リストラのやり方や注意点|不当解雇を避けて、退職勧奨や整理解雇を行う手順


リストラのやり方や注意点|不当解雇を避けて、退職勧奨や整理解雇を行う手順

こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。

経営危機が訪れた場合は人件費を削減するために、「人」に対して何らかの対策を講じる必要があります。最近は新型コロナウイルスの影響で市場環境が急に変化し、リストラに踏み切る企業が増えています。

今回は、リストラの進め方について説明します。なお、この記事における「リストラ」は、会社都合によって解雇される場合の「退職勧奨」と「整理解雇」とします。

リストラが必要と感じたときの確認事項

経営危機に直面したとき、真っ先に思い浮かぶ対策はリストラでしょう。しかし、大切な経営資源である「人」に手をつけてしまうと、社員のモチベーションの低下といった影響が生じる可能性が高いといえます。特に、解雇はできるだけ避けたいものです。

リストラ(解雇)を検討する前に、何か別の方法がないか検討しましょう。

「人」に手をつける前に対処すべきこと

まず、業務改善を図りましょう。人・物・金・情報などに無駄がないかどうか見直すだけでも、業務の効率化や無駄な経費の削減ができるかもしれません。

次に、「BPR」と呼ばれるビジネスプロセス・リエンジニアリング(Business Process Re-engineering)を検討しましょう。これは、業務フローや組織構造、情報システムなどを再構築することです。

組織が縦割りになっていると業務プロセスが分断され、無駄な決裁や承認業務が発生しやすくなります。

前述の業務改善は、個人単位や小さな組織における業務の部分的な見直しにとどまる可能性が高いのですが、「BPR」は会社全体で業務プロセスを見直すことになるため、大変ではありますが大きな効果が期待できるでしょう。

最新の技術を駆使することも大切です。業務改善にせよ「BPR」にせよ、AIなどのデジタル技術の活用も検討しましょう。

配置転換、出向

その結果、人の配置を再検討する必要も生じるでしょう。

業務改善やBPR、システム化を進めると、担当の業務量が減る人や業務がなくなる人が生じ、余剰人員が出ます。その場合は配置転換を行い、必要な業務に業務量の少ない人を補充するといった対応が必要です。そうすると、残業代が減る可能性があります。

ただし、配置転換をしても余剰人員が残る可能性があります。その際には、出向を検討しましょう。関連会社などへ出向させ、その分の人件費を出向先に請求すれば、総人件費を下げられます。

給与・賞与で対応できること

出向やリストラだけでなく、1人あたりの人件費を下げることも必要です。
まずは、時間外残業や深夜業務の見直しを検討します。時間外残業時間や深夜業務時間を削減し、時間外割増手当を減らしましょう。すると、それに比例して発生する労働保険料、社会保険料の削減にもつながります。

賞与についても、会社の業績に合わせた支給額を検討しましょう。ただし、これは人事制度で許される場合のみ有効な手段です。

思いがけない危機に備えるためには、最初に取り決める人事制度で、会社業績に合わせて賞与額を決定できる仕組みにしておくとよいでしょう。

その他、福利厚生費や研修費、交際費、会議費などにも無駄がないか確認してください。

リストラに踏み切るとき

上記の対応を行っても経営を立て直すことができない場合は、人員削減やリストラを検討することになります。ここでは、人員削減を行う場合に検討すべきことを解説します。

なぜリストラをするのか、理由を明確にする

リストラに踏み切る最大の目的は、会社を立て直すことでしょう。したがって「とにかく人員削減」と考えるのではなく、まずは会社を再建するための経営計画を立てなければなりません。その中で、総人件費をどう組み込むかを検討することになります。

具体的には「〇年後には〇円の利益を出す」「そのためには来年は~、再来年は~」と考えます。さらに、その計画に対する適切な総人件費や社員数、人材…とブレークダウンしていきます。

将来の総人件費も大切ですが、このリストラを行うにあたって、一時的にどのくらいの費用を捻出できるかを確認することも重要です。退職金の増額や再就職支援サービスなどの利用も検討すべきなので、試算しておきましょう。

もう1つ、経営計画を立てるべき大きな理由があります。

リストラは社員に大きな不安を抱かせますので、誠意ある丁寧な対応が必要です。退職する社員はもちろんですが、残った社員が今後も高いモチベーションで働ける環境を整備しなければなりません。

そのためには、リストラをしなければならない理由を説明するだけでは不十分です。リストラ後の組織体制や経営方針について、社員にしっかり伝えなければなりません。目的はリストラそのものではなく、会社を立て直すことなのです。

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リストラの具体的方法


次に、リストラの具体的な方法を3つ紹介します。

希望退職者募集

希望退職者の募集とは、社員の全部または一部を対象として、一定の優遇措置を示して退職を希望する社員を募集することです。会社が募集し、通常より優遇された退職金などを条件に、社員の合意の上で退職します。

合意に基づいた退職であるため、相対的にリスクが低いことがメリットです。一方で、退職金などを優遇するため、一時的にコスト増となることはデメリットといえるでしょう。

また、優秀で辞めてほしくない社員が退職を希望する可能性もあります。よって、優秀な社員に残ってもらえるような施策の検討も必要です。

その点も踏まえて、手順を説明します。

・人数・対象者を決める

前述のとおり、まず経営計画を立てることが非常に重要です。今後の経営に必要な人員数と妥当な人件費を割り出し、希望退職の募集人数と対象者を決めます。

ただし、辞められたら困る社員は必ずいるので、その社員が当てはまらないように対象者を限定する必要があります。具体的には、募集対象者の職種や年齢、勤続年数などを調整するのです。

また、希望があっても会社が承認した社員のみに限定する承認制なども考えられます。

・退職条件を決める

希望退職の場合は、退職金の上乗せや有給休暇の買取、勤務免除、再就職支援サービスなど、退職者にとってメリットのある条件を設定しましょう。

こちらを参考にしてください。
「リストラ条件」については、こちらの記事をご確認ください。

・募集を行う

上記で決めた条件などを明確かつ丁寧に社員に伝えます。退職の条件はもちろん、リストラをしなければならなくなった経緯や今後の経営計画なども説明し、社員の理解を得ることが大切です。

募集期間は、一般的に2週間~1ヵ月です。退職希望者が集まらない場合は募集期間を延長し、希望者が想定よりも多い場合は途中で募集を打ち切ることも検討しましょう。

期間を延長したり、途中で打ち切ったりすることが想定される場合は、募集時にその旨を伝えておきましょう。

個別の退職勧奨

次に、個別の退職勧奨について説明します。

退職勧奨とは、会社が社員に対して「辞めてほしい」「辞めてくれないか」と申し入れ、退職を勧めることです。退職勧奨に応じるか否かは社員の自由なので、一方的な整理解雇とは異なります。

個別の退職勧奨において重要なのは、対象者の選定です。退職勧奨の理由には法的な制限はありませんが、会社が選定する理由としては以下のようなものが考えられます。選定理由は抽象的な内容よりも、実際に起きたトラブルなどを例に、具体的に説明するほうが進めやすいでしょう。

・能力に比べて給与が著しく高い
・成長する見込みがない
・職場になじめない
・職場の雰囲気を悪くしている
・コンプライアンス違反がたびたび見られる など

整理解雇

整理解雇とは、社員の意思とは関係なく、会社が不況や経営不振などの理由によって解雇せざるを得ない場合に、人員削減のために行う解雇のことです。

これは会社の事情による解雇であるため、経営者の思うがままに進められるものではありません。具体的な整理解雇の要件として、以下の4要件に照らして整理解雇が有効かどうか、厳しく判断されます。

1.人員整理の必要性 
2.解雇回避努力義務の履行 
3.被解雇者選定の合理性 
4.解雇手続の妥当性

リストラ(整理解雇)を行える条件の詳細は、以下をご参考ください。
「リストラ条件」については、こちらの記事をご確認ください。

リストラ時の注意点


リストラ前やリストラ準備期、リストラ後の会社再構築期にも、気を付けるべきことがあります。

社内で気を付けること

・リストラ前

日頃から経営状況を社員と共有し、リスク回避やリスク対策を続けることが大切です。リストラが必要な時期になって、急に社員に経営状況などを伝えても、「突然言われても困る」と思われてしまいます。

日頃から会社の経営状況を社員と共有し、利益を上げるために全社員が努力を続けなければなりません。

また、経営状況が悪化を把握した段階で新規採用を打ち切り、派遣社員や契約社員がいる場合は契約の打ち切りや雇い止めなどを進めましょう。すると、正社員の雇用維持に努力していることを理解してもらいやすくなります。
「雇い止め 会社都合」については、こちらの記事をご確認ください。

・リストラ準備期

情報統制の徹底が重要です。リストラの準備段階で中途半端な情報が漏れてしまうと、社員を不安にさせてしまいます。また、個別の退職勧奨では対象者を選定しますが、事前にその情報が社員に伝わってしまわないよう十分気を付けましょう。

・リストラ後

リストラの後遺症は、少なからずあります。1人あたりの業務量が増える、給料が上がらない、待遇が悪くなって士気が下がるなど、職場の雰囲気が悪くなりがちです。また、有能な社員が退職する可能性もあり、逆に人材不足となるおそれがあります。

さらに、経営陣に対する不信感が残るおそれもあります。

事前準備しておいた会社を立て直すための経営計画をしっかり伝え、社員の協力を得ながら立て直しを進めていくことが大切です。

不当解雇とならないためにも弁護士に相談を

リストラを検討しなければならない場合は、今回紹介したような知識や対応が必要です。順番や方法を誤ると、重大な解雇トラブルにつながるおそれがあります。また、解雇に応じない社員や、「不当解雇だ」と訴えてくる社員もいるかもしれません。

トラブルを避けて経営を再建するために、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

まとめ

会社経営に行き詰り、「人」に手を入れなければならないと感じたときに、物事を進める手順を説明しました。リストラは最後の手段です。その前にできることややるべきことは、たくさんあります。

経営に行き詰ったときだけでなく、人事制度の構築時にもリスクヘッジをしておくことができます。また、リストラのような経営を大きく左右する意思決定ではなく、人件費の最適化や社員の適正配置、社員のモチベーション向上の施策を行うことも大切です。

日々の意思決定を行う際にも、人事データは必須です。ぜひ、タレントパレットをご活用ください。タレントパレットはそのようなご要望にも応えられますので、ぜひお役立てください。

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