあります。


アサーティブコミュニケーションを意識すると、互いに対等な立場で意見を交わすことが可能です。その結果、上司と部下の良好な関係が構築され、組織全体のコミュニケーションが活性化するため、風通しのよい職場環境が実現します。


メンタルヘルスケアへの注目度の高まり

近年、よりよい職場環境を作るために、メンタルヘルスケアの必要性が高まっています。コミュニケーションがうまく取れず、自分の意見を思うようにいえない環境になれば、ストレスが溜まる一方です。また、自分のキャパシティを超える仕事を抱えたり、モチベーションが下がったりといったリスクも考えられます。


メンタルヘルスケアを意識した職場環境を目指す上で役立つ手法の一つが、アサーティブコミュニケーションです。互いを尊重しあえる環境が整うと、自然に交流が生まれるようになり、ストレス緩和にも繋がります。


チームワーク強化に繋がる

アサーティブコミュニケーションを意識することで、互いを尊重しながら柔軟に意見を交わせる関係が構築されると、従業員同士のチームワークも強化されます。


また、コミュニケーションの活性化によって相互理解が深まると、モチベーション向上にも繋がるでしょう。加えて心理的安全性が確保されるため、自分の意見を臆することなく主張でき、これまでになかった斬新なアイデアが生まれる可能性も高まります。その結果、職場だけでなく組織全体の生産性向上が期待できるでしょう。


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アサーティブではないコミュニケーションの例

アサーティブコミュニケーションをするためには、ノンアサーティブなコミュニケーションについて知ることも大切です。主な方法として、以下の3つが挙げられます。


・攻撃的コミュニケーション

・受身的コミュニケーション

・作為的コミュニケーション


それぞれについて詳しく解説します。


攻撃的コミュニケーション

アサーティブではないコミュニケーションの一つが、相手の意見や立場を無視して、一方的に自分の意見を伝える攻撃的コミュニケーションタイプです。その根底には「相手を自分の思うようにコントロールしたい」という自己中心的な気持ちがあります。意見を伝える能力はありながら、相手を思いやる心が欠けている状態です。


意見を伝えた側は、自分の思いをぶつけられるため心が晴れますが、受け取った相手はあまりの勢いに黙り込んでしまうこともあるでしょう。一見すると、自分の意見が通じて達成感が得られたように見えますが、相手に対する配慮がないため周囲から不信感を持たれてしまいます。


その結果、不快感を募らせた仲間から距離を置かれて孤立する可能性もあるでしょう。


受身的コミュニケーション

対立を避けるあまり相手の反応を気にしすぎて、自分の意見を尊重しない受身的コミュニケーションもノンアサーティブといえます。「嫌われたくない」「傷つきたくない」という自己中心的な気持ちを優先している状態です。また「自分の気持ちを察してほしい」と思っているケースもあるでしょう。


相手の意見を尊重し、受け入れているようにも見えますが、相手の顔色ばかりをうかがって自分の感情を押さえ込んでいます。その結果、不満やストレスが溜まってしまい、対等な関係が築けません。


さらに、相手側ははっきりしない態度に不満が募るため、最も避けていたはずの対立に繋がる可能性があります。


作為的コミュニケーション

作為的コミュニケーションでは攻撃的なタイプと違い、表立って強い主張をすることはありません。しかし、遠回しに意見を伝えたり裏で手を回したりと、陰湿な方法で相手を丸め込んでしまいます。


受身的にも感じられますが、回りくどい方法を使って攻撃をしている状態で「パッシブアグレッシブ(受身的攻撃)」と呼ばれることもあります。攻撃的・受身的と同様に自己中心的な考えが根底にあり、相手をコントロールしたいと思っている点が特徴です。


直接攻撃をすることはありませんが、遠回しな態度が嫌味に感じられてしまい、接しづらいという理由で距離を置かれる可能性があります。


アサーティブコミュニケーションの4つの柱

アサーティブコミュニケーションは、スキルを磨くだけではうまく成り立ちません。大切なのは、相手と向き合う上での意識の持ち方です。以下に挙げる4つの柱が強固であれば、自然なアサーティブコミュニケーションが身につきます。


・誠実

・率直

・対等

・自己責任


それぞれの柱について詳しく解説します。


1.誠実

アサーティブコミュニケーションでは、自分と相手の価値観や意見を尊重することが大切です。意見が食い違った場合でも、誠実な伝え方と言葉選びを意識すれば大きな争いには繋がりません。


また、相手の反応を気にして自分の意見を押さえるのではなく、相手の価値観や考えを聞きながら、自分の考えを丁寧に伝える必要があります。いつでも誠実さを忘れないように行動すると、ノンアサーティブなコミュニケーションを防げるでしょう。


2.率直

アサーティブコミュニケーションでは相手を思いやりつつ、自分の気持ちを率直に伝える必要があります。意見を伝える際の主語は自分自身であり、第三者の意見に置き換えてしまうと相手に意志が伝わりません。また、曖昧な表現をしたり本音を隠したりせず、ストレートな意見を述べるよう心がけましょう。

注意点として、いくら自分を主語にしたとしても、攻撃的な伝え方は逆効果です。聞き手になった際にどう感じるかを踏まえて、相手が受け止めやすい言葉選びをすると、信頼関係の構築に繋がります。

3.対等

企業では上司や部下など立場の違いがあるため、どちらかが優位になりがちです。しかし、アサーティブコミュニケーションをするためには、立場に捉われず対等に意見交換をする必要があります。無暗に上目線で意見を述べたり、反対に自分の意見を曲げたりしないように意識しましょう。


ただし、表面上だけ取り繕って対等に見せても、相手には真意が伝わってしまうものです。その場では交流できたとしても誠実な対応ではないため、わだかまりが残るでしょう。相手を見下したり卑屈になったりせずに、意識を変えていくことも重要です。


4.自己責任

アサーティブコミュニケーションは、いつでも自己責任で行う必要があります。たとえ、コミュニケーションがうまく取れなかったとしても、相手に責任を押し付けるのは間違いです。


やり取りを振り返ることで、自分の発言が攻撃的だったり誠実ではなかったりと、反省点が見えてくることも少なくありません。自分にも責任があることを認めると、相手との関係性を好転させるためのアイデアが生まれやすくなります。


アサーティブコミュニケーション実践の4ステップ(DESC法)

アサーティブコミュニケーションを実践する上で役立つ方法が「DESC法(デスク法)」です。DESC法とは以下の4ステップの頭文字を取った名称で、アメリカの心理学者ゴードン・バウアー氏によって提唱されました。


・Describe(描写)

・Explain(表現)

・Specify(提案)

・Choose(選択)


それぞれのステップについて解説します。


ステップ1.事実を描写する(Describe)

まずは相手に関する状況や行動、客観的な事実だけにフォーカスし、そのままを述べましょう。その際に自分の感情や相手への評価、推測などを踏まえないことがポイントです。主観を交えて伝えると、相手が受け止められない可能性があります。


例えば「あなたはスケジュールを守らなかった」「提出した内容が違っていた」など、あくまで事実を伝えましょう。「あなたはスケジュールを守らなかったから、私を蔑ろにしている」などと感情が入ると事実が薄れてしまい、アサーティブではないコミュニケーションに発展してしまいます。


ステップ2.気持ちを伝える(Explain)

ステップ1で具体的な事実を伝えた上で、自分の主観で意見を伝えます。ただし感情的にならず、攻撃的な伝え方も控えることが大切です。あくまでも対等な関係であることを前提に、相手を思いやりながら率直に述べましょう。


例えば「あなたがスケジュールを守らなかったから、トラブルがあったのではないかと心配になりました」と伝えると、相手に不快な思いを与えずに自分の意見を表現できます。


一方で「あなたがスケジュールを守らなかったから、適当に扱われたと感じた」という伝え方だと、感情的になっていると捉えられ、建設的な会話に繋がりません。


ステップ3.自分が求めるものを提案する(Specify)

適切に自分の気持ちを伝えられたら、相手にしてもらいたいことを提案します。ただし「優しくしてほしい」「大切に扱ってほしい」といった抽象的な表現では、相手に意図が伝わりません。伝え方のポイントは、具体的な行動を提案することです。


例えば「次回からスムーズに業務を進められるように、スケジュールを改善しましょうか」というように、相手も納得できる提案や依頼をするように心がけましょう。その際、命令口調になったり攻撃的になったりせず、誠実さを持って丁寧に伝えることが大切です。


ステップ4.相手の反応に対し行動を示す(Choose)

ステップ3の提案に対する相手の回答を踏まえて、自分の行動を選びます。価値観や考え方は人によって様々であり、必ずしも自分の意見が通るとは限りません。ステップ4では、どのような回答だとしても柔軟に対応することが重要です。


例えば「スケジュールを改善しましょう」という提案に対して、「はい」という返事があれば、相手と一緒にアイデアを出すとよいでしょう。提案が受け入れられなかった場合は、感情的にならずに自分の状況を説明した上で、代替案を提案するのも一つの手段です。


まとめ

アサーティブコミュニケーションが身につくと、立場や関係性を超えて対等な交流ができるようになります。結果的に相互理解が深まり、組織全体の生産性向上も期待できるでしょう。


テクノロジーの進化や多様な働き方が浸透しつつある昨今、従業員の個性を活かしつつ、主体的に働ける環境作りが重要です。そのためには互いを尊重しながら、自分の意見を率直に伝えるアサーテーティブコミュニケーションが求められます。今回紹介した4つの柱や4ステップを参考に、社内で実施してみてはいかがでしょうか。


「タレントパレット」とは様々な人材データを一元管理・分析して、組織力を上げるためのマネジメントシステムです。従業員の健康やストレスの把握、アンケートの実施も可能なため、ノンアサーティブなコミュニケーションが起きていないかを知る上でも役立ちます。


また、サンクスポイント機能を活用すると、日々の感謝を伝えながらコミュニケーションを活性化することが可能です。チームの現状も可視化でき、離職防止やモチベーションを把握する際にも活用できます。


アサーティブコミュニケーションによって、従業員同士の良質な関係性を構築し、生産性の向上を目指している経営者や人事担当者の方は、ぜひタレントパレットのシステムをご活用ください。


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