人材育成を効率化する8つのフレームワーク|メリットや活用方法、7つのステップを解説


人材育成を効率化する8つのフレームワーク|メリットや活用方法、7つのステップを解説

「人材育成が進まない」「効率的な人事育成方法はないか」などの課題があるなら、フレームワークを活用してはいかがでしょうか。人材育成におけるフレームワークとは、特定の事象において、共通した構造やロジックから抽出された考え方の枠組みや骨格です。


この記事では、フレームワークのメリットとデメリット、人事育成に活用できる8つのフレームワーク、注意点や活用時の7つのステップを解説します。自社の施策を作成する際の参考にしてください。


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企業が人材育成を行う必要性

「人材育成が進まない」「効率的な人事育成方法はないか」などの課題があるなら、フレームワークを活用してはいかがでしょうか。人材育成におけるフレームワークとは、特定の事象において、共通した構造やロジックから抽出された考え方の枠組みや骨格です。


この記事では、フレームワークのメリットとデメリット、人事育成に活用できる8つのフレームワーク、活用のコツや注意点などを解説します。自社の施策を作成する際の参考にしてください。


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人材育成におけるフレームワークとは何か?基本知識を解説

ここでは、フレームワークの意味と、人材育成におけるフレームワークについて解説します。


そもそもフレームワークとは

フレームワークとは、考え方の枠組み・骨格です。5W1HやPDCAサイクルなどは、フレームワークの一種で、汎用的に活用されています。


フレームワークは、特定の事象において、共通した構造やロジックを抽出し、誰もが使えるように汎用性を高めます。確立されたパターンにあてはめて考えることで、質の高い分析・意志決定・戦略立案などが迅速に行えます。


人材育成におけるフレームワークとは

人材育成におけるフレームワークは、企業にとって理想的な人材を評価し育てることに特化して考案されています。フレームワークによって、利用するべき場面や、どのような人材育成に活用するべきかが異なります。


自社の人材育成をどのように進めていくか、どのような人材像が理想か、などを議論する際に活用すると効果的です。


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人材育成にフレームワークを活用する目的・重要性

人材育成にフレームワークを活用する目的とは何でしょうか。3つのポイントを解説します。


人材育成を効率化するため

人材育成におけるフレームワークは、分析するべき要素や成長段階のフローがパターン化されています。試行錯誤しながら独自にフレームワークを構築するよりも、効率的な人材育成が実現できます。


また、全ての社員に同じ方法を適用できるため、人事担当者や教育担当者によってムラが出にくいこともメリットといえます。


中長期の人事戦略を立案するため

フレームワークは人事戦略の立案に役立ちます。人事戦略とは、事業目標を達成するために、有能な人材の確保・育成、適材適所の人事配置をすることです。人材育成には期間を要するため、ブレのない計画と実施が必要です。


フレームワークは、その名のとおり「骨組み」がしっかりしているため、目的や方向性を明確にするメリットがあります。


社員に共通意識を持たせるため

フレームワークは、コミュニケーションツールとしても利用できます。たとえば、人事部の人材育成に関するミーティングでは、フレームワークに沿って課題を検討することで、説明の大部分を省けます。


社員に対しても同様です。フレームワークを利用して、求める人材や望ましい成長過程などを説明すると、意味が伝わりやすく、人事評価においても不満が出にくくなります。各部署から人を集めて人材育成をする場合にも役立ちます。


社員のモチベーションやスキルを向上させるため

人材育成は、従業員のモチベーションやスキル向上のために行われます。企業が研修やOJTを通じて学びの機会を提供すると、従業員は会社への信頼感を持ち、仕事への取り組みによい変化が生まれます。スキルが評価されれば自信につながり、意欲も高まるでしょう。


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人材活用にフレームワークを活用するメリット

ここでは、人材育成のフレームワークを活用するメリットを、人事担当者の視点から解説します。


人材育成の施策を効率的に計画・立案できる

人材育成の難しさは、計画立案の自由度が高い点にあります。フレームワークを活用すると、考え方や分析の糸口がつかめます。また、漏れや重複なしに整理できるため、作業時間の短縮につながります。


一貫した人材育成ができる

人材育成のフレームワークの多くは、入口と出口がセットになっています。この点は、集客から売上向上までのフローが書かれた、マーケティングのフレームワークと同じです。途中の段階でも目的を忘れることがなく、現在位置を把握しやすいため、一貫した人材育成が可能です。


一貫性のある人材育成は、社員の共通意識や信頼感を得やすいという特徴があります。また、採用活動に応用できるものもあります。


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人材活用にフレームワークを活用するデメリット

ここではフレームワークの限界や、フレームワークへの過信で生じるデメリットなどを解説します。


フレームワークの適用範囲に限界がある

フレームワークとは、現実の事象を整理しやすいように切り取ったものですが、フレームワークのコンセプトでは扱えない範囲もあります。人材育成の目的や状況の変化に応じて別のフレームワークへの変更も必要です。


人材育成に柔軟性がなくなる

フレームワークにあてはめるだけになると、人材育成に柔軟性がなくなり、自社の課題や目標にあわなくなるケースもあります。また、フレームワークにとらわれて、達成すべき目的や評価に疑いを持たなくなってしまうリスクにも注意が必要です。


人材育成に割く時間が取れない

人材育成に割く時間が取れない点も、デメリットとして挙げられます。多くの企業が人材難に直面し、経験者の確保が難しいため、新人教育が十分に行えない状況です。経験者がいても多忙で育成の時間が取れず、社内での人材育成が困難なケースもあります。


フレームワーク自体を学ぶ必要がある

人材育成に初めてフレームワークを活用する場合は、フレームワーク自体を学び、理解しなければなりません。本質的な理解なしで導入すると、使い方を間違えたり、効果の少ない表面的な施策で終わったりします。


人材育成に活用できるフレームワークの種類8選

ここでは、人材育成に活用できるフレームワークを8つ解説します。現状分析や人材育成手段の選定、成果の検証など、さまざまなプロセスで適用できます。


HPI (Human Performance Improvement)

HPIは、Human Performance Improvementの略で、組織と人材の状況や課題を明らかにし、改善に向けて進めるフレームワークです。以下の手順で、実施します。


  1. 組織が目指す理想的な人材のパフォーマンスを明確にする
  2. 現在の課題やギャップを特定し、原因を分析する
  3. 具体的な人事施策を立案する
  4. 施策を実行し、適切にマネジメントする
  5. 施策の効果を評価し、必要に応じて改善をする


思考の6段階モデル

思考の6段階モデルは、育成対象者のレベルにあわせて段階的にアプローチすることで効果を高めていくフレームワークです。思考を以下のように分類します。


  1. 記憶:情報や考え方を知っている
  2. 理解:内容や意味を理解し、比較、分類、要約などができる
  3. 応用:類似した状況に適用できる
  4. 分析:情報や考え方を分解して区別、整理でき、因果関係を理解できる
  5. 評価:情報や考え方を批評できる
  6. 創造:情報や考え方を応用して新たなものを創造できる


※思考の6段階モデルには2種類あり、上記は改訂版です。


70:20:10フレームワーク

70:20:10フレームワークは、「70%のOJT」「20%の社会的な他者との関わり」「10%の公的な学習」によって人材は育成されるという考え方です。他者との社会的な関わりとは、プライベートも含めた、他人からの好ましい影響を指します。公的な学習とは、企業による人事研修などです。


フレームワークを適用することで、人材育成のバランスを理想的な状態に調整できます。たとえば、「人事研修を減らしてOJTを増やす」「先輩や直属の上司のコーチング制度を導入する」などが考えられます。


カッツ理論

カッツ理論とは、マネージャーに必要なスキルを、3つに分類したフレームワークです。


  • コンセプチュアルスキル:問題の本質を見極める能力
  • テクニカルスキル:特定の業務を遂行する知識や経験、技能 ・ヒューマンスキル:コミュニケーション能力やリーダーシップ


カッツ理論を人事評価のデータ化に活用すると、適材適所の人事配置や今後の人材育成計画の作成などに役立ちます。


カークパトリックモデル

カークパトリックモデルは、人材育成の研修成果を正しく評価するためのフレームワークです。以下の4レベルで評価します。


レベル1:反応

 研修を意味あるものと考えている、やる気がみられないなど

レベル2:学習

 研修の理解度。レポートやテストによって判定することも多い

レベル3:行動

 研修後にどのような行動の変化があったか

レベル4:業績

 研修によってどのような成果(営業成績の向上など)が出たか、またはどの程度、研修目的 (リーダーシップ獲得など)を達成したか


人事部または研修を実施した部署が、研修の効果を検証する際に活用します。


SMARTの法則

SMARTは、以下の5要素の頭文字をとって名付けられたフレームワークです。主に目標設定の精度を高めるために、5要素を満たしているかをチェックします。もちろん人材育成の目標設定にも適用できます。


  • Specific(明確な):意図が明確、具体的である
  • Measurable(測定可能な):進捗や成果を数値で測定できる
  • Assignable(割り当て可能な):人事配置、職権などが適切である
  • Relevant(達成可能な):現実的な目標か
  • Time-bound(期限):期限を設けているか


経験学習サイクル

経験学習サイクルは、以下の4つのステップを繰り返し、成長を促すことを目的としたフレームワークです。


  • 経験する:行動の結果を受け取る
  • 内省する:プロセス・結果を振り返る
  • 教訓化する:振り返りの内容より教訓を導き出す
  • 試行する:教訓内容をもとに実際に行動する


氷山モデル

氷山モデルは、「目に見える部分」と「目に見えない部分」に分けて、人材の特性を把握するフレームワークです。社員の業績や成果、スキルといった目に見える特性以外にも、モチベーションや適性、資質、価値観といった目に見えない特性も把握します。


人材育成でフレームワークを活用する7つのステップ

人材育成でフレームワークを活用するためには、手順を把握する必要があります。ここでは、7つのステップを解説します。


1.人材育成の課題・現場の状況を把握する

まずは、人材育成の現状を把握するための調査を行います。現場へのヒアリングを通じて、求められる人材育成のニーズを明確にします。また、管理職に対しても人材育成の状況をヒアリングする機会を設けましょう。


2.経営目標を確認する

人材育成の課題・状況を把握できたら、社長や役員に経営目標を確認しましょう。経営目標と関連のない人材育成を行うと、成果が見えにくく、人材育成が中途で頓挫する恐れがあります。


3.フレームワークや育成手法を選定する

経営目標とのすり合わせが済んだら、人材育成に用いるフレームワークや育成手法を選定します。フレームワークにはそれぞれメリット・デメリットがあるため、適切なフレームワークを選ぶことが大切です。自社の状況と目標を分析したうえで、選択しましょう。


4.人材育成計画を策定する

フレームワークの選定ができたら、人材育成計画を策定しましょう。人材育成計画は、人材育成の目的をもとに策定します。以下の点を具現化することがポイントです。


  • 人材育成の対象
  • 実施時期、期間
  • 施策の目的、ゴール


5.人材育成計画の共有・調整をする

人材育成計画の策定が完了したら、管理職に共有し、必要に応じて調整をします。現場の具体的な要望も考慮し、現場から理解を得やすい内容にしましょう。


6.人材育成に関することを全体に周知する

人材育成計画の共有・調整が済んだら、全体への周知を進めます。社内報や集会などを活用して、人材育成施策の概要を社内周知しましょう。あらかじめ周知しておくことで、社員からの協力を得やすくなります。


7.人材育成を実施する

周知が完了したら、人材育成を実施し、定期的な改善を行いましょう。実施中は状況をモニターし、必要に応じて適切なフォローアップをします。計画が順調でない場合は、スケジュールを見直しましょう。


人材育成におけるフレームワークの効果的な活用方法とコツ

ここでは、各フレームワークで共通して使える活用方法とコツを4つ、解説します。


目標に合わせてフレームワークを選ぶ

目標達成のためにフレームワークというツール(手段)を選ぶという、アウトプット重視の姿勢が重要です。問題を解決する方法としては、具体的で精度の高い施策です。


ただし、人材育成は、企業の成長という長期的な目的に沿うものでなければならないため、経営層の視点も含めて評価することが必要です。


実践を繰り返す

人材育成は、2パターンの広告を出して、反応を比較するといったことが不可能です。ベストと考える方法を選んだら、失敗を恐れずに実践を繰り返すしかありません。実績のあるフレームワークを使うことで、成果が得られる可能性を高められます。


また、効果測定やフィードバックのプロセスを含めることや、一定数のデータが取れないうちは、フレームワークをカスタマイズしないことも重要です。


PDCAサイクルを回す

フレームワークを効果的に活用するためには、PDCAサイクルを回すことも大切です。PDCAサイクルとは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(測定・評価)、Action(改善)のプロセスを繰り返すことです。


一度実施した人材育成施策を放置せずに、PDCAサイクルを通じて評価し、調整しましょう。


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自社の現状に合わせてアレンジする

実践を繰り返して傾向の分析ができたら、フレームワークを自社の現状に応じてアレンジするのもよいでしょう。


フレームワークは汎用的なモデルであるため、柔軟に対応しなければならない部分もあります。そのためには、人事担当者が人材の配置や社員の成長段階など、細かな変化に目を配ることが重要です。


役職や業務など階層別に使い分ける

中堅社員、部長クラスといった、階層別にフレームワークを分けると機能しやすくなります。階級によって「知識・技能」「マネジメント能力」「創造性・リーダーシップ」など、求められる人材が違うため、それぞれ違うフレームワークを適用しましょう。


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人材育成においてフレームワークを活用する注意点

人材育成にフレームワークを活用する際には、「即戦力・急成長を期待しない」「フレームワークに頼りすぎない」「経営目標の達成目的をぶらさない」といった注意点があります。それぞれについて解説します。


能力や急成長を期待しない

一般的に、フレームワークを適用したからといって、人材育成ですぐに成果があがるわけではありません。長期的な視点で取り組みましょう。


人事担当者は、スキル習得の部分などの細かな部分ではなく、人材育成の目的や企業のビジョンなどを重点的に伝えることが重要です。


フレームワークに固執しすぎない

フレームワークに頼りすぎて現状に目を背けてしまい、変化に対応できなくなる恐れがあります。人や成果などを、フレームワークありきで分析しないように注意しなければなりません。


場合によっては、人材育成の現状に即してフレームワークをアレンジしたり、フレームワーク自体を違うものに変更したりすることも必要です。


経営目標の達成目的をぶらさない

フレームワークを活用する際には、経営目標の達成目的をぶらさないことが大切です。人材育成は経営目標を達成するために不可欠ですが、フレームワークの適用で本来の目的を見失わないよう注意しましょう。


現場の状況や育成効果の検証を怠らない

フレームワークを活用する際には、現場の状況や育成効果の検証を怠ってはなりません。人材育成のフレームワークは、現場の状況を把握してから設計することが重要です。実務に即した育成を行うためには、現場のニーズを正確に捉える必要があります。実施後は育成の効果を検証し、自社に最適な形に継続的に見直しましょう。


人材育成・研修管理なら「タレントパレット」の活用がおすすめ

人材育成の課題を解決するためには、タレントパレットの導入をおすすめします。タレントパレットは、人材データを統合・分析し、組織のパフォーマンスを最大限に引き出すタレントマネジメントシステムです。


人材育成や研修管理はもちろん、人材の見える化やデータ分析、最適配置など、あらゆる課題を解決できます。


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まとめ

実績のあるフレームワークを活用することは、人材育成において、よい効果が期待できます。フレームワークにはそれぞれ特徴があるため、比較検討したうえで、自社に適したものを選びましょう。


タレントパレット」は、職歴や異動履歴、人事評価、労務管理データなど、人材に関するあらゆるデータを一元管理できるシステムです。優れたビジュアライズ機能を活用して、客観的な人事システムを構築できます。360度評価やTPI適性検査など、さまざまな評価形式にも対応しており、人事育成施策の立案にも役立ちます。


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