契約社員とは?正社員との働き方の違いや企業側のメリット/デメリットを解説


契約社員とは?正社員との働き方の違いや企業側のメリット/デメリットを解説

雇用形態の一つとして、「契約社員」を活用する企業は多い状況にあります。また、企業側としても、契約社員は雇用調整がしやすいと考えられがちですが、整理する場合も気を付けなければ労働基準法違反となってしまう点も否定できません。
では、企業は契約社員に対して、どのような対応を行うべきなのでしょうか。
この記事では、契約社員と正社員の違いやメリットデメリット、法律にもとづいた契約や雇い止めの注意点についてみていきましょう。

こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。

雇用形態の一つとして、「契約社員」を活用する企業は多い状況にあります。また、企業側としても、契約社員は雇用調整がしやすいと考えられがちですが、整理する場合も気を付けなければ労働基準法違反となってしまう点も否定できません。

では、企業は契約社員に対して、どのような対応を行うべきなのでしょうか。

この記事では、契約社員と正社員の違いやメリットデメリット、法律にもとづいた契約や雇い止めの注意点についてみていきましょう。

契約社員とは?

契約社員とは、雇用期間に定めのある雇用契約を締結している労働者のことです。臨時的な業務が発生した、繁忙期に人員を増やしたい、代替要員が必要なタイミングなどに役立つ雇用形態といえるでしょう。

正社員の解雇については、法律上さまざまな制限が設けられています。しかし、契約社員は、数ヵ月や一年などの契約期間満了時には、雇用契約の解消が可能です。

企業の経営状況にあわせて採用したり、雇い止めを行ったりができるため、経営リスクを抑えられるでしょう。

一方で、契約社員は弱い立場になりがちなため、雇用期間や契約内容などについては、さまざまな規制が存在します。契約社員を雇用する企業は、雇用に関連する法律について正しく理解し、適切な対応をとることが重要です。

雇用形態の違いはあるものの、法律やルールに則った処理でなければ、企業が罰則を受けることになってしまいます。

正社員や契約社員など、雇用形態について詳しく知りたい方はこちらの記事を参照してみましょう。
「雇用形態」については、こちらの記事をご確認ください。

正社員と契約社員の働き方の違い



ここでは、正社員と契約社員の違いについて解説します。パートと契約社員の違いについては、以下の記事を参考にしてみましょう
「契約社員パート違い」については、こちらの記事をご確認ください。

雇用期間

雇用期間の長さは明確に違います。正社員は雇用期間に定めがなく、定年まで雇用されることが前提です。一方、契約社員は、最長3年の有期雇用契約で、期間満了とともに雇用契約を解消することが前提の働き方といえるでしょう。

契約期間が3年以内であれば、企業は労働者との合意のもとで、自由に雇用期間を決めることができます。しかし、企業の一方的な都合により、短い期間の更新を繰り返す契約であれば法律で規制されているため、注意が必要です。

契約社員の不利益にも配慮しつつ、繁忙期や臨時業務が必要な期間に限り、契約を締結することが望ましいでしょう。

給与・福利厚生

正社員と契約社員の違いは、給与や福利厚生などの処遇全般です。正社員の給与は月給+賞与がベースとなり、昇給や昇格があるのが一般的となります。

一方、契約社員は、時給・月給・年俸制などさまざまな給与形態がありますが、昇給や賞与は、支給されないケースが多いです。

また、社会保険や年次有給休暇などの福利厚生は、契約社員も正社員と同じように支給されます。しかし、家族手当・住宅手当・特別休暇などの企業独自の福利厚生は、正社員に限定されていることも少なくありません。

そのため、人材採用・採用後のコストをトータルで考えた場合、契約社員のほうが正社員より処遇を低く抑えられるでしょう。ただし、退職によって労働力が失われるため、契約社員ばかりでは職場の雰囲気も悪化する可能性があります。

仕事内容

仕事内容についても違いがあるケースも少なくありません。日本における正社員の多くは、雇用期間だけでなく、職種や業務内容、所属する組織などは企業の裁量で決定されます。

対して、契約社員が雇用契約で定められた仕事以外を担うことは、基本的にはありません。雇用契約で定められた業務以外を任せてしまうと、契約違反となり、正社員と実質的に同じ業務であるとみなされる可能性があります。

また、正社員と同じ働き方であるとみなされた場合、契約期間満了に伴う雇い止めが難しくなったり、正社員との賃金差が問題になったりするリスクも常に考えておかなければなりません。

契約社員を雇用するメリット

ここでは、企業が契約社員を雇用する3つのメリットについてみていきましょう。大きく分けて以下のようなメリットがあります。

・雇用調整がしやすい
・人件費が抑えられる
・教育費用が抑えられる

1つ目のメリットは、雇用調整がしやすい点です。日本において、正社員の解雇は法律で厳しく制限されています。そのため、正社員の能力が不足している場合や企業の経営状況が悪化した場合でも簡単には正社員を解雇できません。

しかし、契約社員は雇用期間が定められていることから、契約期間の満了時には、問題なく雇用契約を解消できます。

2つ目のメリットは、人件費が抑えられる点です。契約社員は、賞与・昇給など企業独自の福利厚生の対象外となるケースが多いため、人件費を低く抑えられる可能性があります。

加えて、ITの分野や士業など、高度な専門スキルを必要とする契約社員を雇用する場合には、市場価値に応じた報酬が必要です。そのため採用の段階で雇用形態に準じてシミュレーションを行うことをおすすめします。

3つ目のメリットは、教育費が抑えられることです。契約社員は、数カ月や一年などの一定期間のみの雇用であるため、長期的に育成を行う必要性は高くありません。一般的には、契約社員は、即戦力として採用されることが多いため、すでに業務に必要なスキルを持っているケースも多いでしょう。

契約社員のメリットに関してより詳しく知りたい方はこちらの記事を参考にご覧ください。
「契約社員メリット」については、こちらの記事をご確認ください。

契約社員を雇用するデメリット

ここからは、企業が契約社員を雇用する以下、3つのデメリットについてみていきましょう。

・契約期間中の解雇は簡単ではない
・仕事内容に制限がある
・人材確保が難しい

1つ目のデメリットは、契約期間中において、正社員と同じく簡単には解雇ができない点です。契約社員は契約期間中の解雇は法律で厳しく制限されています。

結論からいうと、契約社員の契約期間中の解雇は、正社員を解雇するよりも難しいでしょう。そのため、企業は採用段階で、しっかりと契約社員の能力やスキルを見極めて、適切な期間で雇用契約を締結することが重要となります。

2つ目のデメリットは、仕事内容が制限される点です。正社員であれば、長期スパンでの業務や臨時的に発生する業務を任せることができます。

しかし、契約社員は雇用契約で定められた業務しか任せることができません。契約外の業務を任せることは契約違反となります。正社員と変わらない業務を行っていたと判断された場合には雇い止めが難しくなる可能性もあるでしょう。

3つ目のデメリットは、長期的に人材を確保しづらい点です。従業員側からすれば、契約更新を前提に契約社員を雇用していても、期間満了時に更新を断られてしまう可能性があります。

また、正社員への転職や仕事が合わないなど、自己都合で辞められてしまうケースもあることから企業にとっては、安定的な人材確保が難しいといえるでしょう。

契約社員を雇用する際の注意点



ここでは、契約社員を雇用する際の注意点について解説します。雇用期間や更新回数など、制限があるため正しい知識を身に着け、想定外の法令違反につながらないように注意しましょう。

雇用契約期間は3年が上限

1つ目の注意点は、有期労働契約は原則3年が上限です。高度な専門スキルを有する労働者や定年後の雇用継続者なども5年が上限となります。

上限期間を超えて契約を締結できないことから、短期間や臨時的な業務に限って雇用する必要があるでしょう。

また、雇用期間には下限はありません。必要以上に契約期間を細切れにしないように配慮することが労働契約法で定められています。

例えば、短期間の契約更新を繰り返したり、突然雇い止めを行ったりした場合は法令違反となり裁判となる可能性も否定できません。労働者に配慮して契約期間を設定しましょう。

雇用期間が通算5年超なら無期労働契約に転換が必要

2つ目の注意点は、契約社員の雇用期間が通算5年超になると、無期労働契約に転換しなければならないケースがあることです。労働契約法第18条で定められていることから、労働者が無期転換の申込権を行使した場合、雇用主はそれを断ることができません。

例えば、契約期間が一年であった場合に、5回目の契約更新後の一年間に、無期転換の申込権が発生することになるでしょう。

また、契約期間が3年の場合、1回目の契約更新後の3年間に無期転換の申込権が発生します。契約期間を設定する際は、これらの上限を把握することが重要ですが、転換の直前で雇い止めを行うのは法律的、社会的信用的にも望ましくありません。

契約締結後は、契約期間の変更や更新上限を設ける行為が認められない可能性もあるため、注意しましょう。ただし、年収が1075万円以上あり、一定の条件を満たした場合は、無期転換ルールの適用を除外できます。

対象者としては、医師やIT技術者などの高度専門職や定年後の雇用継続者が挙げられるでしょう。

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契約社員を解雇・雇い止めする際の注意点

ここからは、契約社員を解雇・雇い止めする際の注意点についてみていきましょう。期間満了に伴う雇い止めであっても、一定の条件下では認められない可能性もあるため、法律を正しく理解しておくことが大切です。

また、契約社員の能力不足を理由に契約更新を行わないといった場合は、こちらの記事を参照してみましょう。
「契約社員更新しない能力不足」については、こちらの記事をご確認ください。

契約期間中の解雇は原則不可

1つ目の注意点は、契約期間中の解雇が原則不可という点です。労働契約法第17条では、期間に定めのある労働契約については、やむを得ない事情がなければ原則解雇できないと定められています。

会社の経営状況が悪化した場合や契約社員の能力不足の場合でも、多くの判例では、契約期間中の解雇は認められていません。

契約期間中の解雇が認められた事例として、労働者が年齢を虚偽申告していた、無断欠勤が続く、顧客や同僚への暴力暴言などのケースがあります。正社員と同様に、このような著しい問題がなければ、契約期間中の解雇は難しいため、しっかりと適性を見極めて契約社員を採用することが重要です。

契約を更新しない場合は30日前までの予告が必要

2つ目の注意点として、過去に3回以上の契約更新を行っている場合や、通算一年を超える労働契約を締結している場合、契約を更新しない場合の予告義務が必要です。次回の契約更新を行わないときは、30日前までに契約社員に予告する必要があります。

30日前までに予告をすることで、労働者が退職するまでに次の仕事を見つけやすくなり、労働者の雇用を守ることにつながるといえるでしょう。

また、労働者から契約を更新しない理由について求められた場合には、雇用主はその理由を開示しなければなりません。

契約を更新しない理由については、契約期間満了以外のものにする必要があり、厚生労働省の「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準について」によると以下のとおりです。

  • 前回の契約更新時に、 本契約を更新しないことが合意されていたため
  • 契約締結当初から、 更新回数の上限を設けており、 本契約は当該上限に係るものであるため
  • 担当していた業務が終了・中止したため
  • 事業縮小のため
  • 業務を遂行する能力が十分ではないと認められるため
  • 職務命令に対する違反行為をしたこと、 無断欠勤をしたこと等勤務不良のため


無期労働契約の解消とみなされる場合は雇い止め不可

3つ目の注意点は、無期労働契約の解消とみなされると、期間満了に伴う雇い止めができない可能性があります。

労働契約法第19条によって、「過去に反復更新された有期労働契約で、その雇い止めが無期労働契約の解雇と社会通念上同視できると認められるもの」は、合理的な理由がなければ雇い止めできません。加えて、従前と同一の労働条件で契約更新する必要があると定められています。

無期労働契約とみなされる場合とは、厚生労働省の「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準について」によると、以下のような例が該当します。

  • 過去に反復更新されている
  • 業務の内容が恒常的である
  • 契約更新の手続きが形式的なものになっている
  • 同様の地位にある契約社員の雇い止めを過去に行っていない


上記のような状況にある労働者は、客観的に見て正社員と大きく変わらないとみなされます。期間満了に伴う雇い止めが認められるためには、以下のような対策が有効です。

  • 契約期間や更新の上限、更新基準を明示しておく
  • 臨時的な業務に限定する
  • 契約更新手続きは、面談を設けるなど丁寧に行う
  • 同様の地位にある契約社員間で差別的な取り扱いをしない


労働契約の更新が期待できる場合は雇い止め不可

4つ目の注意点は、労働者が契約更新を期待できる状況においては、雇い止めが認められない可能性があります。例えば、次のような状況であれば、有期労働契約が更新されるものと期待できると判断されるでしょう。

・雇用主から契約更新を期待させるような言動がある
・業務の内容が恒常的で、更新回数が多い

基本的に企業としては、防ぐ必要のある状況であることから、マネジメント層には周知・教育を促しましょう。そして、業務内容を臨時的なものに限定し、契約期間や更新回数について明示しておくことが重要です。

まとめ

契約社員は、企業にとって雇用調整しやすい、人件費が抑えられるなど多くのメリットを持つ雇用形態です。しかし、期間や雇い止めについては、さまざまな規制があるため、正しい知識を身につけて対応していく必要があります。

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