リストラとは?解雇・退職勧奨などの種類やメリット・デメリット、注意点を解説


リストラとは?解雇・退職勧奨などの種類やメリット・デメリット、注意点を解説

こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。

リストラとは企業が悪化した経営状況を立て直すために従業員との雇用契約を解消することで、整理解雇を意味することもあります。
この記事では、リストラのメリット・デメリットや実施の条件、手順などについて解説します。トラブルを避け、会社にとってメリットあるリストラのポイントが知りたい方は、ぜひご一読ください。

リストラとは

リストラは英語の「restructuring」(リストラクチャリング)を略した言葉で、本来は「再構築」という意味です。ビジネスにおいては、経営が低迷した企業が人員の整理を行って経営を立て直したり、企業の再編や吸収合併をしたりするという意味で使われます。

日本の企業が行うリストラは、人件費削減を目的とした「整理解雇」を意味する場合が多いですが、リストラには本来さまざまな種類があります。

リストラの種類

まず、広義としてのリストラには、本来どのような種類があるかを整理しておきましょう。ここでは、リストラに含まれる施策の内容やメリット・デメリットをご紹介します。

整理解雇

整理解雇は、企業の経営が悪化している場合に人件費削減を目的として行われる人員整理です。日本で「リストラ」と言えば、この整理解雇を意味するケースが多いといえます。

整理解雇は、「経営が傾いているから」「赤字になっているから」という理由だけで実施することはできません。解雇回避努力義務を履行しており、人員整理を行わなければ事業の継続ができない場合にのみ認められます。

解雇については、以下の記事でも詳しく解説しています。
「解雇」については、こちらの記事をご確認ください。

希望退職者の募集

会社が一定の期間・範囲を定め、その期間内での退職に優遇条件を付けて退職希望者を募集し、人員を整理する方法です。一度に多くの人員削減をしたい場合は、効果的な方法といえるでしょう。

一般的には会社の業績不振や事業所の統廃合、企業の合併・吸収などを理由に、余剰の社員を整理したい場合に募集されることが多いようです。優遇措置には、退職金アップや有給休暇の買い取り、再就職の斡旋などがあります。

退職勧奨(推奨)

退職勧奨(推奨)は俗に「肩たたき」とも呼ばれるもので、会社が当該社員に退職を推奨し、双方合意の上で会社を退職する方法です。退職する社員も合意の上で会社を去るためトラブルになりにくく、円満退社の条件にもなっています。

希望退職者の募集では退職希望者が現れるのを待つのに対し、退職勧奨(推奨)では会社側が特定の社員に退職を促す点が異なります。

退職勧奨(推奨)は職務怠慢や問題行為が見られる社員などに対して、トラブルなく会社を去ってもらいたい場合に行われます。

また、従業員が少ない中小企業などでは、業績不振による人員整理をしたい場合に退職勧奨(推奨)を行うケースが多いようです。

派遣社員の削減

派遣社員とは、労働者派遣契約のもとに派遣会社から派遣される人材を指します。こうした派遣社員の人員調整もリストラの一環です。派遣社員は、労働契約法や雇い止め法理などの解雇規制の対象外であるため、正社員の解雇よりもリスクを抑えた人員整理が可能です。

派遣社員は、労働者派遣契約期間が満了した時点で更新をしないか、契約期間途中に解約することで解雇できます。ただし、業績悪化による契約解除が派遣契約内容に定められているか、派遣会社との合意がなければ、中途解約はできません。

場合によっては派遣会社に2~3ヵ月分の費用を支払い、示談で解決するケースもあります。

契約社員・パートの雇い止め

契約社員やパート・アルバイトといった有期雇用契約者(一定期間の労働契約を結んでいる労働者)であれば、期間満了とともに契約を終了するのが原則です。

リストラを行う必要がある場合は、正社員の前に契約社員やパート・アルバイトの人員を見直すことで、人件費を削減できるでしょう。

ただし、本人が契約更新を希望している場合は、任期満了による契約終了を告知しなければなりません。雇い止めの通知書を作り、受領のサインをもらうことで、その後のトラブルを防ぐことができます。

なお、一定の条件下では、30日前までの告知が義務付けられているため、注意が必要です。
「契約が3回以上更新されている場合」や「1年を超える契約期間の雇用契約を締結している場合」などが該当します。

配置転換(降格・降給)

配置転換とは、それまでの職務や勤務場所を変更することで、雇用を維持しながら適材適所を実現できます。

降格を伴う役職変更や、職種変更による減給が含まれることもあるため、配置転換もリストラの一種です。ただし、雇用が維持されるため、人件費削減効果はそれほど大きくないでしょう。

人事権を持つ会社側は比較的自由に異動命令を出せるため、解雇に比べると実行しやすいのがメリットです。ただし、個人的な思惑による異動命令や、退職に追い込むことを目的とする配置転換は、人事権の濫用とみなされます。また、雇用契約の内容によっては減給が認められないケースもあるため、注意が必要です。

出向

出向とは、籍を企業に残したまま、他の企業や勤務地で働くことです。雇用契約自体は元の会社と結んでいるため、雇用状態や給与などの処遇は変えずに別のところに配置できます。

一般的には出向元の企業が出向者の人件費を負担し、出向先の企業から「出向料」や「出向戻入金」などを受け取ります。そのため、人件費を多少削減できますが、経営不振対策となるほどのリストラにはならないでしょう。

加えて、出向先企業との関係が良好である必要がある上に、勤務地の変更によって労働者が不利益を被ることがないかどうかも検討する必要があります。出向をリストラの手段として考える場合は、労働条件を明示した上で対象労働者の同意を得ておきましょう。

転籍

籍を残したまま他の企業や勤務地で働く出向とは異なり、転籍は会社の籍を移して違う会社や勤務地で働くことです。

転籍という呼称ですが、実質的には再就職です。転籍する従業員に対する給与の支払いがなくなるため、人件費削減を目的としたリストラとしては、かなりの効果があるでしょう。

効果が大きい反面、転籍には退職推奨と同じプロセスが必要になるため、実行のハードルは高くなります。本人の同意が必須であることはもちろん、転籍を強要されたと感じられないよう、面談の方法にも配慮しなければなりません。

これは、出向を経て転籍という手段を採る場合も同様です。出向後に転籍となる時期や転籍後の労働条件などを詳しく説明し、対象従業員が同意しなければなりません。

内定取り消し

入社が決まっている採用内定者(主に学生)に対する内定取り消しも、リストラの一種です。

コスト面を考えると、新人の戦力は給与の額に見合いません。また、内定を取り消せば、戦力になるまで教育する費用なども節約できるでしょう。

ただし、内定では「始期付解約権留保付労働契約」が成立すると考えられています。そのため、やむを得ない事由が発生しない限り、内定を取り消すことはできません。

採用内定後は労働契約法16条の解雇権濫用法理が適用され、解雇回避(内定取り消し回避)努力や、内定取り消しに相当する理由の有無が問われます。

不当な内定取り消しの場合、紛争や一時解決金の発生が考えられます。また、採用内定取り消し回避努力の一環として入社時期をずらす必要などもあるため、人件費削減を目的としたリストラの効果は限定的です。

リストラのメリット


「リストラ」という言葉は従業員にとっても企業にとってもネガティブなイメージがありますが、適切なリストラは企業にとってメリットがあります。ここでは、経営の再建や再投資といった側面から、リストラのメリットを見ていきましょう。

人員削減による経営再建

リストラを行う最大のメリットは、人件費削減によるコストカットです。特に、日本ではまだ年功序列の慣例が残っていることもあり、勤続年数に応じて給与が高くなる傾向があります。

そのため早期退職者を募集し退職金を増額して早めに退職してもらい、人件費削減を図る企業も少なくありません。若い従業員が解雇されやすい欧米と異なり、日本で中高年の従業員に対するリストラが行われやすいのは、この年功序列の文化が関係しています。

業績悪化によって人件費を削減をしたい企業にとって、リストラは経営立て直しの助けとなるでしょう。もっとも、整理解雇には厳しい条件や努力義務があるため、業績が悪化しているからといって思いどおりに実行できるわけではありません。

やむを得ない事情による整理解雇を考える前に、中長期的なリストラを穏便に進めるほうがよいかもしれません。

人件費以外のランニングコスト削減

リストラによって人員が減ると、その従業員分の光熱費や設備費といった費用も減少します。職場や職種によって減少幅は異なりますが、削減人数が増えるほど光熱費や設備費も減少するでしょう。年単位で換算すると、それなりのコスト削減効果が期待できます。

捻出した費用による投資

リストラを行うことによって人件費を削減できれば、その分の資金を投資に回し、企業の収益を改善することもできます。

ただし、短期的に大規模の人件費削減ができるケースはまれです。また、人件費の大幅削減ができる条件が揃うほどに経営状態が悪化している場合、再投資に回す資金を捻出するまでに相当な期間が必要になるでしょう。

リストラによる人件費削減から生まれる資金で、新規事業や従業員育成などへの再投資を考えている場合は、中長期的なリストラや投資計画が必要になります。

アメリカやカナダなどでは、「レイオフ」という一時解雇制度がよく用いられますが、日本にはレイオフに関する法律が整備されていません。したがって、整理解雇を含むリストラによって資金を作りたい場合は、慎重な判断と計画が必要になります。

環境改善による従業員のモチベーションアップ

リストラ対象者の中に問題社員がいた場合は、周りの従業員のモチベーションが上がるかもしれません。

例えば遅刻や無断欠勤、就業規則違反を重ねている従業員がいる場合です。こういった社員がいると、真面目に働いている従業員のモチベーションが下がったり、業務効率が下がったりするおそれがあります。

退職勧奨(推奨)や配置転換、出向、転籍といったリストラによって問題を起こしている従業員がいなくなれば、職場の環境や雰囲気が改善するため、従業員のモチベーションや生産性がアップすることは十分考えられます。

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リストラのデメリット

整理解雇を含むリストラには、多くのデメリットもあります。リストラを実行する際に注意しておきたい点を確認しておきましょう。

モチベーションやロイヤリティの低下

リストラは残された従業員にとって、不安の種になる可能性があります。今回はリストラを免れたとしても、いつ自分がリストラの対象になるのかという不安感を生むからです。

また、周りからの評判が良かった従業員がリストラになった場合は、「なぜあの人が?」と会社や上司への不信感につながる可能性もあります。

結果的に職場の雰囲気が悪化し、生産性や業務効率の低下を招くかもしれません。リストラ後は、残された従業員のケアも行う必要があります。

企業イメージの低下

やむを得ない事情で整理解雇や転籍であっても、リストラを行った企業は「経営が悪化している」というイメージを持たれがちです。特に就職を希望する人は、「リストラをよく行う会社」「最近大量のリストラを行った企業」に対して大きなマイナスイメージを持つでしょう。

リストラを行った後、「優秀な人材を採用して経営を立て直したい、新事業を軌道に乗せたい」と考えている場合は注意してください。リストラのマイナスイメージを払拭する、ポジティブな情報を発信していく取り組みが必要になるからです。

残った従業員の負担増加

リストラ後も仕事量が変わらない場合、残った従業員の負担が増加します。人員削減をしてコストカットをしたつもりが、結局残業代の支払いが増え、トータルではあまり効果がなかったということも考えられます。

コストカットを目的とした人員削減を行う際は、業務量や事業数の見直しも含めて、総合的に判断しましょう。

会計業務や在庫管理、顧客データ管理など、一部の業務の自動化やIT化を進める場合は、「ものづくり補助金」や「IT導入補助金」などの制度を利用できるかもしれません。補助金の受給を足掛かりに業務効率の改善も実現できれば、リストラの効果も高まるでしょう。

ものづくり補助金
https://portal.monodukuri-hojo.jp/
IT導入補助金
https://www.it-hojo.jp/

ナレッジの流出

重要な知識や技術を持つ従業員の転籍や、整理解雇による競合他社への再就職はナレッジの流出を招きます。リストラの対象となった社員が、競合他社にとっては貴重な戦力になるかもしれません。

知識や技術、経験といった点で、リストラの対象となった元従業員が、競合他社にとっては「まさに欲しかった人材」となる場合もあります。その従業員を競合他社が雇用することで、その企業が飛躍的に成長することもあるでしょう。

市場における自社の立ち位置や競合他社の狙い、競争に勝つためのポイントなども把握しつつ、リストラの影響をシミュレーションしておきましょう。

リストラ(整理解雇)の条件・注意点


リストラは多くの場合「整理解雇」を意味しますが、整理解雇にはさまざまな条件や注意点があります。リストラ後のトラブルを避けるためにも、整理解雇の条件や注意点を確認しておきましょう。

まず注意しておきたいのは、「整理解雇の4要件」を満たしているかどうかです。整理解雇の4要件とは、「人員削減の必要性」「解雇回避の努力」「人選の合理性」「解雇手続の妥当性」です。(参考:厚生労働省

整理解雇は、使用者(企業側)の事情による解雇であり、従業員にとっては一方的にクビを切られる形になります。そのため、これら4要件を満たしており、整理解雇に妥当性・合理性があるかどうかが厳しく問われます。

整理解雇を含むリストラに関しては、以下の記事で詳しく解説しています。
「リストラ条件」については、こちらの記事をご確認ください。

加えて、条件を満たせない場合のリスクも認識しておく必要があります。従業員が不当と感じるリストラは拒否をされたり、会社を去ったとしても不当解雇として訴えられたりするおそれがあります。

整理解雇としてのリストラを行う場合は、整理解雇の要件を満たしていると同時に、従業員が納得できるよう配慮しなければなりません。

リストラが拒否できるかどうかや、リストラを拒否された場合の対応については、以下の記事で詳しく解説しています。
「リストラ拒否」については、こちらの記事をご確認ください。

リストラの手順

リストラ(整理解雇)を行う手順についても確認しておきましょう。日本では、解雇の条件が厳しく定められています。リストラ(整理解雇)はトラブルのないよう、各プロセスをしっかり踏んで行う必要があります。

まず、派遣社員や契約社員の削減を検討します。正社員として雇用している従業員を解雇する場合は、整理解雇の要件を満たす必要があるため、ハードルが高くなります。

整理解雇の前に、派遣社員や契約社員、パート・アルバイトといった人員の雇い止めによって、人件費をどれくらい削減ができるかを検討しましょう。

次に実施するのは、希望退職者の募集です。希望退職は整理解雇の要件を満たす必要がないため、比較的スムーズに人員整理を行えます。

希望退職者の募集は、整理解雇の要件である「解雇回避の努力」にも該当します。配置転換や希望退職者の募集は、整理解雇を行う前の段階で実施しなければなりません。

雇い止めや希望退職者の募集を行っても必要な人件費削減を達成できない場合は、整理解雇の方針を検討します。整理解雇の対象者基準や整理解雇を行う時期、退職金の額、整理解雇前の面談方法など、具体的な方針を決定しましょう。

整理解雇の方針が決定した後は、従業員や労働組合との協議が必要です。経営状況と整理解雇の必要性を説明し、理解を得てから整理解雇を実施します。

なお、整理解雇を行う際は対象者に対する30日前の解雇予告義務があるため、この点にも注意が必要です。

リストラのやり方については、以下の記事で詳しく解説しています。
「リストラやり方」については、こちらの記事をご確認ください。

まとめ

日本におけるリストラは、整理解雇を意味するケースが多いです。しかし、人件費の削減を目的とする場合は出向や転籍、配置転換や退職勧奨(推奨)など、さまざまな手段があります。これらも、広義のリストラといえます。

希望退職者の募集や配置転換は整理解雇の実施において必要になるため、リストラは特に計画的に進めていかなければなりません。

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