こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。
「人材育成方法を見直したいけど、どのように改善したら良いかわからない」「本当に効果のある人材育成方法が知りたい」「人事部の業務量が多く、人材育成に割ける時間が限られてしまう」自社の人材育成において、このようなお悩みをお持ちの方は多いのではないでしょうか。
新卒や中途にかかわらず、社員が業務に馴染み始めた頃に離職してしまう状況が続いています。2021年に厚生労働省が実施した調査では、3年以内に離職した社員の割合が3割を超えていることがわかりました。社員に長年勤務してもらうためには、社内の環境を整備するだけでなく、適切に人材育成することが重要です。
そこで本記事では、人材育成における重要な考え方を解説します。人材育成の計画から実践までを、円滑に行う方法がわかる内容になっているので、ぜひ最後までお読みください。
人材育成とは
人材育成とは、社員を企業の事業発展に貢献できる戦力として成長させることです。人手不足で悩んでいる企業において、人材育成は社員一人ひとりのパフォーマンスを向上するために必要な業務です。人材育成と似た言葉に「人材教育」と「人材開発」があり、それぞれ意味が違います。以下で詳しく解説します。
人材教育との違い
人材教育とは、社会人に必要なスキルや知識を教えることです。一般的に新入社員や中途社員に対して実施され、社会や組織の一員としての基礎を教えます。事業の発展を担う戦力を目指すスタートとなる部分であることから、人材教育は人材育成のプロセスに含まれます。
人材開発との違い
人材開発とは、主に社員が持っている能力の開花を支援することです。人材育成は主に新しい知識やスキルを身につけることで、人材開発とは区別されています。人材育成は、役職や階層ごとにおこなうのが一般的ですが、人材開発の対象は全社員で、それぞれの能力の最大化を目指して個別にサポートします。
人材育成の必要性・目的とは
人材育成は、企業の成長戦略のひとつとして重要な取り組みです。ここでは、人材育成が必要とされる理由について解説します。
社員の成長を促すため
自社の発展に継続的に貢献できる人材を育成するには、役職に合った知識と技術を身につけてもらう必要があります。業務を通じて能力を開花させるだけではなく、新たなスキルを身につけてもらうことも重要です。また、人材育成は指導者側にも大きなメリットがあります。適切に実施すれば、指導者自身も成長できることに加え、協力し合う社内風土を構築できます。
生産性を向上させるため
少子高齢化が進み、労働人口が減少し続けるなか、企業は限られた人員で売り上げや業績を維持しなければなりません。そのため、個々の社員のスキルや知識を高めていく必要があります。人材育成により、作業効率や生産性の向上が期待できます。
社員の離職を防ぐため
人材育成は、社員の知識やスキルなどを高めて、企業の発展に貢献できるように成長させることを目的としています。人材育成によって成長した社員は、自分が会社の戦力であることを自覚して、仕事に対するモチベーションが向上します。会社の理念への共感も深まることで、転職や離職を防げるでしょう。
人材育成の考え方7選
ここでは、人材育成を実施する上で重要な7つの考え方を紹介します。
- 目標を明確にする
- 体系的な制度を構築する
- 社員の主体性を養う
- 社員のモチベーション管理をする
- 実践の機会を与える
- セカンドチャンスを与える
- 適切なフィードバック・評価をする
人材育成は、企業発展に関わる戦略の一つです。考え方が誤っていると人材が育たず、自社の発展を妨げることになるでしょう。人材育成の考え方は、普段の業務を遂行する際にも役立つので、ぜひ参考にしてみてください。
目標を明確にする
人材育成の目標は、明確でなければなりません。なぜなら、自社が理想とする人材像がわからないと、適切な育成計画が立てられないからです。目標設定には「SMART」というフレームワークを利用するのがおすすめです。
- Specific(具体的に)
- Measurable(測定可能な)
- Achievable(達成可能な)
- Related(経営戦略に関連した)
- Time-bound(時間制約がある)
SMARTを使用すると「半年後までに会社の売上を10%上げる」など、誰が見ても理解できる目標が作れるようになります。社員が達成可能かつ経営戦略に関わる目標を掲げ、部署ごとに必要な取り組みをを明確にしましょう。
体系的な制度を構築する
人材育成を継続して行うには、体系的な研修制度を構築する必要があります。社員が一体となり、会社全体を発展させていくために、以下の制度の導入を検討してみましょう。
- メンター制度
- 目標管理制度
- コーチングセッション制度
- ジョブローテーション制度
制度を取り入れ、社員同士が助け合う機会を増やしましょう。円滑にコミュニケーションが取れるようになれば、団結力が高まります。社員同士が協力できるようになるため、人材育成の効率が高まるでしょう
社員の主体性を養う
人材育成は、社員一人ひとりが主体的に行動することを促す機会になります。主体性は、業務品質を高めるために必要な要素です。たとえ、どれだけ質の高い研修を実施したとしても、社員自らが考えて行動できなければ、育成の意味がなくなってしまいます。
しかし人材育成を、指導者の指示に従う期間と考えている社員もいるでしょう。社員が受け身だと、決められたことだけをやる人材になってしまう可能性があります。「自分はどうすべきなのか」と、育成対象者に考える機会を与えましょう。役割が決められていなくても、自分で考え行動を起こせる社員を生み出すのが、人材育成の役割です。
社員のモチベーション管理をする
新しい業務を教えたり業務品質向上のために働きかけたりする際は、育成対象者のモチベーションを高めることが重要です。モチベーションは、以下の2つの要因によって高まると言われています。
- 内発的動機
- 外発的動機
内発的動機とは、好奇心や探究心など、自身の内側から生まれる、仕事へのモチベーションです。自身で行動することが目的になるため、長期間モチベーションを高く保てます。
外発的動機とは、報酬や評価など、外部からの刺激により生まれるモチベーションです。適切にフィードバックをすれば、短期間でモチベーションを高めることが可能です。人材育成では、社員のモチベーションを保つために、フィードバックを与えるなどの工夫をしましょう。外発的動機は社員の自信につながり、結果として内発的動機を生むきっかけになるでしょう。
実践の機会を与える
自社が求める人材に成長してもらうためには、実践の機会を与えるのが効果的です。知識が備わっていたとしても、実務で活かせなければ意味がありません。業務を与えることで必要な知識や能力を体験を通して学べるため、社員自身の成長が早まります。実務の機会を与える際は、社員の能力を上回る課題を与えるのがおすすめです。
たとえば、営業部門なら社員に実際にセールスさせてみてもよいでしょう。判断の難しい局面に遭遇するほど、社員の決断力の質が向上していきます。「難しい局面を乗り越えられた」という達成感は、社員の自信につながるでしょう。
セカンドチャンスを与える
新入社員にとって失敗はつきものです。社員が失敗した際は叱責するのではなく、改善策を一緒に考え、セカンドチャンスを与えましょう。失敗が許されない環境では、社員の決断力や行動力を養えません。失敗から得た学びを活かせるように、セカンドチャンスを与えて成長を促しましょう。
適切なフィードバック・評価をする
育成対象者に対して、適切なフィードバックをするようにしましょう。前向きなフィードバックは、社員のモチベーションを高められるきっかけになります。また、フィードバックする際に会社が求めている人物像を伝えることも重要です。必要なスキルや考え方など、細かくフィードバックをすると、社員は自身の課題を把握できます。
反対に、不公平な評価を与えたり的外れなアドバイスをしたりすると、悪影響を及ぼします。社員のモチベーションが下がる原因になるため、注意が必要です。社員の課題を把握した上でフィードバックを行い、モチベーションを向上させましょう。
人材育成の具体的な手法5選
人材育成には、さまざまな手法があります。ここでは5つの主な手法について解説します。
OJT
OJTとは「On the Job Training」の略で、実際の職場や現場で業務を習得させる育成手法です。上司や先輩社員が指導役として、新入社員や若手社員に知識・スキルなどの実務を教えます。営業や接客、作業などを学ばせるために、企業の多くが制度化しています。
Off-JT
Off-JTとは「Off the Job Training」の略で、通常の業務や職場を離れて、知識やスキルを学ばせる育成手法です。専門的な技術を身につける研修、ビジネススキルを学ぶ研修、能力開発セミナーなどを集中的に受講します。e-ラーニングやオンラインセミナーを活用する場合もあります。
メンター制度
メンター(Mentor)は「相談者」「助言者」という意味の用語です。メンター制度とは、先輩社員(メンター)が新入社員や後輩社員(メンティ)をサポートし、成長を促す育成手法です。メンターは、メンティの悩みや不安の相談に乗ったり助言をしたりします。業務に関わる指導をするOJTとは異なり、精神面での支援をするのが、メンター制度の目的です。
自己啓発
自己啓発とは、社員が自らの意思で業務に必要なスキルや知識を学ぶ取り組みです。「Self-Development」を略してSDとも呼ばれます。書籍や通信講座、社内の勉強会、外部セミナーなどを利用して、自分自身のために学びます。書籍費用や受講費用の補助、資格取得に手当を支給する企業もあります。
ジョブローテーション
ジョブローテーション制度とは、定期的に社員の配置転換を実施する育成手法です。部署の異動や多様な業務経験により、自社の業務全体への理解が深まります。ジョブローテーションは、昇格や降格、出向、転籍といった一般的な人事異動とは異なり、社員の能力開発や教育を目的としています。
人材育成を導入する手順5ステップ
人材育成は、社員にとって新しい業務に必要な知識や能力を習得する機会です。ここでは、人材育成を円滑に行うための導入手順について解説します。
- 現状の課題を分析する
- スキルマップを作成する
- 会社が求める人材像を決定する
- 人材育成を実施する
- 効果測定をする
人材育成は、新入社員が出勤する1日目から始まっています。育成に注力すれば、社員は業務に必要な知識やスキルを把握できます。研修は、新入社員が会社に馴染むためにも効果的です。人材育成を正しい手順に沿って実施することで、社員の生産性向上も目指せるため、ぜひ参考にしてください。
現状の課題を分析する
人材育成は、自社の課題解決や今後の発展に貢献できる人材を育てるために行うのが前提です。今後の事業発展に貢献できる社員を育てるために、まずは現状分析をしてください。経営戦略や組織の課題を把握し、人材育成に反映させましょう。
課題が不透明なままでは、育成自体の質が下がってしまいます。課題を明確にした上で、次のステップに進むようにしましょう。
スキルマップを作成する
課題を分析・把握できたら、スキルマップを作成しましょう。スキルマップとは、各社員が有する能力の一覧表です。自社の課題を解決するために、社員に身につけてもらいたいスキルを洗い出すのに役立ちます。
スキルマップを効率的に作成するなら、弊社が提供している「タレントパレット」の導入をご検討ください。チェックシートに回答するだけでスキルをデータ化し、一括管理ができます。人材育成の計画を作成する際に役立つだけではなく、評価もしやすくなります。ぜひお気軽にお問合せください。
会社が求める人材像を決定する
スキルマップを作成したら、自社が求める理想像を設定します。人材育成は長期的に行うため、数年後の社員の理想像を決めることをおすすめします。社員に会社の期待する能力をわかってもらうために、求める人材像を開示しておきましょう。人材育成の方向性を社員に伝えられます。
理想像とあわせて、必要な知識やスキルも伝えておくと、社員が行動しやすくなります。社員が適切に行動できるように、目指すべき姿を明確にしましょう。
人材育成を実施する
理想の社員像が決定したら、研修内容を計画して人材育成を実施します。自社の目標を達成するために必要なスキルの習得を計画に落とし込みます。人材育成の内容を具体化する際は、社員の成長が見込めるプログラムになっているか確認しましょう。
一度に多くのスキルの上達を要求すると、社員にプレッシャーがかかってしまいます。結果として、業務におけるミスの原因になるだけではなく、社員のモチベーションの低下にもつながるでしょう。育成者は社員の能力を把握し、無理のない内容の計画を作成し、実行することが重要です。
効果測定をする
人材育成を開始したら、定期的に効果測定をしましょう。育成対象者が、自社の求める人材像に近づいているかを確認できます。人材育成は、順調に成果がみられる場合もあれば、うまくいかない場合もあります。効果測定をする際は、成果の要因も分析をすることが重要です。
売上高などの数値で表せるデータだけではなく、社員のモチベーションなどの定性的なデータも収集しましょう。複数の要素を掛け合わせることで、効果測定の精度が上がります。測定結果をもとに、今後の人材育成計画を改善しましょう。人材データベースを用いて社員を管理する方法について詳しく知りたい方は、別記事「人材データベース」をあわせてご確認ください。
人材育成に役立つフレームワーク3選
人材育成を計画する際は、社員を成長させることに特化した、以下のようなフレームワークを使いましょう。
- ギャップ分析
- 経験学習モデル
- 7:2:1の法則
効果を実感できる人材育成計画を作成したい方は、ぜひ参考にしてみてください。
ギャップ分析
ギャップ分析とは、目標と現状の間(ギャップ)を埋めるために必要なアクションを洗い出すフレームワークです。企業の経営課題の解決や戦略の立案にしばしば使われます。人材育成では、社員のあるべき姿と現状のギャップをなくす方法を考える際に役立ちます。重要なのは、ギャップを埋める(課題を解決する)ためのアクションを多く出すことです。
例えば、社員のリーダーシップが理想のレベルに達していない場合、以下のようなアクションが考えられます。
- 他の社員からの意見や提案を聞き入れる姿勢を示す
- 他の社員の満足感を向上させるために感謝を伝える
- 的確な意思決定をするために明確な基準を設ける
社員の能力を考慮し、アクションを決めるとよいでしょう。
経験学習モデル
経験学習モデルは実務から学んで改善策を実行する手順をフレームワーク化したものです。以下の4つの手順を繰り返します。
- 具体的経験
- 内省
- 概念化・抽象化
- 実践
例えば、以下のような研修内容が考えられます。
具体的経験 | 営業先に同行させて商材を提案させる |
内省 | 営業での言葉遣いが課題と気づく |
概念化・抽象化 | 営業以外の業務でも言葉遣いに気をつける |
実践 | 丁寧な言葉遣いで適切に訴求する |
内省や概念化・抽象化の過程では、社員同士で意見を共有できるようにグループ研修を実施するのがおすすめです。他の社員の業務を理解できるだけではなく、他社の意見を取り入れる機会になります。また、社員が気づいていない課題を明確にできるように、育成を担当する方はフィードバックしましょう。
7:2:1の法則
7:2:1の法則とは、人の成長のどのような機会が役立ったかを基に作成されたフレームワークです。人材育成では、以下の割合で社員に学びの場を提供するのが好ましいとされています。
- 7割:実務経験
- 2割:先輩・上司からのアドバイス
- 1割:研修・読書
つまり、経験を積ませる機会を多く設けることが重要ということです。ただし、経験だけでは人材育成ができません。実務経験や外部からの刺激が相互に作用し合うからこそ、効率的に人材育成できるのです。業務を経験させつつ、適切な割合でアドバイスしたり研修したりすることで、社員の成長を促せます。
7割を占める実務経験と2割を占める先輩・上司からのアドバイスは、OJTに組み込めます。1割を占める研修・読書は、業務から離れた場所での学習なので、Off-JTや自己啓発の時間を設けましょう。人材育成を企画する際は7:2:1の法則を基に、部署や社員の役職によって、内容を柔軟に変化させることが重要です。
人材育成の階層別の実施方法
人材育成は、社員の階層に応じた内容で実施する必要があります。階層とは、社内における立場や役職で、新入社員・中堅社員・管理職などにわけられます。ここでは、人材育成を実施する際の階層別のポイントについて解説します。
新入社員
新入社員の育成においては、社会人としての心構えやマナー、自社の理念、事業内容などの理解に重点を置きます。同僚に協力を仰いだり、組織に早くなじんだりするためには、コミュニケーションスキルも身につけさせる必要があります。また、「報連相」(報告・連絡・相談)などのビジネスマナーも、新人育成の必須項目です。
中堅社員
中堅社員は、業務知識・スキルの向上に加えて、リーダー・調整役といった、周囲との関わりが増えてきます。育成においては、自分が求められている役割や立場を認識するように促し、必要なスキルを習得させます。リーダーシップやマネジメント能力を高める研修などが行われます。
管理職
管理職は、目標達成や成果のために自分自身が動くのではなく、チームや部下を動かさなければなりません。そのため、中堅社員に対しては、「現場の人間」から「管理者」「指導者」へと意識を変えさせることが、育成の重要なポイントです。管理職の育成では、目標を設定する能力、問題を解決する能力などのほか、経営戦略への理解や高度なマネジメントスキルを習得させます。
人材育成を成功に導くポイント
人材育成を実行する際は、以下の項目に注意しましょう。
適切な部署に配属する
人材育成を行う際には、業務内容が社員に合っていないと、期待した成果が見込めません。まずは適性を把握し、適切な部署に配置した上で育成する必要があります。
育成担当者のスキルアップを図る
人材育成においては、社員同士の人間関係も重要です。社員に過度な心理的負荷がかからないように、育成担当者のスキルアップを図ることも大切です。育成担当者が社員の気持ちを考え、前向きなフィードバックができるように、トレーニングを企画してもよいでしょう。
長期計画で取り組む
人材育成は、業務に必要な知識やスキルの習得から始まり、経営に貢献する人材に成長させることを目的としています。社員は、身につけた能力を業務に活かし、組織の一員として成果をあげなければなりません。また、役割や立場の変化に応じて、意識も変えていく必要があります。人材育成は、長期的な視点で取り組むことが重要です。
効果的な育成手法を選ぶ
人材育成には多数の手法があります。どの育成手法を用いるべきであるかは、会社・組織の状況や業務内容などによって異なります。自社に合う育成手法を選ばないと、育成が円滑に進まなかったり、社員が不満を抱いたりする可能性があります。例えば、現場作業がある場合にはOJT、外回りの営業が多い部署にはe-ラーニングなど、業務内容に応じた育成手法を用いるとよいでしょう。
人材育成の考え方のまとめ
人材育成は、既存社員を自社の戦力として成長させる手段のひとつです。人材育成において重要なのは、自社の目標と現状の課題を明確にして、長期的な解決策を洗い出すことです。より効率的に人材の現状を把握するために、人事管理システムの導入をおすすめします。
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