人材育成を効率化する5つのフレームワーク|メリット・デメリット、活用のコツ・注意点


人材育成を効率化する5つのフレームワーク|メリット・デメリット、活用のコツ・注意点

「人材育成が進まない」「効率的な人事育成方法はないか」などの課題があるなら、フレームワークを活用してはいかがでしょうか。人材育成におけるフレームワークとは、特定の事象において、共通した構造やロジックから抽出された考え方の枠組みや骨格です。

この記事では、フレームワークのメリットとデメリット、人事育成に活用できる5つのフレームワーク、活用のコツや注意点などを解説します。自社の施策を作成する際の参考にしてください。

人材育成におけるフレームワークとは何か?

ここでは、フレームワークの意味と、人事育成におけるフレームワークについて解説します。

そもそもフレームワークとは

フレームワークとは、考え方の枠組み・骨格です。5W1HやPDCAサイクルなどは、フレームワークの一種で、汎用的に活用されています。

フレームワークは、特定の事象において、共通した構造やロジックを抽出し、誰もが使えるように汎用性を高めます。確立されたパターンにあてはめて考えることで、質の高い分析・意志決定・戦略立案などが迅速に行えます。

人材育成におけるフレームワークとは

人材育成におけるフレームワークは、企業にとって理想的な人材を評価し育てることに特化して考案されています。フレームワークによって、利用するべき場面や、どのような人材育成に活用するべきかが異なります。

自社の人材育成をどのように進めていくか、どのような人材像が理想か、などを議論する際に活用すると効果的です。

人材育成にフレームワークを活用する目的・重要性

人材育成にフレームワークを活用する目的とは何でしょうか。3つのポイントを解説します。

人材育成を効率化するため

人材育成におけるフレームワークは、分析するべき要素や成長段階のフローがパターン化されています。試行錯誤しながら独自にフレームワークを構築するよりも、効率的な人材育成が実現できます。

また、すべての社員に同じ方法を適用できるため、人事担当者や教育担当者によってムラが出にくいこともメリットといえます。

中長期の人事戦略を立案するため

フレームワークは人事戦略の立案に役立ちます。人事戦略とは、事業目標を達成するために、有能な人材の確保・育成、適材適所の人事配置をすることです。人材育成には期間を要するため、ブレのない計画と実施が必要です。

フレームワークは、その名のとおり「骨組み」がしっかりしているため、目的や方向性を明確にできるメリットがあります。

社員に共通意識を持たせるため

フレームワークは、コミュニケーションツールとしても利用できます。たとえば、人事部の人材育成に関するミーティングでは、フレームワークに沿って課題を検討することで、説明の大部分を省けます。

従業員に対しても同様です。フレームワークを利用して、求める人材や望ましい成長過程などを説明すると、意味が伝わりやすく、人事評価においても不満が出にくくなります。各部署から人を集めて人材育成をする場合にも役立ちます。

人材活用にフレームワークを活用するメリット

ここでは、人材育成のフレームワークを活用するメリットを、人事担当者の視点から解説します。

人材育成の施策を効率的に立案できる

人材育成の難しさは、計画立案の自由度が高い点にあります。フレームワークを活用すると、考え方や分析の糸口がつかめます。また、漏れや重複なしに整理できるため、作業時間の短縮につながります。

一貫した人材育成ができる

人材育成のフレームワークの多くは、入口と出口がセットになっています。この点は、集客から売上向上までのフローが書かれた、マーケティングのフレームワークと同じです。途中の段階でも目的を忘れることがなく、現在位置を把握しやすいため、一貫した人材育成が可能です。

一貫性のある人材育成は、社員の共通意識や信頼感を得やすいという特徴があります。また、採用活動に応用できるものもあります。

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人材活用にフレームワークを活用するデメリット

ここではフレームワークの限界や、フレームワークへの過信で生じるデメリットなどを解説します。

フレームワークの適用範囲に限界がある

フレームワークとは、現実の事象を整理しやすいように切り取ったものですが、フレームワークのコンセプトでは扱えない範囲もあります。人材育成の目的や状況の変化に応じて別のフレームワークへの変更も必要です。

人材育成に柔軟性がなくなる

フレームワークにあてはめるだけになると、人材育成に柔軟性がなくなり、自社の課題や目標にあわなくなるケースもあります。また、フレームワークにとらわれて、達成すべき目的や評価に疑いを持たなくなってしまうリスクにも注意が必要です。

フレームワーク自体を学ぶ必要がある

人材育成に初めてフレームワークを活用する場合は、フレームワーク自体を学び、理解しなければなりません。本質的な理解なしで導入すると、使い方を間違えたり、効果の少ない表面的な施策で終わったりします。

人材育成に活用できるフレームワーク5選

ここでは、人材育成に活用できるフレームワークを5つ解説します。現状分析や人材育成手段の選定、成果の検証など、それぞれのプロセスで適用できます。

思考の6段階モデル

思考の6段階モデルは、育成対象者のレベルにあわせて段階的にアプローチすることで効果を高めていくフレームワークです。思考を以下のように分類します。

  1. 記憶:情報や考え方を知っている
  2. 理解:内容や意味を理解し、比較、分類、要約などができる
  3. 応用:類似した状況に適用できる
  4. 分析:情報や考え方を分解して区別、整理でき、因果関係を理解できる
  5. 評価:情報や考え方を批評できる
  6. 創造:情報や考え方を応用して新たなものを創造できる


※思考の6段階モデルには2種類あり、上記は改訂版です。

70:20:10フレームワーク

70:20:10フレームワークは、「70%のOJT」「20%の社会的な他者との関わり」「10%の公的な学習」によって人材は育成されるという考え方です。他者との社会的な関わりとは、プライベートも含めた、他人からの好ましい影響を指します。公的な学習とは、企業による人事研修などです。

フレームワークを適用することで、人材育成のバランスを理想的な状態に調整できます。たとえば、「人事研修を減らしてOJTを増やす」「先輩や直属の上司のコーチング制度を導入する」などが考えられます。

カッツ理論

カッツ理論とは、マネージャーに必要なスキルを、3つに分類したフレームワークです。

・コンセプチュアルスキル:問題の本質を見極める能力

・テクニカルスキル:特定の業務を遂行する知識や経験、技能 ・ヒューマンスキル:コミュニケーション能力やリーダーシップ

カッツ理論を人事評価のデータ化に活用すると、適材適所の人事配置や今後の人材育成計画の作成などに役立ちます。

カークパトリックモデル

カークパトリックモデルは、人材育成の研修成果を正しく評価するためのフレームワークです。以下の4レベルで評価します。

  • レベル1:反応

 研修を意味あるものと考えている、やる気がみられないなど

  • レベル2:学習

 研修の理解度。レポートやテストによって判定することも多い

  • レベル3:行動

 研修後にどのような行動の変化があったか

  • レベル4:業績

 研修によってどのような成果(営業成績の向上など)が出たか、またはどの程度、研修目的 (リーダーシップ獲得など)を達成したか

人事部または研修を実施した部署が、研修の効果を検証する際に活用します。

SMARTの法則

SMARTは、以下の5要素の頭文字をとって名付けられたフレームワークです。主に目標設定の精度を高めるために、5要素を満たしているかをチェックします。もちろん人材育成の目標設定にも適用できます。

・Specific(明確な):意図が明確、具体的である
・Measurable(測定可能な):進捗や成果を数値で測定できる
・Assignable(割り当て可能な):人事配置、職権などが適切である
・Relevant(達成可能な):現実的な目標か
・Time-bound(期限):期限を設けているか

人材育成においてフレームワークを活用するコツ

ここでは、各フレームワークで共通して使える活用のコツを4つ、解説します。

目標に合わせてフレームワークを選ぶ

目標達成のためにフレームワークというツール(手段)を選ぶという、アウトプット重視の姿勢が重要です。問題を解決する方法としては、具体的で精度の高い施策です。

ただし、人材育成は、企業の成長という長期的な目的に沿うものでなければならないため、経営層の視点も含めて評価することが必要です。

実践を繰り返す

人材育成は、2パターンの広告を出して、反応を比較するといったことが不可能です。ベストと考える方法を選んだら、失敗を恐れずに実践を繰り返すしかありません。実績のあるフレームワークを使うことで、成果が得られる可能性を高められます。

また、効果測定やフィードバックのプロセスを含めることや、一定数のデータが取れないうちは、フレームワークをカスタマイズしないことも重要です。

自社の現状に合わせてアレンジする

実践を繰り返して傾向の分析ができたら、フレームワークを自社の現状に応じてアレンジするのもよいでしょう。

フレームワークは汎用的なモデルであるため、柔軟に対応しなければならない部分もあります。そのためには、人事担当者が人材の配置や社員の成長段階など、細かな変化に目を配ることが重要です。

役職や業務で区別する

中堅社員、部長クラスといった、階層別にフレームワークを分けると機能しやすくなります。階級によって「知識・技能」「マネジメント能力」「創造性・リーダーシップ」など、求められる人材が違うため、それぞれ違うフレームワークを適用しましょう。

人材育成においてフレームワークを活用する注意点

人材育成にフレームワークを活用する際には、「即戦力・急成長を期待しない」「フレームワークに頼りすぎない」といった注意点があります。それぞれについて解説します。

即戦力・急成長を期待しない

一般的に、フレームワークを適用したからといって、人材育成ですぐに成果があがるわけではありません。長期的な視点で取り組みましょう。

人事担当者は、スキル習得の部分などの細かな部分ではなく、人材育成の目的や企業のビジョンなどを重点的に伝えることが重要です。

フレームワークに頼りすぎない

フレームワークに頼りすぎて現状に目を背けてしまい、変化に対応できなくなる恐れがあります。人や成果などを、フレームワークありきで分析しないように注意しなめればなりません。

場合によっては、人材育成の現状に即してフレームワークをアレンジしたり、フレームワーク自体を違うものに変更したりすることも必要です。

まとめ

実績のあるフレームワークを活用することは、人材育成において、よい効果が期待できます。フレームワークにはそれぞれ特徴があるため、比較検討したうえで、自社に適したものを選びましょう。

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