正常性バイアスとは?ほかのバイアスとの違いなどを解説


正常性バイアスとは?ほかのバイアスとの違いなどを解説

「正常性バイアス」が過剰に働くと災害時に命に危険が及んだり、ビジネスで大きな損失を生んだりする恐れもあります。今回は正常性バイアスやほかのバイアスについて詳しく解説しますので、トラブル時やビジネスでお役立てください。

こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。

思わぬ事態が発生した際、私たち人間は経験や知識に基づいた判断をしているように感じるかもしれません。しかし、実際にはバイアスにより偏見や先入観による誤った決断をしてしまうケースがあります。バイアスには様々な種類がありますが、その中の1つ「正常性バイアス」が過剰に働くと災害時には命に危険が及んだり、ビジネスで大きな損失を生んだりする恐れもあるのです。

今回は正常性バイアスとは何か、注目されるようになった背景、注意すべきほかのバイアスなどをご紹介します。

正常性バイアスとは

正常性バイアスは防災心理学でよく用いられる心理学用語で、「バイアス」とは偏見や先入観という意味です。想像していない出来事が発生した際に心をストレスから守ってくれる役割を果たしますが、場合によっては事態を過小評価してしまい、大きな損失や被害を生む可能性もあります。まずは、正常性バイアスの概要について詳しくご紹介しましょう。

心を平静に保とうとする働き

正常性バイアスとは、多少の異常事態が発生しても正常の範囲内として考え、心の落ち着きを保とうとする働きを指します。この働きは仕事やプライベートなどで感じる不安感や恐怖心を軽減し、ストレスによる心の疲弊やメンタル負荷の軽減などに役立ちます。

正常性バイアスがなければ日々過剰なストレスや不安を感じてしまい、人に会うのが怖くなったり災害発生が恐ろしくて家から出られなくなったりするなど、あらゆる問題が発生しかねません。そのような事態を防ぐために、正常性バイアスはストレスや不安感を軽減してくれています。

悪い面に働くときもある

メンタルや心を守ってくれる効果はありますが、その一方で大きなトラブルが発生するケースもあります。例えば災害時です。

火災警報器や地震速報が鳴った際、本来であればすぐに状況確認や避難行動をする必要があります。しかし中には「大したことないだろう」「何とかなるだろう」と感じる方もいて、結果として大きな被害につながるリスクがあるのです。

ビジネスでも同様のことが言えます。今すぐに対応しなければならない問題なのにもかかわらず、自分にとって都合の悪い状況を過小評価してしまい、事業での損失が発生する可能性があるでしょう。また「ちょっとくらい平気だろう」という考えが原因で、コンプライアンス違反になるケースも珍しくありません。

正常性バイアスの概念が注目されるようになった背景


なぜ今、正常性バイアスの概念が注目されているかというと阪神淡路大震災や東日本大震災などが背景の1つです。東日本大震災では多くの方が亡くなり、そのうちの約90%が津波被害によるものだと言われています。

津波が襲ったのは地震発生から約30分後なので、ある程度のところまで避難する時間はあったものの、大勢の方が間に合わなかったのです。これは「ここまで津波は来ないだろう」「今まで大きな津波は見たことがない」などの正常性バイアスによる考えにより、過小評価をしてしまった点が大きな被害の要因だと言われています。

また、コロナ禍も注目されるようになった背景の1つです。コロナにはならないだろうと大人数の飲み会へ参加したり、不要不急の遠出をしたりしていたケースも正常性バイアスによるものだと考えられます。

従業員の心理分析だけで終わらない、あらゆる人事データを統合して分析

正常性バイアスは人間の誰しもが持っている心理的働きであり、そのような考えをゼロにはできません。しかし、人によってそのレベルは違うため、どのような心理状態なのかを把握することは容易ではないでしょう。心理分析をするためにはアンケートの実施などが必要ですが、従業員全員に行っていては時間も手間もかかります。

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正常性バイアス以外の注意すべきバイアス

人間には、正常性バイアス以外にもいくつかの心理的働きが備わっています。そこで、大きな被害やトラブルを生みかねない5つのバイアスである同調性・確証・内集団・ハロー・コンコルドについてご紹介しましょう。

つい他人と同じ行動をしてしまう「同調性バイアス」

同調性バイアスとは、突然の事態が発生した際にどう行動していいか迷った時に、周囲にいる人と同じ行動をしてしまう心理的働きです。例えば、非常ベルが鳴り響き危険が知らされているにもかかわらず「皆逃げていないから大丈夫」と考えてしまうのは、同調性バイアスによるものと言えます。

集団生活において周囲に合わせることは協調性へとつながりますが、火災や地震などの災害時には逃げ遅れの原因になりかねません。逆に言えば、周囲の誰かが率先して避難活動をしていれば周りもそれにつられ、安全な場所に移動することも可能です。

反する情報を排除「確証バイアス」

確証バイアスとは自分に都合の良い情報だけを集めてしまい、そうではない情報は排除や軽視してしまう傾向です。自分は間違っていないという勝手な思い込みで間違った判断をしてしまい、自分にとって必要な情報だけを無自覚のうちに信頼してしまいます。

確証バイアスは、人事や採用で見られるケースが多いです。例えば、履歴書やエントリーシートを見て高学歴や職歴などを持っているとわかると、面接時の様子にかかわらず採用したいと考えることがあります。客観的視点が求められる面接の場で、思い込みや自分勝手な考えが働いてしまう点には注意が必要です。

自集団が優れていると思い込む「内集団バイアス」

内集団バイアスとは、自分の集団が他よりも優れていると考える現象です。他集団のメンバーよりも能力値が高く、人格も良いと思い込んで肯定的な評価や好意的な態度を取ります。その一方で自分の集団以外には不当な評価をし、差別的行動をしてしまうケースも多いです。

例えば、自分と同じ学校を卒業している部下に対し、他よりも優秀だと思い込むなどがあります。内集団に対して高い評価をすると、ほかの従業員から内びいき・不公平などの不満が上がりやすくなり、社内の問題へと発展しかねません。また外部にはもっと優秀な人材がいるはずなので、自分の集団が一番だと思っていてはこれ以上の成長は望めないでしょう。

一部の印象に引きずられる「ハロー効果」

ハロー効果とは、一部の目立った印象や特徴に引きずられて全体を評価してしまう心理的働きを指します。ハロー効果には、ある目立った功績により全体の評価が上がる「ポジティブハロー効果」と、あるマイナスな特徴により全体の評価も下がる「ネガティブハロー効果」の2つがあります。

第一印象だけでその人のすべてを評価してしまうことで評価エラーにならないよう、人事評価や採用面接時に留意すべき事項として活用される人事用語の1つです。それ以外にも、会社がCMに好感度や知名度を高い有名人を起用することにもハロー効果が関わっています。

投資を続けてしまう「コンコルド効果」

損失すると理解していても投資を継続してしまうことを、コンコルド効果と言います。理解しているのに辞められないのは、費やした時間やお金が惜しいからです。例えば、パチンコやスロットなどのギャンブルや事業活動において、「負け分を取り戻そう」「ここで辞めたら意味がない」と考えてしまうことを言います。

利益が出る見込みはほとんどなくても投資を続けてしまい、最終的に大きな負債を生んで倒産してしまった超音速旅客機コンコルドが元になった言葉です。他にも「今まで頑張ってきたのだから続けた方が良い」「資格を活かせない仕事への転職は意味がない」などの考えも、コンコルド効果によるものだと言えます。

正常性バイアスは仕事にも影響する


目の前で発生している出来事を過小評価する正常性バイアスは、仕事にも大きな影響を与えます。例えば、働き方の問題です。本来であれば過剰な長時間労働やサービス残業などは許されません。

しかし、上司が「この程度なら問題ない」と判断したことで、従業員の健康に被害を与えてしまう可能性があります。退職率や体調不良による欠勤などが増加してから、重大な過ちだと気付くケースは多いです。

また、企業には安全に働ける場所を整備する義務があります。建設業や電気工事などの現場では、作業時のヘルメットの着用や機械や道具のチェックなどは必須です。そのようなルールがあるにもかかわらず、上司や従業員に正常性バイアスが働くと「今まで事故なんてなかったから大丈夫だろう」という判断ミスが生まれ、大きな事故へとつながってしまう恐れがあります。

まとめ

正常性バイアスは心をストレスから守ってくれる働きがありますが、場合によってはビジネスで損失を生み出すこともあります。従業員や上司の心理的傾向を把握するのは容易ではありませんが、思わぬミスや事故を予防するにはバイアス傾向を把握しておくのがおすすめです。

あらゆる機能が備わったタレントマネジメントシステム『タレントパレット』は、従業員の健康管理やストレスチェック、アンケートの際にも役立ちます。タレントパレットを用いて従業員のバイアス傾向を把握し、生産性の高い組織づくりへ活かしましょう。

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