労務管理は労働関連の手続きや改善を行う業務!9つの仕事内容や4つの注意点も紹介


労務管理は労働関連の手続きや改善を行う業務!9つの仕事内容や4つの注意点も紹介

こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。

「労務管理の業務内容について知りたい」「資格がないと労務管理はできないの?」このようなお悩みをお持ちではないでしょうか。

労務管理は、書類手続きを行ったり社員が快適に働けるように環境を整えたりする仕事です。業務内容は多岐に渡るため、どのような仕事かわからない方がいるのではないでしょうか。そこで本記事では、労務管理の業務内容や持っていると役立つ資格について解説します。労務管理業務の効率を高める方法も紹介するので、ぜひ最後までお読みください。

労務管理とは労働関連の手続きや改善を行う業務

労務管理とは、労働に関わる手続きや改善などを行う業務のことです。社員が安心して働くための環境作りとして欠かせません。1990年頃までの日本は、終身雇用制度が主流で、定年まで働ける環境でした。バブル崩壊後は、雇用の流動化が起こりました。時代の変化に対応するために、成果主義の企業が増えたのです。その結果、従来にはない新しい視点の労務管理が必要になりました。


また、どんなに優れた経営者や高い給与であっても、社員が仕事に向かうモチベーションが低ければ企業の繁栄にはつながりません。仕事を継続的に行うには、労働条件や労働環境の改善が必要です。


労務管理に関連する法律一覧

労働に関する法律は、大きく以下の3つに分類されます。


  • 個別的労働関係を規定するもの
  • 集団的労働関係を規定するもの
  • 労働市場を規定するもの


具体例には、以下の法律が挙げられます。


  • 労働基準法
  • 労働契約法
  • 労働組合法
  • 労働安全衛生法
  • パートタイム有期雇用労働法
  • 育児介護休業法
  • 個人情報保護法
  • 最低賃金法
  • 健康保険法
  • 労働派遣法


厳密には「労働法」と呼ばれる法律はありません。労働契約法や労働基準法など、労働に関わる法律が存在しています。たとえば、労働基準法で社員に支払う賃金は「通貨で、直接労働者に、その全額を、毎月1回以上、一定期日を定めて支払わなければならない」と定められています。対価について定めている法律であり、労働自体には触れていません。


労務管理の9つの仕事内容

労務管理の仕事内容は以下の9つです。


  • 労働時間の管理
  • 就業規則の管理
  • 雇用契約書の作成
  • 給与管理
  • 福利厚生の管理
  • 安全衛生の管理
  • 労使関係の管理
  • 諸手続きの管理
  • ハラスメントへの対策


雇用契約書の作成や給与管理などの手続きやハラスメント対策なども行っており、労働に関わる業務を全般的に行っています。社員が業務をこなす上で欠かせないポイントです。


労働時間の管理

社員が定められた時間内で勤務しているか、残業は何時間かなどを確認します。給与計算のために管理するという理由もありますが、社員が所定の労働時間内で働いているかを確認する意味もあります。所定の労働時間とは、労働基準法における労働時間のことです。労働基準法では第36条に、通称「36協定」と呼ばれる労働時間に関する規定があります。

36協定は時間外労働と休日労働に関連する法規です。具体的な内容としては、時間外労働の上限を「年間720時間以内」「1カ月平均は80時間以内」とするなど、いくつかの制限を設けています。社員の長時間労働が目立つ場合は、是正を求めるなどの対応が必要です。

さらに、労働時間の不正申告なども考えられるため注意しましょう。タイムカードの打刻を別の社員にお願いして、本人が遅刻するというケースが過去にありました。普段は、労働時間を社員が行っています。社員が多い企業ほど、一人ひとりの労働時間の把握が困難なため、ルールを定めるだけでなく、守ってもらえるように対策しましょう。

就業規則の管理

必要に応じて、就業規則の作成や変更を行います。就業規則は常時10人以上の社員を雇用する場合に作成する義務があります。記載項目は主に2種類です。就業規則への記載が必要な絶対的必要記載事項と、制度があれば記載する相対的必要記載事項があります。記載項目は以下の表にまとめました。

記載項目 内容 記載内容
絶対的必要記載事項 必ず記載する内容 ・労働時間
・賃金
・休職・退職など
相対的必要記載事項 制度があれば就業規則に記載する内容 ・退職手当
・職業訓練
・災害補償など

労務管理では社員の増加や就業規則の変更に伴い、修正を加えます。記入漏れがあると法律違反になる可能性があるため、就業規則の作成方法を確認しながら間違いのないように作りましょう。

雇用契約書の作成

雇用契約書の作成を行います。企業と社員が納得して働けるように、雇用内容を確認しておく必要があります。雇用契約書とは、企業と社員が労働条件をもとに契約を結んだという証明書のことです。雇用契約書に記載する主な内容は、以下のとおりです。

雇用契約書に記載する内容 ・労働契約期間
・就業場所
・業務内容
・始業・終業時間
・休憩時間
・休日・休暇
・賃金
・昇給
・退職
パートタイム労働者の場合 ・昇給の有無
・退職手当の有無
・賞与の有無
・相談窓口

週4日労働や時短勤務など、社員によって働き方が異なる場合があるため、雇用契約書を作成する際は、1項目ずつ内容を確認しましょう。

給与管理

給与は、総支給額から控除額を差し引いて算出します。支給額は一般的に基本給・残業代・役職手当・交通費などで構成されるため、勤怠管理情報を基に正確に計算する必要があります。また、控除額は社会保険や所得税などの保険料・税金が対象です。控除分は税務署や年金事務所に納付しなければならないため、制度の仕組みを把握しておきましょう。

福利厚生の管理

福利厚生には、法定福利と法定外福利の2種類があります。それぞれの対象を以下の表にまとめました。

法定福利 ・健康保険
・厚生年金保険
・雇用保険
・労災保険
・介護保険
・子供・子育て拠出金
法定外福利 ・社宅
・育児支援
・特別休暇など

法定福利は記載した6種類のことを指しており、法定外福利は6種類以外のことと捉えてください。そのため、法定外福利は企業によって異なります。就業規則や給与規定で、定められているか確認しましょう。なお、採用時に加入手続きを行い、変更が生じた場合は届出が必要です。

安全衛生の管理

社員の安全衛生管理を行います。安全で快適な労働をするために管理が必要です。たとえば、危険な作業が伴う労働には、安全対策や研修を講じなければなりません。その他にも、社員50人以上の企業では、1年に1回ストレスチェックの実施が義務づけられるようになりました。仕事が原因で適応障害やうつ病を患っていないか、チェックする必要があります。

また、ストレスチェックの結果を社員へ通知したり、必要に応じて産業医へ連絡したりすることも業務の1つです。そのほか、ストレスチェックは健康に関する多くの機微情報が含まれているので、運営担当者の選抜や適切な情報管理が重要となります。

労使関係の管理

労働組合の代表など労働者団体との交渉に参加したり、社員の意見を聞いたりする必要があります。労務管理担当者はあくまでも企業側の立場です。しかし、ときに企業と社員との間に立ち、労使関係の管理を担う立場にもなり得ます。

労働条件についての意見交換をする、意見を労働協約としてとりまとめて合意を交わすといったことも、労務管理の業務の一つです。労働に関する意見は言いにくいことが多いため、日頃から社員と良好な関係性を築いておくことが大切です。

諸手続きの管理

退職や異動など、他にもさまざまな手続きを行います。労務管理担当者が行う手続きを以下の表にまとめました。

諸手続き ・身上異動手続き
・通勤経路変更手続き
・退職手続き
・休職手続き
・異動手続き
退職関連の手続き ・社会保険・雇用保険の資格喪失届の提出
・社員名簿の更新
・退職手当の支給など
その他手続き ・育児休業
・傷病休職
・介護休職など

異動手続きでは、住所変更や社会保険料の変更届などを提出する場合があります。手続きに必要な書類は、Webサイトや自治体に問い合わせれば把握できるので、事前に調べておきましょう。

ハラスメントへの対策

ハラスメントへの対策も労務管理業務の一つです。パワーハラスメントやセクシャルハラスメントなど、さまざまなハラスメント対策を講じる必要があります。

2020年6月から「パワーハラスメント対策」が法制化されました。パワーハラスメントが行われた会社は、企業名が公表されて指導や勧告の対象になります。また、セクシャルハラスメントの注目度も高まっており、企業は防止策を講じる必要があります。

労務管理においては就業規則などで周知徹底するほか、社内研修・管理職研修、通報・連絡窓口の設置などもハラスメントへの対策として有効な手段です。

労務管理の基本である法定三帳簿

企業は法定三帳簿の作成と保存が義務付けられています。法定三帳簿は以下の通りです。


  • 労働者名簿
  • 賃金台帳
  • 出勤簿


法定三帳簿は社会保険の手続きをする際に必要になることや、労働基準監督署の監査でも確認されるため、不備がないように作成する必要があります。


労働者名簿

労働者名簿は、社員情報を集約したものです。事業所ごとに作成して、変更があった場合はすみやかに修正しなければなりません。記載事項は以下の通りです。

  • 氏名
  • 生年月日
  • 性別
  • 住所
  • 業務の種類
  • 履歴
  • 雇用年月日
  • 退職年月日と事由
  • 死亡年月日と原因


上記以外にも、社員を管理する上で必要な事項を設けることも可能です。労働者名簿は、厚生労働省のWebサイトにテンプレートが掲載されています。

賃金台帳

賃金台帳は、賃金の額や支払い状況をまとめたもので、労働者名簿と同様に事業所ごとに作成します。賃金台帳の記載事項は以下の通りです。

  • 氏名
  • 性別
  • 賃金計算期間
  • 労働日数
  • 労働時間数
  • 時間外労働時間数
  • 休日労働時間数
  • 深夜労働時間数
  • 基本給や手当、その他賃金の種類ごとの額
  • 賃金控除した場合はその項目と控除額


賃金台帳には、正社員やアルバイト問わず労働者全員の情報を記載します。ただし、日雇い労働者のみ、賃金計算期間の記載は不要です。

出勤簿

出勤簿は、社員の労働時間を集約した書類です。労働者名簿や賃金台帳のように労働基準法上で明文されていませんが、出勤時間や日数などの記録を事業所ごとに作成します。出勤簿に記載する項目は以下の通りです。

  • 出勤日数
  • 休憩時間
  • 労働時間
  • 時間外労働の日数と時間
  • 休日労働の日数と時間
  • 深夜労働の日数と時間


社員の自己申告になることが多いため、改ざんが行われる可能性があります。出勤簿に記載されている時間と実際の勤務時間に相違はないか、定期的に調べましょう。

労務管理における4つの注意点

労務管理を行う際は、以下の4つに注意してください。


  • 法律を遵守する
  • 情報管理を遵守する
  • 改善意識を持って行動する
  • 社員の理解を得られるように説明する


法律を遵守し、社員が快適に働ける環境を整えていく必要があります。社員だけでなく、会社を守るためにも知っておきたい内容なので、ここでしっかり確認しておきましょう。


法律を遵守する

労務管理の業務には、法律に関わるものが多く存在します。違反すると、自社の社会的信用を失ってしまうことがあります。一度失った信用を取り戻すためには、多くの時間を要するので要注意です。
労務管理の担当者は、法律について深く理解する必要があります。法改正によって内容が変更されることもあるので、定期的にインプットしましょう。

情報管理を遵守する

社員や企業の情報を適切に管理する能力が求められます。紙ではなく、データで管理するようになり、不正アクセスのリスクが高まっています。管理が簡単になった一方で、情報漏えいには注意が必要です。導入するシステムやパソコンのセキュリティ対策は、定期的に見直しましょう。

万が一、情報漏えいを起こした場合、損害賠償請求など企業に被害をもたらします。情報漏えいによる罰則について詳しく知りたい方は、別記事「人事情報漏洩罰則」をご確認ください。

改善意識を持って行動する

労務管理には、社員が快適に働ける環境を整える仕事も含まれます。そのため、常に改善意識を持った行動が必要です。たとえば、ハラスメント対策や残業時間の削減などが挙げられます。職場環境の改善は業務の成果に直結するので、迅速かつ確実に取り組んでいく必要があります。職場環境の改善について詳しく知りたい方は、別記事「パルスサーベイ」をご確認ください。

社員の理解を得られるように説明する

社員の理解を得られるように説明します。労務管理の影響を一番受けるのは、現場の社員です。社員の理解を得られるように話の機会を作ることで、適切な労務管理が行えます。


たとえば、出勤簿の記入方法が間違っていた場合、見本付きの出勤簿を作成するなど、わかりやすく示す必要があります。丁寧に対応することで、社員と信頼関係が構築でき、円滑な組織運営につながるでしょう。


労務管理に役立つスキル・資格5選

労務管理に必須な資格はありません。ただし、持っていると業務の幅が広がる資格は存在します。ここでは、労務管理に役立つスキルや資格を紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。


労務管理士

労務管理士は、労働基準法の基礎知識や実践的ノウハウが身についていることを示す資格です。取得方法は以下の4つです。

  • 公開認定講座
  • 通信講座
  • Web資格認定講座
  • 書類審査


書類審査以外は、20歳以上なら学歴や職業、国籍を問わず誰でも受験可能です。労務管理士について詳しく知りたい方は、別記事「労務管理士」を合わせてご確認ください。

社会保険労務士

社会保険労務士は国家資格で、社会保険の申請書類作成や代行などの知識が習得できます。外注している企業も多いため、取得すれば社内で重宝される可能性があります。

ただし、合格率は6%前後で非常に狭き門です。幅広い分野に加え、法改正で最新の情報を掴むことが困難なことなどが理由として挙げられます。取得すれば社会保険労務士名簿に登録され、都道府県社会保険労務士の一員として活躍が期待できるでしょう。

衛生管理者

衛生管理者とは社員、社内の安全確保を目的とした国家資格のことです。常時50人以上の社員がいる職場では、1名以上の選任が必要です。主な業務は以下にまとめました。

  • 職場環境の管理
  • 衛生教育の実施
  • 社員の健康管理


衛生管理者には1種と2種があります。1種は、すべての事業所において衛生管理者として働けます。2種は有害業務と関係が少ない業種(通信、金融、保険、卸売・小売業など)の事業所においてのみ、衛生管理者として勤務可能です。受験資格は10以上のルートがあるので、詳細はWebサイトを確認してください。

マイナンバー実務検定

マイナンバー制度や法への理解を示す民間資格です。1〜3級まであるため、レベルに合わせて受験可能です。3級は一般人レベルなので、難易度は低いでしょう。2級以上は、企業や官公庁でマイナンバーを扱う方が対象です。労務管理の仕事を目的とするなら、2級以上を目指しましょう。

ビジネス・キャリア検定試験

ビジネス・キャリア検定試験とは、業務の遂行能力を表す試験で「ビジキャリ」とも呼ばれています。自分にどれほどの知識やスキルが備わっているか確認するための試験です。8分野43個の試験の中から、自分の職種に合うものを選んで受験します。受験できるジャンルは、以下の通りです。

  • 人事・人材開発・労務管理
  • 経理・財務管理
  • 営業・マーケティング
  • 生産管理
  • 企業法務・総務
  • ロジスティクス
  • 経営情報システム
  • 経営戦略


ビジネス・キャリア検定試験は、誰でも受けられます。労務管理に必要な知識やスキルが備わっているかの確認のために、受験するのがおすすめです。


労務管理のまとめ

労務管理とは、社員が会社で働くために必要な手続きを行ったり、快適に働ける環境を整えたりする業務です。労務管理を行うために必須な資格はありません。ただし、持っていると仕事に活かせる資格は複数存在します。


また、労務管理はやるべき業務が多いため、担当者の負担を減らすことが重要です。労務管理を効率的に行うならタレントパレットの導入をご検討ください。労務管理機能が搭載されており、オールインワンで効率化できます。また、自動入力で入力漏れを防げます。無料の体験版も用意しているので、ぜひお気軽にお問い合わせください。


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